VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇533 VSボーンドラゴン4

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「アイツら、なにやってるんだ?」

 Nightは、アキラだけが必死にボーンドラゴンを相手にし、フェルノと雷斬がサボっている姿を見てしまう。
 あまりにもおかしな状況だ。
 一体なにがあったのか? 隣でしゃがみ込むベルと話していると、フェルノからメッセージが送られる。

「ん、なんだ?」

[なんかさー、アキラだけ襲われてるんだけどー]

「ん?」

 Nightは首を捻る。
 あまりにも情報が無さすぎる。
 一体何が起きているのか、メッセージを追加で送ろうと考えるが、急な行動パターンの変化だ。アキラが何かした、もしくは全体で何か起きた。
 あらゆる可能性を、高速で脳内処理すると、一つの可能性に辿り着く。

「まさかな……」
「まさかって?」

 隣でベルが訊ねる。
 あまりにも突飛で、可能性の一つでしかない。
 しかし、Nightには確信がある。
 それはボーンドラゴンの執拗な動きと、アキラにだけ執着している態度。
 どちらもボーンドラゴンが何かを求めている・・・・・・・・ようにしか見えないのだ。

「私の推測だが……これはチャンスだぞ」
「チャンスって、アキラが襲われてるのに、そんな悠長に構えてていいの?」
「いい訳は無い。とは言えチャンスだ」

 Nightは隠れるのを一瞬止める。
 アキラに聞こえるよう、残り少ないHPを使った。
 【ライフ・オブ・メイク】で生み出したのは簡易的なメガホンで、電子部品は何一つ使われていない。

「はっ! アキラ、お前が持っている骨を、コアに向かって投げろ!」

 Nightの声が響き渡る。
 拡声器代わりのメガホンを通して、部屋中の壁に声が反射。
 戦い続けるアキラの耳にも、何とか届くと、「えっ?」となる。

「今の声、Night? なにー、なにか言った?」
「いいか、よく訊け! お前の持っている骨は、想像通り、ボーンドラゴンの体の一部だ。それを持っている限り、お前が襲われ続ける」
「ええっ、なんかヤバそうなこと言ってる!?」

 Nightはとにかく声を掛け続ける。
 するとアキラの耳にも断片的に伝わった。
 目を見開くと、自分の手の中に収まったボーンドラゴンの骨の欠片がカタカタ動く。

「もしかして、この骨を取り返そうとしてる?」

 アキラは頭の中で想像する。
 ボーンドラゴンの全体像が浮かび、体の一部から骨が抜けた。
 そのせいで滑らかな動きができず、ギコちない動きになってしまったのだ。
 なんだか悪いことした気分になるが、Nightは構わず続ける。

「だがこれはチャンスだ。その骨をコアに向かって投げろ!」
「んん!? 今物騒なこと言わなかった?」

 アキラは一瞬立ち止まる。
 するとボーンドラゴンは口を大きく開き、アキラを食べようとする。
 【キメラハント】:【月跳】で何とか高く躱すと、ボーンドラゴンの攻撃を掻い潜った。

「この骨をコアに投げろって、それでなにになるの?」

 アキラは頭の中で考える。
 しかし考えている余裕はここに無い。
 会議室と現場は違うんだ。
 無駄なものに割く意識は無く、すぐに意識を切り替える。

「よっと! 投げてどうするの!」

 アキラは更に声を上げた。
 するとNightの耳に届き、ニヤリと笑みを浮かべた。
 想ったような展開になり、チャンスが巡る。
 吉凶の変化に感謝しつつ、Nightはメガホンに口を当てた。

「投げたらすぐに戻って来い」
「ど、どうして!?」
「どうしてもだ。死にたくないなら、早くしろ」

 Nightは一方的だった。
 けれどアキラはいつものことだと割り切る。
 けれど、そうもできない。なにせ、ボーンドラゴンの攻撃は、あまりにも執拗だ。

「こんな状況でどうすれば……」

 せめて注意を逸らして欲しい。
 アキラはひたすら攻撃を躱し続ける。
 けれどそれも限界が近い。ボーンドラゴンの動きに翻弄される中、Nightは別に指示を出す。

「ベル、矢で注意を惹けないか?」
「私の矢で? 分かったわ」

 ベルは弓を構えた。
 矢を番えると、弦を引き絞る。
 狙いはボーンドラゴンの視界。ほんの一瞬でいいから注意を逸らす。
 そのために限界まで引き絞った弦を離すと、矢は勢いよく飛んだ。

シュン!

 気持ちの良い空気を切る音。
 一瞬にしてボーンドラゴンは矢に気を取られる。
 視線が一瞬奪われると、アキラに余裕ができた。

「今だ!」

 アキラは投げる態勢に入った。
 けれどボーンドラゴンはアキラのことを長い尾で狙う。
 注意を削いでも、本能には忠実だ。

「させませんよ。【雷鳴】!」

 雷斬は全身に蒼白い光を纏う。
 雷をその身に宿すと、勢いを付けて床を蹴る。
 瞬く間も無い。ボーンドラゴンを切り込むと、尾の軌道を変えた。

「アキラさん、お願いします!」
「ありがとう、雷斬。それっ!」

 アキラはコアに向かって骨の欠片を投げ込む。
 弧を描いてコアへと吸い込まれていく。
 ボーンドラゴンも本能には逆らえず飛び込んでいくと、コアへと自分からぶつかった。

「ボンギャラァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 ボーンドラゴンの顎がコアに触れた。
 その瞬間、コアからとんでもない熱が溢れる。
 ピカッと視界を潰すような光が放たれ、アキラは動けなくなった。

「な、なにっ?」

体が硬直して動けない。
 否、視界が潰されて見えない。
 暗闇の前の朝焼けに包まれると、意識だけが高速で走る。

「もしかして、コレ、終わった?」

 アキラは悟ってしまった。
 “投げたらすぐに戻ってこい”とは、つまり“振り返ろ”ってことだ。
 私は光を見てしまった。
 これは多分、終わりだと答えが見つかると、コアから爆発音が聞こえて来た。
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