上 下
534 / 570

◇530 頼りになります。聖レッドローズ騎士団さん!

しおりを挟む
 アキラたちを含めた継ぎ接ぎの絆は襲い掛かるモンスターたちを相手に、淡々と蹴散らしていた。
 【キメラハント】:【甲蟲】で武装した拳と、フェルノの吸炎竜の拳が飛んできたモンスターを殴りつける。

 その周りではベルが他のプレイヤーたちと一緒に矢を射る。
 黒い点を次々撃ち落とすと、迫り来るモンスターを減らす。

 減らされたモンスターたちは壁の上を走り回る遊撃プレイヤーによって処理された。
 雷斬も昆虫系モンスターを除いて邪魔にならないように切り付ける。
 調子を取り戻したおかげか、徐々に慣れ始め、優位を取っていた。

「そりゃぁ!」
「あ、あんがとな。助かったぜ」
「いえ、お気になさらないでください。それよりも、この数は骨が折れますね」

 雷斬は襲われていたプレイヤーを助けた。
 しかしこれでは埒が明かない。
 壁の上のプレイヤーたちは、上手くモンスターをいなしているのだが、物量差で押し潰されてしまいそうだった。

「おい、あんたら! もっと弓を射れねぇのか!」
「無理に決まってるわ。これで限界なの」
「そうだぜ。弓って、補正があってもムズいんだぞ」
「それよりお前たちが壁に登って来させるなよ。モンスターをどっかに行かせろよ!」
「ふざけるな。それができたら苦労するかよ」

 プレイヤー間で口論を始めた。
 そのせいで手が止まり、モンスターの動きが活発になる。
 ここが勝機。とでも思ったのか、勢いよく壁に激突して来る。

 ドス―ン!!

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」

 壁にモンスターがぶつかった。
 耐久値が一気に削られ、壁が揺れ動く。
 乗っていたプレイヤーたちも足下が疎かになり、クラリと揺れてしまった。

「痛ってぇ」
「ふざけんじゃねぇぞ! この野郎が」
「待って。勝手に立ち上がらないで。痛い!」

 転んだプレイヤーたちが互いに腕や足を絡ませていた。
 そのせいで上手く立ち上がれず、体が捻じれてしまっている。
 誰か一人が動けば誰かが怪我をする。
 あまりにもドミノ倒し的な現状に、体制が崩れてしまっていた。

「マズいな……私が援護に行くか」
「Night、待って。Nightの盾が無いと、私たちも戦えないよ」
「そうよ。Nightはここにいるの」

 継ぎ接ぎの絆もこの状況を黙ってみているしかなかった。
 人数の不利が大勢の中にも響いてしまっている。
 今の持ち場を維持するだけで力を出し切っていた。

「マズいな。本当にマズいか……雷斬を一度呼び戻すぞ!」
「どうやってー?」
「こんな状況で伝令なんて無理よ。それともあれ? 発煙筒でも使うの?」
「そんなHPは残っていない。私が走っても……」
「「「危険だよ!!!」」」

 足が速くないNightが動くのはあまりにも危険だ。
 ここでNightに居なくなられるのは絶対にダメ。
 それなら緊急避難も視野に入れ、Nightは思考を巡らせる。

「仕方ないな。私が盾を全開で出せば……」
「その必要は無いぜ!」

 苦渋の決断をNightは決めた。
 そんなことをすれば、このフェーズ中、何もできなくなるのは必至。
 それでもやるべきだと判断したNightだったが、突如として声がした。しかも真上からだ。

「とぉ!」

 視線を真上に向けると、白髪の老爺が居た。
 両腕には盾と爪が合体した武器、盾爪を装備している。
 見た目には似合わない筋骨隆々としたたくましい肉体を武器に飛び跳ねると、着地と同時に敵モンスターを薙ぎ払った。

「ふぅ、大丈夫かえ、子供たちよ」
「えっ、誰ですか?」
「お前は聖レッドローズ騎士団の幹部、珀琥びゃっくか!?」
「「珀琥?」」

 現れた老爺は珀琥と呼ばれるプレイヤー。
 聖レッドローズ騎士団の幹部と聞くだけで強いのは間違いない。

 だけど如何してここにいるのだろうか。
 アキラたちは身震いをした上で身構えると、変に警戒してしまった。

「おいおい、子供たちよ。俺は戦う気無いぞ」
「それは分かってます」
「おうおう、分かってるなら話が早いな。とっととこの数、薙ぎ払うぞ!」
「薙ぎ払うだと? 一人でやる気か、流石に無理があるだろ」

 Nightは昂った士気を挫く様な言葉を吐いた。
 しかし珀琥はそれ由良面白いと感じ取る。
 愉悦混じりに高笑いをすると、珀琥は盾爪をかち合わせた。火花が散り、金属音がキリキリと音を立てる。

「がーはっはっはっ! 無論それも面白いが、ここは共闘と行こうじゃねえか」
「「「共闘?」」」
「おうよ。うちのギルマス、ブローズからの指示なんだな。暴れるぜぇ!!」

 珀琥は楽し気にモンスターに向かっていく。
 盾爪を振るうと、掠っただけでモンスターが薙ぐ払われる。
 切り刻まれるモンスターの体。一瞬でHPを失うと、飛び散った体がはじけ飛ぶ。

「なんだ、この光景は?」
「アグレッシブだね」
「ですが確実にモンスターを仕留めていますよ。慣れているんでしょうか?」
「「「慣れてるとか、怖い」」」

 アキラたちは呆けてしまっていた。自然と体が動きを止める。
 それ程までにテンションが高く、アグレッシブにモンスターを薙ぎ払っている。
 敵にしたくはない。だけど味方だと凄く頼りになる。
 そんな珀琥の姿に、聖レッドローズ騎士団の底の知れなさが伝わった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話

カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 チートなんてない。 日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。 自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。 魔法?生活魔法しか使えませんけど。 物作り?こんな田舎で何ができるんだ。 狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。 そんな僕も15歳。成人の年になる。 何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。 こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。 女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。 になればいいと思っています。 皆様の感想。いただけたら嬉しいです。 面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。 よろしくお願いします! カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。 続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...