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◇506 合成獣VS赤薔薇少女の決着

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 アキラは赤薔薇少女に攻撃を叩き込んだ。
 喉にダメージを負うと、残ったHPが〇になる。

「あっ、……」

 赤薔薇少女はアキラにもたれかかった。
 その瞬間、アキラの目の前には文字が表示される。

[WINNER:アキラ!!]

 同時に勝利のファンファーレが鳴り響いた。
 如何やらアキラの勝ちのようで、ギリギリの戦いを制することができた。
 その余韻か、決闘場が消える頃には、アキラもホッと一息を付いていた。

「あ、危なかったよ」

 アキラは胸をソッと撫で下ろすと、赤薔薇少女を気遣う。
 肩で呼吸をしていて、スキルの反動を喰らっていた。
背中を擦り様子を窺うと、ポツポツ唇が動いていた。

「どうして……」
「どうして?」
「私が……負ける、なんて……あり得ないわ」

 赤薔薇少女は非常に悔しい思いをしていた。
 唇を噛み、拳を作り、全身が痙攣して震えている。
 負けを認められないようで、アキラは掛ける言葉も無かった。

「戦ってくれてありがとう。私は楽しかったよ。貴女は?」
「楽しかったなんて、そんなの訊かないでよ」
「ご、ごめんね。でも、最後まで全力を出し切ってくれたよね?」
「……そういう貴女は、最後まで余裕を隠していたわね。私、知ってたのよ。そんな舐めた奴に負けるなんて、私、悔しいわ」

 赤薔薇症状は耳の先まで真っ赤になっていた。
 全身が熱いせいなのか、それとも涙を流しているからか。
 その真相は髪を下ろし、表情を隠しているせいで分からなかった。

「くっ……とっとと離れなさい!」

 赤薔薇少女は悔しさの余りか、体を支えていたアキラを突き飛ばす。
 急なことに驚き仰け反ったアキラだったが、流石の体幹で耐え抜く。
 十メートルくらい距離を取られると、目元を拭った赤薔薇少女が立っていた。

「今回は私の負けね、それは認めてあげるわ」
「そっか。それじゃあ……」
「でもね、私はまだ完全に負けを認めてない!」
「は、はい?」

 赤薔薇少女は人差し指を突き付けた。
 負けず嫌いな性格のようで、真っ赤になった顔を表に出す。
 アキラの強さを勝利を認めるのは山々だが、それでも自分が完全に負けた訳じゃないと観衆にもアピールする。

「私は負けたわ。でも、私のギルドは貴女よりも強い」
「ギルド? それは人数差で……」
「そうね。でも私がギルマスのギルドは強いわよ。だからね、貴女を歓迎してあげるわ」
「は、はい?」

 赤薔薇少女はニヤッと笑みを浮かべた。
 突き出していた人差し指を開くと、まるで歓迎するように手を差し伸べる。

「もしかして私を勧誘してくれてるの?」
「当然よ。私を倒す程の実力者、放っておくわけないでしょ? 私をPvPで倒した実績を加味して、側近には置いてあげてもいいわよ」

 赤薔薇少女は高慢な態度を取っていた。とは言え実力は認めたらしい。
 けれどアキラはその誘いを断ることにする。
 もはや迷いはなく、アキラは他のギルドの加入する気は無いのだ。

「ありがとう、誘ってくれて。でも私は入れないよ」
「な、なんでよ。私のギルド、聖レッドローズ騎士団は最強のギルドなのよ!」
「聖レッドローズは知らないけど、私も継ぎ接ぎの絆のギルドマスターだから。だから無理なんだ。ごめんね。それと、私が勝ったから、二度と顔を合わせないは無理かもだけど、私の言うことに従わなくてもいいからね。お互いにフェアでGAMEを楽しも。ねっ」

 アキラはPvPの勝利者特権を剥き出した。
 すると赤薔薇少女は不満が募ったのか、表情が険しくなる。
 今にも地団駄を踏みそうで、アキラに苛立っているようだ。

「なによ、冗談でしょ? 悪いジョークよね?」
「冗談じゃないよ。それじゃあ私は行くから。またね」

 アキラはこれ以上深追いするのは危険だと思った。
 赤薔薇少女に背中を見せると、手を振って立ち去ろうとした。
 キザな態度を見せてしまったアキラは決してカッコ付けたつもりはない。
 けれど鼻に触ってしまったようで、赤薔薇少女は再度声を掛けた。

「ちょっと待ちなさい!」
「……まだなにかあるの? それじゃあフレンド登録でもする?」
「……しておくわ」
「しておくんだ。それじゃあ私のIDとそう言えば名前は……」

 アキラはこの流れでフレンド登録をしようとした。
 赤薔薇少女も乗ってくれたはいいものの、自分の気持ちを吐き出すことに夢中だ。

「次のイベント、ギルドで参加できるわ」
「そうなんだ」
「貴女も参加しなさい。最高戦力を持って、私達と勝負よ」
「また勝負するの? でもそれは私の一存じゃ決められないよ。ごめんね」
「問答無用よ」
「そんな横暴な。こっちにだって事情があるから……あ、あれ? ちょっと、おーい!」

 アキラは赤薔薇少女から突然の願い出しをされてしまった。
 しかし勝手なことはできないと悟り、アキラは抑える。
 けれど赤薔薇少女は一方通行で止めることができず、ましてやフレンド登録をすると顔を背けてしまった。

「私、まだ受けるなんて一言も言ってないよ」
「逃げるなら好きにすればいいわ」
「逃げるとかじゃないと思うけど……それより貴女の名前は? 私はアキラ、勝ったのは私なんだから教えてよね」

 アキラは赤薔薇少女が立ち去る前に名前を訊ねることにした。
 ここまで白熱する戦いを繰り広げた間からだ。
 お互いの名前くらいは知っておきたいと思ったのだが、赤薔薇少女は答えてくれていなかった。

「……ブローズよ」
「ブローズ? ブレイズとローズってこと? 良い語呂合わせの名前だね」
「チッ! いいわね、絶対イベントに参加しなさいよ。私が、私たちが叩き潰してあげるから。覚悟しなさいよ」

 ブローズはそう言うと、スタスタと人混みを抜けて行く。
 波に飲まれるように消えて行くと、寂しそうな背中を追うことはできない。
 アキラは何故か知らないが因縁を付けられてしまうと、困り顔を浮かべつつ、頬を掻き毟るだけだった。
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