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◇510 妖帖の雅も協力……ん?

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 次の日のこと。アキラがギルドホームにやって来ると、Nightと雷斬の話し声が聞こえた。
 リビングに居るようで声を掛けようとする。
 するとNightの溜息が聞こえて来た。如何やら想定外のことが起きたらしい。

「おはよう、Night、雷斬」
「ああ、アキラか」
「おはようございます、アキラさん」

 挨拶をしてみると、Nightと雷斬はいつも通りだった。
 だから何てことないと思ったが、Nightの顔色は頗る良くない。

「……Night、なにかあったの?」
「ん? まあな」
「隠さないんだね。雷斬、原因は分かってるよね?」
「そうですね。実は昨日、ベルと共に妖帖の雅さんの下へ向かったのですが……」

 如何やら原因は昨日、雷斬とベルの二人で行って貰った妖帖の雅にあるらしい。
 何か吹き込まれたのか、面倒な条件でも出されたのか。
 アキラは軽く考えてみたものの、とりあえず結果の方を訊ねた。

「妖帖の雅の所に行ってくれたんだ。ちなみにどうだった?」
「はい。条件は出されてしまいましたが、無事に約束は取り付けられましたよ」
「そうなの!? こっちも上手く行った……条件?」
「話を逸らすな。条件が面倒なんだ」

 予想は大まか当たっていた。
 如何やら妖帖の雅に条件を出されてしまい、それを飲んだ上での同盟だった。
 正直、Deep Skyに比べれば真っ当だ。
 アキラはそう思う反面、Nightの顔色から嫌な予感がした。

「条件って、なにを言われたの?」
「それがですね、クロユリさんから頼まれたんです。源泉の調査を」
「ま、また!?」

 アキラは口があんぐりと開いてしまった。
 肩を落として落胆し、あの時の光景が思い起こされる。
 
「石灰の華のことだよね? また壊しに行くの?」
「いや、少し違うらしい。今回は炭化カルシウム案件じゃなさそうだ」
「そ、そうなの? えっ、それじゃあ一体……」

 アキラが雷斬の顔色を窺うと、視線が逸らされていた。
 雷斬自身も思うことがあるらしい。
 そのせいか、昨日のことを噛み砕いて話し出した。



「お願いできますか、クロユリさん」

 雷斬は妖帖の雅のギルドホームにて、クロユリに頭を下げていた。
 隣ではベルも深い礼を捧げると、クロユリは頭を上げて貰うように言った。

「雷斬さん、ベルさん、頭を上げてください」
「それでは、その……」
「もちろん構いませんよ。私たちの力でよければ、お貸しします」
「本当ですか!?」
「やったわね、雷斬」
「はい」

 雷斬とベルは大いに喜んだ。
 正直、交渉は難航すると思っていた。
 それもそのはず、相手はクロユリだ。上手く丸め込まれる未来が見えていた。
 
けれど蓋を開けてみれば一変。
クロユリはすんなりと飲んでくれたので、雷斬とベルは安堵する。
とは言え、あまりにも話が早すぎる気もした。そのせいだろうか、勘が鋭く警戒もしていた。

「あの、含みがありますよね?」
「えっ、なにを言っているんです?」
「とぼけなくても大丈夫よ。なにか裏があるんでしょ? クロユリのことだから、なにか条件でも出す気よね?」

 雷斬とベルはクロユリにはっきりと言い切った。
 するとクロユリは雷斬とベルの顔色をジッと見る。
 目を凝視すると、ゆっくりと目を閉じて、「そうですね」と答える。
 確実に条件提示をしてくる流れだ。

「それでは一つお願いしたいことがあります」
「「お願い?」」
「はい。実は最近、私たちギルドが代表して管理している源泉で、お湯が出にくくなっているんですよ。調査をして来て貰えますか?」
「「源泉の調査!?」」
「はい、源泉の調査です。お願いしましたよ、継ぎ接ぎの絆の皆さん」

 雷斬とベルは圧に言い負かされてしまった。
 もはや断る隙すら与えて貰えない。
 たじたじになりながらも、クロユリの作った笑顔に見送られ、条件を飲むしか無くなっていた。



「と言うことがありまして……」
「うわぁ、クロユリさんらしい」

 アキラは雷斬とベルの心中を察した。
 確かに考えてもみれば、初めからあからさまだった。
 すんなりと受けてくれる=裏に何かある。
 そこまで読んでおけばこんなことにはならなかった筈だが、時既に遅い。
 もはや受ける以外の選択肢は残されてはおらず、アキラはNightを見つめた。酷く項垂れていて、滅茶苦茶に嫌そうだった。

「源泉の調査か……受けるしかないだな」
「Night……無理しなくてもいいよ?」
「無理しないとダメだろ。源泉なんて場所、危険が絶えないんだ」
「ご、ごめんね」

 アキラは申し訳ない気持ちになった。
 けれどNightは「構わないと」と物調面になって答える。
 源泉の調査。二回目となる今回は準備をしっかりと行うと、フェルノとベルが来てから向かうことにした。
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