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◇422 雷斬なら使えるかな?

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 二月もバレンタインデーを過ぎると呆気ない。
 気が付けば日が短いこともあってか、最終週に差し掛かろうとしていた。
 そんな中、アキラとNight、それから雷斬の三人はボーッと時間をすり減らしていた。

「暇だね」
「そうだな」

 アキラたちは暇を持て余していた。
 いつも通りギルドホームで駄弁る始末で、宿題も終わってしまって特にやることもなかった。

「本当なら今頃雪将軍かー」
「そうですね。ですが待つのもいいと思いますよ」

 窓の外を見ながらアキラはポツリと呟いた。
 パラパラと雪が降っている。
 その様子を隣で雷斬も見ていた。
 待つことに肯定的で、特に苦には思っていないらしい。アキラも同じなのだが、中々長期間的な戦いを強いられていた。

こうなったのも、雪将軍は今だ姿を現していないのだ。
 それもそのはず、吹雪の真夜中という限定的な時間が仇となっていた。
 そのため噂が広まっても、わざわざ討伐しようとは思わないプレイヤーが続出している。
 限定モンスターだけあってなかなかシビアな設定だが、その方が狙うアキラたちにとっては好都合だった。けれどだ。ここまで掛かるとは思っていなかった。

「あれから一週間だよ?」
「そうだな」

 Nightは興味が無いのか淡白な返しだった。
 文庫本を読み進めながら目線すら合わせない。

「Night、雪将軍に挑むチャンスが全然来ないね」
「とは言っても仕方ないだろ」
「それはそうだけど……」
「実際、このGAMEの真夜中と現実の真夜中が重なる時間は少ない。おまけに天候条件は吹雪だ。とんだ確率に期待するしかないだろ」

 雪将軍に挑めるチャンスがあまりにも少ない。
 その度にログインしないとダメだ。加えて時間も削られる。
 もはや期待するしか方法が無かった。

「お二人ともすみません。私の我儘のせいで皆さんを苦しめてしまい」

 雷斬はアキラとNightに謝った。
 こうなったのも自分のせいだと咎めていた。

「そんなことないよ!」
「そうだな。ここまで来たなら挑む以外に道はない」
「そう言うこと。私たちも楽しみにしているんだよ。だから気負いしないで」
「お二人共、ありがとうございます。ですがこのままですと、期間が過ぎてしまいますね」

 期間終了が迫っていた。
 気負いしないとは言っても中難しめな話しで、表情は穏やかでも焦りは見せつつあった。

「それまでに一度でもチャンスがあったら絶対行かないとね」
「当たり前だ。揃ってなくても行くぞ」

 Nightも文庫本を閉じ、目で訴えかかった。
 アキラも同感で、雷斬はその姿に薄っすらと涙を浮かべそうになる。
 ギルドメンバーを全員巻き込んでしまったが、そんな雷斬の気持ちを尊重してくれたので、嬉しさの余り感極まりそうだった。

「まだ泣くなよ、雷斬」
「そうだよ。泣くのは勝手から。嬉し泣きで前に進まないとね!」

 アキラもNightも明るく振舞う。
 少しでも気苦労を軽減することで運気も上がると思ったのだ。

「そうですね。私もこの刀に誓って、皆さんを守ります」
「守るよりも攻撃して欲しいものだな。……それより、まだその刀を使っているのか?」
「もちろんです。この刀はまだ生きていますから」

 難しい表現だった。けれど雷斬はずっと刀を大事にしている。
 ここまで折れた姿は一度も見ていない。
 少しずつ耐久値は減っているはずなのだが、ここまで扱えているのも雷斬の腕が良いからだ。

「ああ、そうだ!」

 アキラは今になって思い出した。
 インベントリの中からソウラに貰ったものを取り出す。
 黒い鋼の塊。アキラじゃ使えない玉鋼だった。

「雷斬、もしも新しい刀が必要になったらコレを使って」
「アキラさん、ソレは玉鋼ではないですか?」
「うん。ソウラに貰ったものだよ。私は今使っている剣で十分だから、玉鋼ってこともそうで、雷斬が使ってよ」

 アキラはようやく雷斬に手渡すことができた。
 今までインベントリの中で腐っていたものが、使える人の手に渡って嬉しかった。
 けれどNightは水を差す。

「玉鋼だけあっても、使える奴がいないと意味がないだろ」
「それはまだ言わないでよ」

 分かっていた。あくまでも雷斬はできた物を使う人・・・・・・・・できてない物を・・・・・・・使う人じゃない・・・・・・・のだ。
 アキラはグサリと胸を貫かれたが、雷斬は優しく微笑んでくれた。

「ふふっ。いいえNightさん、きっと使える方が現れてくださいますよ」
「それにも期待しないといけないのか」
「その必要は無いですよ。このGAMEは広いんですから、近いうちに現れてくれますよ」
「期待だな。まあ、その方が待つ甲斐がある」
「その期待を連れて来ればいいもんね。運命は変えられるんだから!」

 アキラは良いことを言って締めた。
 その姿をNightは横目で流しつつも、「そうだな」と言って文庫本を開くのだった。
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