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◇485 雷斬の武器を手に入れないと

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 ギルドホームでアキラたちはくつろいでいた。
 暖炉に火を灯し、薪をくべ、ジリジリと燃える火の粉を眺める。
 暖かくなった部屋の中。アキラ以外の四人もボーッくつろぐ、かと思いきや誰もくつろいではいなかった。

「それでどうするんだ?」
「どうするって言われても、雷斬はどうしたい?」

 Nightの言葉を皮切りにしたが、アキラは言葉の矛先を雷斬へと向ける。
 それもそのはず、目の前に置かれた机の上。
 そこには雷斬の折れた刀が寂しそうに残されていた。

「この刀、よくこんなボロボロになるまで使っていたわね。攻撃力も斬撃性能もましてや耐久値まで削られているわよ?」

 ベルは折れた刀を手にすると、指先でコツンコツンと弾いてみた。
 するとボロボロと刃が削れて崩れてしまう。
 正直、もう限界だったようで、誰しもが諦めるしかなかった。

「どうしましょうか?」
「どうしましょうかって、それは雷斬が決めるんでしょー?」
「それはそうですが……困りましたね」

 雷斬は困り顔を浮かべてしまった。
 目の前の刀ではもう戦えない。
 おまけに言えば、ここ数日のように、手刀で戦うのは流石に限度がある。
 となれば新しい刀を用意するしかないのだが、雷斬の技量をもってすれば、あらゆる刀が本来の力を引き出されても、雷斬自身は小さくなったまま、本領を発揮できる訳なかった。

「雷斬、貴女が決めなくてどうするのよ?」
「それはそうなのですが、流石に私にも選ぶ権利はありますよね?」
「それはあるわよ。けどね、雷斬が戦うのは大変でしょ?」
「確かに手刀では……」

 雷斬は目を泳がせてしまった。それもそのはず、手刀で戦うのは本人にしてみてもあまり心地よくはない。
 とは言えアキラたちからしてみれば、手刀であれだけ戦えている方がおかしい。
 流石に異常だと思いつつも、首を横に振って忘れることにした。

「それじゃあ新しい刀を手に入れようよ!」
「それができれば苦労は無い」
「苦労って、そんなに思い詰めなくても良いんじゃなかな?」
「どういうことだ?」

 アキラの提案は真っ直ぐだった。
 新しい刀を手に入れるのは望むところだったが、一つだけ気掛かりもある。
 Nightが口走ったように、苦労があることだ。
 雷斬の腕を引き出せる刀、そんなものがゴロゴロ転がっているとは思わなかった。

「正直な話、刀さえ手には入ればいい訳じゃない。雷斬の力を無理なく発揮させる刀。それを探すしかないんだ」
「マジで大変そうだねー」
「当り前だ。だから呑気に事を構えていてもな」
「えいっ!」

 アキラはNightの頬をピタッと触った。
 すると飛び上がりそうになるNightだが、無言で唇を噛んでいた。
 ジロッと嫌な視線が飛ぶ。交差した視線の先、アキラは焦るNightを説得した。

「大丈夫だよ。私達は五人だよ?」
「だからなんだ」
「Nightは調べ物をして、残った私たちで刀を探し回ればいいんだよ。そうすれば一本くらいは見つかるんじゃないかな?」
「虱潰しってことか……あまりにも乱雑だな」

 Nightはアキラの作戦を根底から否定する気はない。
 けれどげんなりとした様子で、額に手を置き呆れてしまう。
 だがしかし、アキラ自身の発想は悪く無い。むしろ今はそれしかない。

「本当は雷斬が持っている玉鋼を打てれば早いんだが」
「それはそうですけど……残念なことに、優秀な刀鍛冶の方には未だ出会っていませんので」

 アキラが報酬として貰い、雷斬に託した玉鋼。
 その真価を未だ発揮できてはおらず、インベントリの中に眠ったまま。
 本当はあの玉鋼を使えばと思う気持ちもあったが、そんな真似ができないのは目に見えていた。

「仕方ないね。それじゃあ、ちゃんと探しに行こうか」
「そうだな。とりあえず私はできる限りの情報は集めて置く」
「じゃあ私たちは足で稼ぐってことだねー」
「それしかないみたいね。はぁー、それじゃあ雷斬、もし見つからなくても文句は言わないでよね」
「承知しています。皆さんが頑張ってくださったこと、その想いは決して消えませんから安心してください」

 雷斬はそう答えると、アキラたちがこれからすることは決まった。
 次の戦闘までに雷斬のために、代用に使える武器を手に入れること。
 今できるのはその程度だと気が付くと、体がフッと動き出す。

「それじゃあ私は街の方に行ってみるよ」
「それじゃあ私たちはモミジヤに走るわよ」
「分かりました。フェルノさん、申し訳ありませんが、ギルド会館で情報を洗ってきて貰えませんか?」
「もちろん良いよー。それじゃあ……」
「思い立ったが吉日だな」

 アキラたちはそれぞれギルドホームを後にすることになった。
 雷斬の刀を手に入れる。そう上手く行くかは分からないけれど、今できることを全うするため、アキラたちは各々で行動するのだった。

「さてと、この刀はどうするか」

 机の上に置かれた使い物にならない刀。
 Nightは指先で撫でながら、「ご苦労だったな」と敬意を表する。
 それから情報が無いかと洗い始めると、カタカタとキーボードを叩く音だけが部屋の中に響き渡るのだった。
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