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◇454 雷斬・天狐VS雪将軍3
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雪将軍は太刀を雪の上に突き立てた。
すると雪将軍には何の変化も起きない。
代わりに変化したのは環境で、地面がガタガタと揺れ始めた。
「おお、地面が揺れてるなぁ」
「天狐さん、気を付けてくださいね。なにか来ますよ!」
雷斬は天狐に警戒を煽る。
ガタガタと揺れる地面。地震とまではいかない地響き。
表面にカーペットのように積まれた雪を盛り上げると、突然雪の中から氷の柱が突き出した。
あまりにも突然だった。それも先程の氷の刃ではない。完全に氷の柱だ。
鋭く先端が尖っていた。それが何本も露出すると、雷斬と天狐のことを貫こうとする。
場所は足下。決して逃げられるような間合いはない。
雪将軍はただ佇むだけで倒せると確信を持っていた。
けれど雷斬も天狐も驚いたものの、素早く対応してみせた。
「天狐さん、氷の柱=氷柱が立ちましたよ」
「氷の柱なんて綺麗やな。それに使えるで」
「そうですね。氷柱を利用しない手はありません」
雷斬と天狐は立ち並んだ氷の柱=氷柱を足場に使うことにした。
雪の積もった庭先の地面に足を付けていれば、いつ足下から氷柱が出て来てもおかしくはない。
けれど氷柱の上を足場に使えば、それだけで雪将軍の技を一つ封じることができる。
雷斬と天狐は互いに相槌を打つと、立ち並んだ氷柱をピョンピョン飛び回る。
「ナニッ!? ワシノヒョウチュウヲアシバニツカウナド。コシャクナマネヲ……」
雪将軍はせっかく放った技を軽くあしらわれてしまった。
そのせいか余計に苛立ちが目立ち始め、怒りを燃やす。
太刀の柄に手を置いていたが、指先がかじかむように、ピキピキと骨を軋ませていた。
「小癪な真似と言う前に、太刀を取ったらどうですか?」
「そやな。でないと死んでしまうで?」
雷斬と天狐は氷柱を蹴り上げ、互いにぶつからないように交差して近付く。
雪将軍を中心に捉えると、天狐が正面を雷斬が背後を取る。
「天狐さん、合わせますね」
「おおきに。ほな、いくで」
雷斬は天狐の動きを観察する。
一番対処をされない瞬間、同時攻撃を繰り出す。
息を合わせる必要があるので視線を逸らすことができず、天狐が飛び掛かった瞬間、雷斬も飛び出す。
「ナメルナ! メニミエタケンギナド、ワシニツウヨウスルハズガ……ヌアッ!?」
雪将軍は天狐と雷斬の攻撃とタイミングを見極める。
瞳に灯っているのは怒りだけではない。
冷静に動きを見定め、見極め、適切なタイミングで太刀を振り上げた。
「そう言っている暇、ありませんよね」
「そやな。動けへんどっしゃろ?」
雷斬と天狐はこうなることを鼻っから読んでいた。
余裕な素振りを見せると、雪将軍の異変に拍車を掛ける。
どちらの攻撃も防ぐことは大振りの太刀ではできない。
体を捻れないように脇腹に突き刺した短刀のダメージがここに来て効いていた。
そのせいだろうか。雪将軍の動きが圧倒的に悪く鈍っていた。
脇腹を抑え込むと、天狐の攻撃は捌くことができたが、背後から飛び掛かった雷斬の攻撃は受け止めきれない。
「クッ! ナラバコウスルマデ!」
「上手いですね。ですがまだです。先程のお返しをさせていただきますね」
仕方なく雪将軍は兜を使って雷斬の刀を受け止める。
カキーン! と金属と金属が激しくぶつかり合う音を期待するも、そんな音は全くしない。むしろ鈍く聞こえてしまい、ドッシリした重たい音が空気を切る。
「オカエシダト!?」
「はい。私の雪刃、今度こそ受けていただきますよ」
雷斬は雪将軍の背後で、一番効果的な部分を見つけていた。
腕の裏側に黒刀を隠すと、一点だけを狙って的確に突き刺した。
「グハッ!?」
「入りましたね。HPも削れました。いえ、これは即死に近いダメージでしょうか?」
雪将軍は短い呻き声を挙げた。
今にも口から血を吐きそうだが、残念だがそんな演出は存在しない。
ただ苦しむ素振りと共に、口から何かを吐き出したい欲求に駆られる。
それも全ては雷斬の仕業であり、突き立てた黒刀は狙い通り、兜と鎧の間、鎖帷子で守れていないうなじの部分に短いながらも突き刺さった。
「ウウッ、アッ、イタイ、イタイイタイタイイタイ、ヌアッァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
雪将軍は発狂も始めた。
全身を捻って、捩じって、痛みを和らげ忘れようとする。
けれどその度に黒刀が揺れ動き、細かな痛みを伴ってHPを削った。
あまりにも残酷な光景に流石に見るに堪えないが、雪将軍は痛みを負いながらもまだ死んでいない目を向け、雷斬と天狐のことを睨みつけていた。その証拠に太刀は手の中から離れることはなく、冷たい氷を纏わせていたのだった。
すると雪将軍には何の変化も起きない。
代わりに変化したのは環境で、地面がガタガタと揺れ始めた。
「おお、地面が揺れてるなぁ」
「天狐さん、気を付けてくださいね。なにか来ますよ!」
雷斬は天狐に警戒を煽る。
ガタガタと揺れる地面。地震とまではいかない地響き。
表面にカーペットのように積まれた雪を盛り上げると、突然雪の中から氷の柱が突き出した。
あまりにも突然だった。それも先程の氷の刃ではない。完全に氷の柱だ。
鋭く先端が尖っていた。それが何本も露出すると、雷斬と天狐のことを貫こうとする。
場所は足下。決して逃げられるような間合いはない。
雪将軍はただ佇むだけで倒せると確信を持っていた。
けれど雷斬も天狐も驚いたものの、素早く対応してみせた。
「天狐さん、氷の柱=氷柱が立ちましたよ」
「氷の柱なんて綺麗やな。それに使えるで」
「そうですね。氷柱を利用しない手はありません」
雷斬と天狐は立ち並んだ氷の柱=氷柱を足場に使うことにした。
雪の積もった庭先の地面に足を付けていれば、いつ足下から氷柱が出て来てもおかしくはない。
けれど氷柱の上を足場に使えば、それだけで雪将軍の技を一つ封じることができる。
雷斬と天狐は互いに相槌を打つと、立ち並んだ氷柱をピョンピョン飛び回る。
「ナニッ!? ワシノヒョウチュウヲアシバニツカウナド。コシャクナマネヲ……」
雪将軍はせっかく放った技を軽くあしらわれてしまった。
そのせいか余計に苛立ちが目立ち始め、怒りを燃やす。
太刀の柄に手を置いていたが、指先がかじかむように、ピキピキと骨を軋ませていた。
「小癪な真似と言う前に、太刀を取ったらどうですか?」
「そやな。でないと死んでしまうで?」
雷斬と天狐は氷柱を蹴り上げ、互いにぶつからないように交差して近付く。
雪将軍を中心に捉えると、天狐が正面を雷斬が背後を取る。
「天狐さん、合わせますね」
「おおきに。ほな、いくで」
雷斬は天狐の動きを観察する。
一番対処をされない瞬間、同時攻撃を繰り出す。
息を合わせる必要があるので視線を逸らすことができず、天狐が飛び掛かった瞬間、雷斬も飛び出す。
「ナメルナ! メニミエタケンギナド、ワシニツウヨウスルハズガ……ヌアッ!?」
雪将軍は天狐と雷斬の攻撃とタイミングを見極める。
瞳に灯っているのは怒りだけではない。
冷静に動きを見定め、見極め、適切なタイミングで太刀を振り上げた。
「そう言っている暇、ありませんよね」
「そやな。動けへんどっしゃろ?」
雷斬と天狐はこうなることを鼻っから読んでいた。
余裕な素振りを見せると、雪将軍の異変に拍車を掛ける。
どちらの攻撃も防ぐことは大振りの太刀ではできない。
体を捻れないように脇腹に突き刺した短刀のダメージがここに来て効いていた。
そのせいだろうか。雪将軍の動きが圧倒的に悪く鈍っていた。
脇腹を抑え込むと、天狐の攻撃は捌くことができたが、背後から飛び掛かった雷斬の攻撃は受け止めきれない。
「クッ! ナラバコウスルマデ!」
「上手いですね。ですがまだです。先程のお返しをさせていただきますね」
仕方なく雪将軍は兜を使って雷斬の刀を受け止める。
カキーン! と金属と金属が激しくぶつかり合う音を期待するも、そんな音は全くしない。むしろ鈍く聞こえてしまい、ドッシリした重たい音が空気を切る。
「オカエシダト!?」
「はい。私の雪刃、今度こそ受けていただきますよ」
雷斬は雪将軍の背後で、一番効果的な部分を見つけていた。
腕の裏側に黒刀を隠すと、一点だけを狙って的確に突き刺した。
「グハッ!?」
「入りましたね。HPも削れました。いえ、これは即死に近いダメージでしょうか?」
雪将軍は短い呻き声を挙げた。
今にも口から血を吐きそうだが、残念だがそんな演出は存在しない。
ただ苦しむ素振りと共に、口から何かを吐き出したい欲求に駆られる。
それも全ては雷斬の仕業であり、突き立てた黒刀は狙い通り、兜と鎧の間、鎖帷子で守れていないうなじの部分に短いながらも突き刺さった。
「ウウッ、アッ、イタイ、イタイイタイタイイタイ、ヌアッァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」
雪将軍は発狂も始めた。
全身を捻って、捩じって、痛みを和らげ忘れようとする。
けれどその度に黒刀が揺れ動き、細かな痛みを伴ってHPを削った。
あまりにも残酷な光景に流石に見るに堪えないが、雪将軍は痛みを負いながらもまだ死んでいない目を向け、雷斬と天狐のことを睨みつけていた。その証拠に太刀は手の中から離れることはなく、冷たい氷を纏わせていたのだった。
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