18 / 45
18話 投げナイフとラッキーパンチ
しおりを挟む
小屋の外に出ると、そこは森の中。
たくさんの背の高い気に囲まれており、自然豊かも良い所だった。
「凄い所に住んでいますよね、ヒジリさんって」
「そう? 俺は慣れてるけど」
「そ、そうなんですか!? 私も自然は好きですけど、ヒジリさんもなんですね」
ラウリィは少し引いていた。しかしすぐに俺に合わせてくれる。
如何やら気を遣わせてしまったらしい。俺は苦笑いを浮かべる。
(まあ、俺は地方出身だからな。自然には慣れてるだけで)
現実世界の俺は地方で生まれ育った。
そのまま大人に成り、関東圏に進出した。
おかげで自然のありがたみは分かっていて、たまに地元に戻って自転車に乗る。
自動車免許を持っていないので、悠々自適に漕ぐと、ゆったりとした自然を眺めることができて好きだった。
(まあ、この世界じゃ大気汚染なんてないんだろうけど……んなことはどうでもよくて!)
「ラウリィ、モンスターの肉って食べられる?」
「が、頑張ります!」
「あはは、無理はしなくてもいいよ。それじゃあ……」
俺は言葉を滑らせた。意識を集中させ、狙いを絞る。
と言うのも、周囲から敵意を感じる。
これは殺気。この森に棲んでいる肉食系のモンスターの視線と気配だ。
「そこ!」
俺はインベントリの中から小型のナイフを取り出す。
指の間に挟み込むと、振り向きざまに背後にはなった。
するとナイフが宙を描き、真っ直ぐ飛んで木々の合間を抜けて行く。
バシュン!
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
大絶叫が上がり、森の中を駆け巡る。
そのせいもあってか、静かに暮らしていた鳥達が、怯えて空へと逃げ惑う。
「ヒジリさん、なにをしたんですか!」
「牽制だよ、牽制」
「け、牽制ですか? な、なにに……ですか?」
傍で何が起きたのか理解できていないラウリィは怯えてしまった。
鳥肌が立ち、体を震わせながら窄める。
「ひ、ヒジリさん!」
「な、なんでくっ付くのかな?」
ラウリィは俺に体を寄せて来た。
当たってはいけない柔らかいものが二つ、俺の腕に押し付けられる。
柔らかい……じゃなかった。首を横に振ると、Hな妄想から脱し、ラウリィを落ち着かせる。
「ラウリィ、ここは森の中、モンスターの縄張りだよ。いつ何処からモンスターが襲って来るか分からないから、注意して」
「は、はい! 私はヒジリさんの従者になったんです……私は従者、私は従者」
「無理して言い聞かせる必要もないんだけどな……」
ラウリィの頑張りと覚悟を尊重しつつも、くだらないことに真剣になっているのでなんだかなと思ってしまう。
蟀谷を掻きながら、表情を歪めていると、森の中から上がった絶叫が聞こえなくなっていた。
「絶叫が聞こえなくなったね。痛みで我を忘れたかな?」
「ヒジリさん、ちょっと怖いです」
「怖いよね。俺も怖い、正直、これを平気でやれる人間って化物だよね?」
俺は自分でやっておきながら、まるで他人事のような振る舞いをした。
それだけゲーム脳に支配されているなと感じると、ラウリィを連れて森の中を進む。
一歩踏み出した瞬間、全身を悪寒が包む。
命の危険を感じるとはまさにこのことで、ここは獰猛な獣が棲んでいる魔境なのだ。
「ラウリィ、ここからは危険だよ。自分の身は自分で守ってね」
「は、はい! ……じゃないです。私だって、一応戦えるんですよ」
「そうなの?」
「はい。ですから、私も前衛に置いてください。二人で前衛を張れば、怖いもの無しです」
「……そうだといいけどね」
俺は不穏なことを言ってしまった。
するとラウリィは再び肝が冷えてしまい、肩がブルブル震え出す。
本当に大丈夫だろうか心配になるも、既に小屋から離れていて、モンスターの射程内に入っているので逃げられるわけもなかった。
俺はラウリィには下手なことを言わずに黙り込む。
代わりに腰に差した実剣を握り締めると、命を預けるだけだった。
たくさんの背の高い気に囲まれており、自然豊かも良い所だった。
「凄い所に住んでいますよね、ヒジリさんって」
「そう? 俺は慣れてるけど」
「そ、そうなんですか!? 私も自然は好きですけど、ヒジリさんもなんですね」
ラウリィは少し引いていた。しかしすぐに俺に合わせてくれる。
如何やら気を遣わせてしまったらしい。俺は苦笑いを浮かべる。
(まあ、俺は地方出身だからな。自然には慣れてるだけで)
現実世界の俺は地方で生まれ育った。
そのまま大人に成り、関東圏に進出した。
おかげで自然のありがたみは分かっていて、たまに地元に戻って自転車に乗る。
自動車免許を持っていないので、悠々自適に漕ぐと、ゆったりとした自然を眺めることができて好きだった。
(まあ、この世界じゃ大気汚染なんてないんだろうけど……んなことはどうでもよくて!)
「ラウリィ、モンスターの肉って食べられる?」
「が、頑張ります!」
「あはは、無理はしなくてもいいよ。それじゃあ……」
俺は言葉を滑らせた。意識を集中させ、狙いを絞る。
と言うのも、周囲から敵意を感じる。
これは殺気。この森に棲んでいる肉食系のモンスターの視線と気配だ。
「そこ!」
俺はインベントリの中から小型のナイフを取り出す。
指の間に挟み込むと、振り向きざまに背後にはなった。
するとナイフが宙を描き、真っ直ぐ飛んで木々の合間を抜けて行く。
バシュン!
「ギャァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
大絶叫が上がり、森の中を駆け巡る。
そのせいもあってか、静かに暮らしていた鳥達が、怯えて空へと逃げ惑う。
「ヒジリさん、なにをしたんですか!」
「牽制だよ、牽制」
「け、牽制ですか? な、なにに……ですか?」
傍で何が起きたのか理解できていないラウリィは怯えてしまった。
鳥肌が立ち、体を震わせながら窄める。
「ひ、ヒジリさん!」
「な、なんでくっ付くのかな?」
ラウリィは俺に体を寄せて来た。
当たってはいけない柔らかいものが二つ、俺の腕に押し付けられる。
柔らかい……じゃなかった。首を横に振ると、Hな妄想から脱し、ラウリィを落ち着かせる。
「ラウリィ、ここは森の中、モンスターの縄張りだよ。いつ何処からモンスターが襲って来るか分からないから、注意して」
「は、はい! 私はヒジリさんの従者になったんです……私は従者、私は従者」
「無理して言い聞かせる必要もないんだけどな……」
ラウリィの頑張りと覚悟を尊重しつつも、くだらないことに真剣になっているのでなんだかなと思ってしまう。
蟀谷を掻きながら、表情を歪めていると、森の中から上がった絶叫が聞こえなくなっていた。
「絶叫が聞こえなくなったね。痛みで我を忘れたかな?」
「ヒジリさん、ちょっと怖いです」
「怖いよね。俺も怖い、正直、これを平気でやれる人間って化物だよね?」
俺は自分でやっておきながら、まるで他人事のような振る舞いをした。
それだけゲーム脳に支配されているなと感じると、ラウリィを連れて森の中を進む。
一歩踏み出した瞬間、全身を悪寒が包む。
命の危険を感じるとはまさにこのことで、ここは獰猛な獣が棲んでいる魔境なのだ。
「ラウリィ、ここからは危険だよ。自分の身は自分で守ってね」
「は、はい! ……じゃないです。私だって、一応戦えるんですよ」
「そうなの?」
「はい。ですから、私も前衛に置いてください。二人で前衛を張れば、怖いもの無しです」
「……そうだといいけどね」
俺は不穏なことを言ってしまった。
するとラウリィは再び肝が冷えてしまい、肩がブルブル震え出す。
本当に大丈夫だろうか心配になるも、既に小屋から離れていて、モンスターの射程内に入っているので逃げられるわけもなかった。
俺はラウリィには下手なことを言わずに黙り込む。
代わりに腰に差した実剣を握り締めると、命を預けるだけだった。
0
お気に入りに追加
58
あなたにおすすめの小説


異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる