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◇515 鋭く尖ったドラゴン
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湧き上がる間欠泉の中、黒く蠢く謎の物体。
直立のまま揺ら揺らと左右に揺れている。
一体何が隠れているのか。アキラたちが凝視していると、次第に間欠泉の水量が減り、その姿を現した。
「ドゥラァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
心臓が飛び出しそうになるほど強烈な雄叫びが上がった。
あまりの声量に耳を塞ぐも、圧巻とさせられる巨体を前には無意味だった。
眼前に現れたそのモンスターは、直立不動ではあるものの、全身に鋼鉄の鎧を纏い、鋭い牙と巨大な目を剥き出して、アキラたちをあしらうように睨んでいた。
「ど、ドラゴン!? ここでも龍なの!!」
「あれぇ、これヤバくなーい? 絶対ヤバいよね?」
「ヤバいなんて言ってる場合じゃないわよ。レベル、頭の上のレベルを見て!」
「……レベル、98ですね。これは、相当強敵でしょうね」
間欠泉の中から現れたモンスター。
そのレベルは98を誇り、圧倒的な迫力を持ち合わせていた。
それもそのはず、相手は龍型のドラゴン。
手足は無いようだが、眼下のアキラたちを震え上がらせるには充分過ぎるビジュアルとパワーを持ち合わせていた。
「シャープドラゴンか。シーサーペントやリヴァイアサン型だな」
「感心している場合じゃないよね。Night、どうやって倒せばいいの?」
Nightはこの状況下でも至極冷静に分析をしていた。
目を四方に動かすと、モンスターの特徴を摘まみ取る。
その結果頭の中に蓄えたデータベースから、シャープドラゴンであると結論を出したは良いものの、それだけでは何の解決にもならないので、アキラは倒した方を訊ねていた。
「はっ、そんなものはない」
「「「あれ?」」」
いつもとは違う流れだった。
アキラの質問に返す刀を持ち合わせていないのか、すぐさま一蹴してしまう。
返答のレスポンスに間も躊躇いも無かったので、アキラたち一同、我を忘れてしまった。
「そんなものはないってどういうこと! いつもみたいに作戦があるんだよね?」
「何度も言わせるな。そんなものはない」
「……それってマジ?」
「マジに決まっているだろ。嘘を付いてどうする。この状況、アキラも気が付いているだろ」
Nightの機嫌は非常に悪かった。
アキラたち共々次第に早口になって行くと、現状を鑑みる羽目になる。
と言うのも、アキラたち全員スリップダメージを負っている。おまけに体も痛くて動かない。何故か、その理由は単純で、間欠泉の湧き上がったお湯を、全身に被ったからだった。
「推定温度は百℃を超えている。全身火傷だ。見た目にはボカして反映されているが、体を動かすことさえできないだろ」
「う、うん……」
「腕と脚以外は無事なんだけどなー。痛い、痛い痛い痛い」
「大丈夫ですか、フェルノさん。くっ、私も刀が握れれば……」
「片手武器ならまだマシよ。私なんて、両手なのよ? こんな状態で戦えるわけないじゃない」
アキラたちはお湯をまともに被っている。
そのせいで全身火傷を患っていた。
幸い、システム的な面で火傷しているようには見えないが、それでも赤く腫れ上がった演出がされており、アキラたち全員、武器を取ることさえできない。
つまり、戦うなんて馬鹿げた行為、最初からできる訳もなかった。
「あの瞬間に距離を取っていれば……な」
「今更言っても仕方ないよ。それより今は……」
自責するNightを前に、アキラは意識を切り替えて励ます。
むしろ今するべきはそんなことで嘆くのではない。
本当に必要なのは、シャープドラゴンから逃げることだった。
「ドラァァァァァァァァァァァァァァァン!」
シャープドラゴンは高らかに吠えた。
アキラたちの会話を目障りにでも感じたのか、全身をくねらせていた。
明らかに何か仕掛けて来る反応に、動けないアキラたちも自然と逃げる動作を取る。
「みんな、一旦離れるよ」
「あはは、そう来たー? それじゃあNight、捕まってー」
シャープドラゴンは攻撃モーションに入った。
頭の部分を後ろに下げると、エネルギーを蓄えている様子になる。
その仕草にアキラたちの思考は高速化すると、それぞれがスキルを発動した。
「【半液状化】」
「Night掴まって。【吸炎竜化】!」
アキラはスライムになると、跳ね回りながら逃げる。
Nightの体を腕で抱き寄せると、フェルノも竜の姿を取り、防護マスクを置き去りにする。
「ベル、火傷は大丈夫ですか?」
「当然大丈夫じゃないわよ。それじゃあ急ぐわよ」
「はい。もう時間がありませんね」
雷斬は【雷鳴】を呼ぶと、全身に雷と纏って直線距離で走る。
ベルも【風読み】で風を呼び込むと、火傷した部分が空気に触れないようにしながら、自分の足でシャープドラゴンから離れて行く。
「なんとか逃げられそうね……ちょっと待って」
「?」
「なにー? なに喋って……はっ」
ベルは嫌な予感がして仕方がない。
スライム状態で喋れないアキラと余裕そうに飛ぶフェルノ。
二人がベルの声に耳を傾けようとすると、振り返った瞬間、シャープドラゴンの異様な姿に目を見開いてしまった。
「そうよね、流石にこれだけ溜めが長いとね……そうよね?」
「!?!?」
「あはは、直線に逃げるのって心配だったかー」
アキラたちは逃げる余力さえなかった。
あまりの衝撃に全身が震え、体が全く言うことを聞いてくれない。
瞬きもできず眼前に浮かび上がったのは、シャープドラゴンが大口を開け、ギラリと牙を光らせながら、青白い閃光のビームを放った瞬間だった。
直立のまま揺ら揺らと左右に揺れている。
一体何が隠れているのか。アキラたちが凝視していると、次第に間欠泉の水量が減り、その姿を現した。
「ドゥラァァァァァァァァァァァァァァァッ!」
心臓が飛び出しそうになるほど強烈な雄叫びが上がった。
あまりの声量に耳を塞ぐも、圧巻とさせられる巨体を前には無意味だった。
眼前に現れたそのモンスターは、直立不動ではあるものの、全身に鋼鉄の鎧を纏い、鋭い牙と巨大な目を剥き出して、アキラたちをあしらうように睨んでいた。
「ど、ドラゴン!? ここでも龍なの!!」
「あれぇ、これヤバくなーい? 絶対ヤバいよね?」
「ヤバいなんて言ってる場合じゃないわよ。レベル、頭の上のレベルを見て!」
「……レベル、98ですね。これは、相当強敵でしょうね」
間欠泉の中から現れたモンスター。
そのレベルは98を誇り、圧倒的な迫力を持ち合わせていた。
それもそのはず、相手は龍型のドラゴン。
手足は無いようだが、眼下のアキラたちを震え上がらせるには充分過ぎるビジュアルとパワーを持ち合わせていた。
「シャープドラゴンか。シーサーペントやリヴァイアサン型だな」
「感心している場合じゃないよね。Night、どうやって倒せばいいの?」
Nightはこの状況下でも至極冷静に分析をしていた。
目を四方に動かすと、モンスターの特徴を摘まみ取る。
その結果頭の中に蓄えたデータベースから、シャープドラゴンであると結論を出したは良いものの、それだけでは何の解決にもならないので、アキラは倒した方を訊ねていた。
「はっ、そんなものはない」
「「「あれ?」」」
いつもとは違う流れだった。
アキラの質問に返す刀を持ち合わせていないのか、すぐさま一蹴してしまう。
返答のレスポンスに間も躊躇いも無かったので、アキラたち一同、我を忘れてしまった。
「そんなものはないってどういうこと! いつもみたいに作戦があるんだよね?」
「何度も言わせるな。そんなものはない」
「……それってマジ?」
「マジに決まっているだろ。嘘を付いてどうする。この状況、アキラも気が付いているだろ」
Nightの機嫌は非常に悪かった。
アキラたち共々次第に早口になって行くと、現状を鑑みる羽目になる。
と言うのも、アキラたち全員スリップダメージを負っている。おまけに体も痛くて動かない。何故か、その理由は単純で、間欠泉の湧き上がったお湯を、全身に被ったからだった。
「推定温度は百℃を超えている。全身火傷だ。見た目にはボカして反映されているが、体を動かすことさえできないだろ」
「う、うん……」
「腕と脚以外は無事なんだけどなー。痛い、痛い痛い痛い」
「大丈夫ですか、フェルノさん。くっ、私も刀が握れれば……」
「片手武器ならまだマシよ。私なんて、両手なのよ? こんな状態で戦えるわけないじゃない」
アキラたちはお湯をまともに被っている。
そのせいで全身火傷を患っていた。
幸い、システム的な面で火傷しているようには見えないが、それでも赤く腫れ上がった演出がされており、アキラたち全員、武器を取ることさえできない。
つまり、戦うなんて馬鹿げた行為、最初からできる訳もなかった。
「あの瞬間に距離を取っていれば……な」
「今更言っても仕方ないよ。それより今は……」
自責するNightを前に、アキラは意識を切り替えて励ます。
むしろ今するべきはそんなことで嘆くのではない。
本当に必要なのは、シャープドラゴンから逃げることだった。
「ドラァァァァァァァァァァァァァァァン!」
シャープドラゴンは高らかに吠えた。
アキラたちの会話を目障りにでも感じたのか、全身をくねらせていた。
明らかに何か仕掛けて来る反応に、動けないアキラたちも自然と逃げる動作を取る。
「みんな、一旦離れるよ」
「あはは、そう来たー? それじゃあNight、捕まってー」
シャープドラゴンは攻撃モーションに入った。
頭の部分を後ろに下げると、エネルギーを蓄えている様子になる。
その仕草にアキラたちの思考は高速化すると、それぞれがスキルを発動した。
「【半液状化】」
「Night掴まって。【吸炎竜化】!」
アキラはスライムになると、跳ね回りながら逃げる。
Nightの体を腕で抱き寄せると、フェルノも竜の姿を取り、防護マスクを置き去りにする。
「ベル、火傷は大丈夫ですか?」
「当然大丈夫じゃないわよ。それじゃあ急ぐわよ」
「はい。もう時間がありませんね」
雷斬は【雷鳴】を呼ぶと、全身に雷と纏って直線距離で走る。
ベルも【風読み】で風を呼び込むと、火傷した部分が空気に触れないようにしながら、自分の足でシャープドラゴンから離れて行く。
「なんとか逃げられそうね……ちょっと待って」
「?」
「なにー? なに喋って……はっ」
ベルは嫌な予感がして仕方がない。
スライム状態で喋れないアキラと余裕そうに飛ぶフェルノ。
二人がベルの声に耳を傾けようとすると、振り返った瞬間、シャープドラゴンの異様な姿に目を見開いてしまった。
「そうよね、流石にこれだけ溜めが長いとね……そうよね?」
「!?!?」
「あはは、直線に逃げるのって心配だったかー」
アキラたちは逃げる余力さえなかった。
あまりの衝撃に全身が震え、体が全く言うことを聞いてくれない。
瞬きもできず眼前に浮かび上がったのは、シャープドラゴンが大口を開け、ギラリと牙を光らせながら、青白い閃光のビームを放った瞬間だった。
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