VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

文字の大きさ
上 下
497 / 599

◇493 寒天スライム

しおりを挟む
 アキラと雷斬は困っていた。
 目の前に立ち塞がる強大な敵。
 その名は寒天スライム。通常スライムよりも、よりプルンプルンしていて、あらゆる攻撃を吸収する面倒な相手。
 一般的にはそんな認識なのだが、その脅威は実際に直面してこそ初めて理解できた。

「つ、強いよね」
「はい。単純な強さではなく、倒せない面で強さを発揮していますね」

 寒天スライムにここまで幾度となく攻撃を繰り出していた。
 アキラはパンチにキックと物理による打撃を連発する。
 
雷斬も続けるように愛刀、雷氣十手丸を叩き付ける。
十手状の刃をスルリと打ち込もうと画策するも、全く意味がない。
斬撃攻撃でトドメを刺そうにも、攻撃が弾かれてしまったのだ。

「もう一回やってみる?」
「そうですね。ここはもう一度」

 アキラと雷斬は完全に馬鹿の一つ覚えだった。
 作戦なんて巧妙なものは一切無く、攻撃を繰り出すだけ。

「【キメラハント】:【甲蟲】+【月跳】」
「私も本当は使いたくなかったですが……仕方ありませんね」

 アキラは固有スキルで武装する。
 奪い続けて来た信頼のおけるスキルを全身に纏うと、ステップを踏んで無駄に撹乱する。

 一方の雷斬もここまで温存していた技を使うことにした。
 本当は使いたくは無かった。
 けれどここまで防御特化の相手ならば、使わざるを得ないと確信したのだ。

「せーのっ!」
「濁雨!」

 アキラは飛び上がると、重力を味方にすることにした。
 パンチとキック。二つを上手く組み合わせれば、自分が弾丸になれる。
 そんなイメージを持ってして、アキラは寒天スライムに突激した。

 ボヨーン!

「嘘でしょ、これでもダメなの!?」

 アキラは寒天スライムに突撃した。
 しかし寒天の性質に阻まれてしまい、巨大なトランポリンにダイブした感覚。
 寒天のスライムの体が歪み、アキラの衝撃は全部吸収されると、そのままさっきと同様吹き飛ばされてしまった。

「アキラさん……私の技なら」

 雷斬は袈裟切りを繰り出す。
 けれどただの袈裟切りじゃない。
 刀の刀身が振動し、プルプルと震え出すと、その芯の部分を決して見せずに、寒天スライムのプルプルした体表に触れた。これなら確実に通る筈だと確信していたのだ。

「そう甘くはありませんか」

 しかし雷斬の思惑は外れてしまった。
 技を繰り出したはずが、いくら振動を味方に付けたとしても、決して攻撃は届いてくれない。
 寒天スライムの寒天性能がやけに邪魔立てしてきて、どんな斬撃も弾いてしまった。

「それでは……熱波斬!」

 雷斬は距離を取ると、刀を横に構える。
 利き足を前に出し、軸足を下げて体を支えると、そのまま刀を後方にまで下げる。
 半回転を腰から付けると、そのまま思いっきり全身を使って打ち込む。

「そりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 雷斬の斬撃は熱を帯びていた。
 空気を震わせたことで、軽い火花が起こり、着火剤の刀身を糧にして、酸素に引火し火を付ける。

 薄っすらと視界に映り込む赤い炎。
 寒天スライムの体の表面を射ると、炎で焼き払おうとする。
 いくら寒天スライムとは言えど、相手はスライム。
 水分が多いクラゲと同じならば、蒸発させてしまうのがいい。
 雷斬はあまり望んでいない幕引きを望むが、残念なことに寒天スライムは依然と無敵だった。

 プシュゥー!

「えっ、嘘ですよね? ひやっ!」

 かと思えば熱によって表膜を剥がされた寒天スライムは、体に亀裂が入ってしまった。
 ここから水が抜ければいい。
 そう思った一瞬の過ちを恥じると、強烈な水柱が雷斬のことを襲った。

「ぐはっ……げほっ、げほっげほっ!」

 全身打撲は必死の一撃を喰らってしまった。
 咳き込んだ雷斬は地面に倒れると、全身が水浸しにされる。
 着ていた服が濡れると肌が透け、柔肌がピタッとしたため露わになった。

「ううっ、雷斬、大丈夫?」
「は、はい。ですが……」
「ですがの前に、雷斬、肌が透けてるよ?」
「そうですね。ですが今は大丈夫です。ここには私とアキラさんだけ。それよりもやるべきことは……」

 雷斬は自分のみに起きた事は、一切見向きもしなかった。
 そのことにアキラは動揺するも、すぐさま意識を切り替えると、言葉を繋げた。

「やるべきこと……寒天スライム、どうやって倒したらいいんだろう」

 正直、ここまでの相手とは思っていなかった。
 完全に舐めていたアキラと雷斬の敗因。
 ここは一度で直すのも手だと思ったのも束の間、雷斬は雷氣十手丸を手に立ち上がる。

「まだ手は残されています」
「そうなの?」
「はい。今までは私達だけの、あくまでも技術的な力を見せていただけです。ともなれば、それ以外を信じるのも一つの手ではないですか?」
「つまり、武器とか地形とか、そういうこと?」
「ご名答です。流石はアキラさんです。ですので、まだ諦めるには早すぎますよ」

 雷斬は全くと言って良い程、臆してはいなかった。
 むしろここからが正念場だとばかりに楽しんでいる。

「そっか。それじゃあ頑張ってみようよ」
「はい!」

 闘志をその目に燃やしていたので、アキラも負けられないと奮起する。
 コクリと首を縦に振り、自らも立ち上がると、頑張ってみることにした。
しおりを挟む
ツギクルバナー
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...