上 下
17 / 45

17話 モンスターを狩りに行こう

しおりを挟む
 俺はラウリィを受け入れることにした。
 とは言っても、別にHな意味じゃない。
 単純に、ラウリィを俺なりに従者として雇うことにしたのだ。

(とは言っても、ラウリィは貴族。しかもストチュール子爵の三女って、ヤバくないか?)

 何度考えても俺は頭がおかしくなりそうだった。
 正直、簡単には受け入れることはできない。
 モヤモヤとした気持ちにさせられると、ラウリィの今後を一任できないので、とりあえず話してみた。

「ラウリィはどうしたい?」
「どうしたいですか? 私はヒジリさんと一緒にいたいです」
「あー、そういうことじゃないんだけど。ラウリィはなにかしたいことがある?」

 俺はラウリィに単純思考で訊ねていた。
 もはや俺が考える余地はない。
 なにせ従者として雇ったはいいものの、正直俺一人で手に余っている。

(ラウリィがこんなボロ小屋に住むなんてなー。絶対知らないんだろうけど、バレたらミレイユとスフロにぶち殺されそう……おお、怖い)

 全身が身震いしてしまった。
 その姿にラウリィは鳥肌を立たせると、心配した様子で立ち上がる。

「大丈夫ですか、ヒジリさん!」
「大丈夫だよ。ところでラウリィは何処に住むの?」
「えっ、ここじゃダメですか?」
「ダメじゃないけど、やっぱり同棲だよ、それ?」
「は、はい。覚悟はできています!」

 覚悟なんてして欲しくない。むしろそんなもの要らない。
 俺は何もする気はないし、変な気を起こしたりしない。
 何せこの体は借り物だ。結局はゲームのアバターで、異世界に転生とは言っても、色々人間としておかしい所があった。

(キマってるな、ラウリィ。本当、純粋だよ)

 こんな純粋な子を俺みたいな得体のしれない奴の所に寄こしても良かったのか不安になる。
 けれど今となっては考えても遅い。
 頭を悩まされているのはしつこいので、やることを決めて行こう。

「とりあえず今日の晩ご飯を調達しに行こう」
「夕食ですね。料理なら任せてください!」
「へぇー、やったことあるんだ」
「貴族でも料理の一つくらいはできるんです。簡単なものですけどね」

 ラウリィは自信満々に笑みを浮かべる。
 俺は意外な一面を見れるのではないかと思い、少しワクワクしていた。
 しかしそのためには食材が足りない。幸いこの土地は痩せているが、俺の【固有魔法:付与】のおかげで簡単な野菜は育てられている。

「それじゃあ俺はモンスターを狩って来るよ。その肉を食べるけど、大丈夫?」
「が、頑張ります。モンスターのお肉、怖いですね」

 ラウリィは緊張した表情を浮かべている。
 それも仕方の無いことで、モンスターの肉を食べて、腹を壊すかもしれない。
 そんな恐怖心と好奇心に苛まれると、ラウリィはゆっくりと立ち上がる。

「あ、あの、ヒジリさん!」
「なに?」
「実はもう一つお願いしたいことがあるんです」
「お願い? うーんと、調理器具は一通り揃っているけど」
「それは嬉しいです。ですがそれじゃないです。私もヒジリさんの狩りに同行させてください」

 ラウリぃは意外なことを言った。
 俺は驚いてしまい、目を丸くするも、理由は一目瞭然。
 ラウリィは脚を震わせていて、完全にビビっていた。
 にもかかわらず狩りに同行するなんて意思を持つのは変わり者だった。

「狩りに行くの? ラウリィが?」
「は、はい。私、ヒジリさんみたいに強くなりたいんです。ですので、その、ヒジリさんの剣技をもっと近くで見させてください。お願いします。従者としてではなく、教えを乞うということでお願いします」

 ラウリィはペコリと深いお辞儀をした。
 頭のてっぺんを曝け出すと、震えた声ではあるが、それは堂々と自分の意見を言い放つ。社畜人生まっしぐらだった俺には到底できない荒業で、圧倒されてしまっていた。

「危険だけど、付いてくる?」
「はい!」
「死ぬかもしれないし、俺は別に剣技を教えられるほど強くも無いよ」
「構いません。少しでも近くで戦うヒジリさんを見たいんです。お願いします!」

 ラウリィの意思は頑なに強い。
 もはや解ける様子は無く、俺は人間が持つ意思の強さにも圧倒されてしまった。
 ここは無碍にできない。俺を慕ってくれるのなら少しは応えることにした。

「分かった。だけど俺から距離を取りすぎないでね」
「ありがとうございます!」

 ラウリィは晴れやかな笑みを浮かべると、俺の隣に擦り寄る。
 妙に密着しているような気がするが、セクハラじゃないと信じたい。
 やけに顔が火照る中、俺はラウリィを連れ、森の中でモンスター狩りをすることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...