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◇374 モチツキンに一撃を!

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 アキラとNightはフェルノがやられた姿を見てしまった。
 まさかこんな事になるなんて。
 信じられない光景を覗き見てしまい、たじろいでしまった。

「Night……如何しよう……」
「落ち着け、こうなる可能性は考慮していただろ」
「そ、それはそうだけど……でも、フェルノがやられるなんて……」

 ここまで一度だって負けてきていない。
 不敗神話に罅が入り、アキラとNightは言葉を失う。

 目の前のにはフェルノを倒したモチツキン。
 一体如何したら倒せるのか余計に分からなくなると、一歩後ずさりをする。

 けれどおかしなことになった。
 モチツキンはフェルノを倒すとアキラやNightたちに目を向けることもなく、所定の位置へと戻ってしまう。
 もしかして興味を無くした? かと思ったら、頭上のカウントは減ったままだった。

「Night、これって続いているのかな?」
「おそらくな。頭上のカウントが減っている」

 頭上のカウントはフェルノの最後の足掻きによって97になっていた。
 けれどそのままで止まっていて、アキラとNight、二人によって戦うことになる。

「勝てる?」
「勝てるかどうかじゃないだろ」
「そうだよね。頑張ってみるしかないよね」

 フェルノの分まで頑張らないといけない。アキラはそんな意識に駆り立てられる。
 けれどNight地震に勝利の目は見えていない。
 なので足が竦むとかの騒ぎではなく、普通に帰ろうとしていた。

「ちょっと待ってよ。何で帰ろうとするの!」
「それしか術は無いだろ」
「術って……Night、フェルノはここまでやってくれたんだよ」
「それはそうだが……勝てると思うのか?」
「それは分からないけど……やってみようよ。できる所まで」

 アキラは意識を切り替える。
 もう勝ち負けの世界じゃない。これは足掻きだ。
 多分勝てないと思いつつも、モチツキンに一撃を与えたい。
 その想いだけを糧にして、モチツキンを睨みつける。

「はぁー」

 その感情にNightも熱を当てられた。
 頭を抱えてしまい、勝てないのが分かっていながらも,足掻きに付き合ってあげる。
 友達として止めるべき所を、逆に友達として手伝うことにする。
 二分一なら、少しでも足搔いた方が面白かった。

「やるしかないか」
「ありがとうNight]
「お前のせいだからな」
「ごめんね、Night。でも、ありがとう。それじゃあ、如何しようか?」

 アキラはNightに作戦を尋ねた。
 しかしそんなものなど用意しているはずもないので、とりあえずできることをやってみる。
 今作れるものは残りのHP的にもない。【ライフ・オブ・メイク】に頼るのは無理になる。

「とりあえずアキラ、【キメラハント】で殴りに行け。使うのは【甲蟲】+【灰爪】だ」
「それで良いの?」
「それしか攻撃手はなかっただろ。正直私が前衛に出ても足手纏いだからな」

 Nightは自分の持ち味を分かっていた。
 だからこそ、いまのままでは何の役にも立たないことを弁えていた。

「それじゃあNightは如何するの?」
「私は残ったHPを使って、コレを作る。アキラは危ないと思ったら、【半液状化】を使って逃げろ。【幽体化】は奥の手だからな」
「分かった。それじゃあ行くね!」

 アキラは武装してモチツキンを叩きに向かう。
 所定の位置に収まり、最初の一撃だけ与えられる絶好のチャンス。
 それを武器にして、天高く上がった杵を足場に臼の縁の部分に足を掛けようとした。
 その瞬間、違和感を覚えたモチツキンの反撃に遭う。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ブンブン振り回されて、落ちそうになる。
 何とかしがみついているものの体は半分出ていた。
 それを見たNightはインベントリの中からアイテムを取り出す。硬くて爆発性の高い石ころだ。

「止まれ!」

 思いっきり遠投の要領で投げ込む。
 上手く命中したは良いもののダメージはやはりない。当然のことだと、Night自身も分かっていた。判った上で、このアイテムを使ったのだ。
 
それだと何が良かったのか。
 良かったのは、この遠投のおかげで少しだけ動きが鈍ったこと。
 痛覚はないものの、衝撃による反動はあるらしい。モチツキンが動きを鈍くした瞬間をきっかけに使う。

「今だ、アキラ!」

 Nightは叫んで誘導する。
 爪が臼に引っかかり、上手く上半身の動きと使って弾みをつけ、足で蹴って中へと入る。
 臼の中への侵入には成功した。
 
「それでここから如何したら?」

 アキラは何をしたら良いのか分からなかった。
 目の前には白い塊。きっとこれが餅だろうと、見た目だけで判断した。

「ってことは、この餅を捏ねるってこと?」

 だけどただ捏ねて良いのだろうか?
 アキラは不穏に思った。
 だってフェルノはそれでやられた。ここで餅を捏ねたら、モチツキンの思う壺なのでは? と怪しくなってしまうのも自然だったが、それでも選択肢はないのだからやるしかなかった。
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