VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇448 継ぎ接ぎ・妖帖VSツユヨミ2

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 煌びやかな刃が存在感を露わにする。
 雪に煽られ、せっかく姿を消していたはずのツユヨミは、苦汁を舐めることになった。
 けれど姿を現した瞬間。Nightの首筋を狙っていたのだが、その思惑に気が付いている人間は少ない。
 なのでツユヨミは例え存在感が露わになってしまったとしても構わない素振りを見せ、まずは一人と掻き切ろうとした。

「マズハヒトリデスネ」

 短刀がNightを襲う。
 無防備な首筋に担当の刃が優しく振れた。
 このまま力を抜いて引き切ることで、柔肌を削ることができる。
 ツユヨミは一つ潰したと確信したが、それはあまりにも軽率だった。

「危ない、Night!」

 突然視線の先に拳が飛んで来た。
 短刀を突き付け、柔肌を削り、引き裂くはずだった。
 けれど横から急に押し寄せた拳と詰めによって弾かれてしまい、完全に力任せでツユヨミの思惑は外れてしまった。

「クッ、ヨケイナマネガ!」

 ツユヨミが視線の捉えたのは、アキラの姿だった。
 敵意を飛び越え一気に殺意を抱いた。
 狙うべき相手が多すぎて対処を悩む中、ツユヨミは再び姿を消した。

「Night、大丈夫!」
「ああ。危なかったな」
「それはこっちの台詞だよ。それより気が付いてたよね?」

 アキラはNightに問いかけた。
 Nightなら気が付いていない筈がない。
 まるで、わざと隙を見せて狙わせたようにすら感じたが、如何やら当たっていたらしい。

「当り前だ。わざと狙わせたに決まっているだろ」
「そんな! やられてたら如何したの?」
「その時はその時だ。だが、誰かが守ってくれただろ」
「そんな他人事通用しないよ!」

 まさかのNightは最初から他人事に考えていた。
 他力本願すぎる気がしたが、Nightにも意図があったらしい。
 現に何かを掴んだようで、自分の首筋を触れた。傷痕は残っておらず、未だに短刀の感触だけが残されていた。

「やっぱりか」
「やっぱり?」

 アキラはNightが指先の感触に心当たりがあったようで、反射的に訊き返してしまった。
 するとNightは自分の指を見せる。
 何か特殊なことがあったわけではないのだが、指の腹が濡れてはいた。

「濡れていますね」
「そうですね。如何して濡れてるの? もしかして、雪とか触った?」
「そんなわけがないだろ。これがツユヨミの正体だ」

 クロユリに合わせてアキラも尋ねる。
 当たり前のことを問い返したせいか、Nightは少し怒り顔を浮かべる。
 けれど指先が濡れていることこそが、ツユヨミの正体だと豪語しており、余計に分からなくなった。

「なに言ってるのよ。そんな分かんないこと言って、また狙われたら如何するのよ」
「そうだよー。もう少しわかるように説明してよー」
「そうか。それじゃあこれで如何だ。ツユヨミの透明化と透過の原因。それは私の指が濡れていることと繋がる」
「「「ん?」」」

 必要な情報が溢れ出していた。
 Nightからすれば、これだけ情報を小出しにすれば、ある程度の察しが付くと思ったのだろう。
 けれど実際は情報が増え過ぎた結果、頭が回らなくなった。
 みんな考えることを放棄し、クロユリたち妖帖の雅とアキラだけがひたすら脳を回転させる。

「あ、あれ? 分からないのか?」
「えっと、指が濡れてるってことは自分も濡れてるってこと?」
「そうだ。簡潔な答えを広げるならば、指が濡れると言うことは、自分の体を水に変化。この場合は……」
「露ですよね! つまり、ツユヨミさんは体を水滴に厳密には露に変化させている。と言うことですよね!」

 椿姫はピコンと頭の上で電球が点灯する。
 その直後、ツユヨミの幻術の秘密を明らかにさせた。

 ツユヨミが使う幻術の理由。
 それは自身の体を露、つまりは水滴に変化させるのだ。
 そうすることにより、肉体を細胞レベルで水滴に変化させ、攻撃を素早く透過で躱し、存在感を散らして唐突に出現するのだ。

 考えてみれば見るほど合点が行く。
 アキラたちはここまでの情報を繋ぎ合わせ全員の意見がまとまった。
 納得が早々にできてしまい、表情に笑みが浮かぶ。

「なるほど! 確かにツユヨミだけに露はありそうかも」
「分かりやすい設定だねー。でもその方が考えも付きやすいかもねー」
「攻略の糸口は常に存在している。運営からのメッセージを読み解けば、この世界で倒せない相手はいない。所詮レベルは意味の無い数字で、必要なのは発想力とそれを行動に起こせる力だ」

 NightはこのGAMEでやるべきことを熟知していた。
 どんな相手にもどれだけ回りくどい方法を使ってでも、倒す方法は必ずある。
 しかもの方法は一つではない。無数にある選択肢の中から、自分が思う正解を繋ぎ合わせ、引き寄せることこそが大切だと知らしめた。

「「「おー」」」
「なんだ? その顔凄く嫌なんだが」
「いや、Nightっぽいアプローチだよね。うん、凄くNightっぽい」
「茶化すな。無駄口を叩く暇があるなら……」

 
 瞬時に言葉を切り、背後からの殺意を肌で感じ取った。
 短刀が力任せにNightに降り注がれた。
 
「グロウスルナ。ワタシノチカラヲタダノナマエダトオモウナ」

 しかしNightは素早く気が付いて、十字架状の剣で受け止める。
 そこに居たのは名前を馬鹿にされて怒ったツユヨミで、腹の奥から煮えたぎる怒りを言葉として吐き捨てた。

「煽って出て来るのか。典型的なタイプだな」
「Night、そんなの煽っちゃダメだよー!」
「ソンナノダト?」
「あっ、間違えた。そんなにだったー」

 Nightの煽りをフェルノは間違えて助長させてしまった。
 アキラはヤバいと思ったが、その予想は直感で当たる。
 ツユヨミは短刀から力を抜くと、不敵な目を見せる。

「アソブノモイイカゲンオワリデスネ。ハヤクシンデモライマショウ」

 そう言い残すと、瞬時にツユヨミは消えた。
 完全に怒らせてしまったとアキラは悟るが、これから何が起こるのか、全身を強烈に強張らせる。

 ポツポツと降る雪が冷たい。
 肌に触れる度にヒヤリとさえ、溶けた水滴がツユヨミのことを印象付けた。
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