VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇482 スキル【触手】をGETした!

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 首領栗フィッシュのHPは失われ、全身が粒子となって消えてしまう。
 アキラたちの勝利に終わったはいいものの、かなり苦戦を強いられた。
 腰を落としたアキラはホッと一息を付くと、地面に座り込んでしまった。

「はぁー。ああ、立てないよ」
「大丈夫ー、アキラ?」
「うん。大丈夫だけど、少し疲れちゃったよ」
「そっかー。ごめんね、私たちが遅れちゃって」

 フェルノは自分が助けに遅れたことを気にしてしまう。
 だけどアキラからしてみれば助けに来てくれただけでありがたかった。
 友達の絆を再確認すると、武器も無しで来てくれた雷斬のことを見つめた。

「雷斬もありがとう。でも手刀で倒すとは思わなかったよ」
「いえ、私が我儘なだけですから。それに手刀でも攻撃を捌き切れる相手で良かったです」
「いや、捌き切っちゃうのが凄いんだけどね」

 雷斬は武器を装備していなかった。しかし手刀のみであれだけアキラたちが苦戦した相手の動きを制限してしまった。
 あまりにも卓越した技術を見せられてしまい、アキラたちは言葉を失う。

 とは言え全員の力で倒すことができた。アキラは一人では倒せなかったと実感する。
 友達を信じたおかげでここまで来られたと思い、ふと視線を落とすとレベルが上がっていた。

「あっ、久しぶりにレベルが上がってる」
「レベルって、意味なくない?」
「うん。でもレベルが上がるとHPが少し増えるでしょ? それが嬉しいんだよ」
「アキラって謙虚だねー。ちなみに新しいスキルは? 最近【キメラハント】でスキルを奪ってないでしょー?」

 フェルノはアキラが最近スキルを奪えていないことを気にした。
 言われてみれば確かにそうかもしれない。アキラもハッとなってしまう。
 【キメラハント】でスキルを奪えるかどうかはかなり鬼門。
 それもそのはず、このスキルの仕様はかなり難儀なものだった。

「【キメラハント】って、自分が最大のダメージを与えないといけないんだよ? しかも確実に奪えるかは相手の芯を掴まないといけない。私、武術に凄く精通している訳じゃないから分からないから、ほとんど確立になっちゃうんだよね」
「確かにここ最近は私たちが前線に出過ぎていましたね」
「私は遊撃担当だからね。でも今回は頑張ったから、なにかスキルが手に入っていたら嬉しいなー。なんてね」

 アキラは【キメラハント】でスキルを奪えていないか期待した。
 とは言え期待が空回りしちゃうかもしれない。
 そんな不安に襲われながらも意識をすんなり切り替えると、メニューからスキルを確認した。すると目の前にポップした画面には、アキラの期待以上のものが浮かび上がる。


 固有スキル:【キメラハント】
『新しいスキルを略奪しました。首領栗フィッシュ:【触手】』


 本当にスキルを奪っていた。
 口元を抑えると、アキラは久々に手に入れたスキルに嬉しくなる。

 しかも今回手に入れたスキルはあんなに苦戦を強いられた触手攻撃。
 もしも上手く扱うことができれば、今までにない強力な武器になる。
 【甲蟲】+【灰爪】や【月跳】に変わる第三の戦術を取り入れることができるのだ。

「どうしたの、アキラ?」
「なにかあったんですか? それにその表情は……」
「うん。新しいスキルを手に入れたよ。変幻自在の攻撃がまたできるかも。しかもこのタイミングはかなり強そうかも」

 アキラは一人で嬉しくなってしまう。けれどフェルノも雷斬も同じように喜んでくれた。
 ここまで新スキルを略奪できていなかったアキラが成長することは、即ち全員の幅を大きく広げることになる。新たな道が切り開かれると共に、緩やかな笑みを零した。

「やりましたね、アキラさん。これでまた強くなれました」
「うん。もしかしたら、次は一人でも首領栗フィッシュを倒せるかも」
「それはいいねー。でーも、抜け駆けはダメだよー」
「分かっているよ。でも頑張った甲斐があったよ。新スキル【触手】。今から使うのが楽しみだよ」

 アキラは何だか元気が出て来た。落としていた腰が持ち上がると、膝に力が入って立ち上がることができた。
 となるとここに長居する必要はもう無い。
 アキラは体力が回復すると、フェルノと雷斬の顔を見回した。

「それじゃあ戻ろっか。Nightとベルが待ってるんでしょ?」

 ここに居ないNightとベルは今頃手続きをしてくれている。
 早く二人にも勝利の報告と得られたたくさんの報酬を話したい。
 その気持ちに気が付いたフェルノと雷斬もコクリと首を縦に振ると、森を抜けて最短距離でファストに戻ることにした。
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