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◇487 露店を見て回ろう1

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 スタットの街。賑わいを見せるこの大陸でも大きく、活気が盛んな街。
 だからこそスタート地点には充分で、スタートが切れる場所。
 そんなイメージが強いこの街にも、アンダーなグランドは存在する。

「久々に来たけど、やっぱり賑わっているなー」

 アキラはポカンとした顔になる。それもそのはず、視線の先に広がるのは摩天楼。
 たくさんの人が行き交う商店街は、決してオープンな形ではない。
 ひっそりとしている。けれどこの街を形作る要因の一つであり、合法認定されている。
 特別なこの場所は、自由に商売ができるまさにこの街の魅力が詰まった場所だった。

「これが露店街。なんだかワクワクする」

 アキラは興奮が冷め止まなかった。
 最近は忙しかった上に、メジャーな場所ばかり立ち寄っていた。
 そのせいもあり、この場所を嫌煙していたのかもしれない。
 けれどそんな自分のことを蔑むわけでもなく、アキラは頬をパンと叩くと、楽しんで露店を見て回る。

「じゃなかった……今は刀を探すんだよね」

 アキラは自分の役目を見失ってはいない。
 足をソッと止めると、キョロキョロと視線を配って回る。
 露店街にはたくさんのプレイヤーとNPCが露店を開いている。
 その傍らをアキラは歩く中、なかなか目ぼしい物は見つからない。

「武器、武器、武器、武器……無い?」

 アキラは必死に見て回った。
 しかし武器を売っている露天商はなかなか居ない。
 それもそのはず、武器を売るなら武器屋だから。けれどそんな当たり前のことを理解していながらも、ここに居る理由はあった。

「うわぁ!?」

 アキラはパッと目に留まった商品があった。
 それは武器。けれど願った武器じゃない。
 だけど剣身が真っ赤に燃えている。いや、ザクロのような赤を芳醇に放っている。
 これは剣? いや、棒? 何かは分からないけれど、武器であることは確定だ。

「ん? 嬢ちゃん、気に入ってくれたのかい?」
「えっ、は、はい!」

 アキラは男性に話し掛けられた。
 その人はNPCではなく普通にプレイヤー。
 戦闘職のようには見えない。こう言っては何だが格好がみすぼらしい。

「ふーん、嬢ちゃんはこの武器の良さが分かるのか?」
「えっと、綺麗って感じです」
「綺麗……そうかい。この剣はな、俺が作ったんだ。紅色ザクロと言う果実の形をした鉱石を研いで、叩いて、研いで……な」
「手間掛かってますね。あれ? 先に研ぐんですか?」
「ああ。それがこの剣の歪さの証だ。だが、その方が耐久値も上がって、殺傷性能も向上する。まっ、NPCの受け売りをそのまま真似ただけだけどな」

 NPCの言葉に耳を傾けるプレイヤー。そう多くは無いけれど、それを自分の技術として昇華している。
 そんな真似ができるのは、相当の腕が無いと不可能に近い。
 アキラは男性プレイヤーの顔色を覗き込む。

 みすぼらしい格好。ボロ布を纏っているのは、自分の存在よりも武器のことを大事に扱っている証拠だ。
 顔には髭がわんさか詰まっている。縮れた髪。痩せ細った頬骨。細く薄い目には生気が埋め込まれていた。

「なんだ? 俺のことを見て面白いのか?」
「えっと、武器のことを大事にしているなって」
「ほぅ? そこまで分かるのか」
「なんとなくです。私は人の顔色をみれば、大抵のことは分かりますから」

 アキラは笑顔で答えると、男性プレイヤーは「ふん」と鼻を鳴らした。
 何か意味があったのか、それともアキラのことを嗜めたのか。
 アキラのことをある種の反応で取り返すと、男性プレイヤーはこう言った。

「ソイツを持って行きな」
「えっ?」
「お嬢ちゃんにならその剣を託してもいい。どのみち、剣なんてこの世界じゃ不要だからな」

 男性プレイヤーはザクロ剣をアキラに手渡す。
 一体何故? そう思ったのも束の間。指の間にザクロ剣が押し込まれていた。

「そ、そんな! お金払いますよ」
「いや、いい。その剣はこの露店で出してから三ヶ月くらい経っているからな」
「三ヶ月? 見る目が無いんじゃ……」
「あがが、それはいい! 確かにそうかも知れないな。だが、小声とはいえ、そこまではっきり言うとはな。ふん、やっぱりこの剣を託して良さそうだ」

 男性プレイヤーはますますアキラのことを高く買ってくれる。
 如何してそんな好待遇なのか? 正直武器で怖い。
 全身を悪寒が辿っているが、それでもアキラは淡々と語った。

「それじゃあ貰って……」
「ふん、貰って貰ってコイツも嬉しそうだ」
「え、えっと……ありがとうございます」

 アキラはペコリと頭を下げた。
 自分の本当に目的は達成していない。けれど新しい武器を手にすることができた。
 これでより一層、アキラは強くなれる。そう思うと何だか心がポカポカするので、アキラは満足する。

「そう言えばまだ自己紹介してませんでしたね。私はアキラです」
「律義だな。んじゃ俺も名乗るか……俺は刀刃だ。専門は刀だが、今は売れないんでここで露店を開いてるって訳だ」
「刀刃さん……えっ、刀!?」

 アキラは想いも寄らないタイミングで巡り合えた。
 目の色を変え、アキラは刀刃に詰め寄る。

「おいおいどうしたんだよ?」
「刀刃さん、刀作ってるんですか?」
「ん? ああ、こっちじゃ売れないけどな……」
「それじゃあ、刀を見せて貰えますか?」
「はっ?」

 訳が分からないだろう。けれどアキラからしてみれば棚からぼた餅。
 これは使える。絶対に利になる。アキラの中で確信が持てると、意識がフル回転していた。
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