498 / 570
◇494 雷撃の一撃
しおりを挟む
雷斬のおかげか、アキラはまだまだ立ち上がれる。
とは言え、寒天スライムは攻撃して来ない。
反撃が無いからカウンターも無駄。
となれば話は単純で、最大攻撃力で押し切るのだ。
「とは言っても、私の攻撃、みんな打撃なんだよね」
「そうですね。アキラさんの攻撃は打撃が中心。かと言って、私も斬撃が基本です」
「打撃と斬撃。どっちも効かない……ってことは」
「打つ手無し……ではないですね」
ここで打つ手が無いと言い切れば話は簡単だ。
けれどアキラも雷斬も手段が無いとは思えない。
どんな相手だって、発想の転換と実力があれば倒せる。
レベル差なんて関係ない。それがこのGAMEの特徴の一つだ。
「アキラさん、少し試してみたいことがあるのですが」
「試してみたいこと?」
「はい。ですが少し危険ですので……」
「離れればいいんだね。それじゃあ私は少し離れるよ」
如何やら雷斬には作戦があるらしい。
試してみたいことが何かは分からないが、危ないことは分かった。
アキラは雷斬の邪魔にならないよう、少しだけ離れる。
けれどそれでは足りないようで、首を横に振った。
「アキラさん、もう少しだけ離れていただけますか?」
「えっ、まだ離れるの?」
大体十メートルは距離を置いたはずだ。
これでも足りないようで、アキラは更に離れ、三十メートル程距離を取る。
「これでいい、雷斬?」
「もう少しお願いします」
「まだ離れるの?」
一体どんな作戦を思いついたのか、逆に怖くなってしまう。
けれど言われるがままアキラは離れ、五十メートルも距離を取る。
すると雷斬は安心した様子で、背中を向けると、何やら種族スキルを発動した。
「来てください、【雷鳴】!」
雷斬は全身に雷を纏った。
種族スキル【雷鳴】。
眩い閃光と共に振り落ちた雷が、音と共に雷斬の肌を焼く。
全身で浴びる雷は身体機関を極限まで高めると、そのまま技を取らせた。
「寒天スライム。確かに攻撃はして来ないので、良い的にはなりますね」
雷斬は寒天スライムが動かない強敵であることを練習用の良い的に例える。
その表情はいつもとは異なり愉悦に満ちていた。
存分に力を振り払える。そんな相手を目前に構えると、刀の持ち方を少しだけ変えた。
「ですが良い的であるということは、私に切られる覚悟があると受け取っても構いませんよね。アキラさんにも離れていただいた手前、確実に仕留めます」
雷斬は絶対の自信を持っていた。
全身に纏った雷を、愛刀雷氣十手丸の刀身に集める。
この刀には電気を貯める作用がある。莫大な電気を貯めることができる。ともなれば、きっと破壊力も想像を絶する筈だ。
「なにからなにまで丁度いいですね。私の技、試させて貰います」
雷斬は軸足を残し、利き足を後ろに大きく下げる。
刀を肩に掛け、そのまま背中が仰け反る勢いだ。
あまりにも無防備な体勢。かと思ったのも束の間、雷氣十手丸に電光が走り、青白く煌めく。
「雷撃罰虎!」
雷斬は目を見開くと、狂気にさえ浸りそうな勢いで、刀を振り抜いた。
すると雷氣十手丸の刀身が電気を放ち、距離を取っていたにもかかわらず、刀身が伸びる。
爆発的な光が雷斬を襲うと、離れていたアキラは雷斬の姿が見えなくなった。
「雷斬!」
叫んだところで届かない。
光は音よりも速く駆け抜け、寒天スライムの体を貫く。
ただの斬撃じゃない。その姿は荒々しい虎のようで、雷を纏った電光の虎が寒天スライムに牙を剥いた。
「この一撃は防げません。いくら打撃も斬撃も効かないとしてもです」
雷斬は不敵な笑みを浮かべていた。
まさしく勝利を確信した表情で、光に飲み込まれる中、雷の虎が牙を剥き、寒天スライムに食らいつくと、そのまま帯電させて透過するのを目撃する。
「雷を水分が吸収したとしても変わりません。あくまでもこの技は、電撃を纏った斬撃ですから」
寒天スライムは雷の虎を飲み込むと、青白い体が眩しく光る。
体の中でバチバチと光信号が点滅し、プラズマが繋がって内側から破壊する。
どれだけ寒天スライムが強くても、それはあくまでも表面上の話だ。
となれば、内側から破壊すれば早いのだ。
「振動が雷を加速させました。ですので貴方は……」
雷斬が語っていると、急に寒天スライムに異変が生じる。
内側が萎み始め、ボコボコと沸騰したように蠢き出す。
これは何が起きているのか。そう思ったのも束の間、急に寒天スライムは……
ボォーン!
美しく破裂した。
けたたましい雷鳴を残すと、残響として耳を劈く。
鼓膜を守るように雷斬は耳元を覆い、雷氣十手丸を地面に突き刺す。
「お終いですので」
雷斬はにこやかな笑みを浮かべると、呆気ない幕切れを寂しく思える。
それだけ余裕な勝利に味気なさを感じるも、ふと自分の腕を見れば痙攣していた。
あまりの一撃に体が悲鳴を上げている。
そんな状況さえ、必要経費とばかりに雷斬は捉えると、腕の痙攣を抑え込みながら、刀を突き上げアキラに勝利を知らせるのだった。
とは言え、寒天スライムは攻撃して来ない。
反撃が無いからカウンターも無駄。
となれば話は単純で、最大攻撃力で押し切るのだ。
「とは言っても、私の攻撃、みんな打撃なんだよね」
「そうですね。アキラさんの攻撃は打撃が中心。かと言って、私も斬撃が基本です」
「打撃と斬撃。どっちも効かない……ってことは」
「打つ手無し……ではないですね」
ここで打つ手が無いと言い切れば話は簡単だ。
けれどアキラも雷斬も手段が無いとは思えない。
どんな相手だって、発想の転換と実力があれば倒せる。
レベル差なんて関係ない。それがこのGAMEの特徴の一つだ。
「アキラさん、少し試してみたいことがあるのですが」
「試してみたいこと?」
「はい。ですが少し危険ですので……」
「離れればいいんだね。それじゃあ私は少し離れるよ」
如何やら雷斬には作戦があるらしい。
試してみたいことが何かは分からないが、危ないことは分かった。
アキラは雷斬の邪魔にならないよう、少しだけ離れる。
けれどそれでは足りないようで、首を横に振った。
「アキラさん、もう少しだけ離れていただけますか?」
「えっ、まだ離れるの?」
大体十メートルは距離を置いたはずだ。
これでも足りないようで、アキラは更に離れ、三十メートル程距離を取る。
「これでいい、雷斬?」
「もう少しお願いします」
「まだ離れるの?」
一体どんな作戦を思いついたのか、逆に怖くなってしまう。
けれど言われるがままアキラは離れ、五十メートルも距離を取る。
すると雷斬は安心した様子で、背中を向けると、何やら種族スキルを発動した。
「来てください、【雷鳴】!」
雷斬は全身に雷を纏った。
種族スキル【雷鳴】。
眩い閃光と共に振り落ちた雷が、音と共に雷斬の肌を焼く。
全身で浴びる雷は身体機関を極限まで高めると、そのまま技を取らせた。
「寒天スライム。確かに攻撃はして来ないので、良い的にはなりますね」
雷斬は寒天スライムが動かない強敵であることを練習用の良い的に例える。
その表情はいつもとは異なり愉悦に満ちていた。
存分に力を振り払える。そんな相手を目前に構えると、刀の持ち方を少しだけ変えた。
「ですが良い的であるということは、私に切られる覚悟があると受け取っても構いませんよね。アキラさんにも離れていただいた手前、確実に仕留めます」
雷斬は絶対の自信を持っていた。
全身に纏った雷を、愛刀雷氣十手丸の刀身に集める。
この刀には電気を貯める作用がある。莫大な電気を貯めることができる。ともなれば、きっと破壊力も想像を絶する筈だ。
「なにからなにまで丁度いいですね。私の技、試させて貰います」
雷斬は軸足を残し、利き足を後ろに大きく下げる。
刀を肩に掛け、そのまま背中が仰け反る勢いだ。
あまりにも無防備な体勢。かと思ったのも束の間、雷氣十手丸に電光が走り、青白く煌めく。
「雷撃罰虎!」
雷斬は目を見開くと、狂気にさえ浸りそうな勢いで、刀を振り抜いた。
すると雷氣十手丸の刀身が電気を放ち、距離を取っていたにもかかわらず、刀身が伸びる。
爆発的な光が雷斬を襲うと、離れていたアキラは雷斬の姿が見えなくなった。
「雷斬!」
叫んだところで届かない。
光は音よりも速く駆け抜け、寒天スライムの体を貫く。
ただの斬撃じゃない。その姿は荒々しい虎のようで、雷を纏った電光の虎が寒天スライムに牙を剥いた。
「この一撃は防げません。いくら打撃も斬撃も効かないとしてもです」
雷斬は不敵な笑みを浮かべていた。
まさしく勝利を確信した表情で、光に飲み込まれる中、雷の虎が牙を剥き、寒天スライムに食らいつくと、そのまま帯電させて透過するのを目撃する。
「雷を水分が吸収したとしても変わりません。あくまでもこの技は、電撃を纏った斬撃ですから」
寒天スライムは雷の虎を飲み込むと、青白い体が眩しく光る。
体の中でバチバチと光信号が点滅し、プラズマが繋がって内側から破壊する。
どれだけ寒天スライムが強くても、それはあくまでも表面上の話だ。
となれば、内側から破壊すれば早いのだ。
「振動が雷を加速させました。ですので貴方は……」
雷斬が語っていると、急に寒天スライムに異変が生じる。
内側が萎み始め、ボコボコと沸騰したように蠢き出す。
これは何が起きているのか。そう思ったのも束の間、急に寒天スライムは……
ボォーン!
美しく破裂した。
けたたましい雷鳴を残すと、残響として耳を劈く。
鼓膜を守るように雷斬は耳元を覆い、雷氣十手丸を地面に突き刺す。
「お終いですので」
雷斬はにこやかな笑みを浮かべると、呆気ない幕切れを寂しく思える。
それだけ余裕な勝利に味気なさを感じるも、ふと自分の腕を見れば痙攣していた。
あまりの一撃に体が悲鳴を上げている。
そんな状況さえ、必要経費とばかりに雷斬は捉えると、腕の痙攣を抑え込みながら、刀を突き上げアキラに勝利を知らせるのだった。
11
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
フェル 森で助けた女性騎士に一目惚れして、その後イチャイチャしながらずっと一緒に暮らす話
カトウ
ファンタジー
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
チートなんてない。
日本で生きてきたという曖昧な記憶を持って、少年は育った。
自分にも何かすごい力があるんじゃないか。そう思っていたけれど全くパッとしない。
魔法?生活魔法しか使えませんけど。
物作り?こんな田舎で何ができるんだ。
狩り?僕が狙えば獲物が逃げていくよ。
そんな僕も15歳。成人の年になる。
何もない田舎から都会に出て仕事を探そうと考えていた矢先、森で倒れている美しい女性騎士をみつける。
こんな人とずっと一緒にいられたらいいのにな。
女性騎士に一目惚れしてしまった、少し人と変わった考えを方を持つ青年が、いろいろな人と関わりながら、ゆっくりと成長していく物語。
になればいいと思っています。
皆様の感想。いただけたら嬉しいです。
面白い。少しでも思っていただけたらお気に入りに登録をぜひお願いいたします。
よろしくお願いします!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております。
続きが気になる!もしそう思っていただけたのならこちらでもお読みいただけます。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる