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◇473 飼いリスを追いかけて
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ファストを少し出て、北東に十キロ。
更にそこから移動して二キロの場所。
そこは広大な草原と木々の生い茂る針葉樹の森が広がっていた。
「待って! お願い、待ってよ!」
草原をひた走りながら、アキラは必死に叫んだ。
その隣にはフェルノの姿。少し遅れてNightが続き、息を荒くさせていた。
「はぁはぁはぁはぁ……」
胸を抑えて白い息を吐くNight。
その姿を見た雷斬とベルはNightに寄り添う。
今にも倒れてしまいそうなNightに肩を貸し、何とかアキラたちに追い付く。
そんなアキラたちの視線の先。草原の大地を小さな生き物が走っていた。
しかもモンスターじゃない。ただの小動物で、首には赤いリボンがしてある。
正体はシマリス。縞模様が背中に入っていて、クリクリとしたつぶらな瞳が可愛らしい。
今回の依頼。それは逃げたペットを捕まえて、無事に飼い主に届けることだ。
ギルド会館で依頼が出ていたので珍しいと思い受けてみた。
モンスター討伐でも、素材の採取でもない。どんな具合かと思ったが、見つけること自体は簡単だった。けれどそこからが大変で、二十分の格闘が今まさに続いていた。
シマリスはれっきとした小動物。小さいけれどそれだけ小回りが利いてすばしっこく、なかなか捕まらない。手強い相手だった。
「ううっ、モンスターならやっつけられるのにー」
「ダメだよ、フェルノ。あの子は女の子のペットなんだよ」
「分かってるよ、そんなのー。でもさ、これじゃあいくら追いかけても……」
フェルノの言いたいことは分かっていた。
このまま追いかけても人間の足じゃ追い付けない。
それならスキルを使えばいいんじゃないか。そう思うかもしれないけど、相手はモンスターじゃない。単なる小動物だから、ちょっとした行動が命取りになってしまうのだ。
とは言えこのままでは埒が明かない。
一体如何すれば。頭の中身をフル回転させ、脳を全力で稼働させるアキラだったが、ふとフェルノに肯定的な意見が飛ぶ。
「ああ、その通りだ」
「「Night!?」」
Nightが息も絶え絶えながらに口走る。
走りながらアキラとNightは背後を振り返ると、もはや二人三脚状態のNightの姿。
ここ最近はリアルでも部屋で過ごしていたせいか、かなり運動不足な様子。それが反省されてしまい、GAMEの中でも辛そうだった。
「大丈夫、Night? 走れる?」
「走れはしない。だが、シマリスは追い掛けろ。一度森には入られたらアウトだぞ」
アキラはNightの悲痛な様子を見て心配する。
案の定走れる様子ではなく、肩で息をし始めた。
息を「ぜぇぜぇ」荒げながら、必死に口を回すと、今の現状を見定める。
「って言っても、スキルを使ったら周りに影響が出るんでしょ?」
「そうだな。だが、考え方次第だ。雷斬、出番だな」
「私ですか?」
フェルノが訊ねる。新しい仕様と言うべきか、今まで知らなかっただけだが、モンスタ0やプレイヤー、それこそNPCには無害なスキルでも、小動物のような小さなものには少しばかり影響も出る。
特にフェルノの炎は禁物で、さっきからブンブン腕を振り回している。
制約を掛けられた状態のフェルノはつまらなそうで、本領を発揮できていなかった。
そんな中で如何したらいいのか見失いかける。
けれど冷静な思考と周りを見通す目を持っていたNightは的確な指示を送る。
ここは雷斬の出番。それを聞いて、アキラはピンと来た。
「お前の足で先行するんだ。前に躍り出て、進路を塞いで捕まえろ」
「進路を塞ぐ……と言うことは、遠回りですね。分かりました」
「ベルは矢を打って進路妨害だ。雷斬の待機できるスペースを用意してくれ」
「弓矢を射ってビビらせるのね。いいわよ」
雷斬の【雷鳴】なら先回りができる。
ましてやベルの技量があれば、シマリスを傷付けずに進路を妨害できる。
まさに一石二鳥の作戦。早速行動に移る。
「それでは行ってきます。来てください!」
雷斬がそう唱えると、何処からともなく雷鳴が降り注ぎ、スキル【雷鳴】によって全身に雷を纏う。武器は持っていないが、これだけでも十分に戦える。
そんな雷斬のスキルを活かし、シマリスよりも断然速く、けれど予測を立ててシマリスの来そうな地点に移動した。
それと程ほぼ同時にベルも弓をしならせる。
矢をつがえると、弦を的確に引き寄せ全身を使って矢を放つ。
天高く曲射すると、矢は空から降り注ぐ。シマリスは殺気を感じたのか、はたまたベルの技量故だろうか、シマリスの脇スレスレを狙い続け、的確に雷斬の方へと誘導した。
「す、凄い! これなら行けるかも」
「雷斬、捕まえちゃえー!」
「おい、フラグを立てるな」
アキラとフェルノは依頼達成を確信した。
けれどNightはジロッと睨むとこれがフラグになると注意する。
とは言え何処にフラグがあるのか。この状況で捕まえられないとは思えない。
「雷斬、そっち行ったわよ。早く捕まえなさい」
「分かりました。すみませんね、すぐに飼い主さんの下へ……うわぁ!」
シマリスは雷斬に向かって一目散に走って来る。
これなら十分な余裕を以って捕まえられる。
そう確信して腕を伸ばすと、伸ばした腕を器用に使って、シマリスは雷斬の方へと駆け上がる。
突然のことで雷斬は動揺した。その瞬間背中を伸ばしてしまい、シマリスは雷斬の背後へと逃げてしまう。
ほんの一瞬。余裕だと油断した瞬間、思いもよらない行動に惑わされた。
「あっ、待ってください!」
「ちょっとちょっと、そっちはヤバいわよ!」
シマリスは森の方に逃げて行く。このままじゃマズいと思ったベルも急いで矢を射る。
けれど間に合わない。距離も足りない。矢は手前の方で落ちてしまうと、シマリスは森の中へと姿を消す。
完全に一目散で、まんまとしてやられてしまった。
アキラたちは瞬きをする間もない時間で起こった鮮やかなシマリスの逃走劇に呆れる。
放心状態になってしまうも、Nightに肘を付かれたアキラがいち早く口走った。
「い、急いで追いかけよう! このままじゃ本当に見失なっちゃう」
「そうだな。森の中に入られたとはいえ、まだ入口辺りだろう。十分見つけられるチャンスはある」
落ち込んでいる暇は無い。急いで捕まえに行く。
アキラたちはちょっとした油断から生じた面倒事を早期解決させるべく、シマリスを追って森の中へと向かうのだった。
更にそこから移動して二キロの場所。
そこは広大な草原と木々の生い茂る針葉樹の森が広がっていた。
「待って! お願い、待ってよ!」
草原をひた走りながら、アキラは必死に叫んだ。
その隣にはフェルノの姿。少し遅れてNightが続き、息を荒くさせていた。
「はぁはぁはぁはぁ……」
胸を抑えて白い息を吐くNight。
その姿を見た雷斬とベルはNightに寄り添う。
今にも倒れてしまいそうなNightに肩を貸し、何とかアキラたちに追い付く。
そんなアキラたちの視線の先。草原の大地を小さな生き物が走っていた。
しかもモンスターじゃない。ただの小動物で、首には赤いリボンがしてある。
正体はシマリス。縞模様が背中に入っていて、クリクリとしたつぶらな瞳が可愛らしい。
今回の依頼。それは逃げたペットを捕まえて、無事に飼い主に届けることだ。
ギルド会館で依頼が出ていたので珍しいと思い受けてみた。
モンスター討伐でも、素材の採取でもない。どんな具合かと思ったが、見つけること自体は簡単だった。けれどそこからが大変で、二十分の格闘が今まさに続いていた。
シマリスはれっきとした小動物。小さいけれどそれだけ小回りが利いてすばしっこく、なかなか捕まらない。手強い相手だった。
「ううっ、モンスターならやっつけられるのにー」
「ダメだよ、フェルノ。あの子は女の子のペットなんだよ」
「分かってるよ、そんなのー。でもさ、これじゃあいくら追いかけても……」
フェルノの言いたいことは分かっていた。
このまま追いかけても人間の足じゃ追い付けない。
それならスキルを使えばいいんじゃないか。そう思うかもしれないけど、相手はモンスターじゃない。単なる小動物だから、ちょっとした行動が命取りになってしまうのだ。
とは言えこのままでは埒が明かない。
一体如何すれば。頭の中身をフル回転させ、脳を全力で稼働させるアキラだったが、ふとフェルノに肯定的な意見が飛ぶ。
「ああ、その通りだ」
「「Night!?」」
Nightが息も絶え絶えながらに口走る。
走りながらアキラとNightは背後を振り返ると、もはや二人三脚状態のNightの姿。
ここ最近はリアルでも部屋で過ごしていたせいか、かなり運動不足な様子。それが反省されてしまい、GAMEの中でも辛そうだった。
「大丈夫、Night? 走れる?」
「走れはしない。だが、シマリスは追い掛けろ。一度森には入られたらアウトだぞ」
アキラはNightの悲痛な様子を見て心配する。
案の定走れる様子ではなく、肩で息をし始めた。
息を「ぜぇぜぇ」荒げながら、必死に口を回すと、今の現状を見定める。
「って言っても、スキルを使ったら周りに影響が出るんでしょ?」
「そうだな。だが、考え方次第だ。雷斬、出番だな」
「私ですか?」
フェルノが訊ねる。新しい仕様と言うべきか、今まで知らなかっただけだが、モンスタ0やプレイヤー、それこそNPCには無害なスキルでも、小動物のような小さなものには少しばかり影響も出る。
特にフェルノの炎は禁物で、さっきからブンブン腕を振り回している。
制約を掛けられた状態のフェルノはつまらなそうで、本領を発揮できていなかった。
そんな中で如何したらいいのか見失いかける。
けれど冷静な思考と周りを見通す目を持っていたNightは的確な指示を送る。
ここは雷斬の出番。それを聞いて、アキラはピンと来た。
「お前の足で先行するんだ。前に躍り出て、進路を塞いで捕まえろ」
「進路を塞ぐ……と言うことは、遠回りですね。分かりました」
「ベルは矢を打って進路妨害だ。雷斬の待機できるスペースを用意してくれ」
「弓矢を射ってビビらせるのね。いいわよ」
雷斬の【雷鳴】なら先回りができる。
ましてやベルの技量があれば、シマリスを傷付けずに進路を妨害できる。
まさに一石二鳥の作戦。早速行動に移る。
「それでは行ってきます。来てください!」
雷斬がそう唱えると、何処からともなく雷鳴が降り注ぎ、スキル【雷鳴】によって全身に雷を纏う。武器は持っていないが、これだけでも十分に戦える。
そんな雷斬のスキルを活かし、シマリスよりも断然速く、けれど予測を立ててシマリスの来そうな地点に移動した。
それと程ほぼ同時にベルも弓をしならせる。
矢をつがえると、弦を的確に引き寄せ全身を使って矢を放つ。
天高く曲射すると、矢は空から降り注ぐ。シマリスは殺気を感じたのか、はたまたベルの技量故だろうか、シマリスの脇スレスレを狙い続け、的確に雷斬の方へと誘導した。
「す、凄い! これなら行けるかも」
「雷斬、捕まえちゃえー!」
「おい、フラグを立てるな」
アキラとフェルノは依頼達成を確信した。
けれどNightはジロッと睨むとこれがフラグになると注意する。
とは言え何処にフラグがあるのか。この状況で捕まえられないとは思えない。
「雷斬、そっち行ったわよ。早く捕まえなさい」
「分かりました。すみませんね、すぐに飼い主さんの下へ……うわぁ!」
シマリスは雷斬に向かって一目散に走って来る。
これなら十分な余裕を以って捕まえられる。
そう確信して腕を伸ばすと、伸ばした腕を器用に使って、シマリスは雷斬の方へと駆け上がる。
突然のことで雷斬は動揺した。その瞬間背中を伸ばしてしまい、シマリスは雷斬の背後へと逃げてしまう。
ほんの一瞬。余裕だと油断した瞬間、思いもよらない行動に惑わされた。
「あっ、待ってください!」
「ちょっとちょっと、そっちはヤバいわよ!」
シマリスは森の方に逃げて行く。このままじゃマズいと思ったベルも急いで矢を射る。
けれど間に合わない。距離も足りない。矢は手前の方で落ちてしまうと、シマリスは森の中へと姿を消す。
完全に一目散で、まんまとしてやられてしまった。
アキラたちは瞬きをする間もない時間で起こった鮮やかなシマリスの逃走劇に呆れる。
放心状態になってしまうも、Nightに肘を付かれたアキラがいち早く口走った。
「い、急いで追いかけよう! このままじゃ本当に見失なっちゃう」
「そうだな。森の中に入られたとはいえ、まだ入口辺りだろう。十分見つけられるチャンスはある」
落ち込んでいる暇は無い。急いで捕まえに行く。
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