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◇409 転んで倒れて潰されて

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「「「そりぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」

 アキラたちはポータルに飛び込んだ。そこから記憶が無くなった。
 次に視界に捉えたのは、真っ暗な通路。
 アキラはうつ伏せで通路に叩き付けられると、素早く受け身を取り、すぐさま廊下の端に避けた。

「な、なんでこんなところに?」

 アキラはキョロキョロ周囲を見回した。
 見たところ、ここは孤島に向かった扉があった通路だ。
 周りには他に誰もおらず、ルーミラも居なければ一緒にポータルを踏んだはずのNightとフェルノも居ない。
 何処に行ってしまったのか。通路を戻ってみることにした瞬間、背後から声がした。

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 Nightとフェルノが後ろに居た。
 クルリと振り返ってみると、Nightがフェルノに圧し潰されていた。
 苦しそうな顔をして「重い……」と唸っていた。

「痛たたたぁ。ポータルを踏んだらこんなことになるって先に言って欲しかったなぁ」
「そんなことより、さっさと退けろ!」
「ん? な、なんでNightが下に居るの!」
「お前が踏み潰したんだろうが!」
「えー、普通踏み潰されるのは私じゃない? Nightくらいだったら軽いから余裕なんだけどなー」
「うるさい。とっとと、退けっ!」

 Nightは非力ながらもフェルノを吹き飛ばした。
 フェルノもヒョイっと背中から避けると、ようやくNightは解放される。
 腰を痛そうに抑えていて、アキラは声を掛けた。

「大丈夫、Night? 踏み潰されてたけど、痛くない?」
「痛いに決まっているだろ!」
「そ、そうだよね。ごめん」
「ごめんごめーん。でもさ、あの孤島を出たらここに着くくらい言って欲しかったよねー」

 確かにこんなところに飛ばされるとは思わなかった。
 もしかすると限定エリアだといくらポータルを踏んでもギルドホームのポータルには通じてくれない仕様らしい。
 つまりは番人から逃げる際の緊急避難用ポータル。そんなところだった。

「番人、戦えなかったね」
「戦う云々の前に下りて来る気配すらなかった。私達だけじゃ倒せない」
「むしろ戦えないよねー。うーん、でもアクア・カカオ豆は手に入ったよ」

 インベントリの中からアクア・カカオ豆を取り出した。
 ラグビーボールサイズの大きさのカカオ豆を大事に抱えている。
 みずみずしくて、きっと美味しいチョコレートの原材料になる。そう思ったのだが、一つしか手には入らなかったから、ソウラには渡せなかった。

「とりあえずルーミラに報告しよっか」
「そうだな。勝手に帰ったらNPCでも探し回るはずだ」

 アキラたちはギルド会館の受付カウンターに向かった。
 暗い通路を歩いていき、ようやく明るい場所に出られた。
 急に眩しくなり、目元を覆った。爛々とした輝きに、目がチカチカする。

「眩しい。えっとルーミラは……あっ、居た!」

 ルーミラは仕事に励んでいた。
 やって来るNPCやプレイヤーの相手をしながら、ルーミラは忙しない。
 少し人が開いた隙を狙い声を掛けにいくと、いつも通りの笑みを浮かべてくれた。

「あっ継ぎ接ぎの皆さん。ご無事に戻られたんですね」
「はい。なんとか無事って言うんですかね?」
「含みがある言い回しですね。なにかあられたんですか?」
「ちょっとだけです。でも無事に採って来ましたよ!」
「じゃじゃーん!」

 フェルノは大事そうに抱えていたアクア・カカオ豆をルーミラに見せた。
 ルーミラも初めて見るのか目を点にしている。
 やはり誰が見ても大きなカカオ豆に驚愕するようで、口をあんぐり開けたままだった。

「ねー、凄いでしょー」
「はい。私も初めて見ましたが、まさかこんなに大きなカカオ豆だったんですね。知りませんでした」

 正直硬さも十分だった。普通に包丁で切ろうにも包丁の方が負けてしまう。
 如何やってチョコレートを作ったら良いのか。早速困難にぶち当たってしまったが、とにかく採取が間に合って良かった。
 危うくモンスターにまたしてもやられるところだったが、無事に帰って来られて本当に一安心だ。

「それじゃあルーミラ。私たち行くね」
「はい、継ぎ接ぎの皆さん。また来てくださいね。できればギルドマスターが率先してきていただけると……手続きがしやすくて済むのですが」
「あはは、ごめんなさい。それでは」

 アキラたちはギルドホームに帰ることにした。
 その最中、脇腹をNightはツンとした。

「どうしたのNight?」
「お前、ギルド会館に足を運んで無いのか?」
「あはは。情報はほとんどプレイヤーから聞いてるから。でもさ、ギルド会館で得られる情報もなかなか良いよね。今回も大変だったけど、とっても面白かったよ」
「そうだねー。無事にカカオ豆も手には入ったし。これで美味しいチョコレート作るぞー!」
「フェルノは料理できないでしょ」
「あはは、そうだったー」

 雑談を交えながらギルド会館を後にする。
 早速アクア・カカオ豆を大事に仕舞っておくことにした。
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