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◇382 見つけたのは良いけれど
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アキラとフェルノは白い小さな蜂を見失った。
理由は単純で、白くて小さいから。
霜雪森林は雪が積もっている。霜もある。そのせいで光の乱反射も相まって、二人の視界から完全に姿を眩ましたのだ。
「ど、如何しよう。せっかく蜂を見つけたのに見えなくなっちゃった?」
「如何しよっかー」
「如何しよっかーって、もう一回探すの?」
「うーん、如何しようね? ねー」
「ねーじゃないよ。ねえ、雷斬。……雷斬?」
アキラは雷斬に声を掛けたのだが、何故か声が返って来なかった。
おかしいなと思い、アキラとフェルノは振り返る。
何故か視線が空を見ていた。しかも睨んでいる。何か捉えている様子で、ポツリと呟いた。
「皆さん、見えましたよ」
「「見えたって?」」
「先程見つけた白い小さな蜂です。少し見え辛いですが、真っ直ぐ向かっていますよ」
驚いた。まさかずっと目を逸らすことなく、蜂を見続けていたのだろうか?
雷斬は一切瞬きをする様子もなかったので、アキラもフェルノも恐ろしい集中力だと思い、雷斬のことを讃えた。
「ありがとう雷斬。目で追っててくれて」
「いえ、この程度何でもありませんよ。さて皆さん、一緒に参りましょうか」
「「うん。巣が見つかると良いね。ねっ」」
アキラとフェルノは顔を見合わせて、お互いにこやかに頷き合う。
そんな二人を「良いですね」と少し寂しそうに見つめる雷斬。
しかしアキラはそれすら見越して、雷斬にも同じようにする。
「ねっ、雷斬」
「あっ、はっ、はい! 参りましょう。そして見つけましょうね」
パッと表情が明るくなった。
満面の笑みを浮かべると、コクコクと頷いてくれると、アキラとフェルノは雷斬のおかげで蜂を見過ごすことなく追いかけることができた。
「確かこの辺りに消えたはずですが……」
雷斬の案内の下、アキラたちは霜雪森林の奥へとやって来た。
そこは太陽の光が入るような開けた場所ではなく、むしろ鬱蒼としていて薄暗い。
おまけに雪がたくさん降り積もっているせいもあり、簡単に脚が取られそうになった。
危ないながらもガッサガッサと雪道を踏んで行くと、草むらの中を注視する。
「この辺りでしょうか?」
草むらは藪の様になっていた。
掻き分けると何かに何もいない。もちろん蜂の巣もない。
雷斬は少し残念そうにしていたが、アキラも同じように草を掻き分けて探した。
すると丁度雷斬とは反対側に気になるものを見つけた。
「あれ? みんな、ちょっとこっち来て」
「如何したのー?」
「アレ、そうじゃないかな?」
アキラが草を掻き分けて低い木の枝を指さす。
そこに何かぶら下がっていた。
独特な形状からすぐに蜂の巣だと分かるが、やけに小さい上に、巣の色が真っ白だったのでビックリした。
「凄い。もしかしてさっきの蜂の巣かな?」
「おそらくはそうだと思いますよ。それにしても本当に真っ白ですね。驚きました」
蜂の巣を無事に見つけたことよりも、真っ白なことに驚いていた。
真っ白だから雪が降り積もっただけど勘違いするかもしれないが、そんなことはまるでなかった。
巣自体が真っ白で、一体どんな木から作ったのか分からない。
だけど分からない方が素敵。そう思えるほどに目を奪うのだ。
「何だか巣に触れたくないね」
「そうですね。ですが……」
「えー、巣を少し壊さないと蜜は採れないでしょー?」
フェルノの言う通りだった。
こんなに見事な巣だけど少し壊さないと蜜を採取することはできない。
蜂たちが頑張って作ったものだから、壊すのは本当に忍びない。
なのでアキラと雷斬は躊躇ったものの、一部だけなら? と思い、申し訳なさ半分で巣に近付く。
「ごめんね」
アキラは軽快されないように【幽体化】を使ってギリギリまで接近する。
目の前にやって来るとスキルを解いて、手を伸ばしてみた。
すると巣の中でブーンブーンとけたたましく騒ぎ出す。
一体何が? と思ったのも一瞬だった。巣の中から大量の白くて小さな蜂が蠢いて出てきた。
「うわぁ!?」
アキラは驚いて声を上げてしまった。
すると蜂たちはアキラのことを巣を壊しに来た敵だと勘付き、羽音を立てながら襲ってくる。
しかしアキラもただではやられない。悪いのはこっちだが、やらないといけないので、アキラも反旗を翻す。
「そっちがそう来るなら、【半液状化】!」
アキラはスライムの姿に変わった。
青くてプルプルした可愛らしい姿に変化すると、そのまま何もすることはなく、その場でジッと留まる。
(如何だ! これなら手も出せないよね)
アキラは白い小さな蜂の群れの攻撃を回避する。
スライムになった体では幾ら熱を出そうが、針で突き刺そうがプルンプルンと弾かれてしまう。
大量に集まって気持ち悪かったけど、目を閉じてさえいればダメージもないし、怖くもない。
スライムの体は液体と固体の中間だから、羽音の重奏もグワングワンとなって聴こえてこない。
まさに打って付けのスキルなのだが、一つだけ決定的にダメなところもあった。
それは隠れて見ているフェルノと雷斬、ましてやアキラ本人でさえ分かってしまった。
(この姿じゃ何もできないんだけどね)
手も足もない。だから幾ら足搔こうが、ダメージが無いだけで何もできなかった。
まさかに手詰まり。そう思っても無理はない。
蜂たちも意味がないことを悟ってしまったのか、巣の中へと引き返してしまう。幸い、敵とは思われていないようだが、これじゃあ何も始まらないので困ってしまった。
理由は単純で、白くて小さいから。
霜雪森林は雪が積もっている。霜もある。そのせいで光の乱反射も相まって、二人の視界から完全に姿を眩ましたのだ。
「ど、如何しよう。せっかく蜂を見つけたのに見えなくなっちゃった?」
「如何しよっかー」
「如何しよっかーって、もう一回探すの?」
「うーん、如何しようね? ねー」
「ねーじゃないよ。ねえ、雷斬。……雷斬?」
アキラは雷斬に声を掛けたのだが、何故か声が返って来なかった。
おかしいなと思い、アキラとフェルノは振り返る。
何故か視線が空を見ていた。しかも睨んでいる。何か捉えている様子で、ポツリと呟いた。
「皆さん、見えましたよ」
「「見えたって?」」
「先程見つけた白い小さな蜂です。少し見え辛いですが、真っ直ぐ向かっていますよ」
驚いた。まさかずっと目を逸らすことなく、蜂を見続けていたのだろうか?
雷斬は一切瞬きをする様子もなかったので、アキラもフェルノも恐ろしい集中力だと思い、雷斬のことを讃えた。
「ありがとう雷斬。目で追っててくれて」
「いえ、この程度何でもありませんよ。さて皆さん、一緒に参りましょうか」
「「うん。巣が見つかると良いね。ねっ」」
アキラとフェルノは顔を見合わせて、お互いにこやかに頷き合う。
そんな二人を「良いですね」と少し寂しそうに見つめる雷斬。
しかしアキラはそれすら見越して、雷斬にも同じようにする。
「ねっ、雷斬」
「あっ、はっ、はい! 参りましょう。そして見つけましょうね」
パッと表情が明るくなった。
満面の笑みを浮かべると、コクコクと頷いてくれると、アキラとフェルノは雷斬のおかげで蜂を見過ごすことなく追いかけることができた。
「確かこの辺りに消えたはずですが……」
雷斬の案内の下、アキラたちは霜雪森林の奥へとやって来た。
そこは太陽の光が入るような開けた場所ではなく、むしろ鬱蒼としていて薄暗い。
おまけに雪がたくさん降り積もっているせいもあり、簡単に脚が取られそうになった。
危ないながらもガッサガッサと雪道を踏んで行くと、草むらの中を注視する。
「この辺りでしょうか?」
草むらは藪の様になっていた。
掻き分けると何かに何もいない。もちろん蜂の巣もない。
雷斬は少し残念そうにしていたが、アキラも同じように草を掻き分けて探した。
すると丁度雷斬とは反対側に気になるものを見つけた。
「あれ? みんな、ちょっとこっち来て」
「如何したのー?」
「アレ、そうじゃないかな?」
アキラが草を掻き分けて低い木の枝を指さす。
そこに何かぶら下がっていた。
独特な形状からすぐに蜂の巣だと分かるが、やけに小さい上に、巣の色が真っ白だったのでビックリした。
「凄い。もしかしてさっきの蜂の巣かな?」
「おそらくはそうだと思いますよ。それにしても本当に真っ白ですね。驚きました」
蜂の巣を無事に見つけたことよりも、真っ白なことに驚いていた。
真っ白だから雪が降り積もっただけど勘違いするかもしれないが、そんなことはまるでなかった。
巣自体が真っ白で、一体どんな木から作ったのか分からない。
だけど分からない方が素敵。そう思えるほどに目を奪うのだ。
「何だか巣に触れたくないね」
「そうですね。ですが……」
「えー、巣を少し壊さないと蜜は採れないでしょー?」
フェルノの言う通りだった。
こんなに見事な巣だけど少し壊さないと蜜を採取することはできない。
蜂たちが頑張って作ったものだから、壊すのは本当に忍びない。
なのでアキラと雷斬は躊躇ったものの、一部だけなら? と思い、申し訳なさ半分で巣に近付く。
「ごめんね」
アキラは軽快されないように【幽体化】を使ってギリギリまで接近する。
目の前にやって来るとスキルを解いて、手を伸ばしてみた。
すると巣の中でブーンブーンとけたたましく騒ぎ出す。
一体何が? と思ったのも一瞬だった。巣の中から大量の白くて小さな蜂が蠢いて出てきた。
「うわぁ!?」
アキラは驚いて声を上げてしまった。
すると蜂たちはアキラのことを巣を壊しに来た敵だと勘付き、羽音を立てながら襲ってくる。
しかしアキラもただではやられない。悪いのはこっちだが、やらないといけないので、アキラも反旗を翻す。
「そっちがそう来るなら、【半液状化】!」
アキラはスライムの姿に変わった。
青くてプルプルした可愛らしい姿に変化すると、そのまま何もすることはなく、その場でジッと留まる。
(如何だ! これなら手も出せないよね)
アキラは白い小さな蜂の群れの攻撃を回避する。
スライムになった体では幾ら熱を出そうが、針で突き刺そうがプルンプルンと弾かれてしまう。
大量に集まって気持ち悪かったけど、目を閉じてさえいればダメージもないし、怖くもない。
スライムの体は液体と固体の中間だから、羽音の重奏もグワングワンとなって聴こえてこない。
まさに打って付けのスキルなのだが、一つだけ決定的にダメなところもあった。
それは隠れて見ているフェルノと雷斬、ましてやアキラ本人でさえ分かってしまった。
(この姿じゃ何もできないんだけどね)
手も足もない。だから幾ら足搔こうが、ダメージが無いだけで何もできなかった。
まさかに手詰まり。そう思っても無理はない。
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