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◇536 吸炎竜VS白雪兜4
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「さてと、どうするかなー」
壁に張り付いたフェルノは考えていた。
ここから如何やって戦いに戻ろうか。
ボロボロになりながらも、信じてくれている仲間のため、フェルノはそればかり考えていた。
「とは言ってもなー、こんな状態じゃ……」
正直、アイテムも節約したい。
と言うより、ある程度しか思って来ていない。
インベントリの中に入っている回復ポーションの数にも限りがあり、万全を期すのは難しかった。
「なんとか回復できればなー」
そんな愚痴を吐いてしまった。
すると壁の上の方からボロリと破片が落ちる。
危ないなと内心で思う中、これだけの振動があればそれも仕方がない。
「もしかして、これでやられたりして?」
そんなフラグさえ立ててしまいそうな中、今度はズサァーと滑るような音が聞こえた。
何か落ちてきている? そう思いふと頭を上にする。
「えっ!?」
フェルノは声を上げてしまった。
ロープを使い、壁をゆっくり下りて来るプレイヤーが居た。
しかも自分のすぐ上からで、フェルノは警戒してしまった。
「な、なにこれ? ちょっと待ってよ、流石にさー」
フェルノは裏切り者かと思った。
あくまでも他のゲームや漫画の中でしかないけれど、こういう場面って裏切り者が出そうな雰囲気がある。
だから身を強張らせたのだが、如何やらそんなことは無いらしい。
「おっ、見つけたぞ!」
「ちゃんと真下にいたわね」
現れたのは四人の男女。
全員獣の姿をしていて、フェルノの下にやって来る。
「えっと、誰?」
「俺たちは獣爪の帝國っていうギルドだ。モンスターに攻撃されて、動けないプレイヤーたちを助けて回ってる」
「さっき貴女があのコーカサスに挑んで落下していく姿が見えたのよ。だからこうして助けに来たわ」
「ってこと、立てるか?」
何が何やらさっぱりだったが、如何やら助けに来てくれたらしい。
フェルノにはそこまでが伝わると、とりあえず状況を伝えた。
「立てるよ? でも、ポーションが切れてて」
「ポーションか? それならこれでも飲んでくれ」
そう言うと、ヴォロフはポーションの入ったガラス瓶を手渡す。
フェルノは早速受取って飲んでみると、もの凄く不味かった。
「ゲホッ、ゲホッゲホッ! なにこれー?」
「悪いな、俺たちが持っている回復ポーションはそんなに品質が良くないんだ」
「最低限の回復が限界なの」
「ううっ、Nightやソウラさんが用意してくれたポーションって凄いんだー」
「ん? コレが普通だろ」
「うん、ポーションって苦いから、飲むよりも効果が薄いけど、自分に掛けて使うよね」
フェルノは回復ポーションを飲んだはいいが、あまりのまずさに吐き気がした。
それでも咳き込みながら頑張って飲むと、自分たちが普通じゃないことに気が付かされる。
繋がりの大事さを改めて痛感し、フェルノは口元に付いた回復ポーションの不純物を拭う。
「HPもそんなに回復してないけどさ、やるしかないねー」
「やる? まさかコーカサスに挑むのか?」
「当り前だよー。私がやらなくてどうするのー?」
あまりにも危険極まりなかった。
正直トラウマ必至の一撃を喰らった。
にもかかわらず、フェルノは再び飛ぼうとする。その豪快さに、獣爪の帝國は震えた。
「マジかよ。アンタ、どんだけ仲間想いなんだ」
「そうよ。逆に怖いわ」
「あはは、私は私がした約束を守るだけだよー。それじゃあ……どうやって倒そうか?」
正直、まだ決め手に欠けていた。
戦うのは確定しているが、コーカサスを倒せる秘策も無い。
一人で全てを担うのは不可能。それを解っているからこそ、フェルノの体が踏み止まる。
「やっぱり、ダメ?」
「チッ、無理だって分かってるなら助けた意味無いだろ」
「ごめんごめん。でもさ、私一人じゃ相当……およ?」
フェルノは威勢の良さとは裏腹に動けない自分がいることを認識する。
頭を掻きながら、申し訳なさを若干引き摺る。
けれどその時、壁の上から幾つもの攻撃がコーカサスを襲っていることに気が付く。
バーン!
バンバン!
ヒュー、ゴロゴロゴロ、ドッシャーン!!
色んな効果音とエフェクトが飛び交う。
一直線に放たれる攻撃の数々は、このGAMEに存在しない魔法の様。
うっかり見惚れると、壁の上から声がする。
「私たちも続け! あのモンスターをこれ以上近付けさせるな!」
「ここまでやったんだ。俺たちだって意地を見せろ!」
「「「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
戦意を喪失していないプレイヤー達が果敢に応戦してくれていた。
誰もこのイベントを早々に終わらせたくないんだ。
一致団結。まさにCUの醍醐味を目の当たりにすると、フェスタは秘策なんて要らないと悟った。だって、秘策はここにあるからだ。
「そっかー。みんな頑張ってるんだー。それじゃあ、私もやるしかないねー……【吸炎竜化】」
フェルノは種族スキルを使った。
体の一部を竜へ変化させるも、その姿はいつもとは異なる。
より凛々しく、より勇ましく。竜をその身に宿したようで、発達した腕と足、それから背中の翼がはためく。
「お、おい、急になんだ?」
「さっきと少し違うわよ?」
「もしかして進化かな?」
「進化だと!? そんな奴、滅多にいないぞ」
獣爪の帝國は驚いていた。
まさか目の前で進化したプレイヤーを見るとは思わなかった。
その珍しさは奇跡の産物。フェスタ外として臨んだ結果の結晶だった。
「獣爪の帝國だっけ、ありがとー。それじゃあ後は任せよ」
「ま、任せる?」
「本当に良いのね? 満足に動けないわよ」
「もっちろん、大丈夫だよー。勝負は一瞬で決めるからさー」
フェスタはそう宣言すると、コーカサスを狙い澄ます。
目指すはある一点のみ。コーカサスを仕留めるための一撃。
それをその身に宿すと、ニヤッと笑むのだった。
壁に張り付いたフェルノは考えていた。
ここから如何やって戦いに戻ろうか。
ボロボロになりながらも、信じてくれている仲間のため、フェルノはそればかり考えていた。
「とは言ってもなー、こんな状態じゃ……」
正直、アイテムも節約したい。
と言うより、ある程度しか思って来ていない。
インベントリの中に入っている回復ポーションの数にも限りがあり、万全を期すのは難しかった。
「なんとか回復できればなー」
そんな愚痴を吐いてしまった。
すると壁の上の方からボロリと破片が落ちる。
危ないなと内心で思う中、これだけの振動があればそれも仕方がない。
「もしかして、これでやられたりして?」
そんなフラグさえ立ててしまいそうな中、今度はズサァーと滑るような音が聞こえた。
何か落ちてきている? そう思いふと頭を上にする。
「えっ!?」
フェルノは声を上げてしまった。
ロープを使い、壁をゆっくり下りて来るプレイヤーが居た。
しかも自分のすぐ上からで、フェルノは警戒してしまった。
「な、なにこれ? ちょっと待ってよ、流石にさー」
フェルノは裏切り者かと思った。
あくまでも他のゲームや漫画の中でしかないけれど、こういう場面って裏切り者が出そうな雰囲気がある。
だから身を強張らせたのだが、如何やらそんなことは無いらしい。
「おっ、見つけたぞ!」
「ちゃんと真下にいたわね」
現れたのは四人の男女。
全員獣の姿をしていて、フェルノの下にやって来る。
「えっと、誰?」
「俺たちは獣爪の帝國っていうギルドだ。モンスターに攻撃されて、動けないプレイヤーたちを助けて回ってる」
「さっき貴女があのコーカサスに挑んで落下していく姿が見えたのよ。だからこうして助けに来たわ」
「ってこと、立てるか?」
何が何やらさっぱりだったが、如何やら助けに来てくれたらしい。
フェルノにはそこまでが伝わると、とりあえず状況を伝えた。
「立てるよ? でも、ポーションが切れてて」
「ポーションか? それならこれでも飲んでくれ」
そう言うと、ヴォロフはポーションの入ったガラス瓶を手渡す。
フェルノは早速受取って飲んでみると、もの凄く不味かった。
「ゲホッ、ゲホッゲホッ! なにこれー?」
「悪いな、俺たちが持っている回復ポーションはそんなに品質が良くないんだ」
「最低限の回復が限界なの」
「ううっ、Nightやソウラさんが用意してくれたポーションって凄いんだー」
「ん? コレが普通だろ」
「うん、ポーションって苦いから、飲むよりも効果が薄いけど、自分に掛けて使うよね」
フェルノは回復ポーションを飲んだはいいが、あまりのまずさに吐き気がした。
それでも咳き込みながら頑張って飲むと、自分たちが普通じゃないことに気が付かされる。
繋がりの大事さを改めて痛感し、フェルノは口元に付いた回復ポーションの不純物を拭う。
「HPもそんなに回復してないけどさ、やるしかないねー」
「やる? まさかコーカサスに挑むのか?」
「当り前だよー。私がやらなくてどうするのー?」
あまりにも危険極まりなかった。
正直トラウマ必至の一撃を喰らった。
にもかかわらず、フェルノは再び飛ぼうとする。その豪快さに、獣爪の帝國は震えた。
「マジかよ。アンタ、どんだけ仲間想いなんだ」
「そうよ。逆に怖いわ」
「あはは、私は私がした約束を守るだけだよー。それじゃあ……どうやって倒そうか?」
正直、まだ決め手に欠けていた。
戦うのは確定しているが、コーカサスを倒せる秘策も無い。
一人で全てを担うのは不可能。それを解っているからこそ、フェルノの体が踏み止まる。
「やっぱり、ダメ?」
「チッ、無理だって分かってるなら助けた意味無いだろ」
「ごめんごめん。でもさ、私一人じゃ相当……およ?」
フェルノは威勢の良さとは裏腹に動けない自分がいることを認識する。
頭を掻きながら、申し訳なさを若干引き摺る。
けれどその時、壁の上から幾つもの攻撃がコーカサスを襲っていることに気が付く。
バーン!
バンバン!
ヒュー、ゴロゴロゴロ、ドッシャーン!!
色んな効果音とエフェクトが飛び交う。
一直線に放たれる攻撃の数々は、このGAMEに存在しない魔法の様。
うっかり見惚れると、壁の上から声がする。
「私たちも続け! あのモンスターをこれ以上近付けさせるな!」
「ここまでやったんだ。俺たちだって意地を見せろ!」
「「「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
戦意を喪失していないプレイヤー達が果敢に応戦してくれていた。
誰もこのイベントを早々に終わらせたくないんだ。
一致団結。まさにCUの醍醐味を目の当たりにすると、フェスタは秘策なんて要らないと悟った。だって、秘策はここにあるからだ。
「そっかー。みんな頑張ってるんだー。それじゃあ、私もやるしかないねー……【吸炎竜化】」
フェルノは種族スキルを使った。
体の一部を竜へ変化させるも、その姿はいつもとは異なる。
より凛々しく、より勇ましく。竜をその身に宿したようで、発達した腕と足、それから背中の翼がはためく。
「お、おい、急になんだ?」
「さっきと少し違うわよ?」
「もしかして進化かな?」
「進化だと!? そんな奴、滅多にいないぞ」
獣爪の帝國は驚いていた。
まさか目の前で進化したプレイヤーを見るとは思わなかった。
その珍しさは奇跡の産物。フェスタ外として臨んだ結果の結晶だった。
「獣爪の帝國だっけ、ありがとー。それじゃあ後は任せよ」
「ま、任せる?」
「本当に良いのね? 満足に動けないわよ」
「もっちろん、大丈夫だよー。勝負は一瞬で決めるからさー」
フェスタはそう宣言すると、コーカサスを狙い澄ます。
目指すはある一点のみ。コーカサスを仕留めるための一撃。
それをその身に宿すと、ニヤッと笑むのだった。
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