512 / 583
◇508 舐めてはいけないギルドだから
しおりを挟む
アキラたちはギルドホームへと戻っていた。
途中事情をなにも知らない雷斬とベルを拾うと、断片的に話を交えて説明をした。
それだけで話が全て伝わる訳も無いが、“面倒なこと”になったのは伝わった。
「それじゃあ今後どうするかの対策だけど、なにかあるかな?」
「いきなり丸投げ? 残念だけど、分からないわね」
「そうだよね……」
ベルに一撃で跳ね返されてしまった。
困ってしまったアキラは視線をNightへと預ける。
覚悟は決まっているものの、具体的な対策など、何一つできていない現状だ。
ここはNightの知恵を借りようとしたが、相手が相手だけのこともあり、慎重にならざるを得なかった。
「聖レッドローズ騎士団は強いぞ。さっきも説明したが……」
「説明されてないけど?」
「そうですね。私たちは、具体的な敵方の全容も知らないのですが……」
ベルと雷斬は口を挟んだ。けれどこれは当然のことで、説明をする義務があった。
けれどNightは全容を改めて話すことはせず、二人のことを一度遮った。
「正直、私たちの質は奴らよりも上だ。だが、それはあくまでも幹部と互角かそれ以上と言うだけだな」
「あっ、無視してる」
「無視じゃない、一度遮っただけだ。後で説明するから待っていろ」
Night自身も相当脳のキャパシティを使っているようだ。
そのせいもあり、反応が少しだけ鈍くなっている。
同時に四つの思考ができるとはいえ、数的有利を取られている現状、下手な手立ては首を絞めるだけだと気が付いていた。
「ちなみにさー、数の有利を覆す方法は無いのー?」
フェルノは数的有利の効く作戦を訊ねた。
戦国の世を生きた昔の偉人たちは、戦いの中で不利な状況に陥ったことは幾度となく。
にもかかわらず、その逆境を覆し、逆に利用した上で大国に勝利した。
そんな例もある程なので、フェルノも似たようなものがきっとある筈と思ったのだ。
「数的不利、かつ圧倒的な実力差だとすれば、桶狭間の戦いは有名だな」
「「「あー、それねー」」」
Nightは有名な戦を引き合いに出してみた。
アキラたち全員は共感し、ポンと手を叩いた。
数的不利、かつ経験値不足、おまけに地位にも差がある状況は、圧倒的な人数差に加えて、東ブロック一位のギルド、どちらも今川家らしい。
「どんな状況でも番狂わせを起こすことはできる。だが、今回のイベント、それまで保つだろうか?」
「そこだよね。今回のイベント、第一フェイズ:防衛・第二フェイズ:制圧・第三フェイズ:乱戦。番狂わせを起こすには、第三フェイズまで行かないとダメで、一度でもそれまでに負けたら、今回のイベントには再参加できない。ちょっと厳しい仕様だよね? 人数の差もあるから、第三フェイズまで行けるかどうか……」
「その点なら大丈夫だ。私達は少数精鋭。お互いに目を配り合えば、第三フェイズまでは行ける。とは言え、五対百は正直厳しいんだがな……」
人数差を覆すことがいつだってできる。
けれどそれまでに疲弊してしまえば元も子もない。
相手も同じなのだが、それに伴う消耗が桁違いだった。
「回復ポーションを買い込んでおかないとダメだよね?」
「それも然りだな」
「然りと言うことは、Nightさんが本当に必要なものは別にあると言うことですね」
「そうだな。私が欲しいのはいざと言う時の保険になる人手だ」
「「「人手?」」」
Nightが欲しがっているものは、絶望的にアキラたちに足りない物だった。
少数精鋭。たった五人だけのギルドに人手がある訳もない。
あまりにも遠いものを要求され困り果てるが、ふと気が付いた。
「Nightが人手が欲しいのって、どうして?」
「どうしてもなにも、人数がいれば対処は可能だ。聖レッドローズ騎士団の幹部は全部で十二人。その内の五つは欠員が出ているから、実質ギルドマスターとサブギルドマスターを除けば、敵は七人に+二人になる。九人を相手取るのは厳しいからな。優秀な傭兵でもいれば話も変わるだけの話だ」
如何やらNightが見ているのは幹部だけらしい。
団員に関しては有象無象として捉えているようで、そちらを相手取るための人手。
その確保が狙いだったが、残念なことに伝手が無かった。
「誰かに頼めればな……」
「それじゃあ頼んでみようよ!」
アキラは項垂れるNightに声を掛けた。
誰かに頼めば済む話なら、頼ってみればいいだけだ。
答えはあまりにも簡単で、迷っていた気持ちが吹っ切れる。
「誰かにって誰にだ?」
「Deep Skyと妖帖の雅だよ。どっちも並外れた強さを持ったギルドだよ?」
「それは分かっているが、借りれるのか?」
「それは分からないけど、頑張って交渉してみよう。使える物はなんでも使う。でしょ?」
アキラは意識を切り替え、Nightっぽく話した。
熱く語り、Nightにアピールをしてみると、額に手を当てた。
呆れられてしまった。アキラは自信を欠けたが、ニヤリと笑みを浮かべるNightの顔が飛び込んだ。
「いいだろ。交渉、やってくればいい」
「いいの? いいんだよね!?」
「ああ。だが交渉の必要はない。アキラ、お前なら分かるだろ」
「うん。それじゃあ今から行ってくるね! 雷斬、ベル、二人は妖帖の雅をお願い。私はDeep Skyに行くから」
アキラは早速席を立つと、ギルドホームを出てDeep Skyの下へと向かった。
思い立ったが吉日。そんな言葉もある程で、アキラは凄く生き生きしていた。
その後ろ姿を見守ったNightたちは、「元気だな」と呟きつつも行動に起こし、昂る気持ちに感化されていた。
途中事情をなにも知らない雷斬とベルを拾うと、断片的に話を交えて説明をした。
それだけで話が全て伝わる訳も無いが、“面倒なこと”になったのは伝わった。
「それじゃあ今後どうするかの対策だけど、なにかあるかな?」
「いきなり丸投げ? 残念だけど、分からないわね」
「そうだよね……」
ベルに一撃で跳ね返されてしまった。
困ってしまったアキラは視線をNightへと預ける。
覚悟は決まっているものの、具体的な対策など、何一つできていない現状だ。
ここはNightの知恵を借りようとしたが、相手が相手だけのこともあり、慎重にならざるを得なかった。
「聖レッドローズ騎士団は強いぞ。さっきも説明したが……」
「説明されてないけど?」
「そうですね。私たちは、具体的な敵方の全容も知らないのですが……」
ベルと雷斬は口を挟んだ。けれどこれは当然のことで、説明をする義務があった。
けれどNightは全容を改めて話すことはせず、二人のことを一度遮った。
「正直、私たちの質は奴らよりも上だ。だが、それはあくまでも幹部と互角かそれ以上と言うだけだな」
「あっ、無視してる」
「無視じゃない、一度遮っただけだ。後で説明するから待っていろ」
Night自身も相当脳のキャパシティを使っているようだ。
そのせいもあり、反応が少しだけ鈍くなっている。
同時に四つの思考ができるとはいえ、数的有利を取られている現状、下手な手立ては首を絞めるだけだと気が付いていた。
「ちなみにさー、数の有利を覆す方法は無いのー?」
フェルノは数的有利の効く作戦を訊ねた。
戦国の世を生きた昔の偉人たちは、戦いの中で不利な状況に陥ったことは幾度となく。
にもかかわらず、その逆境を覆し、逆に利用した上で大国に勝利した。
そんな例もある程なので、フェルノも似たようなものがきっとある筈と思ったのだ。
「数的不利、かつ圧倒的な実力差だとすれば、桶狭間の戦いは有名だな」
「「「あー、それねー」」」
Nightは有名な戦を引き合いに出してみた。
アキラたち全員は共感し、ポンと手を叩いた。
数的不利、かつ経験値不足、おまけに地位にも差がある状況は、圧倒的な人数差に加えて、東ブロック一位のギルド、どちらも今川家らしい。
「どんな状況でも番狂わせを起こすことはできる。だが、今回のイベント、それまで保つだろうか?」
「そこだよね。今回のイベント、第一フェイズ:防衛・第二フェイズ:制圧・第三フェイズ:乱戦。番狂わせを起こすには、第三フェイズまで行かないとダメで、一度でもそれまでに負けたら、今回のイベントには再参加できない。ちょっと厳しい仕様だよね? 人数の差もあるから、第三フェイズまで行けるかどうか……」
「その点なら大丈夫だ。私達は少数精鋭。お互いに目を配り合えば、第三フェイズまでは行ける。とは言え、五対百は正直厳しいんだがな……」
人数差を覆すことがいつだってできる。
けれどそれまでに疲弊してしまえば元も子もない。
相手も同じなのだが、それに伴う消耗が桁違いだった。
「回復ポーションを買い込んでおかないとダメだよね?」
「それも然りだな」
「然りと言うことは、Nightさんが本当に必要なものは別にあると言うことですね」
「そうだな。私が欲しいのはいざと言う時の保険になる人手だ」
「「「人手?」」」
Nightが欲しがっているものは、絶望的にアキラたちに足りない物だった。
少数精鋭。たった五人だけのギルドに人手がある訳もない。
あまりにも遠いものを要求され困り果てるが、ふと気が付いた。
「Nightが人手が欲しいのって、どうして?」
「どうしてもなにも、人数がいれば対処は可能だ。聖レッドローズ騎士団の幹部は全部で十二人。その内の五つは欠員が出ているから、実質ギルドマスターとサブギルドマスターを除けば、敵は七人に+二人になる。九人を相手取るのは厳しいからな。優秀な傭兵でもいれば話も変わるだけの話だ」
如何やらNightが見ているのは幹部だけらしい。
団員に関しては有象無象として捉えているようで、そちらを相手取るための人手。
その確保が狙いだったが、残念なことに伝手が無かった。
「誰かに頼めればな……」
「それじゃあ頼んでみようよ!」
アキラは項垂れるNightに声を掛けた。
誰かに頼めば済む話なら、頼ってみればいいだけだ。
答えはあまりにも簡単で、迷っていた気持ちが吹っ切れる。
「誰かにって誰にだ?」
「Deep Skyと妖帖の雅だよ。どっちも並外れた強さを持ったギルドだよ?」
「それは分かっているが、借りれるのか?」
「それは分からないけど、頑張って交渉してみよう。使える物はなんでも使う。でしょ?」
アキラは意識を切り替え、Nightっぽく話した。
熱く語り、Nightにアピールをしてみると、額に手を当てた。
呆れられてしまった。アキラは自信を欠けたが、ニヤリと笑みを浮かべるNightの顔が飛び込んだ。
「いいだろ。交渉、やってくればいい」
「いいの? いいんだよね!?」
「ああ。だが交渉の必要はない。アキラ、お前なら分かるだろ」
「うん。それじゃあ今から行ってくるね! 雷斬、ベル、二人は妖帖の雅をお願い。私はDeep Skyに行くから」
アキラは早速席を立つと、ギルドホームを出てDeep Skyの下へと向かった。
思い立ったが吉日。そんな言葉もある程で、アキラは凄く生き生きしていた。
その後ろ姿を見守ったNightたちは、「元気だな」と呟きつつも行動に起こし、昂る気持ちに感化されていた。
11
お気に入りに追加
223
あなたにおすすめの小説
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
春空VRオンライン ~島から出ない採取生産職ののんびり体験記~
滝川 海老郎
SF
新作のフルダイブVRMMOが発売になる。 最初の舞台は「チュートリ島」という小島で正式リリースまではこの島で過ごすことになっていた。
島で釣りをしたり、スライム狩りをしたり、探険したり、干物のアルバイトをしたり、宝探しトレジャーハントをしたり、のんびり、のほほんと、過ごしていく。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる