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◇425 古びた武家屋敷
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アキラたちはフェルノを先頭に雪の中を歩いていた。
モミジヤの姿がまだ目に映る。
視界の端に窺いつつ外周を歩いていると、ふと視線の先が止まった。
真っ先に気が付いたフェルノは「ん?」と顔を前に上げる。
「どうしたの?」
「見てよみんなー。あれさ、なにかあるくない?」
アキラたちも降りしきる雪の嵐で顔を上げる。
吹雪を全身に受けながら、視線の先の何かを捉える。
鬱蒼とした森だろうか。そう思ったのも束の間、形状やしなり具合からNightは素早く理解した。
「アレは竹だな」
「竹? ってことはモミジヤの中にある竹林かな?」
「そうだろうな。見てみろ、塀が少し被っているぞ」
Nightの見立ては何も間違っていなかった。
竹林の一部が塀に掛かっている。まるで意図して遮っているようだ。
Nightは訝しい表情を浮かべた。
自分で言っては何だが、何故竹林を遮る必要があるのか。
ある程度パターンを決めてはいたが、どれに当たるかは分からない。
とは言え一つだけ確信を持っていた。
モミジヤの中からではただの観光地。現実で言うところの嵐山竹林に相当するが、外からでは違う。
不気味な雰囲気を漂わせながら、誰かを引き込もうと魔の手を伸ばす。
竹の異様さが全身を悪寒と言う縄で締め付けるのが想像できた。
「行ってみようよー。きっとあの中だよ」
「そうだな。地図を見ても間違いない」
Nightは竹林の中に武家屋敷があると確信していた。
フェルノの提案を全員が飲むと、竹林に直行した。
竹林の中は真っ暗だった。人口の灯りでライトアップされるわけもなく、不気味な竹たちが呻き声を上げていた。
降りしきる吹雪を全身で受け止め体が軋む。その音が反響してザワザワと悪魔の告げ口を思わせた。
「雪はないけど、不気味なところだね」
アキラはそう呟いた。案の定と言うべきか、幸いにも竹林の中は雪が積もっていない。
フェルノもようやくスキルを解くと、発汗が良すぎて流した汗を手のひらで拭き取る。
その様子を見ていたNightはお疲れ様のつもりでタオルを差し出す。
なんだか感慨深い光景にアキラは胸を打たれた。
「とりあえずこれで吹雪の影響はないな」
「とは言いましても、この暗さは危険ですよ」
「そうよ。モンスターに襲われたらどんな目に遭うか分からないわ」
夜の深さは竹林の中にも延々と広がる。
モンスターの呻き声は聴こえてこない。
竹のせいで阻まれているのかもしれないが、気配も一応は感じられない。
とは言えある程度の用心を重ねつつ、アキラたちは小さなランタンを頼りに心許なく進んでいく。こんなところで【ライフ・オブ・メイク】は使ってられない。
「Nightさん、戦闘の前に一つ尋ねても構いませんか?」
「なんだ?」
雷斬が重たい空気が走る中、Nightに声を掛けた。
ピリピリとした空気が一瞬切り裂かれると、その合間を縫って言葉の刀を振り下ろす。
「相手は雪将軍だけでしょうか?」
あまりにも意味深な言葉だった。Nightは一瞬返す刀を躊躇う。
けれどここは曖昧な言葉を刀に塗って返した。
「どうだろうな」
「もしも一体だけでしたら、私が切ります。切らせてください」
あまりにも一方的。雷斬らしくはない。
けれどそれは雷斬だからであって、剣士としては一理あった。
雪将軍。もしも昔のそれこそ戦国の世を生きた侍たちなら、真っ向勝負もあり得そうだ。
「雷斬、貴女勝てる見込みがあるの?」
「それは判りません」
「なによ、その言い方ならビシッと勝てますって刀を振って欲しいわ」
ベルは厳しい一言を浴びせた。
雷斬も唇を噛むが、ベルの言葉に感化される。
「そうですね……」と短く吐き捨てると、奥歯をガリッと噛む音が聴こえた。
「私は皆さんを守る剣。その力がどれほど通じるかは分かりませんがやってみる価値はあると思います。いえ、剣士としてやらせてほしいんです」
珍しい。本当に珍しい高揚感だった。
ここまで言わせてしまった以上、アキラたちも退くに退けない。
雷斬の目は死んでいない。むしろ闘志が燃えている。それなら信じなくて如何すると、友達としてアキラたちは信じた。
「うん、雷斬なら勝てるよ」
アキラは雷斬を応援した。
雷斬も気持ちを受け取ってくれたようで、にこやかに微笑む。
「ありがとうございます、アキラさん。それから皆さん」
「私はまだ何も言っていないが……」
「そう言うこと言わないでよー。頑張れ雷斬!」
Nightやフェルノは遅れて返した。
ベルからはさっきの激励だけで充分そうだ。
雷斬のメンタルを高めつつ歩を進めていくと、アキラたちの視界がだんだん開ける。
「な、なんだろアレ」
「見えて来たな。アレが武家屋敷だ」
「ふ、古いねー」
「奥深いと言うべきですよ、これが過去に栄えていたものと言うことを噛み締めるんです」
竹林の終わり。月光に当てられ、白く反射した雪が鏡のようになる。
照り出された天然のライトアップの先。
そこには古い武家屋敷の姿がった。茅葺屋根、広々とした平屋。崩れた檜の門の先にはそれはかてつ立派に栄えていただろうという武家屋敷の年月を重ね、朽ちた姿が広がり歴史を感じさせるのだった。
モミジヤの姿がまだ目に映る。
視界の端に窺いつつ外周を歩いていると、ふと視線の先が止まった。
真っ先に気が付いたフェルノは「ん?」と顔を前に上げる。
「どうしたの?」
「見てよみんなー。あれさ、なにかあるくない?」
アキラたちも降りしきる雪の嵐で顔を上げる。
吹雪を全身に受けながら、視線の先の何かを捉える。
鬱蒼とした森だろうか。そう思ったのも束の間、形状やしなり具合からNightは素早く理解した。
「アレは竹だな」
「竹? ってことはモミジヤの中にある竹林かな?」
「そうだろうな。見てみろ、塀が少し被っているぞ」
Nightの見立ては何も間違っていなかった。
竹林の一部が塀に掛かっている。まるで意図して遮っているようだ。
Nightは訝しい表情を浮かべた。
自分で言っては何だが、何故竹林を遮る必要があるのか。
ある程度パターンを決めてはいたが、どれに当たるかは分からない。
とは言え一つだけ確信を持っていた。
モミジヤの中からではただの観光地。現実で言うところの嵐山竹林に相当するが、外からでは違う。
不気味な雰囲気を漂わせながら、誰かを引き込もうと魔の手を伸ばす。
竹の異様さが全身を悪寒と言う縄で締め付けるのが想像できた。
「行ってみようよー。きっとあの中だよ」
「そうだな。地図を見ても間違いない」
Nightは竹林の中に武家屋敷があると確信していた。
フェルノの提案を全員が飲むと、竹林に直行した。
竹林の中は真っ暗だった。人口の灯りでライトアップされるわけもなく、不気味な竹たちが呻き声を上げていた。
降りしきる吹雪を全身で受け止め体が軋む。その音が反響してザワザワと悪魔の告げ口を思わせた。
「雪はないけど、不気味なところだね」
アキラはそう呟いた。案の定と言うべきか、幸いにも竹林の中は雪が積もっていない。
フェルノもようやくスキルを解くと、発汗が良すぎて流した汗を手のひらで拭き取る。
その様子を見ていたNightはお疲れ様のつもりでタオルを差し出す。
なんだか感慨深い光景にアキラは胸を打たれた。
「とりあえずこれで吹雪の影響はないな」
「とは言いましても、この暗さは危険ですよ」
「そうよ。モンスターに襲われたらどんな目に遭うか分からないわ」
夜の深さは竹林の中にも延々と広がる。
モンスターの呻き声は聴こえてこない。
竹のせいで阻まれているのかもしれないが、気配も一応は感じられない。
とは言えある程度の用心を重ねつつ、アキラたちは小さなランタンを頼りに心許なく進んでいく。こんなところで【ライフ・オブ・メイク】は使ってられない。
「Nightさん、戦闘の前に一つ尋ねても構いませんか?」
「なんだ?」
雷斬が重たい空気が走る中、Nightに声を掛けた。
ピリピリとした空気が一瞬切り裂かれると、その合間を縫って言葉の刀を振り下ろす。
「相手は雪将軍だけでしょうか?」
あまりにも意味深な言葉だった。Nightは一瞬返す刀を躊躇う。
けれどここは曖昧な言葉を刀に塗って返した。
「どうだろうな」
「もしも一体だけでしたら、私が切ります。切らせてください」
あまりにも一方的。雷斬らしくはない。
けれどそれは雷斬だからであって、剣士としては一理あった。
雪将軍。もしも昔のそれこそ戦国の世を生きた侍たちなら、真っ向勝負もあり得そうだ。
「雷斬、貴女勝てる見込みがあるの?」
「それは判りません」
「なによ、その言い方ならビシッと勝てますって刀を振って欲しいわ」
ベルは厳しい一言を浴びせた。
雷斬も唇を噛むが、ベルの言葉に感化される。
「そうですね……」と短く吐き捨てると、奥歯をガリッと噛む音が聴こえた。
「私は皆さんを守る剣。その力がどれほど通じるかは分かりませんがやってみる価値はあると思います。いえ、剣士としてやらせてほしいんです」
珍しい。本当に珍しい高揚感だった。
ここまで言わせてしまった以上、アキラたちも退くに退けない。
雷斬の目は死んでいない。むしろ闘志が燃えている。それなら信じなくて如何すると、友達としてアキラたちは信じた。
「うん、雷斬なら勝てるよ」
アキラは雷斬を応援した。
雷斬も気持ちを受け取ってくれたようで、にこやかに微笑む。
「ありがとうございます、アキラさん。それから皆さん」
「私はまだ何も言っていないが……」
「そう言うこと言わないでよー。頑張れ雷斬!」
Nightやフェルノは遅れて返した。
ベルからはさっきの激励だけで充分そうだ。
雷斬のメンタルを高めつつ歩を進めていくと、アキラたちの視界がだんだん開ける。
「な、なんだろアレ」
「見えて来たな。アレが武家屋敷だ」
「ふ、古いねー」
「奥深いと言うべきですよ、これが過去に栄えていたものと言うことを噛み締めるんです」
竹林の終わり。月光に当てられ、白く反射した雪が鏡のようになる。
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