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◇519 とりあえず全員下山(火傷付き)
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どれだけの時間走ったのか、全然覚えていない。
アキラたちは龍顎山から逃げるように下山すると、前身の火傷の痛みも忘れてしまっていた。
それだけ切羽詰まっていた。
本当は体力の無い筈のNightでさえ力の限りを尽くすと、下山する頃には頭に酸素が回らない。
呼吸をすることさえ忘れ走っていたせいか。
それとも単純に高度の問題か。
アキラたち全員、酸欠状態、下山してからの高山病になっていた。
「はぁはぁはぁはぁ……ああ」
「つ、か、つ、か、れ、た……」
「ああああああああああ……ふぅはぁふぅはぁ……ああ」
アキラたち全員、疲れ果ててしまった。
膝を折り、肩を上げ下げし、肺が痛くて仕方なかった。
「はぁ、疲れたー」
「下、山、できたな」
「疲れが、撮れないわね……」
アキラたちは疲れ果てていた。
もう頭を使う体力すら残っていない。
フェルノみたいに無尽蔵な体力でもないので、アキラたちはトボトボ歩いて、龍顎山から離れた。
「まあ、酷い目に遭ったわね」
龍顎山を下山して僅か一分。
ベルは溜め込んでいた不満を吐露してした。
「そうだな。酷い目に遭ったな」
「いつもいつも大変だけど、今回は大変を超えてたよね。すっごく大変だったよね」
アキラとNightも呼応する。
あまりにも酷く疲れてしまい、もはや達成感なんてものは無い。
あるのは酷い目に遭ったという、実害のある事実だけだった。
「ううっ、冷えて来て痛いね」
「そうだな。一度ログアウトするか、病院にでも行くか?」
「ここから病院……遠いわね」
「そうだな。流石に町の診療所だと厳しいか?」
CUでは即死球のダメージを受けると強制ログアウトさせられる。
それ以外の重度のダメージを負った場合、二つの方法で治すことができる。
・ログアウトした状態で、一定の日を経過すると、修復プログラムによってアバターが修復される。
・病院に行くことで、治療のできるプレイヤーやNPCによって、一定額を支払う代わりに修復するまでの時間を大幅に短縮できる。
この二つが重度の怪我を治す大きな手段だった。
アキラたちも陰ながら病院に行くなどしていたが、流石にこれだけの火傷は無かった。
「ううっ、痛いね」
「どうする? 一度帰るか?」
「その前にフェルノと雷斬と合流して……って、何処に行ったのよ!」
龍顎山から先に下山したはずのフェルノと雷斬。
二人の姿が全く見当たらない。
視線をキョロキョロさせるも影も形もなく、ましてや麓までまだまだ掛かる。
「もしかして、フェルノと雷斬の二人、麓まで行っちゃったの?」
「そうだろうな。とは言え、まだまだ掛かるぞ」
「ううっ、辛いわね」
ベルはついつい泣き事を言ってしまった。
しかし麓まで歩くしかない。
トボトボと歩いて行くと、次第に斜面も緩やかになって行き、遠くの方に小さな影と立ち上る湯気が見えた。
「あれは……麓?」
「温泉も出ているらしいな」
「もしかしなくても、フェルノと雷斬、温泉に先に浸かって……」
「雷斬の性格的に無いだろ。とは言え、フェルノは……」
「怪しいよね」
もはや不満が爆発しかけていた。
それを上手い具合に心の中で留めると、ポツポツとした爆弾が膨らみ出す。
しかしそれ以上には無く、ついつい溜息まで出そうになると、不意に声が聞こえた。
「酷いなー、私をそんな人だと思わないでよねー」
「フェルノさん、今のは冗談ですよ」
「冗談なのかなー?」
アキラたちの前に現れたのはフェルノと雷斬だった。
二人共ボロボロのままで火傷を負っている。
スリップダメージが微かに残り、顔色もすこぶっていなかった。
「フェルノ、雷斬、どうしてここに?」
「どうしてって言われてもねー」
「私たちだけで麓に行くわけにはいきませんから。皆さんが無事に下山することを信じて待っていたんですよ」
「そうだったんだ……ごめんね。私たち、勝手なこと言って」
「本当だよねーだ」
如何やらフェルノも雷斬も優しかった。
それはアキラたちがボヤいた以上で、愚痴っていた自分たちを恥じる。
その証拠にフェルノはべーと舌を出し、雷斬は含みを持った笑みを浮かべる。
背中をポンポン撫でると、フェルノのことをあやした。
「にしても無事に下山できたのね」
「はい、フェルノさんのおかげです」
「えへへー、ここまで私が運んで来たからねー。っと、みんなは大丈夫―?」
「大丈夫じゃないわよ。見ての通り、火傷まみれ」
「まみれって言い方は違うと思うけど、痛いよね」
アキラたちは全身がヒリヒリしている。
唯一この中で無事と言えば、フェルノくらいのもので、今ではすっかり余裕そうだ。
もしかすると“火傷”も燃やしてしまったのかな。
それなら凄いかもアキラは達観した。
「それでしたら、麓の温泉に行きませんか? 丁度この辺りの温泉には回復効果が付いているみたいですよ」
「えっ、火傷しているのは入るのか?」
「ううっ、日焼けじゃないけど、もっと痛そうだね」
「当り前だ。とは言え回復効果か……効能には恩恵を貰いたいところだな」
Nightは雷斬の提案を受けて考え込む。
確かに火傷状態で温泉に入るのは自殺行為な気もする。
けれど想像以上には痛くないかも。GAMEだからと、淡い期待を漏らすと、フェルノは腕を振り上げた。
「それじゃあ温泉行ってみよー! 丁度湯気も立ってるし、今なら入れるかもねー」
「そうだといいがな」
「期待はしようよー。ほらほら、行くよー、Let’s GO!」
「ちょっと腕振り上げないでよ。暑苦しいわ」
「あはは、言われてる」
フェルノだけは元気そうでアキラたちを置き去りにする。
その足は麓に向かって駆け足になる。
温泉か、最近よく入ってるなと、アキラは思う中、疲れを取りに向かうのだった。
アキラたちは龍顎山から逃げるように下山すると、前身の火傷の痛みも忘れてしまっていた。
それだけ切羽詰まっていた。
本当は体力の無い筈のNightでさえ力の限りを尽くすと、下山する頃には頭に酸素が回らない。
呼吸をすることさえ忘れ走っていたせいか。
それとも単純に高度の問題か。
アキラたち全員、酸欠状態、下山してからの高山病になっていた。
「はぁはぁはぁはぁ……ああ」
「つ、か、つ、か、れ、た……」
「ああああああああああ……ふぅはぁふぅはぁ……ああ」
アキラたち全員、疲れ果ててしまった。
膝を折り、肩を上げ下げし、肺が痛くて仕方なかった。
「はぁ、疲れたー」
「下、山、できたな」
「疲れが、撮れないわね……」
アキラたちは疲れ果てていた。
もう頭を使う体力すら残っていない。
フェルノみたいに無尽蔵な体力でもないので、アキラたちはトボトボ歩いて、龍顎山から離れた。
「まあ、酷い目に遭ったわね」
龍顎山を下山して僅か一分。
ベルは溜め込んでいた不満を吐露してした。
「そうだな。酷い目に遭ったな」
「いつもいつも大変だけど、今回は大変を超えてたよね。すっごく大変だったよね」
アキラとNightも呼応する。
あまりにも酷く疲れてしまい、もはや達成感なんてものは無い。
あるのは酷い目に遭ったという、実害のある事実だけだった。
「ううっ、冷えて来て痛いね」
「そうだな。一度ログアウトするか、病院にでも行くか?」
「ここから病院……遠いわね」
「そうだな。流石に町の診療所だと厳しいか?」
CUでは即死球のダメージを受けると強制ログアウトさせられる。
それ以外の重度のダメージを負った場合、二つの方法で治すことができる。
・ログアウトした状態で、一定の日を経過すると、修復プログラムによってアバターが修復される。
・病院に行くことで、治療のできるプレイヤーやNPCによって、一定額を支払う代わりに修復するまでの時間を大幅に短縮できる。
この二つが重度の怪我を治す大きな手段だった。
アキラたちも陰ながら病院に行くなどしていたが、流石にこれだけの火傷は無かった。
「ううっ、痛いね」
「どうする? 一度帰るか?」
「その前にフェルノと雷斬と合流して……って、何処に行ったのよ!」
龍顎山から先に下山したはずのフェルノと雷斬。
二人の姿が全く見当たらない。
視線をキョロキョロさせるも影も形もなく、ましてや麓までまだまだ掛かる。
「もしかして、フェルノと雷斬の二人、麓まで行っちゃったの?」
「そうだろうな。とは言え、まだまだ掛かるぞ」
「ううっ、辛いわね」
ベルはついつい泣き事を言ってしまった。
しかし麓まで歩くしかない。
トボトボと歩いて行くと、次第に斜面も緩やかになって行き、遠くの方に小さな影と立ち上る湯気が見えた。
「あれは……麓?」
「温泉も出ているらしいな」
「もしかしなくても、フェルノと雷斬、温泉に先に浸かって……」
「雷斬の性格的に無いだろ。とは言え、フェルノは……」
「怪しいよね」
もはや不満が爆発しかけていた。
それを上手い具合に心の中で留めると、ポツポツとした爆弾が膨らみ出す。
しかしそれ以上には無く、ついつい溜息まで出そうになると、不意に声が聞こえた。
「酷いなー、私をそんな人だと思わないでよねー」
「フェルノさん、今のは冗談ですよ」
「冗談なのかなー?」
アキラたちの前に現れたのはフェルノと雷斬だった。
二人共ボロボロのままで火傷を負っている。
スリップダメージが微かに残り、顔色もすこぶっていなかった。
「フェルノ、雷斬、どうしてここに?」
「どうしてって言われてもねー」
「私たちだけで麓に行くわけにはいきませんから。皆さんが無事に下山することを信じて待っていたんですよ」
「そうだったんだ……ごめんね。私たち、勝手なこと言って」
「本当だよねーだ」
如何やらフェルノも雷斬も優しかった。
それはアキラたちがボヤいた以上で、愚痴っていた自分たちを恥じる。
その証拠にフェルノはべーと舌を出し、雷斬は含みを持った笑みを浮かべる。
背中をポンポン撫でると、フェルノのことをあやした。
「にしても無事に下山できたのね」
「はい、フェルノさんのおかげです」
「えへへー、ここまで私が運んで来たからねー。っと、みんなは大丈夫―?」
「大丈夫じゃないわよ。見ての通り、火傷まみれ」
「まみれって言い方は違うと思うけど、痛いよね」
アキラたちは全身がヒリヒリしている。
唯一この中で無事と言えば、フェルノくらいのもので、今ではすっかり余裕そうだ。
もしかすると“火傷”も燃やしてしまったのかな。
それなら凄いかもアキラは達観した。
「それでしたら、麓の温泉に行きませんか? 丁度この辺りの温泉には回復効果が付いているみたいですよ」
「えっ、火傷しているのは入るのか?」
「ううっ、日焼けじゃないけど、もっと痛そうだね」
「当り前だ。とは言え回復効果か……効能には恩恵を貰いたいところだな」
Nightは雷斬の提案を受けて考え込む。
確かに火傷状態で温泉に入るのは自殺行為な気もする。
けれど想像以上には痛くないかも。GAMEだからと、淡い期待を漏らすと、フェルノは腕を振り上げた。
「それじゃあ温泉行ってみよー! 丁度湯気も立ってるし、今なら入れるかもねー」
「そうだといいがな」
「期待はしようよー。ほらほら、行くよー、Let’s GO!」
「ちょっと腕振り上げないでよ。暑苦しいわ」
「あはは、言われてる」
フェルノだけは元気そうでアキラたちを置き去りにする。
その足は麓に向かって駆け足になる。
温泉か、最近よく入ってるなと、アキラは思う中、疲れを取りに向かうのだった。
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