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◇537 吸炎竜VS白雪兜5
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壁の上で様々なスキルの応酬が繰り広げられる中、フェスタは考えていなかった。
後はタイミングだけ。そう、タイミングさえ合えば倒せる。
そう確信しているからこそ、ジッと機を窺う。
「撃て撃て、ドンドン撃て!」
「クールタイムに入るまで続けるのよ!」
「ここで終わらせるかよ!」
「怖い、キモい、どっか行けー!」
多くのプレイヤーが頑張ってくれている。
炎や水、風に雷。属性攻撃の嵐に飲まれるコーカサス。
その動きは確実に削られ、押し返せてはいないけど、動きを制限していた。
とは言え、結局その程度だ。
付け焼刃にしかなっていない上に、プレイヤーたちは疲弊する。
代わりにコーカサスのHPも少しずつ削れ、エナメルを剥がしてくれていた。
「お、おい、まだかよ?」
「そうよ、このままじゃ……」
「まぁまぁ、ちょっと待ってよー。タイミングは、多分計ってくれてるからさ-」
フェスタは壁とコーカサスの丁度間を凝視する。
きっと、いや、確実に仕掛けてくる。
ニヤリと待っていると、壁の上から黒い小さな影が投げられるのを見た。
「ん、来た!」
「「「えっ? やぁー!!!」」」
フェスタは一瞬目を瞑ると、壁を思いっきり蹴った。
耐久値が削れても仕方がない一撃。
その反動を利用して、コーカサスへと飛び掛かる。
ふと瞼を開けると、まだ空は白い。
さっきまで広がっていた空模様は一瞬にして白亜に支配されている。
それに興じて、プレイヤーもコーカサスも動きを止めると、絶好のチャンスだった。
「ありがとー、Night。タイミング完璧だよー」
フェルノは拳を突き出して、コーカサスの裏側を攻撃する。
六本の脚がうねる中、頭と胸、その間辺りを狙った。
炎に燃える拳は【熱量吸動】で強化されている。
いくら硬い体でも、一番露出していて、エナメルも削られている今、防ぐなんてできなかった。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
渾身の一撃が炸裂すると、フェルノは勢い余ってコーカサスの体を貫く。
すると声も無く、全身を軋ませながら、振動波を送った。
壁の上に居たプレイヤー達は視界を奪われ、謎の振動波に体を揺らされると、平気で気持ち悪くなり、手と足を付けグロッキーになる。
けれど何が起こったのかは全く掴めず、目を開ける頃には……
「ううっ、フェルノ!?」
「倒せたんだな、ううっ」
「がーはっはっはっ! なにが起こったのかは分からんが、無事に倒せてなによりだ!」
宙に浮かんでいたのはフェルノだけだった。
コーカサスの体は粒子へと変換され、ゆっくり落ちて行きながら消滅する。
それに呼応するかのように、モンスターの攻撃の手も緩む。
如何やらイベントの第一フェーズは終了のようで、爆音のアナウンスが鳴り響くのだった。
「ふぅ、なんとかなったよー」
フェルノは翼をはためかせ、アキラたちの下へと戻る。
その体は色んな液体が付いていて、コーカサスのエナメルまでくっ付いていた。
「お疲れさま、フェルノ。えーっと、えっと」
「ん? どうしたのー、アキラ。それより肩貸して」
「えっ!? ああ、うん」
アキラは絶妙に嫌な顔をした。
それもその筈、フェルノの体は汗まみれで汚れている。
もちろん汗自体は勲章だ。なんにも嫌じゃないけれど、全身に奇妙な液体やエナメル質がくっ付いていて、なにをしたのか想像ができてしまうのが嫌だった。
「うえっ、きっつ」
「フェルノ、お疲れ様。流石に疲れたよね?」
「うんうん、本当にねー。けーきょく、私しか近接戦しなかったよねー」
フェルノは少しだけボヤいてしまった。
けれどそれは事実で、援護射撃やナイスアシストは合ったものの、最後まで飛び続けていたのはフェルノ一人だけ。
そのせいで疲弊してしまい、もはや脳が疲れ切っていた。
「フェルノ、今日はもう終わりだ。お前はさっさと帰って寝ろ」
「Night-、それ酷くない?」
「酷くはない。いいな、私たちの出番は終わりだ。後は次の奴らに任せるぞ」
Nightは私たちにそう言った。
実際、周りを見回せばプレイヤーが次々消えて行く。
如何やらログアウトしたり、強制テレポートで帰っているらしい。
「本当だ、みんな帰ってる……あっ、そうだ!」
私は忘れる前に助けてくれた獣爪の帝國の人たちにお礼を言おうと思った。
キョロキョロ視線を配り、周りを見回す。
すると丁度帰って行く所だった。
「あっ、ちょっと待って!」
「ん? ああ、さっきの継ぎ接ぎの……無事終わったな」
「はい、あの、ありがとうございました!」
アキラはフェルノを助けてくれた獣爪の帝國にお礼を伝えた。
感謝を伝えると、獣爪の帝國の人たちは微笑む。
「そんなのはいいさ。とにかく全員無事だ。俺たちは、それぞれができることをしたってころだろ?」
「そうよ。それにまだイベントは終わってないわ」
「そう言うことだぜ。それじゃあな」
簡単な会釈だけを交わし、獣爪の帝国はこの場から去ってしまった。
如何やら先にログアウトしてしまったらしい。
アキラは少しあっさりとした幕引きになったけど、とりあえずお礼が言えてホッとした。
「まだイベントは終わってない、か。気を引き締めないと!」
そう、イベントはまだ終わっていない。
アキラも気合を入れ直すと、次のフェーズへ向けて体調を整えることを決めた。
後はタイミングだけ。そう、タイミングさえ合えば倒せる。
そう確信しているからこそ、ジッと機を窺う。
「撃て撃て、ドンドン撃て!」
「クールタイムに入るまで続けるのよ!」
「ここで終わらせるかよ!」
「怖い、キモい、どっか行けー!」
多くのプレイヤーが頑張ってくれている。
炎や水、風に雷。属性攻撃の嵐に飲まれるコーカサス。
その動きは確実に削られ、押し返せてはいないけど、動きを制限していた。
とは言え、結局その程度だ。
付け焼刃にしかなっていない上に、プレイヤーたちは疲弊する。
代わりにコーカサスのHPも少しずつ削れ、エナメルを剥がしてくれていた。
「お、おい、まだかよ?」
「そうよ、このままじゃ……」
「まぁまぁ、ちょっと待ってよー。タイミングは、多分計ってくれてるからさ-」
フェスタは壁とコーカサスの丁度間を凝視する。
きっと、いや、確実に仕掛けてくる。
ニヤリと待っていると、壁の上から黒い小さな影が投げられるのを見た。
「ん、来た!」
「「「えっ? やぁー!!!」」」
フェスタは一瞬目を瞑ると、壁を思いっきり蹴った。
耐久値が削れても仕方がない一撃。
その反動を利用して、コーカサスへと飛び掛かる。
ふと瞼を開けると、まだ空は白い。
さっきまで広がっていた空模様は一瞬にして白亜に支配されている。
それに興じて、プレイヤーもコーカサスも動きを止めると、絶好のチャンスだった。
「ありがとー、Night。タイミング完璧だよー」
フェルノは拳を突き出して、コーカサスの裏側を攻撃する。
六本の脚がうねる中、頭と胸、その間辺りを狙った。
炎に燃える拳は【熱量吸動】で強化されている。
いくら硬い体でも、一番露出していて、エナメルも削られている今、防ぐなんてできなかった。
「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
渾身の一撃が炸裂すると、フェルノは勢い余ってコーカサスの体を貫く。
すると声も無く、全身を軋ませながら、振動波を送った。
壁の上に居たプレイヤー達は視界を奪われ、謎の振動波に体を揺らされると、平気で気持ち悪くなり、手と足を付けグロッキーになる。
けれど何が起こったのかは全く掴めず、目を開ける頃には……
「ううっ、フェルノ!?」
「倒せたんだな、ううっ」
「がーはっはっはっ! なにが起こったのかは分からんが、無事に倒せてなによりだ!」
宙に浮かんでいたのはフェルノだけだった。
コーカサスの体は粒子へと変換され、ゆっくり落ちて行きながら消滅する。
それに呼応するかのように、モンスターの攻撃の手も緩む。
如何やらイベントの第一フェーズは終了のようで、爆音のアナウンスが鳴り響くのだった。
「ふぅ、なんとかなったよー」
フェルノは翼をはためかせ、アキラたちの下へと戻る。
その体は色んな液体が付いていて、コーカサスのエナメルまでくっ付いていた。
「お疲れさま、フェルノ。えーっと、えっと」
「ん? どうしたのー、アキラ。それより肩貸して」
「えっ!? ああ、うん」
アキラは絶妙に嫌な顔をした。
それもその筈、フェルノの体は汗まみれで汚れている。
もちろん汗自体は勲章だ。なんにも嫌じゃないけれど、全身に奇妙な液体やエナメル質がくっ付いていて、なにをしたのか想像ができてしまうのが嫌だった。
「うえっ、きっつ」
「フェルノ、お疲れ様。流石に疲れたよね?」
「うんうん、本当にねー。けーきょく、私しか近接戦しなかったよねー」
フェルノは少しだけボヤいてしまった。
けれどそれは事実で、援護射撃やナイスアシストは合ったものの、最後まで飛び続けていたのはフェルノ一人だけ。
そのせいで疲弊してしまい、もはや脳が疲れ切っていた。
「フェルノ、今日はもう終わりだ。お前はさっさと帰って寝ろ」
「Night-、それ酷くない?」
「酷くはない。いいな、私たちの出番は終わりだ。後は次の奴らに任せるぞ」
Nightは私たちにそう言った。
実際、周りを見回せばプレイヤーが次々消えて行く。
如何やらログアウトしたり、強制テレポートで帰っているらしい。
「本当だ、みんな帰ってる……あっ、そうだ!」
私は忘れる前に助けてくれた獣爪の帝國の人たちにお礼を言おうと思った。
キョロキョロ視線を配り、周りを見回す。
すると丁度帰って行く所だった。
「あっ、ちょっと待って!」
「ん? ああ、さっきの継ぎ接ぎの……無事終わったな」
「はい、あの、ありがとうございました!」
アキラはフェルノを助けてくれた獣爪の帝國にお礼を伝えた。
感謝を伝えると、獣爪の帝國の人たちは微笑む。
「そんなのはいいさ。とにかく全員無事だ。俺たちは、それぞれができることをしたってころだろ?」
「そうよ。それにまだイベントは終わってないわ」
「そう言うことだぜ。それじゃあな」
簡単な会釈だけを交わし、獣爪の帝国はこの場から去ってしまった。
如何やら先にログアウトしてしまったらしい。
アキラは少しあっさりとした幕引きになったけど、とりあえずお礼が言えてホッとした。
「まだイベントは終わってない、か。気を引き締めないと!」
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