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◇444 天孤の【朧狐火】
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アキラたちが雪将軍の戦っている中、時間は少し前に遡る——
クロユリたち妖帖の雅は、アキラたちを心配していた。
猛吹雪の中、珍しく行動に出た三人は雪の中にできたアキラたちの足跡を追っていた。
今にも消えかかっている。急ぎ足で駆けると、予め予想していた武家屋敷を目指した。
「この先ですね」
「ううっ、さぶい。ほんまにこの先におるんやんな?」
アキラたちは本当にこの吹雪の中を進んだのか。
クロユリたちは呆れてしまった。
けれどそうも言ってられないのも事実だ。
「急ぎましょうか。雪将軍、どんな相手かは分かりませんが、まともな準備もできていないとなれば、おそらくは窮地に陥っているでしょうね」
「そうやな。うちも暴れたいし、助けにも行きたいしやがな」
「でも、ある程度は大丈夫だと思うよ?」
「ある程度ではダメですよ。天狐の言う通り、乗り掛かった舟です。しっかりと勝ちを取りに行きましょうか」
クロユリもやる気になっていた。
それを受けて天狐と椿姫も納得する。
「ちょい急ごかな。先行くで」
「お願いします。なにかあればすぐにでも動いてくださいね」
「分かったわぁ。二人もすぐに来てな」
そう言い残すと、天狐は雪の中を猛進した。
ダッダッダッ! と軽快な足取りで駆けて行く。
草鞋の裏には雪がたくさん付着するが、それすら無視して竹林の中に入った。
「始めて来たけど深い竹林やな。しかも整備されてる」
竹林の中は異常に整備されていた。
おまけに吹雪の脅威もなく走りやすい。
竹林に初めてやって来た天狐はそんな漠然とした感想を吐露する。
けれどゆっくりはしていられない。
天孤はこの先にあるであろう武家屋敷を睨む。
「それで肝心の武家屋敷は……あったな!」
目の前には武家屋敷が浮かぶ。立派な門があり、建造物として価値は高いだろう。
けれどそんなことは如何だって良かった。
ポツポツと空から細かな雪が降り積もる。
頬を掠め始め、走るたびに風を切って全身が凍て付く。
けれど天狐は我慢をする。目と耳を研ぎ澄ませて全力で集中した。
おまけに耳を澄ませてみると、カーンカーン! と金属を打ち付ける音が聞こえた。
如何やらアキラたちはまだ生きていて戦っているようで、天狐は笑みを浮かべた。
「まだ生きてるなぁ。ほな、うちの出番やな」
天孤は武家屋敷の中に入る。
すると全身を包み込むゾクリとした感触に苛まれた。
気持ちが悪い。ただひたすらにそれだけが言えて、これが幻術だと分かった。
視界の端が万華鏡のように変化を続ける。
このままじゃ精神まで飲み込まれてしまうのでは? そんな危機に陥るが、天狐には全くと言っていいほど無力だった。
「そないな大したことあらへん幻術じゃ、うちのことまでは惑わせられへんで?」
天孤は指を前に出し咄嗟に印を結んだ。
もちろんこの行動に意味なんてない。
そんなのは百も承知でカッコつけると、急に空から火が降り始めた。
「来い、【朧狐火】!」
天孤は雪も火も無視して武家屋敷の敷地内に躍り出る。
すると視界に浮かんだのはピンチを迎えた継ぎ接ぎの面々。
雷斬は倒れ傍に寄るNightたち。アキラは宙に浮くと、雪将軍のサスツルギを喰らいそうになっている。
天孤には何が起きているのかは分からない。
けれどアキラが危機に直面していることは分かった。
おまけにその視線の先が狐火にある。
となればやれることは一つしかない。
「こらえらいマズいなぁ。ほな、頑張ろ」
天孤は固有スキル【朧狐火】と種族スキル【狐化】を同時に使った。
すると頭からは狐の耳が、お尻からは狐の耳が映える。
これで獣の身体能力を糧にして、姿も消して近付ける。
本当に好都合だ。
天狐は武家屋敷の屋根に近付くと、有り余る身体能力を駆使する。
インベントリから取り出した鉤爪付きのロープを屋根瓦に引っ掛けると、素早く上った。
「さてと、まずはアキラにカッコええとこを見せよかな!」
天孤は素早く屋根から飛んだ。
鬼火に乗じて姿を現すと、アキラの前に飛び出した。
「いける、怪我してへん?」
天孤は何の気なしにそう答えた。
アキラはもの凄く驚いている。
当然だ。突然天狐の声が聞こえ、一体いつからそこに居たのか、目を見開いてしまう。
「ここはうちに任せて、少し下がった方がええわぁ」
天孤は驚くアキラの顔が面白くて仕方なかった。
まさかこんなに驚いて貰えるなら、サプライズだとすれば大成功だ。
けれどそうも言ってられないのは確かだ。
不安定な体勢でアキラは空中に投げ出されている。
おまけに雪書群は鬼火に気を取られているがこの方向は確実に攻撃が飛ぶ出ろう。
気を付けないと思いつつ、天狐は冷静に周囲を見回す。
「クロユリ、椿、みんなを頼んやわぁ!」
だからアキラのことを突き飛ばした。
突然のことに驚く。アキラは大絶叫を上げながら不安定な体勢で地上に落ちて行くと、その姿を天狐は確認し刀に手を添えるのだった。
クロユリたち妖帖の雅は、アキラたちを心配していた。
猛吹雪の中、珍しく行動に出た三人は雪の中にできたアキラたちの足跡を追っていた。
今にも消えかかっている。急ぎ足で駆けると、予め予想していた武家屋敷を目指した。
「この先ですね」
「ううっ、さぶい。ほんまにこの先におるんやんな?」
アキラたちは本当にこの吹雪の中を進んだのか。
クロユリたちは呆れてしまった。
けれどそうも言ってられないのも事実だ。
「急ぎましょうか。雪将軍、どんな相手かは分かりませんが、まともな準備もできていないとなれば、おそらくは窮地に陥っているでしょうね」
「そうやな。うちも暴れたいし、助けにも行きたいしやがな」
「でも、ある程度は大丈夫だと思うよ?」
「ある程度ではダメですよ。天狐の言う通り、乗り掛かった舟です。しっかりと勝ちを取りに行きましょうか」
クロユリもやる気になっていた。
それを受けて天狐と椿姫も納得する。
「ちょい急ごかな。先行くで」
「お願いします。なにかあればすぐにでも動いてくださいね」
「分かったわぁ。二人もすぐに来てな」
そう言い残すと、天狐は雪の中を猛進した。
ダッダッダッ! と軽快な足取りで駆けて行く。
草鞋の裏には雪がたくさん付着するが、それすら無視して竹林の中に入った。
「始めて来たけど深い竹林やな。しかも整備されてる」
竹林の中は異常に整備されていた。
おまけに吹雪の脅威もなく走りやすい。
竹林に初めてやって来た天狐はそんな漠然とした感想を吐露する。
けれどゆっくりはしていられない。
天孤はこの先にあるであろう武家屋敷を睨む。
「それで肝心の武家屋敷は……あったな!」
目の前には武家屋敷が浮かぶ。立派な門があり、建造物として価値は高いだろう。
けれどそんなことは如何だって良かった。
ポツポツと空から細かな雪が降り積もる。
頬を掠め始め、走るたびに風を切って全身が凍て付く。
けれど天狐は我慢をする。目と耳を研ぎ澄ませて全力で集中した。
おまけに耳を澄ませてみると、カーンカーン! と金属を打ち付ける音が聞こえた。
如何やらアキラたちはまだ生きていて戦っているようで、天狐は笑みを浮かべた。
「まだ生きてるなぁ。ほな、うちの出番やな」
天孤は武家屋敷の中に入る。
すると全身を包み込むゾクリとした感触に苛まれた。
気持ちが悪い。ただひたすらにそれだけが言えて、これが幻術だと分かった。
視界の端が万華鏡のように変化を続ける。
このままじゃ精神まで飲み込まれてしまうのでは? そんな危機に陥るが、天狐には全くと言っていいほど無力だった。
「そないな大したことあらへん幻術じゃ、うちのことまでは惑わせられへんで?」
天孤は指を前に出し咄嗟に印を結んだ。
もちろんこの行動に意味なんてない。
そんなのは百も承知でカッコつけると、急に空から火が降り始めた。
「来い、【朧狐火】!」
天孤は雪も火も無視して武家屋敷の敷地内に躍り出る。
すると視界に浮かんだのはピンチを迎えた継ぎ接ぎの面々。
雷斬は倒れ傍に寄るNightたち。アキラは宙に浮くと、雪将軍のサスツルギを喰らいそうになっている。
天孤には何が起きているのかは分からない。
けれどアキラが危機に直面していることは分かった。
おまけにその視線の先が狐火にある。
となればやれることは一つしかない。
「こらえらいマズいなぁ。ほな、頑張ろ」
天孤は固有スキル【朧狐火】と種族スキル【狐化】を同時に使った。
すると頭からは狐の耳が、お尻からは狐の耳が映える。
これで獣の身体能力を糧にして、姿も消して近付ける。
本当に好都合だ。
天狐は武家屋敷の屋根に近付くと、有り余る身体能力を駆使する。
インベントリから取り出した鉤爪付きのロープを屋根瓦に引っ掛けると、素早く上った。
「さてと、まずはアキラにカッコええとこを見せよかな!」
天孤は素早く屋根から飛んだ。
鬼火に乗じて姿を現すと、アキラの前に飛び出した。
「いける、怪我してへん?」
天孤は何の気なしにそう答えた。
アキラはもの凄く驚いている。
当然だ。突然天狐の声が聞こえ、一体いつからそこに居たのか、目を見開いてしまう。
「ここはうちに任せて、少し下がった方がええわぁ」
天孤は驚くアキラの顔が面白くて仕方なかった。
まさかこんなに驚いて貰えるなら、サプライズだとすれば大成功だ。
けれどそうも言ってられないのは確かだ。
不安定な体勢でアキラは空中に投げ出されている。
おまけに雪書群は鬼火に気を取られているがこの方向は確実に攻撃が飛ぶ出ろう。
気を付けないと思いつつ、天狐は冷静に周囲を見回す。
「クロユリ、椿、みんなを頼んやわぁ!」
だからアキラのことを突き飛ばした。
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