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◇535 吸炎竜VS白雪兜3
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助けに行くって如何すればいいのか。
インベントリの中からロープを取り出すアキラだったが、助けに行く暇がない。
「アキラ、後ろだ!」
「えっ!? そらぁ!」
壁と要塞を狙うモンスターたちの群れ。
一瞬減っていたにもかかわらず、時間経過でまた増え始めた。
如何やら最終ウェーブに突入したようで、モンスターたちの攻撃は激しさを増してくる。
「これじゃあ助けに行けないよ!」
「そうだな。この最前線で、私たちが抜けるとなると……」
「すぐに瓦解するわね!」
正直、継ぎ接ぎの絆の貢献は大きかった。
率先して前線を張ると、残ったプレイヤーたちと共に、何とか食い止めている状態。
心が折れてしまったプレイヤーや疲弊して回復待ちのプレイヤー。
彼ら彼女らを守りながらの戦いは困窮していた。
人手が圧倒的に足りていない。
にもかかわらず、コーカサスはフェルノの邪魔が無くなったことで悠々と飛んでいる。
今にも壁に突撃してきそうで、もはや絶体絶命だった。
「クソが! なんとかならんのか!?」
「フェルノを救出できれば、少しは時間が稼げるだろうが……」
「そんな暇ないよ! もう、どうしたらいいのかな?」
アキラたちも手一杯だった。
かと言って他のプレイヤーたちも、ほとんどモンスターと交戦している。
持ち場を離れられる状況ではなく、苦汁を舐めさせられるも、背後から声が聞こえた。
「俺たちが行くぜ」
振り返ると、そこには四人のプレイヤーが居た。
恐らく何らかのギルドで、全員特徴的な見た目をしていた。
「獣?」
「おうよ! 俺たちは獣人ギルド、獣爪の帝國だ」
「えっと、その獣爪の帝國の人たちがどうしたの?」
「こんな状況だ、端的に言うぜ。アンタたちのギルド、凄いな」
突然褒められてしまった。
アキラは目を丸くして驚くが、Nightとベルは高圧的。
煙たがると、戦いながら軽くあしらう。
「なんだ、そんなことか。悪いが、茶化すぐらいなら何処かに行っててくれ。邪魔だ」
「そうよ、この状況見て分からないの?」
「二人共落ち着いて」
アキラはなんとか場を和ませようとする。
こんな挨拶最低だ。
アキラは代表して謝るが、獣爪の帝國の人たちは分かり切っていたらしい。
「噂通りだな。全然いいぜ、俺たちは戦えないからな」
そう言うと、自分たちの体が傷だらけなことを伝える。
もはや戦えるような余力は残っていない。
アバターの修復が間に合っておらず、動くだけでもやっとだった。
「大丈夫、たくさん怪我してるけど!?」
「コレが普通なの。貴女たちみたいに、ほとんどダメージを受けない子の方が珍しいわ」
「ううっ、痛いよ……」
「クソ、やられちまった。ヴォロフ、俺らもう動けないぜ? さっきの炎竜助けたらもう限界だ」
「分かってる。だからこそ、ここに来たんだ」
獣爪の帝国の人たちが話し合っていた。
その会話を断片的に噛み砕くと、アキラはハッとなる。
「もしかして、フェルノのこと!?」
「おうよ。俺たちは探索系ギルドだ。こういう時、戦いには参加できないけど、傷付いた奴を優先的に助けるのが仕事だろ? それくらいはさせてくれ」
ギルドマスターのヴォロフは親指を自分たちに向けて言い放った。
探索系ギルドの役割。それは随時、的確な索敵と、動けない仲間の救出。
そう認識しているようで、チラホラ似たようなことをしているプレイヤー達が居た。
「本当だ。私たちが戦っている時に、みんなやってくれてたんだ。ありがとう」
「なに言ってんだよ、感謝しなくていいって」
「そうよ、貴女たちみたいな無敵の子のおかげで、成り立ってる訳。ほら、ミーア、モグリュン行くわよ」
「ううっ、これで最後だよ?」
「マジで限界だ。パンサー、お前もだろ?」
「ええ、そうよ。だから最後に行くの。いいわね!
なんだろう、このぎこちない連帯感が妙に嵌っていた。
アキラはポカンと見つめていたが、フェルノのことを任せられるのは確かに伝わる。
表情からも行為からも嘘もなければ、偽りもない。完全に出来ることをしている人の目だ。
「それじゃあ、お願いしてもいいかな?」
「ああ、任せてくれ。その代わり……」
「分かって……るよ!」
「「「うわぁ!?」」」
突然アキラは拳を繰り出した。
突然の裏切りかと獣爪の帝國は思ったらしい。
けれど拳は自分た賭をすり抜けると、背後で爆裂した。
何かにぶち当たると、壁の上に虫の死骸が砕けて落ちる。
「ここは任せて。だから行って!」
「ふん、継ぎ接ぎの絆だっけ? 面白いな」
「獣爪の帝國もね。覚えたよ」
ヴォロフはニヤついた笑みを浮かべていた。
それに呼応する形で、アキラもにこやかに笑む。
その姿は良い具合に纏まっていた。
「はぁ、名前を覚えられてもな……行くぞ」
「あっ、待ってよモグリュン君!?」
「俺たちも行くか、パンサー」
「そうね。よっと」
獣爪の帝國は壁の下へと落ちて行く。
しかし無謀なことじゃない。
いつの間にか楔付きのロープが垂れると、本当にフェルノを助けに行ってくれた。
「お願いします、無事でいてね」
アキラは本音を吐露し、モンスターと戦う。
今できることを全うする。
それがレイド戦の醍醐味だからだ。
インベントリの中からロープを取り出すアキラだったが、助けに行く暇がない。
「アキラ、後ろだ!」
「えっ!? そらぁ!」
壁と要塞を狙うモンスターたちの群れ。
一瞬減っていたにもかかわらず、時間経過でまた増え始めた。
如何やら最終ウェーブに突入したようで、モンスターたちの攻撃は激しさを増してくる。
「これじゃあ助けに行けないよ!」
「そうだな。この最前線で、私たちが抜けるとなると……」
「すぐに瓦解するわね!」
正直、継ぎ接ぎの絆の貢献は大きかった。
率先して前線を張ると、残ったプレイヤーたちと共に、何とか食い止めている状態。
心が折れてしまったプレイヤーや疲弊して回復待ちのプレイヤー。
彼ら彼女らを守りながらの戦いは困窮していた。
人手が圧倒的に足りていない。
にもかかわらず、コーカサスはフェルノの邪魔が無くなったことで悠々と飛んでいる。
今にも壁に突撃してきそうで、もはや絶体絶命だった。
「クソが! なんとかならんのか!?」
「フェルノを救出できれば、少しは時間が稼げるだろうが……」
「そんな暇ないよ! もう、どうしたらいいのかな?」
アキラたちも手一杯だった。
かと言って他のプレイヤーたちも、ほとんどモンスターと交戦している。
持ち場を離れられる状況ではなく、苦汁を舐めさせられるも、背後から声が聞こえた。
「俺たちが行くぜ」
振り返ると、そこには四人のプレイヤーが居た。
恐らく何らかのギルドで、全員特徴的な見た目をしていた。
「獣?」
「おうよ! 俺たちは獣人ギルド、獣爪の帝國だ」
「えっと、その獣爪の帝國の人たちがどうしたの?」
「こんな状況だ、端的に言うぜ。アンタたちのギルド、凄いな」
突然褒められてしまった。
アキラは目を丸くして驚くが、Nightとベルは高圧的。
煙たがると、戦いながら軽くあしらう。
「なんだ、そんなことか。悪いが、茶化すぐらいなら何処かに行っててくれ。邪魔だ」
「そうよ、この状況見て分からないの?」
「二人共落ち着いて」
アキラはなんとか場を和ませようとする。
こんな挨拶最低だ。
アキラは代表して謝るが、獣爪の帝國の人たちは分かり切っていたらしい。
「噂通りだな。全然いいぜ、俺たちは戦えないからな」
そう言うと、自分たちの体が傷だらけなことを伝える。
もはや戦えるような余力は残っていない。
アバターの修復が間に合っておらず、動くだけでもやっとだった。
「大丈夫、たくさん怪我してるけど!?」
「コレが普通なの。貴女たちみたいに、ほとんどダメージを受けない子の方が珍しいわ」
「ううっ、痛いよ……」
「クソ、やられちまった。ヴォロフ、俺らもう動けないぜ? さっきの炎竜助けたらもう限界だ」
「分かってる。だからこそ、ここに来たんだ」
獣爪の帝国の人たちが話し合っていた。
その会話を断片的に噛み砕くと、アキラはハッとなる。
「もしかして、フェルノのこと!?」
「おうよ。俺たちは探索系ギルドだ。こういう時、戦いには参加できないけど、傷付いた奴を優先的に助けるのが仕事だろ? それくらいはさせてくれ」
ギルドマスターのヴォロフは親指を自分たちに向けて言い放った。
探索系ギルドの役割。それは随時、的確な索敵と、動けない仲間の救出。
そう認識しているようで、チラホラ似たようなことをしているプレイヤー達が居た。
「本当だ。私たちが戦っている時に、みんなやってくれてたんだ。ありがとう」
「なに言ってんだよ、感謝しなくていいって」
「そうよ、貴女たちみたいな無敵の子のおかげで、成り立ってる訳。ほら、ミーア、モグリュン行くわよ」
「ううっ、これで最後だよ?」
「マジで限界だ。パンサー、お前もだろ?」
「ええ、そうよ。だから最後に行くの。いいわね!
なんだろう、このぎこちない連帯感が妙に嵌っていた。
アキラはポカンと見つめていたが、フェルノのことを任せられるのは確かに伝わる。
表情からも行為からも嘘もなければ、偽りもない。完全に出来ることをしている人の目だ。
「それじゃあ、お願いしてもいいかな?」
「ああ、任せてくれ。その代わり……」
「分かって……るよ!」
「「「うわぁ!?」」」
突然アキラは拳を繰り出した。
突然の裏切りかと獣爪の帝國は思ったらしい。
けれど拳は自分た賭をすり抜けると、背後で爆裂した。
何かにぶち当たると、壁の上に虫の死骸が砕けて落ちる。
「ここは任せて。だから行って!」
「ふん、継ぎ接ぎの絆だっけ? 面白いな」
「獣爪の帝國もね。覚えたよ」
ヴォロフはニヤついた笑みを浮かべていた。
それに呼応する形で、アキラもにこやかに笑む。
その姿は良い具合に纏まっていた。
「はぁ、名前を覚えられてもな……行くぞ」
「あっ、待ってよモグリュン君!?」
「俺たちも行くか、パンサー」
「そうね。よっと」
獣爪の帝國は壁の下へと落ちて行く。
しかし無謀なことじゃない。
いつの間にか楔付きのロープが垂れると、本当にフェルノを助けに行ってくれた。
「お願いします、無事でいてね」
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