VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇484 半チャーハンで発想転換

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「社長、今日もここですか?」
「ええ、そうですよ。それより私の名前……」
「ううっ、エルエスタさん」

 エルエスタと耶摩は行きつけの街中華にやって来ていた。
 今日も今日とてラーメンを口にしている。

 ズルズルと音を立てながら美味しくいただく。
 目の前には困惑した顔で耶摩が口を開けているも、ゆっくりゆっくりラーメンを口にした。

「美味しいですね。耶摩さん」
「そうですけど、こんな直にこんなことをしていていいんですか?」

 耶摩が危惧するのも仕方がなかった。
 今はイベント準部で忙しい。
 来週はイベントが始まるにもかかわらず、その調整も半ばで大変だった。

「まだイベントの調整も半ばなんですよ?」
「私は佳境ですけど?」
「それはエルエスタさんだからですよ! 本当は残業をしてでも……」
「残業は我が社のモットーとかけ離れているのでダメですよ」
「分かっていますよ。ですがこのままでは間に合わないですよ!」

 耶摩はラーメンをスルリと啜りながら、エルエスタに抗議を入れる。
 実際、抗議を入れている暇なんて何処にもない。
 にもかかわらずの所業の数々に、呆れるしかなかった。

「耶摩さん。焦った所でなにも生まれませんよ?」
「それはそうですけど……」

 エルエスタはラーメンを啜りながらも、的を射たことを言い始める。
 それは命の概念に絡めた文言だった。

「いいですか。焦った所で良い発想は決して生まれません。それは生きとし生けるもの、皆々がそうなんです」
「それはそうですけど……」
「焦っても不安に思っても上手くはいきません。できることは祈ることと、それに関わるすべてに感謝をして、休みながらでもできることを全うするだけです。つまりは私たちが休んでいることも全てにおいて意味があることです。焦った所でなにも始まりませんよ?」

 エルエスタは流石のカリスマ性を武器にすると耶摩のことを丸め込む。
 日々疲れ果て、苦しんでいても駄目だと悟らせる。
 そのイメージを強く認識させると、耶摩さんは「そうですね」と何処か諦めた様子で納得する。

「分かりました。私たちがやれることをするには休むことも必要と言うことですね」
「そう言うことです。ですから私たちは正しい……えっ?」
「大将さん?」

 エルエスタと耶摩がそんな話をしていると、急にテーブルの上に小さな器が置かれる。
 中には今炒めたと思しき美味しいそうなチャーハン。
 分厚い手があり、それは大将のものだった。

「どうしたんですか、大将さん? 私たちは頼んでいませんよ?」
「いいんだよエルエスタさん。なんか忙しいみたいだろ? だから日頃お世話になっているから、礼でもさせてくれよ」

 とてもありがたい誘いだった。これは無碍にするわけにもいかない。
 エルエスタたちは置かれたチャーハンをありがたく受け取ると、手元へと持ってくる。
 すると何かやら発想が逆転した。今悩んでいるイベントのことを、エルエスタは直感で回してしまう。

「耶摩さん、半チャーハンイベントはどうですか?」
「な、なんですか急に!? 半チャーハン?」

 耶摩には当然分からない。
 しかしながら何か意味があると察しが付いた。
 だからだろうか。耶摩はエルエスタの言葉を耳にする。

「エルエスタさん、一体なにを?」
「今回のイベントですが、多くの人に参加して欲しいんです。ですので時間を試しにズラしてみましょう。それに加えて、期間も空けます」
「き、期間までですか?」
「はい。これで多くの人に参加していただき、私たちの心労も減る筈です」
「それは確かにそうですが……そうですね。では、それでやってみましょう」

 エルエスタの意見を耶摩は聞き入れてくれた。
 如何やら圧倒的なカリスマ性を糧にして、耶摩の意思はエルエスタの下に集った。
 それは卓越した信頼を剥き出しにしており、一身に背負うエルエスタも特に気負うことはなく澄ました。

「ところで、イベントの名前ですが?」
「それは……半チャーハンで良いんじゃないですか?」
「えっ、ここに来てそんな雑な」

 耶摩はついつい本音が零れてしまった。如何やら何も考えていないらしい。
 口元をすぐさま覆い隠すも、耶摩は目を逸らしてしまう。
 エルエスタはそんな耶摩の声を聞き入れると、にこやかな笑みを浮かべた。

「そう言って貰えてなによりです。では、イベントの大々的な名前は後で考えるとしましょうか。今はそうですね。この休息の期間を利用して、しっかりと胃の中を満たし、脳を安からにさせていただきましょうか」
「はい!」

 エルエスタと耶摩はコクリと首を縦に振ると、美味しいご飯食べることにした。
 胃の中を脳の奥底を安からにさせると、油だらけの街中華屋で一時を過ごすのだった。
 もちろん無言ではなく、笑みを浮かべて、談笑を交わしながらで楽しかった。
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