VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇408 アクア・カカオ豆は見つかったが

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 ジャングルの中はとにかく鬱蒼としている。
 何処までも薄暗く蒸し暑い。全身から汗が噴き出すのは仕方ないが、モンスターもいない、珍しい植物も生えていない、つまらない探索が進んでいた。

「本当になにも出て来ないねー」
「そうだな。まさかあれから二十分。何も出て来ないとは思わなかったぞ」
「やっぱりアクア・カカオ豆を手に入れるためだけにあるのかな? ちょっともったいない気がする」
「それはシステムの都合上仕方のない割愛だ。とは言え、怪鳥が潜んでいる可能性はある。まだ捨てるな」

 そうだ。まだこの島には希望がある。
 もはやアクア・カカオ豆は二の次で、モンスターが出て来るの待つ。
 周囲に意識を巡らせて常に警戒する。
 けれどモンスターが出て来ることはなく、気が付けば中心にやって来た。

「ここが中心だが、アクア・カカオ豆は何処にあるんだ?」
「多分カカオ豆だから上の方にあると思うけど」
「うーん……あっ! 二人共見てよ。上の方に何かあるよ!」

 フェルノが指を指していた。一本の細長い木の上に実がなっている。
 形はイメージの中にあるカカオ豆そのもの。
 だけど見た目は変らず、何処にアクア感があるのか分からなかった。

「それじゃあ採りに行こっか」
「どうやって?」
「どうやってって……Night~なんか出して~」
「私を猫型ロボットと一緒にするな。お前の身体能力なら登れるだろ」
「むっ! 仕方ないなー。それじゃあ登って採って来るよー」

 フェルノはアクア・カカオ豆生った木に足を掛けた。
 けれどツルツル滑って上手く登れない。樹皮から水が垂れていて、登らせないようにしている。
 フェルノは困ったが、【吸炎竜化】を使って両腕両脚を竜に変えると、爪を引っ掻けて登っていく。

「そりゃそりゃそりゃそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 フェルノは勢い任せで登っていく。
 元々木登りが得意だからか、もの凄く早い。
 せめてもの足掻きで樹皮から水を垂らして滑りやすくしているが、炎を常に出し続けて水気を飛ばしていた。このままなら登り切れる。そう思った途端、急に雲行きが悪くなる。

「ん? 急に空が曇って……はっ!?」
「フェルノどうしたの! なにか居るの!?」
「居るって言うかなんて言うか。急に空が曇って……げっ!?」

 フェルノ登る木は他の木よりも明らかに背が高い。
 そのおかげか、唯一空を見ることができる。
 影の中で立ち尽くすアキラとNightが心配すると、フェルノは木から滑り落ちて来た。

「マズいマズいマズいマズい!」
「フェルノなにがマズいの?」
「そんなこと言ってられないって。とにかく来るよ!」
「来る? なにが来るんだ……えっ」

 Nightは言葉を失った。頭上を見上げて、目を見開いている。
 鬱蒼としたジャングルの空を支配し、ここまで一度しか声を出していなかったモンスターが姿を現した。
 真っ赤な翼は破け、鳥の口は大きく裂けている。二本に分かれた尾が余計に蒸し暑く空気を震わせていた。あまりに奇妙な怪鳥が飛んでいて、アキラたちは委縮させられた。

「フェルノ、もしかしてアレがいたの?」
「居るっているか……来るよ」
「はっ、来るってどう言う……あっ!」

 フェルノは木から降りる瞬間、アクア・カカオ豆を採って来ていた。
 インベントリに仕舞う隙が無かったのか、両手でラグビーボールのように抱えている。
 明らかに普通のカカオ豆よりも大きくて、みずみずしく膨れ上がっていた。

「もしかするとアクア・カカオ豆を守る番人なのかもしれないな」
「番人?」
「聞いたことがある。あくまで噂の範疇だが、特定の貴重なアイテムがあるエリアには番人と呼ばれるモンスターが居るらしい。どうやらアレがこの島の番人らしい」
「だからモンスターが一匹しか居ないんだ。どうするの? 倒すの?」
「この鬱蒼としたジャングルでは危険だ。とにかく一旦砂浜まで戻るぞ!」

 アキラたちは一旦砂浜まで全力で戻ることにした。
 踵を返し、ジャングルの蒸し暑さも無視してとにかく全力疾走だった。
 けれど番人の怪鳥は一切の余韻を与えさせてくれない。自分が守るはずのジャングルすら如何でも良いのか、口から高温の炎を吐き出した。

「ちょっと待って待って。森林火災起きてるよー!」
「絶対に吸い込むなよ。このGAME、火災でも死ぬからな」
「分かってるよ。はぁはぁ、暑い。苦しい」

 ジャングルの木々が燃え出す。
 高温の炎が絶えず吐かれ続け、周囲に生えていた木々は面影もない。
 真っ黒に燃えだすと、辺り一面が燃え盛る大地と化し既に戦える状況じゃない。

「ポータルまで焼け死ぬ前に走れ!」
「分かってるよ。もう、さっきまでの単調さはなんだったの!」
「知らん。とにかく振り返るな!」

 アキラたちは全速力で走った。
 砂浜にあるポータルを踏むまで何も見ないし聴かない。
 体力が尽き果てるまで走り続け、ようやく砂浜まで辿り着くと、我先に ポータルに飛び込んで燃え広がる孤島から脱出した。その記憶しかなかった。
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