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9話 少女を連れて家族の下へ
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「少しは落ち着いた?」
「は、はい……なんとか」
少女が落ち着くのを待ってから、俺は話し掛けた。
呼吸も安定しているおかげか、表情も少し良い。
気持ちの整理ができたと言えばいいのか、少女は砕けた腰を起こし、自分の足で歩けるようになっていた。
「さてと、とりあえず盗賊の追っては見ての通り」
「死んじゃったんですか?」
「死んでない死んでない。俺だってちゃんと注意して戦ったんだよ」
改めて不安材料になっていたものを取り除く作業だ。
追って来ていた盗賊達は全員倒した。
しかしあっという間に倒されてしまったので、殺してしまったとばかりに思っている。
けれどそんなことはなく、俺は剣で叩き付けて気絶させるだけに留めておいた。
「良かったです。貴方が人殺しの汚名を被らなくて」
「まあ、正当防衛の証拠が目の前にいるんだから、問題無いけどね」
「そうですよね……って、それはお礼ではありませんよ!」
「分かってるよ。本気にしないで」
少女は揶揄うと面白かった。
一つ一つにちゃんとツッコミを入れてくれる上に、微かにアクションを起こしてくれる。
そのおかげか、揶揄い買いがあるのでついつい構ってしまった。
しかしそんな無駄話をしている場合でも無かった。
俺は踵を返すと、倒れている盗賊達を全員縛り上げ身動きが取れなくする。
「あ、あの……」
「一旦気絶させたけど、また暴れられると困るからねっ」
インベントリの中から取り出した丈夫な縄で、盗賊達を全員縛り上げる。
腕と脚をキツく縛られ、完全に自由を奪われる。
自分の足で立つことも、手を自由に使うこともできない。
逃げることも反撃することもできないので盗賊達は完全に無力化できた。
「後は【固有魔法:付与強化(体)】」
俺は魔法を唱えた。すると全身の魔力が駆け巡り、体が軽くなった。
おまけに力も湧いてくる。今の自分は無敵なんだ。そんな気分にさせてくれた。
そんな状態で何をするのか。とっても地味なことだけど、凄いことだ。
縛り上げた盗賊達を片手で担ぎ上げると、少女はドン引きする。
「な、なにをしているんですか!? それにその魔法は強化系ですよね」
「強化系? ちょっと違うかな。でもなにをしているのかは分かってくれるよね?」
「分かってくれるってなにをです?」
「決まっているでしょ。この人達を正式に逮捕して貰うために街に連れて行って貰うんだよ。君達が」
俺は理解ができていない少女に口走った。
するとドン引きした上で首を捻っていた少女が驚きあぐねる。
目を見開きとんでもない速度で瞬きをすると、「えっ、は、ええっと?」とあたふたしていた。
「ど、どういうことですか!? わ、私達を使うってことですか?」
「そうだよ。ここまで逃げて来たってことは、人間の足じゃないんだろ。ってことは、動物の脚ってこと。逆に言えば、その格好的に貴族かなにかかな? つまり、近くに盗賊に襲われた馬車があるってことだ!」
俺の見解はあまりにも少女の格好と行動を基に立てた仮設だった。
けれど如何やら概ね当たっているらしい。
少女は一瞬たじろくと、か細く震えてしまう。
「た、確かに私達は馬車に乗っていて襲われました」
「そうなんだ。それじゃあ早く行こうよ。君も家族が心配だろ?」
「もちろんです!!」
少女は堂々とした態度で答えた。
盗賊に襲われた家族の身が心配で仕方がない。
全身の震えが一瞬にして収まると、フードの奥の表情がキリッと凛々しくなった。
「は、早く行きましょう。え、えっと……」
「俺は聖だよ」
「ヒジリさん。あの、その、私の家族を……」
「できるだけのことはするつもり。とりあえず最短距離で向かおうか」
「お、お願いします! 私の家族を、私の家族のことを助けてください」
少女は今一度頭を下げると、再び森の中を進むことになった。
しかしもう追われはしない。自分を追って来た盗賊は既に倒され、今成すべきは家族の安全確保のみ。
つまらない感情に縛られなくなった少女の歩を止めることは誰にもできず、ましてや俺もする気は無く、縛り上げた盗賊達を抱えながら森の中をひた歩くのだった。
「は、はい……なんとか」
少女が落ち着くのを待ってから、俺は話し掛けた。
呼吸も安定しているおかげか、表情も少し良い。
気持ちの整理ができたと言えばいいのか、少女は砕けた腰を起こし、自分の足で歩けるようになっていた。
「さてと、とりあえず盗賊の追っては見ての通り」
「死んじゃったんですか?」
「死んでない死んでない。俺だってちゃんと注意して戦ったんだよ」
改めて不安材料になっていたものを取り除く作業だ。
追って来ていた盗賊達は全員倒した。
しかしあっという間に倒されてしまったので、殺してしまったとばかりに思っている。
けれどそんなことはなく、俺は剣で叩き付けて気絶させるだけに留めておいた。
「良かったです。貴方が人殺しの汚名を被らなくて」
「まあ、正当防衛の証拠が目の前にいるんだから、問題無いけどね」
「そうですよね……って、それはお礼ではありませんよ!」
「分かってるよ。本気にしないで」
少女は揶揄うと面白かった。
一つ一つにちゃんとツッコミを入れてくれる上に、微かにアクションを起こしてくれる。
そのおかげか、揶揄い買いがあるのでついつい構ってしまった。
しかしそんな無駄話をしている場合でも無かった。
俺は踵を返すと、倒れている盗賊達を全員縛り上げ身動きが取れなくする。
「あ、あの……」
「一旦気絶させたけど、また暴れられると困るからねっ」
インベントリの中から取り出した丈夫な縄で、盗賊達を全員縛り上げる。
腕と脚をキツく縛られ、完全に自由を奪われる。
自分の足で立つことも、手を自由に使うこともできない。
逃げることも反撃することもできないので盗賊達は完全に無力化できた。
「後は【固有魔法:付与強化(体)】」
俺は魔法を唱えた。すると全身の魔力が駆け巡り、体が軽くなった。
おまけに力も湧いてくる。今の自分は無敵なんだ。そんな気分にさせてくれた。
そんな状態で何をするのか。とっても地味なことだけど、凄いことだ。
縛り上げた盗賊達を片手で担ぎ上げると、少女はドン引きする。
「な、なにをしているんですか!? それにその魔法は強化系ですよね」
「強化系? ちょっと違うかな。でもなにをしているのかは分かってくれるよね?」
「分かってくれるってなにをです?」
「決まっているでしょ。この人達を正式に逮捕して貰うために街に連れて行って貰うんだよ。君達が」
俺は理解ができていない少女に口走った。
するとドン引きした上で首を捻っていた少女が驚きあぐねる。
目を見開きとんでもない速度で瞬きをすると、「えっ、は、ええっと?」とあたふたしていた。
「ど、どういうことですか!? わ、私達を使うってことですか?」
「そうだよ。ここまで逃げて来たってことは、人間の足じゃないんだろ。ってことは、動物の脚ってこと。逆に言えば、その格好的に貴族かなにかかな? つまり、近くに盗賊に襲われた馬車があるってことだ!」
俺の見解はあまりにも少女の格好と行動を基に立てた仮設だった。
けれど如何やら概ね当たっているらしい。
少女は一瞬たじろくと、か細く震えてしまう。
「た、確かに私達は馬車に乗っていて襲われました」
「そうなんだ。それじゃあ早く行こうよ。君も家族が心配だろ?」
「もちろんです!!」
少女は堂々とした態度で答えた。
盗賊に襲われた家族の身が心配で仕方がない。
全身の震えが一瞬にして収まると、フードの奥の表情がキリッと凛々しくなった。
「は、早く行きましょう。え、えっと……」
「俺は聖だよ」
「ヒジリさん。あの、その、私の家族を……」
「できるだけのことはするつもり。とりあえず最短距離で向かおうか」
「お、お願いします! 私の家族を、私の家族のことを助けてください」
少女は今一度頭を下げると、再び森の中を進むことになった。
しかしもう追われはしない。自分を追って来た盗賊は既に倒され、今成すべきは家族の安全確保のみ。
つまらない感情に縛られなくなった少女の歩を止めることは誰にもできず、ましてや俺もする気は無く、縛り上げた盗賊達を抱えながら森の中をひた歩くのだった。
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