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◇498 結構適当過ぎませんか?
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エルエスタコーポレーション。
最上階付近に位置する社長室。
コーヒーを片手に、超高速で流れるコードの羅列を解析し、適宜キーボードを打ち込むエルエスタの姿があった。
「社長」
そこにやって来たのは男性。
きちんとした正装ではなく、むしろカジュアルでラフな格好が目立つ。
年齢はかなり若く、髪を若干赤く染め、少しだけ掻き上げている。
「博信さん」
エルエスタは手を止めた。
ふと視線を上げ、やって来た若い男性、梶博信を凝視する。
相変わらずの様子で、安心したのか、腰を預けていた椅子を滑らせる。
「お疲れさまでした、博信さん」
「いやいやお疲れなのは社長でしょ? 今回も俺、大したことしてないって」
博信はフランクに話しかけた。
エルエスタは無礼な言葉遣いの博信相手でも姿勢を変えない。
ましてやいつも通りの冷静沈着な態度を見せると、博信のことを讃える。
「実際、博信さんの情報は助かっていますよ。どんな非道なプレイヤーが関与しているか、分かりませんからね」
「あはは、そんなに社長の目を使えば一発でしょ?」
「それはそうですが、私ばかりが事を動かしても意味がありませんからね。私は、人の可能性を、奇跡と言う名の未知を私は追い求めてしまっていますから」
「ぶっちゃけ壮大ですけど、変わり者ですね、社長。そのカリスマ性があれば、簡単に夢が叶うのに」
「すぐに叶う夢、面白いですか?」
「あはは、確かにそうですね」
博信は笑ってエルエスタの話を聞いていた。
エルエスタの夢の果てが何を目的にしているのか分からない。
けれど博信はエルエスタに惹かれるものとして、早速仕事の話に戻った。
「んで、俺の方は以上なんですけど?」
「なるほど……確かに数人のプレイヤーの間で、不正及び他のプレイヤーとNPCに対して、不相応な行いを働いているみたいですね。……適宜、処罰の方をお願いしますね」
「へーい。社長は相変らず甘いですね」
「甘くて結構です。地獄を見るのは慣れ切ってしまっていますから」
「毎回思うんですけど、それなんですか? って、社長は教えてくれないんでしょうけど」
博信はエルエスタの見ているものが分からなかった。
理解しようとしても理解しきれないもの。
何故かそんな障害が妨げになってしまい、近付くことさえできないのだ。
だからだろうか。博信はこれ以上、この話の輪を広げようとはせず、むしろ話題を方向転換させる。
「それより社長、今回のイベントの話聞きましたよ。また面倒なイベントじゃないですか?」
「そうですね。プレイヤーの一瞬の思考と選択が求められるサバイバルイベントです」
「バトルの皮を被ったってことですね。んじゃ、不正が横行する可能性も……」
「それを未然に防ぐのが、貴方の役割の一つでもありますがね」
「善処するんで、大目に見てくださいよ。んで、なんで半チャーハンなんですか?」
博信はエルエスタにイベントタイトルの意味を訊ねる。
未だに“半チャーハン”が理解できない。
何処から来て、何処にやって来たのか、博信は頭を抱えると、疑問を直接伝えたのだ。
「ああ、そんなことですか」
エルエスタはあまりにもしょうもない話で、呆れてしまいそうになる。
腰を預ける椅子を、より一層だらけた体勢になると、コーヒーを一口飲む。
「私が行きつけの中華屋さんで半チャーハンを貰ったからですよ。その際、閃いたんです」
「えっ?」
博信は嘘だと思った。そんなしょうもない物じゃないと思ってしまった。
しかしながらエルエスタは嘘偽りがない。
本当のことを伝えると、無言でコーヒーを飲み、黄昏てしまう。
「ま、マジですか? そんなしょうもないタイトルでいいんですか?」
「いいですよ。タイトルで卑下するようならそれまでです。それもまた選択。ましてや内容を噛み砕いたとして、参加するのかどうかさえ選択です。全ては当事者自身の自由であり、私はあくまでもその場を提供するだけですので、所詮タイトル風情に価値は無いんです。もっとも、タイトルは常に重要ですけどね」
「どっちなんですか?」
「さぁ、今回はどっちなんでしょうかね」
エルエスタはコーヒーを再び飲むと、仕事の作業へと戻ってしまう。
これ以上言葉を投げ掛けても、右から左に聞き流した上で、適宜回答されるに決まっている。
博信はそう思うと、頭を掻き毟り、呆れることを辞めた。
「んじゃ俺は社長に従いますよ。今回のイベントでも、できる限りのことはしてみますよ」
「お願いしますよ、博信さん。それとも××と呼べばよいでしょうか?」
「その名前はここでは伏せといてくださいよ。……それと、社長のお気に入りの子も見てきます」
「変なことはしないでくださいね。彼女や彼女たちの成長は、彼女たちで掴むものですから」「分かってますよ。俺がやるのは精々ちょっとした後押しだけですから」
そう言い残すと、博信は社長室を後にした。
いつもの自分の個室へと消えて行く。
今日も今日とてログインし、自分がやるべきことを全うするための時間にするのだった。
最上階付近に位置する社長室。
コーヒーを片手に、超高速で流れるコードの羅列を解析し、適宜キーボードを打ち込むエルエスタの姿があった。
「社長」
そこにやって来たのは男性。
きちんとした正装ではなく、むしろカジュアルでラフな格好が目立つ。
年齢はかなり若く、髪を若干赤く染め、少しだけ掻き上げている。
「博信さん」
エルエスタは手を止めた。
ふと視線を上げ、やって来た若い男性、梶博信を凝視する。
相変わらずの様子で、安心したのか、腰を預けていた椅子を滑らせる。
「お疲れさまでした、博信さん」
「いやいやお疲れなのは社長でしょ? 今回も俺、大したことしてないって」
博信はフランクに話しかけた。
エルエスタは無礼な言葉遣いの博信相手でも姿勢を変えない。
ましてやいつも通りの冷静沈着な態度を見せると、博信のことを讃える。
「実際、博信さんの情報は助かっていますよ。どんな非道なプレイヤーが関与しているか、分かりませんからね」
「あはは、そんなに社長の目を使えば一発でしょ?」
「それはそうですが、私ばかりが事を動かしても意味がありませんからね。私は、人の可能性を、奇跡と言う名の未知を私は追い求めてしまっていますから」
「ぶっちゃけ壮大ですけど、変わり者ですね、社長。そのカリスマ性があれば、簡単に夢が叶うのに」
「すぐに叶う夢、面白いですか?」
「あはは、確かにそうですね」
博信は笑ってエルエスタの話を聞いていた。
エルエスタの夢の果てが何を目的にしているのか分からない。
けれど博信はエルエスタに惹かれるものとして、早速仕事の話に戻った。
「んで、俺の方は以上なんですけど?」
「なるほど……確かに数人のプレイヤーの間で、不正及び他のプレイヤーとNPCに対して、不相応な行いを働いているみたいですね。……適宜、処罰の方をお願いしますね」
「へーい。社長は相変らず甘いですね」
「甘くて結構です。地獄を見るのは慣れ切ってしまっていますから」
「毎回思うんですけど、それなんですか? って、社長は教えてくれないんでしょうけど」
博信はエルエスタの見ているものが分からなかった。
理解しようとしても理解しきれないもの。
何故かそんな障害が妨げになってしまい、近付くことさえできないのだ。
だからだろうか。博信はこれ以上、この話の輪を広げようとはせず、むしろ話題を方向転換させる。
「それより社長、今回のイベントの話聞きましたよ。また面倒なイベントじゃないですか?」
「そうですね。プレイヤーの一瞬の思考と選択が求められるサバイバルイベントです」
「バトルの皮を被ったってことですね。んじゃ、不正が横行する可能性も……」
「それを未然に防ぐのが、貴方の役割の一つでもありますがね」
「善処するんで、大目に見てくださいよ。んで、なんで半チャーハンなんですか?」
博信はエルエスタにイベントタイトルの意味を訊ねる。
未だに“半チャーハン”が理解できない。
何処から来て、何処にやって来たのか、博信は頭を抱えると、疑問を直接伝えたのだ。
「ああ、そんなことですか」
エルエスタはあまりにもしょうもない話で、呆れてしまいそうになる。
腰を預ける椅子を、より一層だらけた体勢になると、コーヒーを一口飲む。
「私が行きつけの中華屋さんで半チャーハンを貰ったからですよ。その際、閃いたんです」
「えっ?」
博信は嘘だと思った。そんなしょうもない物じゃないと思ってしまった。
しかしながらエルエスタは嘘偽りがない。
本当のことを伝えると、無言でコーヒーを飲み、黄昏てしまう。
「ま、マジですか? そんなしょうもないタイトルでいいんですか?」
「いいですよ。タイトルで卑下するようならそれまでです。それもまた選択。ましてや内容を噛み砕いたとして、参加するのかどうかさえ選択です。全ては当事者自身の自由であり、私はあくまでもその場を提供するだけですので、所詮タイトル風情に価値は無いんです。もっとも、タイトルは常に重要ですけどね」
「どっちなんですか?」
「さぁ、今回はどっちなんでしょうかね」
エルエスタはコーヒーを再び飲むと、仕事の作業へと戻ってしまう。
これ以上言葉を投げ掛けても、右から左に聞き流した上で、適宜回答されるに決まっている。
博信はそう思うと、頭を掻き毟り、呆れることを辞めた。
「んじゃ俺は社長に従いますよ。今回のイベントでも、できる限りのことはしてみますよ」
「お願いしますよ、博信さん。それとも××と呼べばよいでしょうか?」
「その名前はここでは伏せといてくださいよ。……それと、社長のお気に入りの子も見てきます」
「変なことはしないでくださいね。彼女や彼女たちの成長は、彼女たちで掴むものですから」「分かってますよ。俺がやるのは精々ちょっとした後押しだけですから」
そう言い残すと、博信は社長室を後にした。
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