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◇430 絶対にやってはいけない突破法1
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一体どれだけ回っているのか。まるで環状線をグルグル回っているみたいに感じた。
これが永遠。アキラはそこまで思いつめ、哲学的に感じた訳……ではなく、単純にいつになったら坩堝の外に出られるのか足搔いていた。
「ねえ、いつになったら終わるのかな?」
「さあな?」
「さあなって……ずっと歩いてるよ?」
「そうだな」
「あっ、また穴があったよ! もしかして、また同じところに戻って来たのかな?」
「だろうな」
アキラたちはまたしても穴の前にやって来た。
一体これで何回目なのか。正直もう飽きるほど見た。
こうして三十分間、アキラたちは縛られ続けていた。果たしてこれは幻覚なのか、もはやそういう仕様なのではないかと疑い始めていた。
「ねえ、一旦外に出てみるのはダメなの?」
「そうしたいのはやまやまだが……」
フェルノはNightの視線に気が付くと、左腕を廊下の外、縁側から見て外側へと出してみた。しかしダメだった。まるで壁があるみたいで、ゴーン! と跳ね返されてしまう。
如何やら外には出られない。フェルノが何度も叩いてみるが、結果的に無駄な行動だったと悟った。
「あー、ダメだね。全然出られない」
「ってことはこっち側かな?」
今度は部屋の方に視線を向けた。
襖が破けているが、奥には誰も居ない。
雷斬が代表して足を前に出してみる。すると入ろうとすることはできるのに、何故か体が透過しない。完全に廊下から抜け出すことはできず、アキラたちは嫌な予感がした。
「もしかして……出れない?」
「そうだな。出られないらしい」
「どうするのよ! このままじゃ時間だけが過ぎて行くわよ!」
「明日も早いのにどうしよう……」
アキラたちは完全に廊下に閉じ込められてしまった。
このままいたずらに時間だけが過ぎるのを待つのか。
そんなの待っていられない。待っている間に吹雪が止んで、結局振出しに戻る。
次のチャンスはきっとないだろうと、アキラたちの中に焦りが見えた。
「一度外に出てみますか?」
雷斬がここは敢えてと提案する。
けれどNightはすぐさま食って掛かるように追及した。
「戻ってみるというわけか? 仮にそれで外に出られたとして、根本解決になるのか?」
「それは分かりませんが……庭先から縁側を伝い中に入るというのはいかがでしょうか?」
「無作法だな。仮にそれが成功したとして、廊下に触れた時点で幻覚に飲まれたらどうするんだ?」
「そこまでは考えていませんでした。すみません、お力になれず」
雷斬はNightとのディベートで負けてしまった。
力も考えも及ばなかったと深く反省している。
けれど今のはNightも悪い。根本解決にならないのなら、なる手段を提案すべきだ。
「そういうNightもなにか出してよ!」
「そうだーそうだー。なんかあるんでしょー?」
「むぅ。私のやり方を信じる気か?」
「「ぞくっ!」」
何だか嫌な予感がした。
Nightが眉根を寄せ、神妙な表情を浮かべている時点で嫌な予感は確定。
だけど腕を組んでチラチラ視線を泳がせている。きっと幻覚を一瞬で解く凄い方法があるに違いない。けれどそれは倫理観に反していて、きっと提案したくない物だろう。
それならばと思い、アキラは背中を押すことにした。
「Night、大丈夫だよ!」
「アキラ……私の考えを読んだのか?」
それは違う。ここまでは読んでいない。
けれど読もうとすることはできる。
だけど敢えてそんな野暮なことはせず、首を横に振っていた。
「読んではないよ。だけどみんなのために頑張ってくれているんでしょ? それならやってみるしかないよ。それしかこの状況を打破する術は無いんだから」
アキラは言葉と目で訴えかけた。Nightのオッドアイが私のことを見つめる。
眉根を寄せた顔付きが妙に悪い。けれど私のことを信じてくれたのか、「はぁ」と一息付いた。
「分かった。それなら試してみるか」
「本当? よかった」
Nightが調子を取り戻してくれて嬉しかった。
アキラはにこやかな笑みを浮かべる中、ゴソゴソ作業を始め出す。
インベントリからアイテムを取り出すと、何処か見覚えのある持ち手の柄に嫌な予感が更に走った。
「Night、それなに?」
「なにって決まっているだろ」
インベントリの中から取り出そうとしたもの。その姿が明らかになった。
ギザギザとした刃、グリップ性の高い柄。
何でも切れてしまいそうで、もしかしたらNightには似合わないかもしれないが、その手にはノコギリが握られていた。
これが永遠。アキラはそこまで思いつめ、哲学的に感じた訳……ではなく、単純にいつになったら坩堝の外に出られるのか足搔いていた。
「ねえ、いつになったら終わるのかな?」
「さあな?」
「さあなって……ずっと歩いてるよ?」
「そうだな」
「あっ、また穴があったよ! もしかして、また同じところに戻って来たのかな?」
「だろうな」
アキラたちはまたしても穴の前にやって来た。
一体これで何回目なのか。正直もう飽きるほど見た。
こうして三十分間、アキラたちは縛られ続けていた。果たしてこれは幻覚なのか、もはやそういう仕様なのではないかと疑い始めていた。
「ねえ、一旦外に出てみるのはダメなの?」
「そうしたいのはやまやまだが……」
フェルノはNightの視線に気が付くと、左腕を廊下の外、縁側から見て外側へと出してみた。しかしダメだった。まるで壁があるみたいで、ゴーン! と跳ね返されてしまう。
如何やら外には出られない。フェルノが何度も叩いてみるが、結果的に無駄な行動だったと悟った。
「あー、ダメだね。全然出られない」
「ってことはこっち側かな?」
今度は部屋の方に視線を向けた。
襖が破けているが、奥には誰も居ない。
雷斬が代表して足を前に出してみる。すると入ろうとすることはできるのに、何故か体が透過しない。完全に廊下から抜け出すことはできず、アキラたちは嫌な予感がした。
「もしかして……出れない?」
「そうだな。出られないらしい」
「どうするのよ! このままじゃ時間だけが過ぎて行くわよ!」
「明日も早いのにどうしよう……」
アキラたちは完全に廊下に閉じ込められてしまった。
このままいたずらに時間だけが過ぎるのを待つのか。
そんなの待っていられない。待っている間に吹雪が止んで、結局振出しに戻る。
次のチャンスはきっとないだろうと、アキラたちの中に焦りが見えた。
「一度外に出てみますか?」
雷斬がここは敢えてと提案する。
けれどNightはすぐさま食って掛かるように追及した。
「戻ってみるというわけか? 仮にそれで外に出られたとして、根本解決になるのか?」
「それは分かりませんが……庭先から縁側を伝い中に入るというのはいかがでしょうか?」
「無作法だな。仮にそれが成功したとして、廊下に触れた時点で幻覚に飲まれたらどうするんだ?」
「そこまでは考えていませんでした。すみません、お力になれず」
雷斬はNightとのディベートで負けてしまった。
力も考えも及ばなかったと深く反省している。
けれど今のはNightも悪い。根本解決にならないのなら、なる手段を提案すべきだ。
「そういうNightもなにか出してよ!」
「そうだーそうだー。なんかあるんでしょー?」
「むぅ。私のやり方を信じる気か?」
「「ぞくっ!」」
何だか嫌な予感がした。
Nightが眉根を寄せ、神妙な表情を浮かべている時点で嫌な予感は確定。
だけど腕を組んでチラチラ視線を泳がせている。きっと幻覚を一瞬で解く凄い方法があるに違いない。けれどそれは倫理観に反していて、きっと提案したくない物だろう。
それならばと思い、アキラは背中を押すことにした。
「Night、大丈夫だよ!」
「アキラ……私の考えを読んだのか?」
それは違う。ここまでは読んでいない。
けれど読もうとすることはできる。
だけど敢えてそんな野暮なことはせず、首を横に振っていた。
「読んではないよ。だけどみんなのために頑張ってくれているんでしょ? それならやってみるしかないよ。それしかこの状況を打破する術は無いんだから」
アキラは言葉と目で訴えかけた。Nightのオッドアイが私のことを見つめる。
眉根を寄せた顔付きが妙に悪い。けれど私のことを信じてくれたのか、「はぁ」と一息付いた。
「分かった。それなら試してみるか」
「本当? よかった」
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「なにって決まっているだろ」
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