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◇466 夜に咲く椿の星
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アキラたちは温泉に足を運んだ。
天然温泉らしい硫黄の臭いを嗅ぐと、温泉に来たんだと納得させる。
「うわぁ、凄い湯気」
「そうだな。前が見えない……って、先客か」
露天風呂にやって来ると、大量の白い湯気が立っている。
きっと温泉の熱気が空気の冷気と反応して、これだけの湯気を放つ。
正直前が見えない。アキラたちは眉根を寄せると、段々と寒暖の差で発生していた湯気が消え始め、視界が開けて来る。
すると浮かび上がったシルエットは、二つの人影を見せた。
「あっ、来ましたよ天狐!」
「ん? あー、いい湯加減やでー」
そこに居たのは椿姫と天狐の二人。
先に温泉を頂いているようで、肩までしっかりと浸かっていた。
けれど椿姫は申し訳なさそうにしている。礼儀正しく謙虚だ。
一方天狐はいつもの通り自由人全開。申し訳内の欠片も無く、頭だけを湯船から覗かせていた。
完全に自分の世界に入っていて、今だって首だけ振り向けている。
それ以外では微動だにせず、きっと十分以上使っているはずなのに、顔色が白かった。
「天狐さん、椿さん、こんばんは」
「こんばんは、アキラさん。それから継ぎ接ぎの皆さん」
「こんばんはー」
椿姫は丁寧だった。けれど天狐はくつろいでいる。
顔は白いのに決してのぼせた訳ではない。
ましてやだらりとくつろいでいる。
「相変わらずだな」
「そうだねー。天狐は相変わらずだよー」
その様子にジト目になってしまった。
特にNightは呆れてしまっているようで、その後ろではクロユリが頭を抱えている。
初見だと流石に引いてしまうが、アキラたちは慣れ切ってしまったので、平常運転でしかなかった。
「どないしたん? 早う入らなさぶいやん」
「そうですね。お言葉に甘えて入らせていただきましょうか」
首を捻る天狐は、寒そうに突っ立っているアキラたちにそう言った。
雷斬は相槌を入れて言葉に甘えることにする。
「ひやぁー。体に沁みるねー」
「うん、ポカポカするね」
「外気との寒暖差の影響だろ。それからこの温泉に含まれる成分だな」
戦った後の温泉は非常に体と心に効く。
気持ちがいいというのはまさにこのことだ。
そのおかげか以前二度、この温泉に入った時もそうだったが、あの時とはまた感じ方が変わる。
如何変わったのか。それは雪将軍のような強敵と戦った後でないと、絶対に味わうことができない。
アキラたちは温泉の湯で顔を洗うと、疲労から解放され、全身から解れて行くのが伝染した。
「なんやろ。みんなぐったりしてるなぁ」
「そうですね。なにかあったんですか?」
「いいや、何も無かったわよ。実際今日までログインしてないから」
あまりにも全員が疲れすぎていたせいか、天狐と椿姫に心配されてしまう。
けれどベルが機転を利かせ、変に心配される前に答えた。
久しぶりのログインのせいか、まだ体が付いて行けていない。そんな嘘で塗り固めると、風邪を引いてしまったことを上手く隠した。
「しばらくログインしていないと、なかなかGAMEとの感覚の差異に気が付けませんからね。しっかりと休めてこその祝勝会です。温泉で疲れを取ってください」
「そうですよ。この温泉の効能は大したものです。疲労回復はもちろんですが、心のケアにも十分効果が有るんです」
「どんな理屈かは知らへんけどなぁ」
確かにどんな理屈でそんな効能がGAME内の温泉に含まれているのかは知らない。
けれどそれだけで十分納得はできた。
心の奥に取り残されていたモヤモヤがドンドン洗い流されている。そんな気持ちに胸躍り、ドンドン湯船に沈んで行く。
「沈むのはいいですけど、溺れないでくださいね」
「大丈夫ですよ」
「ほんま? 前にうちも沈んだことあるけど?」
「それは天狐が遊んでいたからでしょ」
「そら言わんといてや」
天孤は自分から墓穴を掘って怒られてしまった。
多分遊んでいたせいで沈んだんだろうけど、天孤ならそこまで気にも留めない。
そんな態度で笑みを浮かべていると、クロユリは椿姫と意味深な目配せをする。
「さてと、本日は夜です。モミジヤは現実と違って灯りが極端に少ないですからね」
「うん。だからこれが映えるんですよ。天狐!」
「はいはい。灯れ!」
椿姫は両手を湯船から上げて掲げる。すると何処からともなく【椿蔦】によって空に椿の花が咲く。
それに合わせて天狐も手を前に突き出すと、ボワッ! と【朧狐火】が発動。椿の花に灯ると、幻術を使わずにキラキラと輝く。
「ん? なにをする気だ」
「あれ? Nightも予定に無いことなの?」
如何やらNightも知らなかったらしい。
予定に無いことが起こっており、困惑した表情を浮かべる。
けれどそれを抜きにしても綺麗。アキラたちの視線が自然と惹き付けられていた。
「どや? 綺麗やろ」
「は、はい。でも急にどうして……?」
アキラは尋ね返した。すると天狐はにやけた笑みを浮かべる。
呼応するように【朧狐火】の色も淡く変化して、椿の花がまるで星のように輝いている。
とても綺麗で可愛らしい。幻想的な雰囲気にミニマムに浸った。
「これだけさぶいと目に映るもの全部が綺麗。それってえらいリラックスするわなぁ」
「そ、それはそうですけど」
「そやさかい言うことや。なっ、クロユリ」
「ええ。皆さんは大変頑張ったんです。この景色はそんな皆さんに送る小さな幻想。と言うことにしませんか?」
正直ピンとは来なかった。だって雪将軍たちを倒したのは継ぎ接ぎの絆じゃなくて、継ぎ接ぎの絆と妖帖の雅だからだ。
どちらかを引き立たせるなんて真似はしたくない。
そう思ってアキラは口を出した。
「しませんかって……はい」
けれどそんな野暮な真似は止めた。気が付けばNightに腕を掴まれていた。
余計なことは言うなの合図だと、すぐに理解し意識を切り替える。
だからこそここは妖帖の雅に甘える。
こんなプレゼント滅多に得られないと思い、ただ首ったけになる。
それでも満足な世界がキラキラと満点の星として描かれ、アキラたちの気持ちが澄んでいく。こんな体験を身近にできたこと、CUで繋がった今に感謝した。
天然温泉らしい硫黄の臭いを嗅ぐと、温泉に来たんだと納得させる。
「うわぁ、凄い湯気」
「そうだな。前が見えない……って、先客か」
露天風呂にやって来ると、大量の白い湯気が立っている。
きっと温泉の熱気が空気の冷気と反応して、これだけの湯気を放つ。
正直前が見えない。アキラたちは眉根を寄せると、段々と寒暖の差で発生していた湯気が消え始め、視界が開けて来る。
すると浮かび上がったシルエットは、二つの人影を見せた。
「あっ、来ましたよ天狐!」
「ん? あー、いい湯加減やでー」
そこに居たのは椿姫と天狐の二人。
先に温泉を頂いているようで、肩までしっかりと浸かっていた。
けれど椿姫は申し訳なさそうにしている。礼儀正しく謙虚だ。
一方天狐はいつもの通り自由人全開。申し訳内の欠片も無く、頭だけを湯船から覗かせていた。
完全に自分の世界に入っていて、今だって首だけ振り向けている。
それ以外では微動だにせず、きっと十分以上使っているはずなのに、顔色が白かった。
「天狐さん、椿さん、こんばんは」
「こんばんは、アキラさん。それから継ぎ接ぎの皆さん」
「こんばんはー」
椿姫は丁寧だった。けれど天狐はくつろいでいる。
顔は白いのに決してのぼせた訳ではない。
ましてやだらりとくつろいでいる。
「相変わらずだな」
「そうだねー。天狐は相変わらずだよー」
その様子にジト目になってしまった。
特にNightは呆れてしまっているようで、その後ろではクロユリが頭を抱えている。
初見だと流石に引いてしまうが、アキラたちは慣れ切ってしまったので、平常運転でしかなかった。
「どないしたん? 早う入らなさぶいやん」
「そうですね。お言葉に甘えて入らせていただきましょうか」
首を捻る天狐は、寒そうに突っ立っているアキラたちにそう言った。
雷斬は相槌を入れて言葉に甘えることにする。
「ひやぁー。体に沁みるねー」
「うん、ポカポカするね」
「外気との寒暖差の影響だろ。それからこの温泉に含まれる成分だな」
戦った後の温泉は非常に体と心に効く。
気持ちがいいというのはまさにこのことだ。
そのおかげか以前二度、この温泉に入った時もそうだったが、あの時とはまた感じ方が変わる。
如何変わったのか。それは雪将軍のような強敵と戦った後でないと、絶対に味わうことができない。
アキラたちは温泉の湯で顔を洗うと、疲労から解放され、全身から解れて行くのが伝染した。
「なんやろ。みんなぐったりしてるなぁ」
「そうですね。なにかあったんですか?」
「いいや、何も無かったわよ。実際今日までログインしてないから」
あまりにも全員が疲れすぎていたせいか、天狐と椿姫に心配されてしまう。
けれどベルが機転を利かせ、変に心配される前に答えた。
久しぶりのログインのせいか、まだ体が付いて行けていない。そんな嘘で塗り固めると、風邪を引いてしまったことを上手く隠した。
「しばらくログインしていないと、なかなかGAMEとの感覚の差異に気が付けませんからね。しっかりと休めてこその祝勝会です。温泉で疲れを取ってください」
「そうですよ。この温泉の効能は大したものです。疲労回復はもちろんですが、心のケアにも十分効果が有るんです」
「どんな理屈かは知らへんけどなぁ」
確かにどんな理屈でそんな効能がGAME内の温泉に含まれているのかは知らない。
けれどそれだけで十分納得はできた。
心の奥に取り残されていたモヤモヤがドンドン洗い流されている。そんな気持ちに胸躍り、ドンドン湯船に沈んで行く。
「沈むのはいいですけど、溺れないでくださいね」
「大丈夫ですよ」
「ほんま? 前にうちも沈んだことあるけど?」
「それは天狐が遊んでいたからでしょ」
「そら言わんといてや」
天孤は自分から墓穴を掘って怒られてしまった。
多分遊んでいたせいで沈んだんだろうけど、天孤ならそこまで気にも留めない。
そんな態度で笑みを浮かべていると、クロユリは椿姫と意味深な目配せをする。
「さてと、本日は夜です。モミジヤは現実と違って灯りが極端に少ないですからね」
「うん。だからこれが映えるんですよ。天狐!」
「はいはい。灯れ!」
椿姫は両手を湯船から上げて掲げる。すると何処からともなく【椿蔦】によって空に椿の花が咲く。
それに合わせて天狐も手を前に突き出すと、ボワッ! と【朧狐火】が発動。椿の花に灯ると、幻術を使わずにキラキラと輝く。
「ん? なにをする気だ」
「あれ? Nightも予定に無いことなの?」
如何やらNightも知らなかったらしい。
予定に無いことが起こっており、困惑した表情を浮かべる。
けれどそれを抜きにしても綺麗。アキラたちの視線が自然と惹き付けられていた。
「どや? 綺麗やろ」
「は、はい。でも急にどうして……?」
アキラは尋ね返した。すると天狐はにやけた笑みを浮かべる。
呼応するように【朧狐火】の色も淡く変化して、椿の花がまるで星のように輝いている。
とても綺麗で可愛らしい。幻想的な雰囲気にミニマムに浸った。
「これだけさぶいと目に映るもの全部が綺麗。それってえらいリラックスするわなぁ」
「そ、それはそうですけど」
「そやさかい言うことや。なっ、クロユリ」
「ええ。皆さんは大変頑張ったんです。この景色はそんな皆さんに送る小さな幻想。と言うことにしませんか?」
正直ピンとは来なかった。だって雪将軍たちを倒したのは継ぎ接ぎの絆じゃなくて、継ぎ接ぎの絆と妖帖の雅だからだ。
どちらかを引き立たせるなんて真似はしたくない。
そう思ってアキラは口を出した。
「しませんかって……はい」
けれどそんな野暮な真似は止めた。気が付けばNightに腕を掴まれていた。
余計なことは言うなの合図だと、すぐに理解し意識を切り替える。
だからこそここは妖帖の雅に甘える。
こんなプレゼント滅多に得られないと思い、ただ首ったけになる。
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