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◇387 高速の板
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アキラたちは襲って来たモンスターたちを全部倒した。
一仕事終えて汗を掻いたのか、額の汗を拭き取った。
「ふぅ。終わりましたね」
雷斬が呟く。刀を鞘に納めると、アキラたちに視線を向けた。
雪の草原の上に寝転がるフェルノの姿が何よりも視線を惹き付ける。
その周りにはインベントリの中に入っているアイテムを確認するアキラとNightの姿が目に留まる。ベルも弓を背中に隠し、モンスターの攻撃を退けた余韻を楽しむ。
「皆さんお疲れさまでしたね」
雷斬はアキラたちに声を掛ける。
するとフェルノが大の字で寝転がる中、腕を空へと突き上げた。
「お疲れー」
フェルノは「あはは」と笑いながら雪の中に埋もれる。
その姿にフェルノらしさを感じつつ、中々空にモンスターが現れないので時間だけが過ぎていた。
「それにしても高速の板が現れないね」
「そうだな」
「そうだなって。何か方法は無いの?」
「それがあるなら既に試している。何も無いということはそう言うことだ」
アキラはNightに方法が無いかと尋ねたものの何も返って来なかった。
如何したら良いのかと腕を組んで悩む。
するとベルが空気を読む。右の人差し指をピンと立たせた。
「【風読み】を使っても見えないわね」
「そんな効果もあるの?」
「一応ね。【風読み】は風を読むのが最大だから、風を読んでも見えてこないってことは、そう言うことよ」
「そっか」
如何やら全然ダメらしい。
ここまで来るとおそらく確率論の話になる。
きっと遭遇率はとてつもなく低い。アキラはムッとした表情を浮かべて考えるものの、結局分からないのだ。
「仕方ないね。待ってよっか」
「それは良いが……寒いな」
「あはは、寒いよね。おまけに風も出て来た」
急に風が強くなった。
ベルが【風読み】で読んだ時はほぼ無風だった。
けれど【風読み】を止めて、この場に留まっていると決めた瞬間から風が強くなり始めた。
「なに急に? 風が強くなったわよ」
「もしかして私たちがここに留まるって言ったからかな?」
「……いいや、それは無いな。これを見ろ」
Nightは風が強くなり始めた原因を説明してくれた。
如何やらこの辺りの地形が原因らしい。
「見てみろ。この辺りは少し窪地になっている。時間帯によっては風が吹いて窪地の中に吸い込まれる仕組みだ」
「確かにすり鉢状の土地では風も侵入してきますからね」
確かに雷斬の言う通りな気がした。
窪地と言うことはドーム状。風が気流に乗って深くしたまで伝って来る。
そうなれば風は滞留する。強くなるのも一瞬の出来事に感じれば納得はできた。
けれどいくらここは少し窪んでいるとはいえ、納得できないこともある。
あまりにも突然、しかも風が意図的な程強さを増す。
ギュイーン! ギュイーン!
風がドンドン強くなる。
けたたましく響き、ギュイーン! の大合唱を始めた。
「ちょっとうるさいね」
「そうだな。おまけに風も強くなった」
風が意思を持っているみたいで気味が悪い。
頭の中で語りかけて来るみたいで耳障りだ。
それにしてもNightの言う通り急に風が強くなる。こんなに風が強くなるのかな。
アキラはふと考えてしまった。
Nightも神妙な表情を浮かべている。流石にコレは異常だと思ったようだ。
「Night」
「……ベル、風は如何だ?」
「非常にヤバいわね。【風読み】で見なくても、大気の気流がかなり荒ぶっているわ」
指をピンと立てて風を読んだ。指がかなり震えている。風に持って行かれそうだ。
しかし何処にも怪しい姿は見えない。
空を見上げても周りを振り返ってみても、モンスターの影は無いのだ。
「何も居ないね」
「だがおかしい。この風の流れ、非常にマズいな。すぐにでも引き返した方がいい」
Nightが警戒していた。風が渦を巻き、雪化粧を払い落とす。
枯れた草の色が露出し、アキラたちに危険信号を送る。
「帰ろう。今すぐ帰ろう」
「そうだねー。風は強いし、竜巻でも起きるかなー?」
「それは無いと思うけど……行こっか」
「そう急に撤退だ。急ぐぞ」
アキラたちは雪に足を取られないようにして、草原を後にしようとする。
けれど遅かった。その瞬間、背筋がゾクリとした。
鳥肌が立つような恐怖ではない。しかし風が吹き抜けて、全身を包み込んだのだ。
まるですぐ近くに居るみたい。
ギュイーン!
変な羽音が聴こえた。耳障りで仕方ない。
頭の中でキンキン響いて、耳を塞ぎたくなる。
「なに、この音?」
「すぐ近くから聴こえるな。一体何が……はっ!?」
「Night? えっ……」
Nightが振り返ったのでアキラも振り返る。
そこには巨大な口が開いていた。
まさに一瞬の出来事で、巨大な口が暗黒世界への扉を誘い、今か今かと待ち構えている。
アキラとNightは大口に喰われそうだった。
一仕事終えて汗を掻いたのか、額の汗を拭き取った。
「ふぅ。終わりましたね」
雷斬が呟く。刀を鞘に納めると、アキラたちに視線を向けた。
雪の草原の上に寝転がるフェルノの姿が何よりも視線を惹き付ける。
その周りにはインベントリの中に入っているアイテムを確認するアキラとNightの姿が目に留まる。ベルも弓を背中に隠し、モンスターの攻撃を退けた余韻を楽しむ。
「皆さんお疲れさまでしたね」
雷斬はアキラたちに声を掛ける。
するとフェルノが大の字で寝転がる中、腕を空へと突き上げた。
「お疲れー」
フェルノは「あはは」と笑いながら雪の中に埋もれる。
その姿にフェルノらしさを感じつつ、中々空にモンスターが現れないので時間だけが過ぎていた。
「それにしても高速の板が現れないね」
「そうだな」
「そうだなって。何か方法は無いの?」
「それがあるなら既に試している。何も無いということはそう言うことだ」
アキラはNightに方法が無いかと尋ねたものの何も返って来なかった。
如何したら良いのかと腕を組んで悩む。
するとベルが空気を読む。右の人差し指をピンと立たせた。
「【風読み】を使っても見えないわね」
「そんな効果もあるの?」
「一応ね。【風読み】は風を読むのが最大だから、風を読んでも見えてこないってことは、そう言うことよ」
「そっか」
如何やら全然ダメらしい。
ここまで来るとおそらく確率論の話になる。
きっと遭遇率はとてつもなく低い。アキラはムッとした表情を浮かべて考えるものの、結局分からないのだ。
「仕方ないね。待ってよっか」
「それは良いが……寒いな」
「あはは、寒いよね。おまけに風も出て来た」
急に風が強くなった。
ベルが【風読み】で読んだ時はほぼ無風だった。
けれど【風読み】を止めて、この場に留まっていると決めた瞬間から風が強くなり始めた。
「なに急に? 風が強くなったわよ」
「もしかして私たちがここに留まるって言ったからかな?」
「……いいや、それは無いな。これを見ろ」
Nightは風が強くなり始めた原因を説明してくれた。
如何やらこの辺りの地形が原因らしい。
「見てみろ。この辺りは少し窪地になっている。時間帯によっては風が吹いて窪地の中に吸い込まれる仕組みだ」
「確かにすり鉢状の土地では風も侵入してきますからね」
確かに雷斬の言う通りな気がした。
窪地と言うことはドーム状。風が気流に乗って深くしたまで伝って来る。
そうなれば風は滞留する。強くなるのも一瞬の出来事に感じれば納得はできた。
けれどいくらここは少し窪んでいるとはいえ、納得できないこともある。
あまりにも突然、しかも風が意図的な程強さを増す。
ギュイーン! ギュイーン!
風がドンドン強くなる。
けたたましく響き、ギュイーン! の大合唱を始めた。
「ちょっとうるさいね」
「そうだな。おまけに風も強くなった」
風が意思を持っているみたいで気味が悪い。
頭の中で語りかけて来るみたいで耳障りだ。
それにしてもNightの言う通り急に風が強くなる。こんなに風が強くなるのかな。
アキラはふと考えてしまった。
Nightも神妙な表情を浮かべている。流石にコレは異常だと思ったようだ。
「Night」
「……ベル、風は如何だ?」
「非常にヤバいわね。【風読み】で見なくても、大気の気流がかなり荒ぶっているわ」
指をピンと立てて風を読んだ。指がかなり震えている。風に持って行かれそうだ。
しかし何処にも怪しい姿は見えない。
空を見上げても周りを振り返ってみても、モンスターの影は無いのだ。
「何も居ないね」
「だがおかしい。この風の流れ、非常にマズいな。すぐにでも引き返した方がいい」
Nightが警戒していた。風が渦を巻き、雪化粧を払い落とす。
枯れた草の色が露出し、アキラたちに危険信号を送る。
「帰ろう。今すぐ帰ろう」
「そうだねー。風は強いし、竜巻でも起きるかなー?」
「それは無いと思うけど……行こっか」
「そう急に撤退だ。急ぐぞ」
アキラたちは雪に足を取られないようにして、草原を後にしようとする。
けれど遅かった。その瞬間、背筋がゾクリとした。
鳥肌が立つような恐怖ではない。しかし風が吹き抜けて、全身を包み込んだのだ。
まるですぐ近くに居るみたい。
ギュイーン!
変な羽音が聴こえた。耳障りで仕方ない。
頭の中でキンキン響いて、耳を塞ぎたくなる。
「なに、この音?」
「すぐ近くから聴こえるな。一体何が……はっ!?」
「Night? えっ……」
Nightが振り返ったのでアキラも振り返る。
そこには巨大な口が開いていた。
まさに一瞬の出来事で、巨大な口が暗黒世界への扉を誘い、今か今かと待ち構えている。
アキラとNightは大口に喰われそうだった。
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