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◇389 高速の板を捕まえろ!

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 ハゴ・イーターに二度も襲撃され、危く殺されかけた。
 ただでさえスピードが桁違いで、全く相手できなかった。
そんな中Nightは森を見て何か考えている。如何やらハゴ・イーター対策の作戦を練っているらしい。

「Night?」
「……あっ!」
「何か見つかったの!?」

 アキラはNightに考えが纏まったのかと声を掛ける。
 するとNightは【ライフ・オブ・メイク】を発動した。
 何か作っているようで、完成したのは見本のワイヤーだった。いつも通り過ぎて拍子抜けした。

「ワイヤー? いつも通りだね」
「ワイヤーは便利だぞ。特に今回の物はかなり強靭だ」
「……本当だ。それでこれを如何するの?」
「ふん。行けばお前なら分かる」
「勝手に私のことかい被らないでよ」

 アキラはNightにボヤいた。
 けれど「ふん」とほくそ笑んで笑われると、Nightを先導にハゴ・イーターが来るまでの間に目指す場所まで向かった。そこは近くにあった森で、入り口付近の太い幹の木を見つけると、「これでいいな」と口を開いた。

「如何するの、Night?」
「分からないのか?」
「……もしかしてここに罠を張るみたいな? そんな顔しているけど……」
「正解だ」
「嘘だっ!? そんなのでハゴ・イーターが捕まる訳ないよ。それにあの暗闇、ワイヤーくらい飲み込んじゃうよ!」
「飲み込ませる気はない。とにかく張るぞ」

 【ライフ・オブ・メイク】を多用して大量のワイヤーを用意する。
 どれもこれも、いつものワイヤーよりもかなり強靭で、伸縮性は悪いものの粘着室で硬かった。それを全員に配ると、Nightの指示でワイヤーを木の幹に掛けていく。

「うわぁ、伸縮性がないから全然引っ張れないよぉー」
「おまけにかなり短いわね」
「仕方ないだろ。私のHPは有限だ」
「……ポーション飲めば良いんじゃない?」
「あんなマズいものを飲めってことか?」
「牛乳を混ぜたりして味変したら飲みやすいらしいよ」
「そんなものまで飲んで【ライフ・オブ・メイク】を使う必要は無いだろ」

 全員手が止まっていた。
 談笑に浸り、言い合い合戦に繋がってしまった。
 けれどその間を切り裂いたのは雷斬。バッサリと一刀両断してしまった。

「皆さん、手を動かしましょうね」
「「「はい」」」

 雷斬に注意されてしまい、四人は手を動かし始めた。
 短くて強靭なワイヤーを木の幹や枝々に渡らせると、何となく幾何学な世界が広がる。
 本当にこれで良いのだろうか? ちょっとだけ不安になるが、アキラはNightのことを信頼していたので、きっと間違いないと納得した。

「後はハゴ・イーターが来るのを待つだけだな」
「とは言え、この辺りは風が無いわよ?」

 直線距離で移動したとはいえ、少しだけやんわりとした上り坂になっていた。
 そのせいで窪地ではなくなり、風が弱めになっている。
 もしかしすると風が溜まる場所じゃないとハゴ・イーターは襲って来ないのかもしれない。そうなると、Nightの作戦は無に帰してしまう。

「如何しましょうか?」
「如何するもなにも、誰かがここまでおびき寄せるしかないでしょ?」
「そんな危険な……第一ハゴ・イーターは速いんだよ!」
「そんなの分かっているわ。だからこそ、こんな無謀な方法……」
「そんなことありませんよ。そうですね、フェルノさん」
「うん! 私と雷斬がやればいいでしょー」

 突然そんなことを言い出すなんて思わなかった。
 確かに雷斬とフェルノは速い。だけど二人を以てしても、単純なスピード戦ならハゴ・イーターは負けていない。むしろ急降下から急上昇は音の域だった。
 けれど雷斬は胸に手を当てて「ご心配なく」と答えた。

「私は【雷鳴イカヅチ】を使えますから、大丈夫ですよ。雷は光、即ち音よりも速いんです」
「頼もしいわね。雷斬、いつもよりカッコいいわよ」
「ありがとうございます。ですが私は光が音が負けるとは思っていないんです。ここまで連れてくる囮の役目、私にやらせて貰えないでしょうか?」

 突然そんなことを言い出した。
 流石に危険な真似過ぎるので止める様にアキラも注意する。

「ダメだよ雷斬。そんなことして失敗したら……」
「大丈夫ですよ、アキラさん。ですが心配してくださるだけ、ありがとうございます」
「う、うん……」

(雷斬なら大丈夫だと思うけど……そうだ!)

 アキラは万が一に備えてフェルノに視線を配った。
 アイコンタクトで糸を理解してくれる親友。
 親指を立てて「任せておいてよ」といざとなった時のスイッチ要因を買って出てくれた。
 けれどコレだとフェルノが危険な目に遭う。如何したら良いのか分からず、友達として頭を抱えた。

「二人共、コレを持って行け」
「何コレ? この間のブレスレット?」
「敏捷性アップの効果が不意されたものだ。コレを付けておけば少しは役に立つ。まあ気やすめだがな」
「「ありがとう」ございます」

 二人はブレスレットを受け取った。
 もうやることが決まってしまった。
 これ以上何かできることは……アキラには無いようで、弓を構えるベル同様、自分もすぐに飛び出せるように構えることにした。
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