VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇488 刀が欲しいか?

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 アキラは刀刃に改めて訊ねることにした。
 もしかすると揶揄われただけかもしれない。
 その可能性を否定するため、アキラはゴクリと喉を鳴らす。

「刀刃さん、刀を作っているんですよね? よければ見せて貰えませんか?」
「急に食い付くな。なにかあったのか?」
「はい、ありました」
「即答か。……確かに刀は作っている。と言うよりも打っている……が、今は無いな」

 刀刃はアキラの問いに答えてくれた。
 如何やら本当に刀を打っているようで、アキラは何だか安心した。
 このまま刀が一章見つからないんじゃないかと、恐怖心が過っていたが、それすら無意味だったと判れた。

「今は無いんですか?」
「ああ、こっちじゃ売れないからな」
「売れない……それって」
「このGAMEじゃ、武器を装備することの価値は低いからな」

 刀刃の言う通り、このGAMEでは武器の価値が非常に低い。
 アキラたちの出会った人たちが武器を多く使用するだけ。
 実際には、武器使用車の人口は極端とは言わないが、優先度的に低い。
 それが残念な現状で、アキラたちが如何足搔こうが変わらない。

「本当、武器の良さがなにも分かってない」
「あ、あはは……でも私はこの剣好きですよ?」
「そうか……ところで、なんで刀が必要なのか、もう少し詳しく訊いてもいいか?」
「あっ、はい。実は……」

 アキラは刀刃に事情を説明した。
 仲間の一人が戦いの最中、大事にしていた刀を折ってしまった。
 その結果、今では手刀で戦う始末。そんな状態じゃ、いつまでもまともな戦闘はできないので、早く刀を手に入れるしかない。

 けれどここで問題なのは、刀を売っている場所が少ない。
 そもそも武器の需要があまりないGAMEなので致し方は無い。
 けれどそんな貴重な武器を手に入れられないとなると、この先が心配で心配で仕方ないのだ。

 そんな思いを吐露すると、刀刃は真剣に耳を傾けてくれていた。
 雷斬がどれだけ刀を大事に扱って来たのか。それだけ凄い剣士であるのか。
 できるだけ褒める部分を褒め千切り、できることの最善を尽くした。

「ってなことです」
「なるほどな。ソイツはよっぽど刀を熟知していると言っていい」
「それはもちろん!」

 刀刃にとっても好感触を味わえたのは確実だ。
 アキラは目をキラキラさせてしまうと、少しの不安をよそにする。
 
「けどな、悪いが刀は売れないんだ」
「ど、どうしてですか?」
「それは単純だ。武器は命。仲間の助けを借りない、自分を守る唯一の道具。それを人が見た手で選んだくらいで、自分のポテンシャルを発揮できる訳じゃない」
「そ、そんな……」
「だから売らない。いいや、売れないんだ」

 アキラはガクンと首を下げた。
 気持ちを落としてしまうのも無理はないが、刀刃の言い分ももっともだった。

 武器は自分を守るためのもの。だからこそ自分で選ばないといけない。
 それならここに雷斬を連れてくれば解決なのではないか。
 そう思うのも一興だが、残念なことにそう上手くも行かない。

「それじゃあ雷斬を……私の友達を連れてきます」
「いいや。それは後の話だ」
「あ、後?」
「ああ。俺は刀は売れない。だけど、まずは試させて貰う」
「た、試す?」

 何だか毛色が変わって来た気がする。
 ゴクリとアキラは代表して喉を鳴らすと、刀刃はチラリと視線を背ける。

「お得意先の店はあるのか?」
「お得意先ですか? えっと、そこにあるDeep Skyなら」
「そうか、あの店か……分かった。それじゃあこうしよう」

 刀刃は急に目の色を変える。
 何か意図でもあるのか、アキラは咄嗟の緊張感に背筋が凍った。

「まずはソイツの腕を試す。期間は一ヶ月だ。その刀をどう扱い切れたのか。それを値にさせて貰うぞ」
「な、なんだか本格的ですね。オーダーメイドみたい」
「これは審査みたいなものだが、あくまでも俺個人の趣味嗜好だ。それを受けるなら……」
「受けます! 受けて貰います!」

 アキラは雷斬の意思関係なく即答した。
 すると刀刃は突発的なアキラの言葉に驚くが、その覚悟を掴んだ。
 表情からも全身からも熱いものが込み上げていて、強い想いを感じ取る。

「ふん、即答してもいいのか」
「はい。私たち友達だけど、強い継ぎ接ぎの絆で繋がれていますから」
「強い継ぎ接ぎの絆……そういうことか」
「そういうこと?」
「なんでもない。それより早く戻って知らせてやれ。刀は用意しておくから」
「は、はい! あ、ありがとうございました」

 アキラは刀刃に言われるがまま、ペコリとお辞儀をした。
 露店街から離れると、刀刃に今一度頭を下げる。
 何だか良い知らせができそうで満足。アキラは嬉しくて、足早になってその場を離れるのだった。
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