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◇480 油断したら勝てない
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アキラはフェルノに間一髪の所で救われた。
抱えられていた状態から下ろされると、回復ポーションをがぶ飲みし、HPを一気に回復する。これで再び互角、否、それ以上の戦いに縺れ込むことができた。
「フェルノ、みんなは?」
「急いで依頼を完遂しにギルド会館に向かってるよー。終わったらこっちに応援に来てくれるんだってー」
「そっか。それじゃあ安心して戦えるね」
「うんうん。さっきまではアキラ一人だったけど、ここからは私も加わるから戦力は二倍……だけど、アレはなに?」
首領栗フィッシュは触手足をブンブン振り回している。
地面を叩き、地ならしを起こすと、それだけで威圧感を表す。
どんぐりを食べたせいで興奮状態に入っている。
そのせいもあってか、首領栗フィッシュの攻撃は苛烈さを増し、通常攻撃が鞭のように鋭い。
「多分興奮状態に入っているんだよ。フェルノ、注意を引ける?」
「うーん。倒すのが目的でいいんだよねー?」
「一応倒せたら美味しいかな。なにか掴めそうな気がする」
アキラはギュッと拳を握った。
この感覚は間違いなく心の奥底を叩くもの。
きっと首領栗フィッシュを倒せば道は見えると、確信的なものを得られると、フェルノも全身から炎を吹き出し応戦することにした。
「それじゃあ早速行ってみよー! せーのっ」
フェルノは地面を蹴り上げた。竜化した体からは炎が出ている。
首領栗フィッシュは近付いてきたフェルノを嫌ってか、身を捩って反撃。触手を鞭のように使い上から叩き付けようとするも、フェルノはそれすら見切って感覚的に掴み取った。
「おりゃぁ!」
フェルノが触手を掴むと、全身から炎を噴き出す。
手のひらから触手へと熱が伝わり、みるみるうちに変色する。
頼りなく痩せ細って行くのと同時に、粘液状の水分が搾られ、フェルノの炎に触れて蒸発。
嫌煙するべき難敵を前に、首領栗フィッシュの動きが弱々しく逃げ腰にさえ見えてしまう。
「ブルルルラララララァッ!?」
「あれ? もしかして熱が嫌いなの。Nightに弱点は聞いてたけど、まさかここまで効くなんて思わなかったよ」
フェルノ自身は怯えて逃げようとする首領栗フィッシュの様子に首を捻る。
熱が弱点なことは聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。
これは本心から来るもので、首領栗フィッシュが触手を一本千切ってまで逃げようとするので、そのまま力業で放り投げることにした。
「でも逃がしてあげないよ! うちのギルマスが倒すって言ったんだもん。だから倒すよー」
フェルノは細々くなった触手を強く握り締め、千切らないように気を付けながら背負い投げる。
巨体の割にはやけに軽く、フェルノの炎に炙られて少し小さくなってしまった。
全身のほとんどはクラゲのように水分でできているのか、フェルノとの相性は最悪。
乾燥が比較的早まると、首領栗フィッシュは何もしていなくても狼狽え始める。
傍目から見れば可哀そうとしか思えない。
「凄いフェルノ! 私が囮をやっていたのが嘘みたいだよ」
「そんなことないってー。興奮状態ってことは、それだけ注意が散漫ってことでしょー? だったらさ、こうやってこうでもいいんでしょ!」
フェルノは首領栗フィッシュを引き寄せると、鋭いパンチを一発叩き込む。
メラメラと燃える炎の拳。竜の分厚い手は爪を折っているとはいえ、ダメージは必至。
ましてや弱り切った首領栗フィッシュにとっては絶望的な状況で、熱が絶えず叩き込まれたせいもあり本来の大きさの半分もない。
「ち、小さくなってる?」
「ここまですれば後は作業だねー。アキラ、一気に蹴りを付けるよ!」
「う、うん。考えても仕方ない。ここは油断をせずに……フェルノ、後ろ!」
「後ろ? がっ!」
フェルノは振り返ると、職種による攻撃を真っ向から受けてしまった。
もちろん逃げる暇も躱す暇もない。受け止めることさえできず、体で直接受けてしまう。
いくら細くなっているとはいえ芯の部分はある。渾身の一発を喰らったフェルノの体は吹き飛ばされ、木の幹に倒れはしないが地面に転がってピクピクしている。
「痛たたたぁ……あれー? まだそんな体力残ってたんだ。油断しちゃったよー」
「フェルノ大丈夫? 怪我はしてない?」
アキラはフェルノの下に駆け寄った。
HPは当然減っている。けれど目立った外傷はない。
体は痙攣しているがすぐにでも動けるようで、根性を元手に立ち上がる。
「大丈夫大丈夫。さっきは油断しちゃったよー」
「油断はダメだよ。相手は首領栗フィッシュなんだから」
正直に言えばそれは理由ではなかった。
あくまでも首領栗フィッシュと言う名前から凄そうなだけ。
けれど実際相手にすると面倒な程強く、アキラもフェルノもスキルを多用する。
「アキラ、私は注意を引いてとにかく弱らせるから、最後の一撃はお願いねー」
「うん。できるだけ弱点っぽい所を狙ってみるよ」
アキラとフェルノは作戦にも満たない作戦を言葉足らずで語り合う。
とは言えお互いには伝わっていて、やること自体は比較的シンプル。
フェルノは【吸炎竜化】を発動させ、腕と脚を竜に返る。アキラも【キメラハント】でできる限りの武装を固めると、今一度首領栗フィッシュのことを強敵と見定め睨んだ。
「やるよフェルノ!」
「OK。それじゃあ行ってみようー」
二人はハイタッチ代わりに拳を突き合わせた。
目は首領栗フィッシュのことを睨んだまま、何とも言えない熱をたぎらせる。
クラクラしそうな熱さに駆られると、首領栗フィッシュは触手をうねらせて応える。
これでどちらかが倒れる。勝負は一瞬、物にするのは当然どちらであれど、負ける気は一切あり得なかった。
抱えられていた状態から下ろされると、回復ポーションをがぶ飲みし、HPを一気に回復する。これで再び互角、否、それ以上の戦いに縺れ込むことができた。
「フェルノ、みんなは?」
「急いで依頼を完遂しにギルド会館に向かってるよー。終わったらこっちに応援に来てくれるんだってー」
「そっか。それじゃあ安心して戦えるね」
「うんうん。さっきまではアキラ一人だったけど、ここからは私も加わるから戦力は二倍……だけど、アレはなに?」
首領栗フィッシュは触手足をブンブン振り回している。
地面を叩き、地ならしを起こすと、それだけで威圧感を表す。
どんぐりを食べたせいで興奮状態に入っている。
そのせいもあってか、首領栗フィッシュの攻撃は苛烈さを増し、通常攻撃が鞭のように鋭い。
「多分興奮状態に入っているんだよ。フェルノ、注意を引ける?」
「うーん。倒すのが目的でいいんだよねー?」
「一応倒せたら美味しいかな。なにか掴めそうな気がする」
アキラはギュッと拳を握った。
この感覚は間違いなく心の奥底を叩くもの。
きっと首領栗フィッシュを倒せば道は見えると、確信的なものを得られると、フェルノも全身から炎を吹き出し応戦することにした。
「それじゃあ早速行ってみよー! せーのっ」
フェルノは地面を蹴り上げた。竜化した体からは炎が出ている。
首領栗フィッシュは近付いてきたフェルノを嫌ってか、身を捩って反撃。触手を鞭のように使い上から叩き付けようとするも、フェルノはそれすら見切って感覚的に掴み取った。
「おりゃぁ!」
フェルノが触手を掴むと、全身から炎を噴き出す。
手のひらから触手へと熱が伝わり、みるみるうちに変色する。
頼りなく痩せ細って行くのと同時に、粘液状の水分が搾られ、フェルノの炎に触れて蒸発。
嫌煙するべき難敵を前に、首領栗フィッシュの動きが弱々しく逃げ腰にさえ見えてしまう。
「ブルルルラララララァッ!?」
「あれ? もしかして熱が嫌いなの。Nightに弱点は聞いてたけど、まさかここまで効くなんて思わなかったよ」
フェルノ自身は怯えて逃げようとする首領栗フィッシュの様子に首を捻る。
熱が弱点なことは聞いていたが、ここまでとは思っていなかった。
これは本心から来るもので、首領栗フィッシュが触手を一本千切ってまで逃げようとするので、そのまま力業で放り投げることにした。
「でも逃がしてあげないよ! うちのギルマスが倒すって言ったんだもん。だから倒すよー」
フェルノは細々くなった触手を強く握り締め、千切らないように気を付けながら背負い投げる。
巨体の割にはやけに軽く、フェルノの炎に炙られて少し小さくなってしまった。
全身のほとんどはクラゲのように水分でできているのか、フェルノとの相性は最悪。
乾燥が比較的早まると、首領栗フィッシュは何もしていなくても狼狽え始める。
傍目から見れば可哀そうとしか思えない。
「凄いフェルノ! 私が囮をやっていたのが嘘みたいだよ」
「そんなことないってー。興奮状態ってことは、それだけ注意が散漫ってことでしょー? だったらさ、こうやってこうでもいいんでしょ!」
フェルノは首領栗フィッシュを引き寄せると、鋭いパンチを一発叩き込む。
メラメラと燃える炎の拳。竜の分厚い手は爪を折っているとはいえ、ダメージは必至。
ましてや弱り切った首領栗フィッシュにとっては絶望的な状況で、熱が絶えず叩き込まれたせいもあり本来の大きさの半分もない。
「ち、小さくなってる?」
「ここまですれば後は作業だねー。アキラ、一気に蹴りを付けるよ!」
「う、うん。考えても仕方ない。ここは油断をせずに……フェルノ、後ろ!」
「後ろ? がっ!」
フェルノは振り返ると、職種による攻撃を真っ向から受けてしまった。
もちろん逃げる暇も躱す暇もない。受け止めることさえできず、体で直接受けてしまう。
いくら細くなっているとはいえ芯の部分はある。渾身の一発を喰らったフェルノの体は吹き飛ばされ、木の幹に倒れはしないが地面に転がってピクピクしている。
「痛たたたぁ……あれー? まだそんな体力残ってたんだ。油断しちゃったよー」
「フェルノ大丈夫? 怪我はしてない?」
アキラはフェルノの下に駆け寄った。
HPは当然減っている。けれど目立った外傷はない。
体は痙攣しているがすぐにでも動けるようで、根性を元手に立ち上がる。
「大丈夫大丈夫。さっきは油断しちゃったよー」
「油断はダメだよ。相手は首領栗フィッシュなんだから」
正直に言えばそれは理由ではなかった。
あくまでも首領栗フィッシュと言う名前から凄そうなだけ。
けれど実際相手にすると面倒な程強く、アキラもフェルノもスキルを多用する。
「アキラ、私は注意を引いてとにかく弱らせるから、最後の一撃はお願いねー」
「うん。できるだけ弱点っぽい所を狙ってみるよ」
アキラとフェルノは作戦にも満たない作戦を言葉足らずで語り合う。
とは言えお互いには伝わっていて、やること自体は比較的シンプル。
フェルノは【吸炎竜化】を発動させ、腕と脚を竜に返る。アキラも【キメラハント】でできる限りの武装を固めると、今一度首領栗フィッシュのことを強敵と見定め睨んだ。
「やるよフェルノ!」
「OK。それじゃあ行ってみようー」
二人はハイタッチ代わりに拳を突き合わせた。
目は首領栗フィッシュのことを睨んだまま、何とも言えない熱をたぎらせる。
クラクラしそうな熱さに駆られると、首領栗フィッシュは触手をうねらせて応える。
これでどちらかが倒れる。勝負は一瞬、物にするのは当然どちらであれど、負ける気は一切あり得なかった。
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