VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
507 / 599

◇503 合成獣VS赤薔薇2

しおりを挟む
 赤薔薇少女のその本質。
 アキラは目の前でそれを体験すると、全身の毛穴から沸騰するような汗が吹き出る。
 痛い、熱い。体感できる感覚を味わうと、アキラは嫌な予感がしてならない。

「もしかして、今から本気?」
「なに、その言い方。私が本気だと思ってたの?
「本気じゃないとは思ってたけど……全身が燃えてるよ?」
「そうね。私は燃えている……さぁ、終わらせましょうか」

 赤薔薇少女は両手に握った剣に炎を灯す。
 真っ赤に燃え上がる剣身。メラメラと燃え上がり、アキラのことを焼き払おうとする勢いだ。

「あっ、これヤバいやつだ」
「理解するのが遅いのよ! はぁっ!!」

 赤薔薇少女は剣を振るった。
 剣身を熱していた炎が猛り狂い、大き目の火球になって襲い掛かる。
 至近距離でアキラは逃げられない。
 全身を硬直させるには充分過ぎるインパクトで、アキラは当然動けない。

「アキラ!?」
「えっ、マジで?」
「嘘。これで終わりなの?」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」
 
 凄まじい歓声が上がった。
 赤薔薇少女が火球を放ち、アキラの姿を飲み込むと、地面に溜まっていた埃が舞う。
 何も見えない。しかしあまりの威力に誰しもが赤薔薇少女の勝利と決め、黄色い歓声を上げたのだ。

「ちょっと大人げなかったわね。でも残念、私のことを舐めた罰よ」

 赤薔薇少女は勝利を噛み締め誇りに思う。
 腰に手を当て、剣を地面に突き刺してもいた。
 完全に勝利の余韻に浸りきっている証拠で、薄っすらとした笑みを浮かべる。

「……変ね、決闘場が消えない。まさか、私が倒し損ねた?」

 赤薔薇少女は違和感を覚えていた。
 アキラを倒したのならば勝者は自分の筈。
 となればWINNERの文字と共に、高らかなファンファーレが鳴り響く筈だ。
 けれどそんな兆候は一切無く、待てど暮らせど、埃が舞うだけで、何も見えずに収まらない。

「……待って、ちょっと怖くなってきた。……まさかね、うわぁ!?」

 赤薔薇少女は埃の中に姿を消す。
 倒した筈のアキラが万に一つも潜んでいるかもしれない。
 そんな不安が過ってしまい、意を決して確認しに向かうと、喉を掴む腕を見た。

「な、なによ、これ。ガぁっ!! い、息ができ……あっ、がっ、ぐがぁっ!」

 アキラの伸びた腕、その手は灰色の爪で覆われていた。
 鋭い爪は鋼鉄そのもので、赤薔薇少女の首に深々と突き刺さる。
 痛い、苦しい、悲鳴が断末魔として聞こえると、アキラの鋭い眼が埃の中から赤薔薇少女を捉えていた。

「ごめんね、掴む所が悪かったよね?」

 アキラは申し訳なさそうな顔をしつつも、絶対に首を放したりしない。
 未だに燃え続ける赤い髪。いつ反撃が飛んでくるか怪しい。
 互いに鎬を削り合うと、赤薔薇少女が苦しみあぐねる中、先に動いた。

「こんなぁ、ことでゅえ、負けないわよ!」
「ちょっと、爆発なんて……【甲蟲】」

 赤薔薇少女の体が炎に包まれ、肥大化すると巨大な熱の塊になる。
 あまりの熱量に圧倒されてしまい、アキラは手を放すしかなかった。
 熱を全身で受け止めると即死。そう思い微かな防御をすると、埃が着火剤になり、決闘場の特設ステージ端まで吹き飛ばされてしまう。

「うおっ、はぁはぁ、まさかあんな大技を隠していたなんて……ん?」

 息を荒げて肩で呼吸をするアキラは、自然と口元を覆った。
 埃の中から出て来たアキラだったが、ふと観衆の目を惹き付けていることに気が付く。
 顔に付けたお面は驚愕の表情を浮かべていて、アキラがまだ倒されていなかったことに青ざめた声援を上げる。

「「「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」
「な、なんでそんな声上げるの? 私、全然やられてないのに。ほ、ほら、HPだってほとんど満タンで」
「だからだろ。あの攻撃を喰らってほとんどダメージが無いお前がおかしいんだ」

 青い声援の中、何故こんなことになっているのか分からないアキラに、一人Nightが答える。
 至近距離で火球をまともに喰らい、無事で済むなんて誰も思ってはいない。
 そんなのは当たり前のことで、アキラだけが納得できていない。

「だって当たってなかったから……って、そんなこと言ってる場合じゃないかも。さっきの攻撃、相当の自爆ダメージを受けている筈……あっ、やっぱり」

 アキラは埃の奥を凝視して見た。
 薄っすらと緑色のバーが見えるが、みるみるうちに減っていき、黄色から赤へと変わる。
 もう少しで倒れる。つまりは瀕死に状態で、バーの動きから息も絶え絶えだったが、力強さを感じ取っても居た。

「まだ戦えるんだね」
「当り前よ。あんな幕切れ、私は許さないわ」

 赤薔薇少女の強い感情が剣となって襲い掛かる。
 アキラはそれを真っ向から受け止めると、怪我の一つも負わずに受け流す。

「ごめんね、私もここまでやったからには負けられないんだ」
「お互いに負けたくない理由があるのね。いいわ。それじゃあこれで仕留めてあげる……私の全力、受けてみなさいよ」

 威勢の良さがまた一つ違うベクトルに変わる。
 対峙するアキラにはそれがいち早く伝わり、高揚感に変わった。
 口角が上がり、楽しいとまで思えてしまうと、爆発で巻き上がった埃の先、姿を現す赤薔薇少女がお目見えする。

「えっ、な、なにその姿?」
「これが私の種族スキル、【炎精化サラマンダー】よ。さぁ、始めようかしら」

 赤薔薇少女の姿形は人型。
 しかし燃えていたのは髪だけじゃない。
 全身が炎に包まれると、それは大きく膨らんで、まるで巨大な獣のように変わり果てていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『転生したら「村」だった件 〜最強の移動要塞で世界を救います〜』

ソコニ
ファンタジー
29歳の過労死サラリーマン・御影要が目覚めたのは、なんと「村」として転生した姿だった。 誰もいない村の守護者となった要は、偶然迷い込んできた少年リオを最初の住民として迎え入れ、徐々に「村」としての力を開花させていく。【村レベル:1】【住民数:0】【スキル:基本生活機能】から始まった異世界生活。

処理中です...