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◇432 殴り辛い柱?
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アキラたちはそれぞれが武器を手に取り、柱や襖を破壊する。
もはや問答無用だ。完全に仕返しを敢行し、アキラと雷斬、ベルの三人は「いいのかな?」と内心考えていた。
それもそのはず、Nightとフェルノは武家屋敷を散々破壊し尽くしていた。
これは復旧は難しい。そんなレベルにまで達しようとしている。
「Night、こんなに壊して大丈夫なのかな?」
「一度壊してしまったんだ。もう諦めろ」
「諦めろって……そんな呑気なこと言わないでよ」
できるなら直してあげたい。けれどアキラたちだけでは無理だと分かっていた。
だからだろうか。アキラも唇を噛むと、これ以上は何も言えなくなってしまう。
この幻覚が解けた時、元通りになってくれていると心底願うだけ。
その一言に尽きてしまい、太い柱をぶん殴った。
ボーン!
すると柱から柱へと音が伝わった。
鉄筋でもないはずが、音はドンドン強く響いていく。
流石に全員手を止めた。ここまで壊してみたものの、明らかに異様な音がしたのは、アキラが叩いた太い柱だけだった。
「今のはなんだ? アキラ、もう一度叩いてみてくれ」
「もう一回叩くの? えいっ!」
アキラはNightに促されるまま、太い柱を叩いてみた。
すると再び音が鈍く響き始める。
柱から柱へと伝わって、天井裏に張り巡らされた他の柱へと共鳴している。
「どうなっているんだ。どうしてアキラが叩いただけで……」
「あっ、そこが問題なんだ。私が強いからじゃないんだね」
「当り前だ。だが真の問題はこの柱だな。恐らく大黒柱だろうが……壊していいのか?」
流石のNightも大黒柱に手を加えるのは些か慎重になった。
大黒柱は家の支柱の中でも一番大事なもの。
これを折った時、この武家屋敷がどんな結末を迎えることになるのか、考えただけで虫唾が走る。絶対に壊してはいけない。脳裏に焼き付くようにムカデが走ると、アキラたちは腕を引っ込めた。
ただ一人、この状況下でも自分を見失わず、黙々と柱を次々折りまくるフェルノは除いて……
「みんなー、その柱がなにかあるのー?」
「そうだよフェルノ。この柱から音がするんだ」
「音? ふーん……それじゃあ私も殴ってみるね。えいっ!」
腕をブンブン回し、振りかぶって放った渾身のアッパーが炸裂する。
フェルノ自身も、「決まった」と呟いてしまう手前、相当の威力を誇っているに違いない。
当然と言うべきか、鈍い音が響いた。けれどおかしいのは先程アキラがぶん殴った時は体重が載っていなかったせいか、ボーン! と鳴ったはずが、フェルノの時はボキッ! と、まるで骨が折れたような異様な音も混じっていた。
「あれ? 私の時と音が違うよ」
「そうだな。フェルノ、もう一度殴ってみてくれ」
「OK。それじゃあもう一発アッパーで……からのフックとストレートだ!」
フェルノは右と左。両方器用に使って柱にダメージを蓄積していく。
けれどその度にボーンが背後でなる中、前面にはボキッ、バキッ、ドキッ! と骨と筋肉が引き千切れる音。雷斬とベルが表情を苦しく歪めるが、まるでそれでしかない。
実際、フェルノには違和感もあり、何故か柱を殴れなかったのだ。
「おっかしいなー。柱に拳が届かないよー」
「もしかして、空気の膜が張ってあるのかな?」
「そんな感じじゃなくてー。ここになにか居るのかなー? えいっえいっえいっ!」
フェルノがいくら同じところに攻撃を加えても柱はビクともしない。
多分一メモリも耐久値は減っていない。
明らかに異様で異質。こんなことあってはいけない。フェルノが奥歯を噛んで悔しいよりも謎が解き明かしたくて仕方なく、最終兵器と言うべきか、【吸炎竜化】を加えた超必殺の一撃を放つことにした。
「みんなちょっと離れてて! 今から私の超必殺技が炸裂するからねー」
「超必殺技?」
「子供か。そんなの良いからさっさと……」
「ファイアーインパクトアタック! とか?」
「とかって使えるな。ダサくなるだろ!」
絶対にそこじゃないツッコミを入れた。そもそもファイアーでインパクトの時点でアタックは要らないはずだ。意味もないアキラの内心ツッコミが届くはずもない中、フェルノの拳は放たれる。
否、放たれることはなかった。拳が届く寸前、真っ白な粉雪が刃となってフェルノの拳と柱の間を裂いたのだ。
キュィーン!
「はっ?」
「今の斬撃、一体何処から……」
フェルノが目を丸くする中、雷斬は襖の奥を睨んだ。
この先から斬撃は飛んできていた。かなり鋭いもので、確実に攻撃を中断させようとする意志さえ感じた。
にもかかわらずトドメを刺そうとしない。この振る舞い、戦いを止めようとしたように感じた。雷斬は一瞬の間で底までの思考を完成させると、自分も刀の柄に指を掛けた。
「皆さん気を付けてください。来ますよ」
「来るのね。待ちくたびれたわよ」
「そうだな。だがどうしてだ? 流石に分からないぞ」
Nightも分かっていなかった。如何して敵が出て来るのか。条件を満たしたとも思えないのだ。
おそらくはまだ幻覚の中。これすら敵の思う壺なら止める道理はない。
Nightはそのままフェルノに叫ぶ。
「フェルノ、お前は柱を叩き続けろー」
「えー、なんか嫌な音するから止めたいんだけどなー」
「いいからやれ! そうすれば敵の真意が……」
そこまで言った瞬間、肌が凍り付いた。
呼吸すらできなくなるほど、冷たい刃が首筋に触れる。
Nightは目を丸くする。フェルノとアキラ、それから雷斬を除き、Nightとベルは唇を噛むのだった。
もはや問答無用だ。完全に仕返しを敢行し、アキラと雷斬、ベルの三人は「いいのかな?」と内心考えていた。
それもそのはず、Nightとフェルノは武家屋敷を散々破壊し尽くしていた。
これは復旧は難しい。そんなレベルにまで達しようとしている。
「Night、こんなに壊して大丈夫なのかな?」
「一度壊してしまったんだ。もう諦めろ」
「諦めろって……そんな呑気なこと言わないでよ」
できるなら直してあげたい。けれどアキラたちだけでは無理だと分かっていた。
だからだろうか。アキラも唇を噛むと、これ以上は何も言えなくなってしまう。
この幻覚が解けた時、元通りになってくれていると心底願うだけ。
その一言に尽きてしまい、太い柱をぶん殴った。
ボーン!
すると柱から柱へと音が伝わった。
鉄筋でもないはずが、音はドンドン強く響いていく。
流石に全員手を止めた。ここまで壊してみたものの、明らかに異様な音がしたのは、アキラが叩いた太い柱だけだった。
「今のはなんだ? アキラ、もう一度叩いてみてくれ」
「もう一回叩くの? えいっ!」
アキラはNightに促されるまま、太い柱を叩いてみた。
すると再び音が鈍く響き始める。
柱から柱へと伝わって、天井裏に張り巡らされた他の柱へと共鳴している。
「どうなっているんだ。どうしてアキラが叩いただけで……」
「あっ、そこが問題なんだ。私が強いからじゃないんだね」
「当り前だ。だが真の問題はこの柱だな。恐らく大黒柱だろうが……壊していいのか?」
流石のNightも大黒柱に手を加えるのは些か慎重になった。
大黒柱は家の支柱の中でも一番大事なもの。
これを折った時、この武家屋敷がどんな結末を迎えることになるのか、考えただけで虫唾が走る。絶対に壊してはいけない。脳裏に焼き付くようにムカデが走ると、アキラたちは腕を引っ込めた。
ただ一人、この状況下でも自分を見失わず、黙々と柱を次々折りまくるフェルノは除いて……
「みんなー、その柱がなにかあるのー?」
「そうだよフェルノ。この柱から音がするんだ」
「音? ふーん……それじゃあ私も殴ってみるね。えいっ!」
腕をブンブン回し、振りかぶって放った渾身のアッパーが炸裂する。
フェルノ自身も、「決まった」と呟いてしまう手前、相当の威力を誇っているに違いない。
当然と言うべきか、鈍い音が響いた。けれどおかしいのは先程アキラがぶん殴った時は体重が載っていなかったせいか、ボーン! と鳴ったはずが、フェルノの時はボキッ! と、まるで骨が折れたような異様な音も混じっていた。
「あれ? 私の時と音が違うよ」
「そうだな。フェルノ、もう一度殴ってみてくれ」
「OK。それじゃあもう一発アッパーで……からのフックとストレートだ!」
フェルノは右と左。両方器用に使って柱にダメージを蓄積していく。
けれどその度にボーンが背後でなる中、前面にはボキッ、バキッ、ドキッ! と骨と筋肉が引き千切れる音。雷斬とベルが表情を苦しく歪めるが、まるでそれでしかない。
実際、フェルノには違和感もあり、何故か柱を殴れなかったのだ。
「おっかしいなー。柱に拳が届かないよー」
「もしかして、空気の膜が張ってあるのかな?」
「そんな感じじゃなくてー。ここになにか居るのかなー? えいっえいっえいっ!」
フェルノがいくら同じところに攻撃を加えても柱はビクともしない。
多分一メモリも耐久値は減っていない。
明らかに異様で異質。こんなことあってはいけない。フェルノが奥歯を噛んで悔しいよりも謎が解き明かしたくて仕方なく、最終兵器と言うべきか、【吸炎竜化】を加えた超必殺の一撃を放つことにした。
「みんなちょっと離れてて! 今から私の超必殺技が炸裂するからねー」
「超必殺技?」
「子供か。そんなの良いからさっさと……」
「ファイアーインパクトアタック! とか?」
「とかって使えるな。ダサくなるだろ!」
絶対にそこじゃないツッコミを入れた。そもそもファイアーでインパクトの時点でアタックは要らないはずだ。意味もないアキラの内心ツッコミが届くはずもない中、フェルノの拳は放たれる。
否、放たれることはなかった。拳が届く寸前、真っ白な粉雪が刃となってフェルノの拳と柱の間を裂いたのだ。
キュィーン!
「はっ?」
「今の斬撃、一体何処から……」
フェルノが目を丸くする中、雷斬は襖の奥を睨んだ。
この先から斬撃は飛んできていた。かなり鋭いもので、確実に攻撃を中断させようとする意志さえ感じた。
にもかかわらずトドメを刺そうとしない。この振る舞い、戦いを止めようとしたように感じた。雷斬は一瞬の間で底までの思考を完成させると、自分も刀の柄に指を掛けた。
「皆さん気を付けてください。来ますよ」
「来るのね。待ちくたびれたわよ」
「そうだな。だがどうしてだ? 流石に分からないぞ」
Nightも分かっていなかった。如何して敵が出て来るのか。条件を満たしたとも思えないのだ。
おそらくはまだ幻覚の中。これすら敵の思う壺なら止める道理はない。
Nightはそのままフェルノに叫ぶ。
「フェルノ、お前は柱を叩き続けろー」
「えー、なんか嫌な音するから止めたいんだけどなー」
「いいからやれ! そうすれば敵の真意が……」
そこまで言った瞬間、肌が凍り付いた。
呼吸すらできなくなるほど、冷たい刃が首筋に触れる。
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