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◇505 合成獣VS赤薔薇4
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炎の薔薇に飲み込まれ、アキラの姿は一瞬にして消えてしまった。
まるで蒸発したみたいに消し飛ばされ、黒い炭が残るだけ。
虚しさなどもなく、膨れ上がった炎の隙間から覗き込めるのは、精々その程度の情報で、逆にそれだけ得られれば赤薔薇少女の勝ちは確信的なものに変わった。
「やっぱり私の方が強かったわね。それにしてもここまで苦戦させるなんて、驚いたわ。でも、これで舐めた態度は……おかしいわね。どうして決闘終了の合図が無いの?」
赤薔薇少女は三十秒程一人喋っていた。
その間に決闘は終了し、WINNERの文字が出るはずだった。
しかしその算段は瓦解し、決闘が終わりを告げないことを、赤薔薇少女は内心焦っていた。
「ま、まさかとは思うけど、まだ終わって……」
「ないよ!」
何処からか声が聞こえた。アキラの声だ。
観衆は騒然として騒めき出し、赤薔薇少女も汗を流して周囲を見回す。
全身が炎に焼かれる中、不意に声がした方向に視線を飛ばす。
絶対にありえない。アキラのスキルではそんな真似できない。
などと見ただけの情報を頼りに探るが、上空を見た瞬間に驚愕した。
「と、飛んでる!?」
赤薔薇少女は仰け反ってしまった。
今にも腰を抜かしそうで、アキラはスキル【キメラハント】:【月跳】を使って上空多角へと避難し、炎を掻い潜っていたのだ。
そのせいか、薄っすらと見えるHPバーは減ったままで、追加のスリップダメージは一切無かった。
「一体どんなスキルなのよ。スキル、持ちすぎじゃない?」
赤薔薇少女はアキラのスキルの多様さに驚きを隠せない。
けれど負けた気は一切しない。
だからだろうか。赤薔薇少女は空中で無防備なアキラ目掛けて、【炎の薔薇】を連続で撃ち込んだ。
「私の攻撃を避けるなんて、流石って言いたわね。でも、その状態でコレは避けられるかしら!? 行きなさい!」
赤薔薇少女の掛け声の下、【炎の薔薇】がアキラの脇をすり抜けた。
熱い、熱すぎる。スリップダメージでHPが削れる。
揺らめいた炎がアキラを掠め取り、せっかく上空高く逃げたにもかかわらず、的も良い所だった。
「そうだよね。せっかく空に逃げてもこのままじゃ……でも近付けない。なんとかして炎を弾いて……よっと!」
アキラは【キメラハント】:【甲蟲】を発動。
その上から【灰爪】を纏うと、鋭い灰色の爪が飛んでくる炎の薔薇を弾く。
触れられるのは一瞬だけ。それ以上触れれば全身に炎が回って焼け死んでしまいそうだ。
「触れられるのは一瞬だけ……それなら、受け流すんだよね!」
アキラは炎の薔薇を腕で弾いた。
灰色の爪を使って突き刺すように突破する。
その動きは完全に炎を受け流しているように見え、赤薔薇少女は頭を悩ませた。
「ちょっと待って。そんなできるの!? でもそれじゃあ、私を倒せないわよ!」
赤薔薇少女は再び【炎の薔薇】を使った。
宙に出現した複数の炎の薔薇。アキラ目掛けて飛んでくると、距離も近いせいか避けられる気がしない。
「この距離は避けられない……ど、どうしよう。【半液状化】を使っても蒸発したらお終い。【幽体化】はあんまり見せたくない……えっと、えっと、私はなにが残って……そう言えば、より高温の炎なら攻撃ができるって言ってたような……でもそんな炎、私には出せない……それなら」
アキラは奥の手を使おうとした。
けれどすんでのところで止めることにする。
今アキラが使うのは【ユニゾンハート】じゃない。試したいのはもう一つのスキルだ。
「【キメラハント】:【触手】!」
アキラは赤薔薇少女に度肝を抜かせる。
新スキル、【触手】。一体どんなスキルなのかは分からないけれど、アキラは楽しく発動した。
胸を躍らせる高揚感。今は自分の力だけで戦いたい。
そう思ったからこそ、【ユニゾンハート】を使うことはせず、高温は出せなくても倒せることを証明しようとしたのだ。
「今度はなによ? って、首から変なものが……」
「嘘でしょ、首から出るの触手って? マフラーみたいだけど、ヌメヌメしていて気持ち悪い……」
アキラは【キメラハント】:【触手】を発動した。
すると丁度首の下、肩甲骨辺りから、まるでマフラーでもしているかのように、長くてヌメヌメとした触手が巻き付く。
想像していたものとあまりにもかけ離れていて、アキラは扱いに困ってしまう。
「ど、どう使ったらいいの!? えっ、こんな感じかな?」
アキラは半信半疑、扱いもよく分からないが触手を使ってみた。
【触手】のスキルを発動し、頭の中で自分の体の一部のように飛ばしてみる。
すると首に巻き付いていた触手は、眼下に浮かぶ赤薔薇少女目掛けて鞭のようにしなりながら飛んで行き、絡め取るような攻撃をしてみせた。
「ちょっと待って。流石に気持ち悪いんだけど……近付かないで!」
赤薔薇少女は生理的な嫌悪感から【炎の薔薇】を放った。
アキラのスキル【触手】を簡単に燃やしてしまい、蒸発しようとする。
しかし炎の中、ぬめりだけを取り除かれた触手がアキラにまで熱を伝えずに無傷で赤薔薇少女の体を捕らえていた。
ムニュ!
「嘘でしょ!? ちょっと離れなさいって、あんっ!? 何処に絡み付いてるのよ」
「な、なんかごめんね」
赤薔薇少女は触手を前にして全身を絡め取られてしまった。
腕と足、股の間や首を絞め付け、身動きを取れないようにする。
その間も絶えず【炎精化】を使い続け、全身を燃やしているのだが、【触手】攻撃を喰らってしまい、徐々に炎が出せなくなる。気力と意識を奪い取ると、やがて赤薔薇少女の体から炎が完全に消えてしまった。
「うおっ、なんかエロいな」
「街中であんな姿を晒すなんて」
「やっぱGAMEの中は最高だな、おい!」
「もっと、もっとやれ! 百合展開、俺は好きだぞ」
観衆の中から湧き上がる男性プレイヤーの声。
直で聞こえていた赤薔薇少女は顔を真っ赤にする。
今すぐここから消えたい。そう思う気持ちもさることながら、もはや勝ち負けの境地には立っていなかった。
「み、見ないでよ! くっ、早く殺して!」
「本当にごめんね。私も次までにはもっと上手く扱えるようにするから。本当にごめんね」
アキラも申し訳ない気持ちで一杯だった。
まさかこんなことになってしまうなんて思わず、アキラは急いで【触手】スキルを解除する。
これ以上赤薔薇少女を辱めてはいけない。そんな気持ちが先行すると、赤薔薇少女は解かれてしまった。
「やってくれたわね。死になさい!」
「は、反撃!? それなら私だって」
赤薔薇少女はこの時を待っていた。
触手が体から離れると、スキルを使わずに剣一本でアキラを仕留めに掛かる。
すると剣戟。ギラリと光る銀色の剣身。
アキラのことを袈裟切りで仕留めようとする中、アキラもスキル【甲蟲】で武装した右腕を前にかざした。
これで防御が間に合う。かと思われたが如何やら赤薔薇少女の狙いは別にあった。
「腕なんて狙ってないわよ。私が狙ってるのは……」
「肩だよね? 分かってるよ。だから隙を作ったんだ……これで私の勝ちだね
「えっ……がはっ!」
赤薔薇少女はアキラの肩を狙っていた。
一撃で仕留めて即死させる狙いだったのだ。
しかしアキラも読んでいた。
自らの意思でわざと右腕を差し出すと、体を低くして左腕一本に命運を預ける。
いつの間にかインベントリから取り出していたザクロ剣。
左の腰に納まっていると、下から上へと切り上げるように、手首のスナップを掛ける。
すると腰から外れたザクロ剣が、赤薔薇少女の攻撃よりも速く、赤薔薇少女の首を切り裂いていた。
声も出せない嗚咽を漏らして倒れる赤薔薇少女。
全身が仰け反り、反動でアキラへと倒れ込む。
赤薔薇少女の全体重を一人で支えたアキラは、赤薔薇少女のHPが〇になるのを最後に見届けるのだった。
まるで蒸発したみたいに消し飛ばされ、黒い炭が残るだけ。
虚しさなどもなく、膨れ上がった炎の隙間から覗き込めるのは、精々その程度の情報で、逆にそれだけ得られれば赤薔薇少女の勝ちは確信的なものに変わった。
「やっぱり私の方が強かったわね。それにしてもここまで苦戦させるなんて、驚いたわ。でも、これで舐めた態度は……おかしいわね。どうして決闘終了の合図が無いの?」
赤薔薇少女は三十秒程一人喋っていた。
その間に決闘は終了し、WINNERの文字が出るはずだった。
しかしその算段は瓦解し、決闘が終わりを告げないことを、赤薔薇少女は内心焦っていた。
「ま、まさかとは思うけど、まだ終わって……」
「ないよ!」
何処からか声が聞こえた。アキラの声だ。
観衆は騒然として騒めき出し、赤薔薇少女も汗を流して周囲を見回す。
全身が炎に焼かれる中、不意に声がした方向に視線を飛ばす。
絶対にありえない。アキラのスキルではそんな真似できない。
などと見ただけの情報を頼りに探るが、上空を見た瞬間に驚愕した。
「と、飛んでる!?」
赤薔薇少女は仰け反ってしまった。
今にも腰を抜かしそうで、アキラはスキル【キメラハント】:【月跳】を使って上空多角へと避難し、炎を掻い潜っていたのだ。
そのせいか、薄っすらと見えるHPバーは減ったままで、追加のスリップダメージは一切無かった。
「一体どんなスキルなのよ。スキル、持ちすぎじゃない?」
赤薔薇少女はアキラのスキルの多様さに驚きを隠せない。
けれど負けた気は一切しない。
だからだろうか。赤薔薇少女は空中で無防備なアキラ目掛けて、【炎の薔薇】を連続で撃ち込んだ。
「私の攻撃を避けるなんて、流石って言いたわね。でも、その状態でコレは避けられるかしら!? 行きなさい!」
赤薔薇少女の掛け声の下、【炎の薔薇】がアキラの脇をすり抜けた。
熱い、熱すぎる。スリップダメージでHPが削れる。
揺らめいた炎がアキラを掠め取り、せっかく上空高く逃げたにもかかわらず、的も良い所だった。
「そうだよね。せっかく空に逃げてもこのままじゃ……でも近付けない。なんとかして炎を弾いて……よっと!」
アキラは【キメラハント】:【甲蟲】を発動。
その上から【灰爪】を纏うと、鋭い灰色の爪が飛んでくる炎の薔薇を弾く。
触れられるのは一瞬だけ。それ以上触れれば全身に炎が回って焼け死んでしまいそうだ。
「触れられるのは一瞬だけ……それなら、受け流すんだよね!」
アキラは炎の薔薇を腕で弾いた。
灰色の爪を使って突き刺すように突破する。
その動きは完全に炎を受け流しているように見え、赤薔薇少女は頭を悩ませた。
「ちょっと待って。そんなできるの!? でもそれじゃあ、私を倒せないわよ!」
赤薔薇少女は再び【炎の薔薇】を使った。
宙に出現した複数の炎の薔薇。アキラ目掛けて飛んでくると、距離も近いせいか避けられる気がしない。
「この距離は避けられない……ど、どうしよう。【半液状化】を使っても蒸発したらお終い。【幽体化】はあんまり見せたくない……えっと、えっと、私はなにが残って……そう言えば、より高温の炎なら攻撃ができるって言ってたような……でもそんな炎、私には出せない……それなら」
アキラは奥の手を使おうとした。
けれどすんでのところで止めることにする。
今アキラが使うのは【ユニゾンハート】じゃない。試したいのはもう一つのスキルだ。
「【キメラハント】:【触手】!」
アキラは赤薔薇少女に度肝を抜かせる。
新スキル、【触手】。一体どんなスキルなのかは分からないけれど、アキラは楽しく発動した。
胸を躍らせる高揚感。今は自分の力だけで戦いたい。
そう思ったからこそ、【ユニゾンハート】を使うことはせず、高温は出せなくても倒せることを証明しようとしたのだ。
「今度はなによ? って、首から変なものが……」
「嘘でしょ、首から出るの触手って? マフラーみたいだけど、ヌメヌメしていて気持ち悪い……」
アキラは【キメラハント】:【触手】を発動した。
すると丁度首の下、肩甲骨辺りから、まるでマフラーでもしているかのように、長くてヌメヌメとした触手が巻き付く。
想像していたものとあまりにもかけ離れていて、アキラは扱いに困ってしまう。
「ど、どう使ったらいいの!? えっ、こんな感じかな?」
アキラは半信半疑、扱いもよく分からないが触手を使ってみた。
【触手】のスキルを発動し、頭の中で自分の体の一部のように飛ばしてみる。
すると首に巻き付いていた触手は、眼下に浮かぶ赤薔薇少女目掛けて鞭のようにしなりながら飛んで行き、絡め取るような攻撃をしてみせた。
「ちょっと待って。流石に気持ち悪いんだけど……近付かないで!」
赤薔薇少女は生理的な嫌悪感から【炎の薔薇】を放った。
アキラのスキル【触手】を簡単に燃やしてしまい、蒸発しようとする。
しかし炎の中、ぬめりだけを取り除かれた触手がアキラにまで熱を伝えずに無傷で赤薔薇少女の体を捕らえていた。
ムニュ!
「嘘でしょ!? ちょっと離れなさいって、あんっ!? 何処に絡み付いてるのよ」
「な、なんかごめんね」
赤薔薇少女は触手を前にして全身を絡め取られてしまった。
腕と足、股の間や首を絞め付け、身動きを取れないようにする。
その間も絶えず【炎精化】を使い続け、全身を燃やしているのだが、【触手】攻撃を喰らってしまい、徐々に炎が出せなくなる。気力と意識を奪い取ると、やがて赤薔薇少女の体から炎が完全に消えてしまった。
「うおっ、なんかエロいな」
「街中であんな姿を晒すなんて」
「やっぱGAMEの中は最高だな、おい!」
「もっと、もっとやれ! 百合展開、俺は好きだぞ」
観衆の中から湧き上がる男性プレイヤーの声。
直で聞こえていた赤薔薇少女は顔を真っ赤にする。
今すぐここから消えたい。そう思う気持ちもさることながら、もはや勝ち負けの境地には立っていなかった。
「み、見ないでよ! くっ、早く殺して!」
「本当にごめんね。私も次までにはもっと上手く扱えるようにするから。本当にごめんね」
アキラも申し訳ない気持ちで一杯だった。
まさかこんなことになってしまうなんて思わず、アキラは急いで【触手】スキルを解除する。
これ以上赤薔薇少女を辱めてはいけない。そんな気持ちが先行すると、赤薔薇少女は解かれてしまった。
「やってくれたわね。死になさい!」
「は、反撃!? それなら私だって」
赤薔薇少女はこの時を待っていた。
触手が体から離れると、スキルを使わずに剣一本でアキラを仕留めに掛かる。
すると剣戟。ギラリと光る銀色の剣身。
アキラのことを袈裟切りで仕留めようとする中、アキラもスキル【甲蟲】で武装した右腕を前にかざした。
これで防御が間に合う。かと思われたが如何やら赤薔薇少女の狙いは別にあった。
「腕なんて狙ってないわよ。私が狙ってるのは……」
「肩だよね? 分かってるよ。だから隙を作ったんだ……これで私の勝ちだね
「えっ……がはっ!」
赤薔薇少女はアキラの肩を狙っていた。
一撃で仕留めて即死させる狙いだったのだ。
しかしアキラも読んでいた。
自らの意思でわざと右腕を差し出すと、体を低くして左腕一本に命運を預ける。
いつの間にかインベントリから取り出していたザクロ剣。
左の腰に納まっていると、下から上へと切り上げるように、手首のスナップを掛ける。
すると腰から外れたザクロ剣が、赤薔薇少女の攻撃よりも速く、赤薔薇少女の首を切り裂いていた。
声も出せない嗚咽を漏らして倒れる赤薔薇少女。
全身が仰け反り、反動でアキラへと倒れ込む。
赤薔薇少女の全体重を一人で支えたアキラは、赤薔薇少女のHPが〇になるのを最後に見届けるのだった。
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