380 / 598
◇377 「はい、負けました」
しおりを挟む
アキラはCUにログインすると、ソウラたちのお店へと向かっていた。
モチツキンに挑んだは良いものの、全く勝てなかった。
敗北記録を伝えに行くのは、少し悲しい。
しかしながら、せっかく情報を聞いたのに、何も言わないのは良くない気がした。
「すみませーん」
Deep Skyのメンバー、ソウラとけみーが居た。
ソウラはカウンターでグラスを拭いていた。
けみーはグラスに注がれた飲み物を口に運んでいた。
「あれ、アキラ?」
「来たんだね」
ソウラは気が付くとビックリしていた。
対してけみーは肘をカウンターに置きながら、アキラのことを見つめた。
何だか良い雰囲気だと思う。
「あの、こんにちは。えっと、今日は二人なんですか?」
アキラは見て判ることを呟いた。
するとソウラはけみーの分まで説明してくれる。
「そうね。今日はピーコもマンティモ授業だから」
「ピーコさん、いつもいませんね」
「ピーコはアレで忙しいからね。大学でも作品作り、授業に提出するものだけじゃなくて、実際に家具のオーダーメイドやDIYにも携わっているから、なかなかログインできないんだよ」
「そ、そう何だ。新情報です」
アキラはけみーに追加で教えて貰った情報を胸に仕舞う。
大学生でそんなことまで。カッコいいと称賛する。
「それで、今日は何をしに来たのかな?」
「……分かってますよね。けみーさん」
「まあね。その浮かばれない顔。如何やら大敗を喫したらしい」
「あはは、そうです」
アキラは笑って答える。
別に笑い話にもならないのだが、けみーは見透かすように、「だろうね」と答える。
「モチツキン、とっても強かったです」
「そうだね。僕もマンティもまるで歯が立たなかったよ」
モチツキンと戦ったからこそ分かる。
臼も杵も強靭で、中に侵入して、餅を捏ねる何て馬鹿な真似、繰り返しでは無理なのだ。
流石はモチツキンと言うべきか。もはやバグレベルで、アキラたちでさえ、四回が限度だった。
「それで、何回できたんだい?」
「四回です。ちなみにけみーさんたちは何回できたんですか?」
アキラはけみーに質問する。
すると思ってもみない回答が出た。
「僕たちは五十回は言ったよ。でもそれ以上行くと、流石の僕のASでもマンティのスキルでも防ぎきれなかったね」
「五十回ですか? そんなにできるんだ……あれ?」
「如何したんだい?」
アキラはふと思い出した。
モチツキンの餅を捏ねると、その回数に応じて頭上のカウントが減って行く。
しかしアキラが見た時、カウントは減っている様子がない。
もちろんけみーたちの後なので、減っていないとおかしい。だけど実際目にしたのはMAX数値だった。
「ちなみにけみーさんたちが見た時にカウントって……」
「99だったよ。そこから49まで減らすのが大変だったね」
「やっぱり……戻っているんだ」
アキラは絶句してしまった。
まさかモチツキンを倒すためのカウントがそんなにシビアだったなんて。
信じたくない事実を受け止めざるを得なくなると、頭を抑えるアキラ。来年再挑戦しようにも、これでは絶対に勝てないと悟る。
「けみーさんたちは如何やってそんなにカウントを減らしたんですか?」
「スキルだよ。僕たちのスキルはスピード戦には向いているからね」
アキラはけみーの分かりやすい説明を聞き、納得してしまった。
モチツキンが強敵すぎて、スピード戦云々の話ではなくなる。
「勝てますかね?」
「如何かな。少なくとも、二人では難しかったよ」
「こっちも三人じゃ厳しかったです」
「「うーん」」
二人して悩んでしまった。
するとソウラが口を交える。
グラスを吹き終わると、新しく水滴の付いていないグラスに、ジュースを注いでアキラの前に出す。
「はい、少し休憩しましょう」
「ありがとうございます」
如何やらサービスで出してくれたようで、アキラはありがたく貰う。
ここまでずっと立っていたのだが、空いていた椅子に座ると、グレープジュースをストローを使って飲む。
もちろん隠語じゃないから、アルコールは含まれていない。
「それで如何するんだい?」
「如何するって?」
「再挑戦、しないのかな?」
ここまでの話をして、けみーはアキラに尋ねた。
流石に今年は遠慮したい。友達と話し合った結果、無理だとなったので、アキラもそうすることにした。
「逆にけみーさんたちは再挑戦するんですか? ほら、ソウラさんたちも居るから」
「私は行かないわよ」
「そうだね。僕たちも今年はもう良いかな。正直、誰かが攻略できるとは思えないからね」
けみーの態度もやはり否定的だった。
正直、けみーたち以上のスピード戦を得意とするパーティーをアキラは知らない。
「ちなみに有力なパーティーとかって?」
「もちろんいるよ。いずれ相手取ることになるかもしれないね」
「い、嫌ですね」
「そうならないように気を付けるんだよ。まあ、運営側がそれらしいイベントを用意してきたら別だけどね」
けみーの言葉には深みがあり、何となく有りそうで仕方なかった。
モチツキンに挑んだは良いものの、全く勝てなかった。
敗北記録を伝えに行くのは、少し悲しい。
しかしながら、せっかく情報を聞いたのに、何も言わないのは良くない気がした。
「すみませーん」
Deep Skyのメンバー、ソウラとけみーが居た。
ソウラはカウンターでグラスを拭いていた。
けみーはグラスに注がれた飲み物を口に運んでいた。
「あれ、アキラ?」
「来たんだね」
ソウラは気が付くとビックリしていた。
対してけみーは肘をカウンターに置きながら、アキラのことを見つめた。
何だか良い雰囲気だと思う。
「あの、こんにちは。えっと、今日は二人なんですか?」
アキラは見て判ることを呟いた。
するとソウラはけみーの分まで説明してくれる。
「そうね。今日はピーコもマンティモ授業だから」
「ピーコさん、いつもいませんね」
「ピーコはアレで忙しいからね。大学でも作品作り、授業に提出するものだけじゃなくて、実際に家具のオーダーメイドやDIYにも携わっているから、なかなかログインできないんだよ」
「そ、そう何だ。新情報です」
アキラはけみーに追加で教えて貰った情報を胸に仕舞う。
大学生でそんなことまで。カッコいいと称賛する。
「それで、今日は何をしに来たのかな?」
「……分かってますよね。けみーさん」
「まあね。その浮かばれない顔。如何やら大敗を喫したらしい」
「あはは、そうです」
アキラは笑って答える。
別に笑い話にもならないのだが、けみーは見透かすように、「だろうね」と答える。
「モチツキン、とっても強かったです」
「そうだね。僕もマンティもまるで歯が立たなかったよ」
モチツキンと戦ったからこそ分かる。
臼も杵も強靭で、中に侵入して、餅を捏ねる何て馬鹿な真似、繰り返しでは無理なのだ。
流石はモチツキンと言うべきか。もはやバグレベルで、アキラたちでさえ、四回が限度だった。
「それで、何回できたんだい?」
「四回です。ちなみにけみーさんたちは何回できたんですか?」
アキラはけみーに質問する。
すると思ってもみない回答が出た。
「僕たちは五十回は言ったよ。でもそれ以上行くと、流石の僕のASでもマンティのスキルでも防ぎきれなかったね」
「五十回ですか? そんなにできるんだ……あれ?」
「如何したんだい?」
アキラはふと思い出した。
モチツキンの餅を捏ねると、その回数に応じて頭上のカウントが減って行く。
しかしアキラが見た時、カウントは減っている様子がない。
もちろんけみーたちの後なので、減っていないとおかしい。だけど実際目にしたのはMAX数値だった。
「ちなみにけみーさんたちが見た時にカウントって……」
「99だったよ。そこから49まで減らすのが大変だったね」
「やっぱり……戻っているんだ」
アキラは絶句してしまった。
まさかモチツキンを倒すためのカウントがそんなにシビアだったなんて。
信じたくない事実を受け止めざるを得なくなると、頭を抑えるアキラ。来年再挑戦しようにも、これでは絶対に勝てないと悟る。
「けみーさんたちは如何やってそんなにカウントを減らしたんですか?」
「スキルだよ。僕たちのスキルはスピード戦には向いているからね」
アキラはけみーの分かりやすい説明を聞き、納得してしまった。
モチツキンが強敵すぎて、スピード戦云々の話ではなくなる。
「勝てますかね?」
「如何かな。少なくとも、二人では難しかったよ」
「こっちも三人じゃ厳しかったです」
「「うーん」」
二人して悩んでしまった。
するとソウラが口を交える。
グラスを吹き終わると、新しく水滴の付いていないグラスに、ジュースを注いでアキラの前に出す。
「はい、少し休憩しましょう」
「ありがとうございます」
如何やらサービスで出してくれたようで、アキラはありがたく貰う。
ここまでずっと立っていたのだが、空いていた椅子に座ると、グレープジュースをストローを使って飲む。
もちろん隠語じゃないから、アルコールは含まれていない。
「それで如何するんだい?」
「如何するって?」
「再挑戦、しないのかな?」
ここまでの話をして、けみーはアキラに尋ねた。
流石に今年は遠慮したい。友達と話し合った結果、無理だとなったので、アキラもそうすることにした。
「逆にけみーさんたちは再挑戦するんですか? ほら、ソウラさんたちも居るから」
「私は行かないわよ」
「そうだね。僕たちも今年はもう良いかな。正直、誰かが攻略できるとは思えないからね」
けみーの態度もやはり否定的だった。
正直、けみーたち以上のスピード戦を得意とするパーティーをアキラは知らない。
「ちなみに有力なパーティーとかって?」
「もちろんいるよ。いずれ相手取ることになるかもしれないね」
「い、嫌ですね」
「そうならないように気を付けるんだよ。まあ、運営側がそれらしいイベントを用意してきたら別だけどね」
けみーの言葉には深みがあり、何となく有りそうで仕方なかった。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる