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◇416 モミジヤの冬景色
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突然立ち上がり、早速動き始めたアキラたちを見るや否や、雷斬とベルは目を見開く。
あまりにも行動がテキパキとしていて早かった。
一体何があったのか。キョロキョロし始めると、ベルが空気を裂いた。
「ちょっと待って。一体なにが起きてるの?」
「そうですね。皆さんどうなされたのですか?」
「どうなされたって言われても……」
「急がないと先を越されちゃうでしょー」
「そういうことだ」
二人はポカンとしていた。
けれど自分たちが丁度雪将軍の話を聴いて来たことで全てが動き出している。
そう感じ取ると、この間のハゴ・イーターの一件を思い出した。
あの時も他のプレイヤーがイベントを狙い動いていたのだ。
「もしかして、そう言うことよね?」
「ですね。これは急がないといけません。全てではありませんが、ある程度は理解しました」
ハゴ・イーターの時のように先を越されると無駄足になる。
それは嫌なので行動を起こすことにしたが、雪将軍が何処にいるかは定かではない。
けれど雪将軍と言う名前からある程度の推測ができた。
「まずはギルドに立ち寄ってみるか?」
「ここの?」
「違う。そもそもここって何処だ」
「スタットのだよ。あっ、雷斬たちが行って来た後だもんね。情報は……」
「残念ながら、こちらには入っていないようでした。漠然とした雪将軍と言う言葉とこの絵だけが貼り出されていました」
モノクロ調のイラストだった。鎧を着込んでいる。
このイラストだけだと雪将軍? のレベルだが、手配書っぽいのでそうに違いない。としか言えなかった。
「となるとやはりあっちだな」
「あっち? もしかしてモミジヤ?」
「そう言うことだ。ポータルから行くぞ」
久しぶりにポータルに踏んでモミジヤに行ってみることにした。
アキラたちは全員温かい格好をすると、ポータルを踏んでモミジヤに向かった。
「よっと」
アキラはポータルを踏みしばらくすると外に出ていた。
しかし普段から見慣れている景色とは違う。
ここはモミジヤ。和を思わせる景色に風情を感じた。
「うわぁ、めっちゃ綺麗だねー」
「そうだな。それにしても積もりすぎじゃないか?」
「そうですね。ですが素敵ではありませんか?」
「なに言ってるのよ。雪掻き大変よー」
モミジヤは雪が降り積もっていた。
地面だけじゃない。建物の屋根や橋の上。川まで凍ってその奥を緩やかに水が流れる。
とにかく寒いのは変らないが、その中にある情緒が素敵で仕方ない。
「着物を着ている人は可哀そうだね」
「そうだな。寒そうだ」
「草鞋に雪が積もっていますよ。見ているだけで凍えてしまいそうです」
「なに言ってるのよ。今年も履いてたでしょ?」
アキラたちは行き交う人たちを見回しながら、まるで江戸時代だと思ってしまった。
不思議な格好をしているアキラたちが完全にあぶれている。
アウェーな空気を勝手に感じてしまったが、アキラたちは意識を切り替えると、モミジヤのギルド会館に行ってみることにした。
「それで何処にあるの?」
「モミジヤのギルド会館にはあまり行ったことがありませんね」
アキラたちはマップを見ながらギルド会館の場所を探した。
如何やらこの先。橋を超えてずっと向こうらしい。
そこまでかなりの距離がありそうだ。
アキラたちはゆっくり向かうことにした。
「それにしてもスタットとは全然違うね」
「そうだな。おそらくは雪の降る地域なんだろ」
「スタットは雪が降り難いの?」
「あの辺りには山が少ない。冷たい冷気が入りこむような場所でもない。それは内陸部であることが関係している」
スタットではあまり雪が降っていない。
だからかなり歩きやすいが、今のところモミジヤはかなり雪が積もり、凍結していてツルツル滑る。
箸の手すりに手を掛けて、ゆっくり転ばないように歩いていると、遠くの方で煙が見えた。白い靄がモクモクと立ち込め、目の錯覚かと思い目を擦る。
「アレって温泉かな?」
「だろうな。モミジヤは温泉が多い。前にも見たが、冬だと余計に分かりやすいな」
紅葉シーズンもとっくに去り、雪の風情の中に温泉がある。
とても美しい。日本の百名所でも回っている気分だ。
けれど温泉の湯気を見ていると、少し入りたくなってきた。
「ねえ、ギルド会館回ったら、後で妖帖の雅にも行ってみようよ」
「そうだな。クロユリや椿姫ならなにか知っているかもしれない」
郷に入っては郷に従えの精神。
普段からモミジヤで活動を続ける仲の良いギルドにも話を窺うことにした。
もしも競合するようなら手を取り合って持ち掛けてみる。
我ながら良いアイデアとアキラは決めると、不意に雷斬の視線が気になった。
「雷斬?」
「……アレは」
一点を見つめている。話は聞いていたようだが、視線はこちらに無い。
誰を見ているんだろう。そう思って視線を追うと、何処か見たことのある後ろ姿があった。
「アレって、天孤さん?」
「分かりませんが、声を掛けてみましょうか」
「そうだね。後で立ち寄るんだもん」
これは運が良い。中々天孤には会えないと判っていた。
だからだろうか。Nightたちから一瞬にして姿を眩ますと、二人は天弧を追っていた。
あまりにも行動がテキパキとしていて早かった。
一体何があったのか。キョロキョロし始めると、ベルが空気を裂いた。
「ちょっと待って。一体なにが起きてるの?」
「そうですね。皆さんどうなされたのですか?」
「どうなされたって言われても……」
「急がないと先を越されちゃうでしょー」
「そういうことだ」
二人はポカンとしていた。
けれど自分たちが丁度雪将軍の話を聴いて来たことで全てが動き出している。
そう感じ取ると、この間のハゴ・イーターの一件を思い出した。
あの時も他のプレイヤーがイベントを狙い動いていたのだ。
「もしかして、そう言うことよね?」
「ですね。これは急がないといけません。全てではありませんが、ある程度は理解しました」
ハゴ・イーターの時のように先を越されると無駄足になる。
それは嫌なので行動を起こすことにしたが、雪将軍が何処にいるかは定かではない。
けれど雪将軍と言う名前からある程度の推測ができた。
「まずはギルドに立ち寄ってみるか?」
「ここの?」
「違う。そもそもここって何処だ」
「スタットのだよ。あっ、雷斬たちが行って来た後だもんね。情報は……」
「残念ながら、こちらには入っていないようでした。漠然とした雪将軍と言う言葉とこの絵だけが貼り出されていました」
モノクロ調のイラストだった。鎧を着込んでいる。
このイラストだけだと雪将軍? のレベルだが、手配書っぽいのでそうに違いない。としか言えなかった。
「となるとやはりあっちだな」
「あっち? もしかしてモミジヤ?」
「そう言うことだ。ポータルから行くぞ」
久しぶりにポータルに踏んでモミジヤに行ってみることにした。
アキラたちは全員温かい格好をすると、ポータルを踏んでモミジヤに向かった。
「よっと」
アキラはポータルを踏みしばらくすると外に出ていた。
しかし普段から見慣れている景色とは違う。
ここはモミジヤ。和を思わせる景色に風情を感じた。
「うわぁ、めっちゃ綺麗だねー」
「そうだな。それにしても積もりすぎじゃないか?」
「そうですね。ですが素敵ではありませんか?」
「なに言ってるのよ。雪掻き大変よー」
モミジヤは雪が降り積もっていた。
地面だけじゃない。建物の屋根や橋の上。川まで凍ってその奥を緩やかに水が流れる。
とにかく寒いのは変らないが、その中にある情緒が素敵で仕方ない。
「着物を着ている人は可哀そうだね」
「そうだな。寒そうだ」
「草鞋に雪が積もっていますよ。見ているだけで凍えてしまいそうです」
「なに言ってるのよ。今年も履いてたでしょ?」
アキラたちは行き交う人たちを見回しながら、まるで江戸時代だと思ってしまった。
不思議な格好をしているアキラたちが完全にあぶれている。
アウェーな空気を勝手に感じてしまったが、アキラたちは意識を切り替えると、モミジヤのギルド会館に行ってみることにした。
「それで何処にあるの?」
「モミジヤのギルド会館にはあまり行ったことがありませんね」
アキラたちはマップを見ながらギルド会館の場所を探した。
如何やらこの先。橋を超えてずっと向こうらしい。
そこまでかなりの距離がありそうだ。
アキラたちはゆっくり向かうことにした。
「それにしてもスタットとは全然違うね」
「そうだな。おそらくは雪の降る地域なんだろ」
「スタットは雪が降り難いの?」
「あの辺りには山が少ない。冷たい冷気が入りこむような場所でもない。それは内陸部であることが関係している」
スタットではあまり雪が降っていない。
だからかなり歩きやすいが、今のところモミジヤはかなり雪が積もり、凍結していてツルツル滑る。
箸の手すりに手を掛けて、ゆっくり転ばないように歩いていると、遠くの方で煙が見えた。白い靄がモクモクと立ち込め、目の錯覚かと思い目を擦る。
「アレって温泉かな?」
「だろうな。モミジヤは温泉が多い。前にも見たが、冬だと余計に分かりやすいな」
紅葉シーズンもとっくに去り、雪の風情の中に温泉がある。
とても美しい。日本の百名所でも回っている気分だ。
けれど温泉の湯気を見ていると、少し入りたくなってきた。
「ねえ、ギルド会館回ったら、後で妖帖の雅にも行ってみようよ」
「そうだな。クロユリや椿姫ならなにか知っているかもしれない」
郷に入っては郷に従えの精神。
普段からモミジヤで活動を続ける仲の良いギルドにも話を窺うことにした。
もしも競合するようなら手を取り合って持ち掛けてみる。
我ながら良いアイデアとアキラは決めると、不意に雷斬の視線が気になった。
「雷斬?」
「……アレは」
一点を見つめている。話は聞いていたようだが、視線はこちらに無い。
誰を見ているんだろう。そう思って視線を追うと、何処か見たことのある後ろ姿があった。
「アレって、天孤さん?」
「分かりませんが、声を掛けてみましょうか」
「そうだね。後で立ち寄るんだもん」
これは運が良い。中々天孤には会えないと判っていた。
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