530 / 555
◇525 イベント初日は不安が充分?
しおりを挟む
会社の一室。
最上階付近の部屋で、エルエスタは仕事をしていた。
パソコンを前に部下から送られた資料を纏めると、確認も兼ねてディスプレイを見ながらキーを打つ。
「ふぅ、今日からですね」
エルエスタはCUの日程を見た。
如何やら既にイベントは開始しているらしい。
現在の時刻が十四時。と言うことは、第三部くらいだろうか?
「第一フェーズは防衛でしたね。さて、今どうなっているんでしょうか?」
「ん? なにしてるんですか、社長」
「博信さん」
社長室にやって来たのは男性。
今頃CUにログインしている筈の博信だった。
如何してこの時間に入るのか。一瞬考えるのも無理は無いが、エルエスタにその必要は無かった。
「博信さん、休憩ですか?」
「はい、始に変わって貰ったんで」
「始さんですね。確かに彼なら博信さんの代わりも務まりますが……」
「始は不干渉ですからねー。んで、今の状況はこんな感じで」
博信はVRドライブを使うと、エルエスタの前にイベントの詳細を表示した。
第一フェーズはPvPは無い。
故になにをするのかはここに出ているが、二つの城壁の耐久率が表示されていた。
「北側と南側、両方とも耐久率は残り七十%程ですか」
「想定内ですか?」
「想定内です。ですが、主力ギルドは参加されているんですよね?」
「はい。でも、この時間だとほとんど……今丁度、龍星一揆が一時間だけ参加していきましたよ?」
「龍星一揆が一時間だけですか……他には?」
「南は光牙忍法帳や戦慄の蝶音が確認できたけど、今の時間は厳しそうですね」
博信は注目プレイヤーや有力ギルドを紹介した。
その活躍は凄まじく、この半日を耐え抜いたのも彼ら彼女らのおかげだ。
しかしながら、今はその姿は無い。そのため、徐々に耐久率が削られていた。
「厳しそうですね」
「はい。でも、社長のお気に入りはまだですよね?」
「継ぎ接ぎの絆ですね。確かにまだ参加はしていませんが、どうでしょうか?」
「ここに来て耐久率が五十を切ると絶望的ですよ。正直、俺でも始でも諦めて帰っちゃいますね」
「私がいてもですか?」
「あっ、それは例外なんで。んで、どうするんですか?」
「このまま行きますよ」
博信はその言葉を聞いて絶句する。
息を飲み、痰が絡んで喉を流れる。
目を見開くと、ついつい博信はマジレスする。
「はっ?」
「なにもおかしなことではありませんよ。このくらいの逆境を跳ね除けて貰えなければ意味がありません」
「マジで鬼っすね」
「そうですか? 実際、今回の防衛ではモンスターのレベルは一定です」
「ま、まあそうですけどね?」
博信は顔面蒼白になっていた。
チャラい雰囲気を吹き消すには充分。
エルエスタは何処まで見えているのか。
そんなこと、部下である博信には想像もできなかった。
「社長には何処まで見えて……」
「なんですか、博信さん?」
「あっ、いえ、なんでもないでーす」
ここは無駄口は叩かない方がいい、
博信はそう感じたので押し黙ると、たどたどしい動きを取る。
社長室を後にしようとすると、社長に訊ねる。
「社長、社長は、なにがしたいんですか?」
「可能性ですよ」
「可能性、進化、いつものことですねー」
「不服ですか?」
「いえ、そんなことにですけど……はい、戻ります」
「頼みますよ、博信さん」
社長であるエルエスタに期待される。
それはとても嬉しいことだ。
博信もなんだかんだ言いつつも、期待されていることを誇りに思い、CUに戻るのだった。
「それじゃあみんな、行くよ!」
アキラたちはギルドホームで円陣を組んでいた。
その際の号令はもちろんアキラ。
少し恥ずかしかったけど、腹から声を出し切った。
「まだ一日目だぞ。こんな円陣が入るのか?」
「いいじゃんいいじゃん!」
「そうですよ。一致団結は素晴らしいことではないですか?」
「雷斬は本当にこういうの好きよね」
「はい、皆さんと協力・共闘、私は大好きです」
「呆れるわね……まあ、いいけど」
円陣を組んだ状態で、みんな思い思いの言葉を吐く。
後五分後にはイベント会場に転送される。
その際の休息は今だけで、持てるだけのアイテムをインベントリに入れていた。
「Night、結局イベントの詳細は?」
「……第一フェーズは防衛だ」
「防衛? なにかにやられてるのかな?」
「SNSでも徹底した情報管理がされていた。まあ、潜ることも可能だが……」
「あれ、できるんだ?」
「私なら可能だ。ふん」
「……そっか」
「なんだ、その笑い方は」
不服そうな表情を浮かべるNight。
エンジンを解いて逃げようとするが、絶対に逃がさない。
フェルノが腕を押さえつけると、転送が開始される。
「それじゃあ行くよ。本気で」
「アキラ、もう一回!」
「えっと、行くぞ!」
「「「おー!!!」」」
アキラたちの体が粒子に変わる。
イベント会場に向けて転送を開始されるのだ。
青白い光が全身を包み込むと、そのまま円陣を崩す。
いつでも戦えるように細心の注意を支払うと、アキラたちの姿はギルドホームから消えていた。
最上階付近の部屋で、エルエスタは仕事をしていた。
パソコンを前に部下から送られた資料を纏めると、確認も兼ねてディスプレイを見ながらキーを打つ。
「ふぅ、今日からですね」
エルエスタはCUの日程を見た。
如何やら既にイベントは開始しているらしい。
現在の時刻が十四時。と言うことは、第三部くらいだろうか?
「第一フェーズは防衛でしたね。さて、今どうなっているんでしょうか?」
「ん? なにしてるんですか、社長」
「博信さん」
社長室にやって来たのは男性。
今頃CUにログインしている筈の博信だった。
如何してこの時間に入るのか。一瞬考えるのも無理は無いが、エルエスタにその必要は無かった。
「博信さん、休憩ですか?」
「はい、始に変わって貰ったんで」
「始さんですね。確かに彼なら博信さんの代わりも務まりますが……」
「始は不干渉ですからねー。んで、今の状況はこんな感じで」
博信はVRドライブを使うと、エルエスタの前にイベントの詳細を表示した。
第一フェーズはPvPは無い。
故になにをするのかはここに出ているが、二つの城壁の耐久率が表示されていた。
「北側と南側、両方とも耐久率は残り七十%程ですか」
「想定内ですか?」
「想定内です。ですが、主力ギルドは参加されているんですよね?」
「はい。でも、この時間だとほとんど……今丁度、龍星一揆が一時間だけ参加していきましたよ?」
「龍星一揆が一時間だけですか……他には?」
「南は光牙忍法帳や戦慄の蝶音が確認できたけど、今の時間は厳しそうですね」
博信は注目プレイヤーや有力ギルドを紹介した。
その活躍は凄まじく、この半日を耐え抜いたのも彼ら彼女らのおかげだ。
しかしながら、今はその姿は無い。そのため、徐々に耐久率が削られていた。
「厳しそうですね」
「はい。でも、社長のお気に入りはまだですよね?」
「継ぎ接ぎの絆ですね。確かにまだ参加はしていませんが、どうでしょうか?」
「ここに来て耐久率が五十を切ると絶望的ですよ。正直、俺でも始でも諦めて帰っちゃいますね」
「私がいてもですか?」
「あっ、それは例外なんで。んで、どうするんですか?」
「このまま行きますよ」
博信はその言葉を聞いて絶句する。
息を飲み、痰が絡んで喉を流れる。
目を見開くと、ついつい博信はマジレスする。
「はっ?」
「なにもおかしなことではありませんよ。このくらいの逆境を跳ね除けて貰えなければ意味がありません」
「マジで鬼っすね」
「そうですか? 実際、今回の防衛ではモンスターのレベルは一定です」
「ま、まあそうですけどね?」
博信は顔面蒼白になっていた。
チャラい雰囲気を吹き消すには充分。
エルエスタは何処まで見えているのか。
そんなこと、部下である博信には想像もできなかった。
「社長には何処まで見えて……」
「なんですか、博信さん?」
「あっ、いえ、なんでもないでーす」
ここは無駄口は叩かない方がいい、
博信はそう感じたので押し黙ると、たどたどしい動きを取る。
社長室を後にしようとすると、社長に訊ねる。
「社長、社長は、なにがしたいんですか?」
「可能性ですよ」
「可能性、進化、いつものことですねー」
「不服ですか?」
「いえ、そんなことにですけど……はい、戻ります」
「頼みますよ、博信さん」
社長であるエルエスタに期待される。
それはとても嬉しいことだ。
博信もなんだかんだ言いつつも、期待されていることを誇りに思い、CUに戻るのだった。
「それじゃあみんな、行くよ!」
アキラたちはギルドホームで円陣を組んでいた。
その際の号令はもちろんアキラ。
少し恥ずかしかったけど、腹から声を出し切った。
「まだ一日目だぞ。こんな円陣が入るのか?」
「いいじゃんいいじゃん!」
「そうですよ。一致団結は素晴らしいことではないですか?」
「雷斬は本当にこういうの好きよね」
「はい、皆さんと協力・共闘、私は大好きです」
「呆れるわね……まあ、いいけど」
円陣を組んだ状態で、みんな思い思いの言葉を吐く。
後五分後にはイベント会場に転送される。
その際の休息は今だけで、持てるだけのアイテムをインベントリに入れていた。
「Night、結局イベントの詳細は?」
「……第一フェーズは防衛だ」
「防衛? なにかにやられてるのかな?」
「SNSでも徹底した情報管理がされていた。まあ、潜ることも可能だが……」
「あれ、できるんだ?」
「私なら可能だ。ふん」
「……そっか」
「なんだ、その笑い方は」
不服そうな表情を浮かべるNight。
エンジンを解いて逃げようとするが、絶対に逃がさない。
フェルノが腕を押さえつけると、転送が開始される。
「それじゃあ行くよ。本気で」
「アキラ、もう一回!」
「えっと、行くぞ!」
「「「おー!!!」」」
アキラたちの体が粒子に変わる。
イベント会場に向けて転送を開始されるのだ。
青白い光が全身を包み込むと、そのまま円陣を崩す。
いつでも戦えるように細心の注意を支払うと、アキラたちの姿はギルドホームから消えていた。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
この作品は 旧題:金運に恵まれたが人運に恵まれなかった俺は、現実逃避するためにフルダイブVRゲームの世界に逃げ込んだ
の内容を一部変更し修正加筆したものになります。
宝くじにより大金を手に入れた主人公だったが、それを皮切りに周囲の人間関係が悪化し、色々あった結果、現実の生活に見切りを付け、溜まっていた鬱憤をVRゲームの世界で好き勝手やって晴らすことを決めた。
そして、課金したりかわいいテイムモンスターといちゃいちゃしたり、なんて事をしている内にダンジョンを手に入れたりする主人公の物語。
※ 異世界転移や転生、ログアウト不可物の話ではありません ※
※修正前から主人公の性別が変わっているので注意。
※男主人公バージョンはカクヨムにあります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる