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◇542 隠し通路が最大の敵

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 アキラたちのイベントは二日目。
 今回は一番最後、つまりトリを務めることになった。
 だからここで決めないと負けになる。
 そんなの嫌だ。ここは頑張り所だとして、まずは隠し部屋から出る。

「よいしょ、よいしょ」
「結構狭いねー」
「そうか? フェルノよりも大変な奴がいる手前で、そんなことが言えるのか?」

 アキラたちは最初にして最大の壁を前にしていた。
 そう、隠し部屋から外に出るんだ。

「ううっ、腰が……」
「大丈夫ですか、ベル。もう少し背中を反って……あっ!」
「ちょっと雷斬、頭ぶつけないでよ! 埃が落ちて……くしゅん!」
「すみません皆さん」
「「「大丈夫だよ」だ」-」

 雷斬とベルの二人が一番困っていた。
 背が少し高いせいか、頭や腰が引っかかる。
 そのせいもあり、狭い通路をただでさえ横になって。カニのように歩かないとダメなのに、余計に辛い思いをしていた。

「クソッ、このままだと後十分は掛かるぞ」
「えー、そんなに掛かるの!?」
「当り前だ。目の前の通路を見てみろ」
「……見たくないです」

 そう、これが第二の壁だ。
 隠し部屋とを繋ぐ狭くて細い隠し通路。
 何処まで行っても終わりが見えなくて、しかも真っ直ぐじゃないせいもあり、アキラたちは窮地を迎えていた。

「みんな、急ごう。きっと今頃戦ってるよ」
「まあ、私たちは戦ってくれていた方が好都合なんだが……」
「それじゃあ急がないと。みんな、少し無理してでも行こう」

 アキラは急ぐことを提案した。
 それを受けてか、Nightとフェルノはコクリと首を縦に振る。
 ゆっくりだけど慎重に、それでも素早く足を動かして隠し通路を進んだ。

「ええ、分かっていますよ。そうですよね、ベル」
「もちろんよ。それじゃあ急ぐわよ、雷斬……あっ、痛い! 痛い痛い痛い痛い、腰が、腰が引っ掛かって……」
「大丈夫ですか、ベル!? 今助けて……あっ、こ、これは……」
「ちょっと、雷斬。腕が引っ掛かってるじゃない。無駄に筋肉付けてるからでしょ!?」
「無駄ではありませんよ。ですがこれは……」

 雷斬とベルも急ごうとした。
 だけど背が高くて体格も良いおかげか、そのせいか、体が所々引っ掛かる。
 そのせいで上手く進めず、二人して詰まっていた。

「なにしているんだ、アレは」
「あはは、戦ってるねー」
「二人共急がなくていいからね。ゆっくりでいいからね」
「「急ぎます」ぐわよ!」

 アキラたちは頑張っている雷斬とベルを応援した。
 二人はゆっくりでいい。そう思ったけど、逆に急かしてしまったらしい。
 壁に手を添わせ、ゆっくりだけど素早く進もうとするが、その度に腰やお尻が当たって互いに邪魔をし合っていた。

「ちょっと雷斬、何処触ってるのよ!」
「何処も触ってはいませんが、ああ、すみません、ベル。刀の柄が当たっていました」
「ちょっと気を付けてよね。結構いたいんだから」
「分かりました。うわぁ!?」
「こ、今度はなに? 急に暴れないでよ」
「すみません、ベル。ですが今のはベルのせいでもあるんですよ。矢筒から飛び出した弓矢が当たりそうだったので」
「えっ、それは悪かったわね」
「大丈夫ですよ、ベル。ですが急ぎましょうか」

 二人だけで繰り広げる寸劇に、アキラたちは目を奪われる。
 ただ見ているだけなのにハラハラして面白い。
 だけど虚ろな目になってぼんやり眺めると、なんだか可愛いものを見ているけど、流石にどうしようもない怒りが湧いた。

「なんだ、私たちはなにを見せつけられているんだ」
「気にしちゃダメだよ、Night」
「分かっている。分かっているんだが……これだけ騒いでも、誰も来ないんだな」
「そうだね。誰も来ないね」

 これだけ騒がしいのに、誰も気が付かない。
 他の味方プレイヤーも助けてくれない。敵プレイヤーも近付かない。
 完全に孤立した世界が存在していた。

「はぁ、とにかく進むぞ」
「うん、雷斬、ベル、ゆっくりでいいから追い付いてね」
「「あっ、待って」ください!」

 アキラたちは雷斬とベルを置いて行く。
 とにかく一刻も早く、隠し通路を出ないとダメだ。

 ボロッ……ガタンガタンガタン!!!

「うわぁ、埃が落ちて……うわぁ」
「ぐはっ、ぐはっぐはっ! うぇー、埃が……」

 アキラとフェルノは咳き込んだ。
 急に狭い隠し通路が揺れ動いた。
低い天井からたくさんの埃が落ちて来ると、ついつい吸い込んでしまった。

「マズいな。耐久値の低い要塞だ」
「それってなにか危ないの?」
「当り前だ。これ以上暴れられると、隠し通路自体が塞がれるぞ」
「ええっ、それじゃあ早く進まないと……」
「「うわぁ、埃が、がはっがはっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」

 アキラたちが急ぐ中、雷斬とベルの叫び声が上がった。
 まだやってるよ。Nightは表情を歪める。
 
「やれやれ」
「まぁまぁ、背が高いんだから仕方ないよ」
「そうそう。私たちには縁のない話だよ」

 それくらいしか言いようがない。
 だからだろうか、つい溜息を吐露すると、アキラたちは隠し通路を進んだ。
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