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◇406 絶海に浮かぶ熱帯の孤島
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扉を潜ると視界が白い靄に覆われた。
もしかして意識飛んだ? かと思ったのも束の間だった。
視界の靄が晴れて景色が徐々に見えるようになった。
「ここって……」
「海だな」
Nightが口走った。確かに目の前は海だった。
しかもただの海じゃない。荒々しい波が立っている。
けれどまるでこっちですよと言っているのか、目の前の海だけが静寂だった。
もしかするとこれが航路かもしれない。今、アキラたちが立っている限りなく狭い陸地の砂浜近くには木製の小舟も停まっていて、この海を行けと言及しているようだ。
確かに安全だろうが、やけに不気味だった。孤島への片道切符なのでは? と嫌な想像力が働いた。
「この船に乗って行くの? オールも無いのに?」
フェルノが小舟の中を覗き込むと、確かに漕ぐために必要な道具が何一つとしてなかった。
これじゃあただプカプカ浮くだけか、流されてお陀仏か。二者択一しか見えてこない。
アキラとフェルノは固まってしまったが、Nightだけは前向きだった。
そんな不親切なことをしてくるはずがない。小舟があるのならこの船は進むはずだ。
「落ち着け。ここは一応GAMEの中だぞ。船が自動で進んでくれる可能性を考慮しないのか?」
Nightの口からまさかプレイヤーが苦労しない可能性が飛ぶとは思わなかった。
このGAME、プレイヤーが苦労することが多い。
知恵と能力と信頼、全部を兼ね備えてこそ切り拓ける。あまりにも楽なことがないGAMEだった。にもかかわらずの希望的観測に流石に困惑せざるを得ない。
がしかし、まだその可能性も捨てきれない。オールの無い小舟を漕ぐなんて無理だからだ。
「帆も無いし、これじゃ進めないよね?」
「ってことは、まさかまさかの自動操舵!」
「可能性はゼロじゃないだろ。一旦航路に乗せてみるぞ」
Nightに言われ、アキラたちは砂浜から小舟を運ぶ。
意外に軽い小舟は砂の摩擦もあってかスムーズに進んだ。
荒々しい海を避け、真ん中にポッカリと開いた航路に小舟を乗せる。
すると小舟は無事に浮き、すぐ隣の波を避けていた。システムは正常に働いている。
「とりあえず浮きはしたな」
「そうだね。それじゃあ後はオールを……えっ!?」
「ちょっと待ってよ。勝手に進んでるよー!」
アキラたちがオールを調達しようと振り返る。
すると踵を返した途端、小舟が流され始めた。
誰も乗っていないはずなのに、航路に乗せた瞬間迷うことなく進んでしまう。
これはマズいと思ったNightはワイヤーを急いで作ると、先端に付いた鉤爪を何とか引っ掻け引き戻す。けれど凄い力が加わっているのか、小舟が非力なNightを無視してワイヤーごと行ってしまう。
「う、嘘だろ!」
「Night、フェルノ、一緒に乗るよ。せーのっ!」
アキラの掛け声で全員高く飛んだ。
小舟に向かって飛び込むと、海が一気に近くなる。
身を屈め受け身を取ることに全力を注ぎ、小舟の上に何とか乗った。危なかった。
バッシャーン1
水飛沫が上がった。小舟が少し沈んだが、すぐに浮上して三人を乗せる。
少し水が入って来たけれど今更気にしてられない。
まさか勝手に進んでしまうなんて思わなかった。
「なんとか乗れたねー」
「危なかったな。コレを逃したらどうなっていたか」
「それにしても勝手に進むのはバグだよね」
「そんなことないぞ。往年のゲームになれば、触れただけで自動で進んでしまう物もしばしばだ」
「そう言うゲームは遊んだことないよ」
軽口を吐き合いながら、和気藹々と話が弾む。
小舟の中は三人だと程よい広さだ。これが人数が増えると大変なことになる。
お互いにバランスを取り合いながら小舟が操舵するのを待った。
ゆっくりゆっくり、時間を懸けて緩やかに進む小舟に揺られ、アキラたちは孤島を目指した。
「それでどれくらい経ったのかなー?」
「そうだな。三十分くらいか?」
「もっと経ってるよー。絶対だってー」
「それはない。私の体内時計は正常だ」
「むーん」
フェルノは小舟の上で横になっていた。
Nightは手持ち無沙汰にならないよう本を読んでいた。
アキラもソウラから買い取った難しいパズルを解いて遊んでいた。
こうして三十分……四十分……五十分……一時間が経とうとしていた頃だった。
ようやく何か見えてきた。
「おっ、見えて来たぞ」
「「やっと!?」」
アキラもフェルノも顔を上げた。
小舟の先頭、その先には大きな島があった。
鬱蒼とした緑が一面を覆い、鳥たちの奇怪な鳴き声が飛び交う。
あまり行きたくはない、正しく絶海の孤島だった。
「アレがアークラー島。絶海に浮かぶ小島か」
「そうだね。この小舟、あの島に向かって進んでいるから間違いないよ」
むしろ間違いであって欲しかった。
実際この島に辿り着くためには本当に正規の航路を使うしか術がない。
そんな状況で踏み込むということは外界から隔絶されている証拠。踏み込むのが怖くなる。
「おまけに暑いな」
「暑いって言うよりもさー、蒸し暑いよねー。これ、一筋縄じゃないか無いんじゃないのー?」
「もとよりそうだ。アークラー島、面白そうだな」
「確かに怖いけど面白そう。どんなモンスターが居るんだろ。良いアイテムたくさん手に入れたいな」
アキラも怖さを拭い去った。
代わりにギュッと胸の前で拳を作ると、パッと手を開いた。
面白そう。好奇心の方がやや恐怖心を上回ったのだった。
もしかして意識飛んだ? かと思ったのも束の間だった。
視界の靄が晴れて景色が徐々に見えるようになった。
「ここって……」
「海だな」
Nightが口走った。確かに目の前は海だった。
しかもただの海じゃない。荒々しい波が立っている。
けれどまるでこっちですよと言っているのか、目の前の海だけが静寂だった。
もしかするとこれが航路かもしれない。今、アキラたちが立っている限りなく狭い陸地の砂浜近くには木製の小舟も停まっていて、この海を行けと言及しているようだ。
確かに安全だろうが、やけに不気味だった。孤島への片道切符なのでは? と嫌な想像力が働いた。
「この船に乗って行くの? オールも無いのに?」
フェルノが小舟の中を覗き込むと、確かに漕ぐために必要な道具が何一つとしてなかった。
これじゃあただプカプカ浮くだけか、流されてお陀仏か。二者択一しか見えてこない。
アキラとフェルノは固まってしまったが、Nightだけは前向きだった。
そんな不親切なことをしてくるはずがない。小舟があるのならこの船は進むはずだ。
「落ち着け。ここは一応GAMEの中だぞ。船が自動で進んでくれる可能性を考慮しないのか?」
Nightの口からまさかプレイヤーが苦労しない可能性が飛ぶとは思わなかった。
このGAME、プレイヤーが苦労することが多い。
知恵と能力と信頼、全部を兼ね備えてこそ切り拓ける。あまりにも楽なことがないGAMEだった。にもかかわらずの希望的観測に流石に困惑せざるを得ない。
がしかし、まだその可能性も捨てきれない。オールの無い小舟を漕ぐなんて無理だからだ。
「帆も無いし、これじゃ進めないよね?」
「ってことは、まさかまさかの自動操舵!」
「可能性はゼロじゃないだろ。一旦航路に乗せてみるぞ」
Nightに言われ、アキラたちは砂浜から小舟を運ぶ。
意外に軽い小舟は砂の摩擦もあってかスムーズに進んだ。
荒々しい海を避け、真ん中にポッカリと開いた航路に小舟を乗せる。
すると小舟は無事に浮き、すぐ隣の波を避けていた。システムは正常に働いている。
「とりあえず浮きはしたな」
「そうだね。それじゃあ後はオールを……えっ!?」
「ちょっと待ってよ。勝手に進んでるよー!」
アキラたちがオールを調達しようと振り返る。
すると踵を返した途端、小舟が流され始めた。
誰も乗っていないはずなのに、航路に乗せた瞬間迷うことなく進んでしまう。
これはマズいと思ったNightはワイヤーを急いで作ると、先端に付いた鉤爪を何とか引っ掻け引き戻す。けれど凄い力が加わっているのか、小舟が非力なNightを無視してワイヤーごと行ってしまう。
「う、嘘だろ!」
「Night、フェルノ、一緒に乗るよ。せーのっ!」
アキラの掛け声で全員高く飛んだ。
小舟に向かって飛び込むと、海が一気に近くなる。
身を屈め受け身を取ることに全力を注ぎ、小舟の上に何とか乗った。危なかった。
バッシャーン1
水飛沫が上がった。小舟が少し沈んだが、すぐに浮上して三人を乗せる。
少し水が入って来たけれど今更気にしてられない。
まさか勝手に進んでしまうなんて思わなかった。
「なんとか乗れたねー」
「危なかったな。コレを逃したらどうなっていたか」
「それにしても勝手に進むのはバグだよね」
「そんなことないぞ。往年のゲームになれば、触れただけで自動で進んでしまう物もしばしばだ」
「そう言うゲームは遊んだことないよ」
軽口を吐き合いながら、和気藹々と話が弾む。
小舟の中は三人だと程よい広さだ。これが人数が増えると大変なことになる。
お互いにバランスを取り合いながら小舟が操舵するのを待った。
ゆっくりゆっくり、時間を懸けて緩やかに進む小舟に揺られ、アキラたちは孤島を目指した。
「それでどれくらい経ったのかなー?」
「そうだな。三十分くらいか?」
「もっと経ってるよー。絶対だってー」
「それはない。私の体内時計は正常だ」
「むーん」
フェルノは小舟の上で横になっていた。
Nightは手持ち無沙汰にならないよう本を読んでいた。
アキラもソウラから買い取った難しいパズルを解いて遊んでいた。
こうして三十分……四十分……五十分……一時間が経とうとしていた頃だった。
ようやく何か見えてきた。
「おっ、見えて来たぞ」
「「やっと!?」」
アキラもフェルノも顔を上げた。
小舟の先頭、その先には大きな島があった。
鬱蒼とした緑が一面を覆い、鳥たちの奇怪な鳴き声が飛び交う。
あまり行きたくはない、正しく絶海の孤島だった。
「アレがアークラー島。絶海に浮かぶ小島か」
「そうだね。この小舟、あの島に向かって進んでいるから間違いないよ」
むしろ間違いであって欲しかった。
実際この島に辿り着くためには本当に正規の航路を使うしか術がない。
そんな状況で踏み込むということは外界から隔絶されている証拠。踏み込むのが怖くなる。
「おまけに暑いな」
「暑いって言うよりもさー、蒸し暑いよねー。これ、一筋縄じゃないか無いんじゃないのー?」
「もとよりそうだ。アークラー島、面白そうだな」
「確かに怖いけど面白そう。どんなモンスターが居るんだろ。良いアイテムたくさん手に入れたいな」
アキラも怖さを拭い去った。
代わりにギュッと胸の前で拳を作ると、パッと手を開いた。
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