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◇379 雪解け蜜を採りに行こう

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 次の日のこと。ギルドホームにやって来ると、Nightに姿が無かった。
 如何やらNightには頼れないようなので困ってしまった。
 しかし他に二人、頼もしい仲間がいた。フェルノと雷斬だ。

「フェルノ、雷斬、ちょっと良いかな?」
「なーにー?」
「如何したんですか?」

 フェルノと雷斬はそれぞれ作業をしていたが、手を留めてアキラのことを見つめた。
 フェルノは筋トレをしながら、雷斬は刀の手入れをしながらで、こんな状態で話しかけるのも悪い気がしたが、視線をくれたのでアキラは話し出す。

「二人共、これからソウラさんに頼まれたアイテムを採りに行くんだけど、人手が要るから付いて来てくれないかな?」

 そう頼んでみると、二人は快く快諾してくれた。
 首を縦に振ってくれてホッと一安心だった。

「全然良いよー。それで何処に行くの?」
「場所はね、満月山の裏にあった雪山。フェルノは覚えているよね?」
「覚えているよー。アレでしょ、アイスシェードンとやり合った場所」
「そう。そこからさらに奥に行って、針葉樹が生えている辺り。私たちの行った雪牙山の奥で霜雪森林って所なんだけど」
「霜雪森林? あまり聞いたことはないですね」
「そうだよね。この時期だけじゃなくて、普段から雪が降っているみたいだけど、特にこの時期は寒いらしいから気を付けないとダメらしいんだ」
「そっかー。んじゃ、早速行こっかー」

 フェルノは立ち上がり、準備をしていた。
 インベントリから一応の厚木コートを取り出すと、脱いでいた装備も付け直し、その上から羽織った。
 しかしあまりの手早さにアキラは驚いてしまう。
 もの凄く乗り気みたいで、ついつい心境を尋ねてしまった。

「えっ、早くない?」
「早い方が良いんでしょー? それならさー、今すぐ行こっかー」

 フェルノは呑気な様子で、両手を合わせて上に伸ばした。
 すると雷斬も立ち上がり、刀を腰に留めた。

「そうですね。私も行ってみたいです。丁度手入れが終わった所なので、何かあればすぐにでも」
「物騒なこと言わないでよ。それに何か起きたら困るでしょ?」
「大丈夫大丈夫。私たち、強いからさー」

 フェルノは笑いながら答えた。
 大した自信にアキラも胸を撫で下ろすとインベントリからより厚手なコートを取り出す。
 
「それじゃあみんなで行こっか」

 アキラの号令に合わせる形で、ギルドホームを飛び出した。
 三人とも寒さ対策は十分な様子で、冬らしい場所に向かうのだった。



 アキラたちは満月山の麓の村にやってきて、そこから回り道をする形で目的地である霜雪森林にやって来た。
 ここまで大体二時間掛かった。
 とりあえずポータルを踏むことはできたので、次からはギルドホームから直接出向くことができるので安心した。
 しかし二時間使ってしまったので、探索できる時間も減ってしまったので、アキラたちは首をキョロキョロさせていた。

「この辺はあまり寒くないね」
「うん。雪牙山の方が寒かったよねー」

 実際ここに来るまでの道中の方が寒かった上に、地形もかなり険しかった。
 近くの満月山は真っ白に染まっていて、雪牙山は相変わらずの様子で、いくら大回りをしたとは言え雪崩の恐怖と戦った。
 とりあえず無事に辿り着くことは叶ったが、ここまで寒さや地形が変化するとは思わず、少しだけ驚いた。

「ほら、コートを脱いでも寒くないよ?」
「それはフェルノだからでしょ」

 フェルノはファイアドレイク。だから熱に対してはめっぽう強い。
 暑い場所も平気な上、寒い場所なら尚良し。
 この程度の寒さなど鼻っから蹴散らしてしまっているようで、霜雪森林の中をテクテク歩いていた。

「うーん。全然居ないよ、狙いの蜂」
「そうですね。ですが蜂と言うのは、あまり寒さを好まないはずですが」
「だから貴重なのかな? それならいくら探しても見つかる気がしないよね」

 実際、このGAMEはかなりリアルを取り入れている。
 本来働き蜂と言う蜜を集める蜂たちは冬を迎える前に生涯を終えてしまう。
 その上、蜜蜂であれど冬の間はみんなで固まって寒さを凌ぐらしい。
 もしもその設定を取り入れているのなら、見つかる気がまるでしなかった。
 だって、既に死んでいるかもしれないので、特殊個体でなければ奇跡の産物だ。

「まさしく奇跡的ですよね」
「そうだよね。しかもサイズ感も結構小さ目らしいから、目を凝らさないと……うーん、居ないね」

 正直見つかる気がしなかった。
 けれどフェルノは一言ポツリ呟く。

「それでも探すしかないんだよね」
「うん。ごめんね、みんな」

 アキラは申し訳なくて二人に謝る。
 このままだと何の成果も得られないのだ。
 しかしながらフェルノも雷斬も顔色は頗る良かった。

「大丈夫だよー。それにさー、まだ全然探してないでしょー?」
「そうですね。もう少し奥の方まで虱潰しに探してみましょう」

 そんな二人を見ていると、申し訳ない気持ちも全部吹き飛ばすことにした。
 アキラもくまなく探すことにしたのだが、それから容易に一時間が経っていた。
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