上 下
418 / 584

◇415 雪将軍ってなに?

しおりを挟む
 アキラ達はギルドホームに集まっていた。
 リビングの暖炉に薪を投入しまくり、ドンドン熱が上がって行く。
 ぬくぬくになったリビングで、ボーッとするいつもの面々。その顔には覇気が無く、大きな欠伸を掻いていた。

「ふはぁー」
「外は寒いから、こうやって部屋で温まると気持ち良いよねー」

 体が心地よかった。このまま眠ってしまいたい。そんな妄念に憑りつかれそうになる。
 ふとアキラが視線を向ければ、Nightがコーヒーを飲んでいた。
 文庫本を読みながら、アクア・カカオ豆のチョコレートを食べる。この間作っていたものが余っていたのだ。

「Night、外は寒いね」
「そうだな。外は寒いな」
「どうして? この世界に冬将軍だっけ? そんなのあるの?」
「シベリア寒気団か? そんなものある訳がないだろ」
「だよねー。この世界にシベリアなんてないもんねー」

 判り切っていたことだった。
 だけど代わりになるような極寒の地は用意されている。

「まあ、シベリアはないが、ホッカイはあるがな」
「北海道?」
「まあ、そんなところだ。島のように孤立してはいないらしいが」

 まだ行ったことのない街だった。
 きっとスタットと陸続きの大陸で、北の方にある。
 少なくともまだ行きたくない。そう思ってアキラも欠伸をした。

「ふはぁー」
「あはは、アキラも眠いんだー」
「そうだよ。ここ最近誰かのせいで」
「ごめんなさい」
「それを言えば、私も被害者なんだが……」

 アキラとNightはここのところ、フェルノの宿題の手伝いをさせられていた。
 Nightが付いていれば心強いと思って良く考えずに手伝うことを容認したが、まさかあんなに溜め込んでいるなんて。
 おかげで徹夜が続いていた。正直に言おう。疲れた。

「こんな時はパーッと、面白い依頼とかないかなー?」
「依頼か? そんなものはない」
「だよねー。そんな都合よくはないよねー」
「だが、雪将軍と言う季節限定のモンスターは居るらしいぞ。何処にいるかは分からないが」

 Nightの口から情報が漏れた。
 フェルノは上半身を思いっきり上げた。まるでバネで飛び出すおもちゃだ。

「雪将軍?」
「冬将軍じゃなくてー?」
「そうだ。雪将軍だ。なんでも噂の範疇でしかないが、この冬限定のモンスターらしい」
「またそれ系? 最近多いね」
「ソシャゲだと良くあることだ。ガチャゲーじゃないだけありがたいと思え」

 Nightにバッサリ切り伏せられた。
 けれどここ最近季節限定が多くなっているのは確かで、正直季節限定モンスターは恒常モンスターよりも明らかに強く設定されている。
 その割には経験値に旨味が少ない。
 だから経験値の値が無く、単純にアイテム狙いと楽しむことに重点を置くのが最近のマストだった。

「私達もそろそろ65になるもんねー」
「まあ、レベルは関係ないがな」
「むっ! 73に言われたくないよー」
「事実だ。正直最近はレベルなんて誰も気にしていない。こっちで出せる最大パフォーマンス程度が関の山だ」

 もはやレベル上げよりもどれだけ体を動かして、どれだけ頭を使て、どれだけスキルを活用できるか。そのラインに差し掛かっていた。
 だからこそ、今回の雪将軍がかなり真正面から来る、真っ向勝負型だと予測できた。何せ相手は将軍だ。そんなせこい真似するとは思えない。

「それでどうする?」
「どうするって?」
「雪将軍の情報、洗いに行くか?」
「うーん。私はちょっとだけ興味があるかな。なんだか楽しそう」
「私も私もー。最近体鈍ってたからねー」

 グルグル肩を回すフェルノ。鈍っているという割にはさっきまで筋トレをしていた。
 その言葉は嘘なのかと怪しむが、Nightはパタンと文庫本を閉じる。
 それから一呼吸の間を置くと、宣言しようとした。

「それじゃあ探すか」
「「おー!」」

 三人だけで行くことを決めた。
 早速街に出て情報を探してみようと意気込んでいると、突然閉じていたリビングの扉が乱雑に開け放たれた。
 そこに居たのは二人の少女。雷斬とベルだったが、少し様子がおかしい。
 雷斬の目がキラキラと輝いて、生気がたくさん宿っていた。

「皆さん、少々よろしいですか!」
「なに、雷斬?」
「はい、実はですね。こちらのモンスターの噂をギルドから聴いて来たんです」
「こちらのモンスター? ギルドから? なにを聴いて来たんだ」

 Nightは冷静に話を戻した。
 すると隣で雷斬の肩をポンと叩くベルが話し出した。

「雷斬、ちょっと落ち着きなさい。コホン、こちらのモンスターって言うのは雪将軍って言う季節限定のモンスターよ」
「「雪将軍!?」」

 まさか丁度話題に上がっていた名前だとは思わなかった。
 ゴクリと喉を鳴らすと、グッドタイミングと当時に嫌な予感がした。
 まさかギルドで情報が流れているなんて、これは急がざるを得ない。

「どうしたのよ。そんな焦った顔して」
「焦るよ。だってギルド情報でしょ?」
「そうですが?」
「Night!」
「ああ。これは急ぐ必要がありそうだな」

 Nightはスッと席から立った。アキラとフェルノだった。
 けれど雷斬とベルは話が見えず、数秒程立ち尽くしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』 倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。 ……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。 しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。 意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

ビースト・オンライン 〜追憶の道しるべ。操作ミスで兎になった俺は、仲間の記憶を辿り世界を紐解く〜

八ッ坂千鶴
SF
 普通の高校生の少年は高熱と酷い風邪に悩まされていた。くしゃみが止まらず学校にも行けないまま1週間。そんな彼を心配して、母親はとあるゲームを差し出す。  そして、そのゲームはやがて彼を大事件に巻き込んでいく……! ※感想は私のXのDMか小説家になろうの感想欄にお願いします。小説家になろうの感想は非ログインユーザーでも記入可能です。

僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~

いとうヒンジ
ファンタジー
 ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。  理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。  パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。  友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。  その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。  カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。  キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。  最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

DNAにセーブ&ロード 【前世は散々でしたが、他人のDNAからスキルを集めて、今度こそ女の子を幸せにしてみせます】

緋色優希
ファンタジー
 その幼児は天使の微笑みを浮かべながら大人の足に抱き着いていた。だが、油断してはいけない。そいつは【生体情報電磁交換】のスキルを駆使して、相手のDNAに記録された能力をコピーして盗んでいるのだから。  かつては日本で暮らしていた藤原隆。四股をかけていたため、24歳にして女に刺されるという無様な死に方をして、この異世界へ迷える魂【渡り人】として、異世界転生を果たした。女泣かせの前世を悔い、今度の人生は、ちゃんと女の子を幸せにしようと誓ったのであったが、田舎の農家に生まれたため、その前途は多難だった。かつて地球で集めた様々なスキル、そして異世界でもスキルや魔法集めに奔走し、新しい人生を切り開くのだった。

処理中です...