VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇372 餅を搗くって、そのままの意味?

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 モチツキンが動き始めた。
 杵を持った左腕を振り上げて、問答無用で叩きつける。

 ドシン!

 凄まじい振動波が発生し、地面が地響きを生んで揺れ出した。
 まともに立っていられない。
 アキラもフェルノもよろめいてしまって、手を地面に突いた。

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……っと」」

 アキラとフェルノは動けなくなってしまったが、何とか攻撃を直接喰らうことはなかった。
 おかげで怪我をせずに済んだのだが、一瞬怯んでしまって動きが鈍くなる。

「これじゃあ動けないよ」
「そうだねー。ちなみにNight、弱点は見つかったんだよねー?」
「ああ。とは言え弱点に行ってからも問題がある」
「その弱点ってなに? 見えている範囲にあるの?」
「モチツキンの弱点はたった一つだ。臼の中に入っている餅を捏ねる。その上で、モチツキン自体に毎度毎度搗かせる。それしかない!」
「「嘘でしょ……」」

 アキラとフェルノは言葉を失った。
 まさかそんなに難易度の桁外れなことを要求して来るなんて。
 あのスピード、あの正確性、一回だと良いのだが、おそらくそんなわけが無いと、やる前から想像できた。

「そ、それしかないの?」
「ああ。だから止めておくのが吉だ。今ならまだ逃げられるぞ」
「……さっきからNight、かなり否定的だね」
「当たり前だ。私の身体能力や戦法では如何にもならないからな」

 かなり最もなことを言っているようだが、これは逃げではない。
 Nightは自分の持ち味と武器をしっかりと理解しているからこそ、もの相手には通用しないと悟ったのだ。

「でも、このGAMEはレベル差なんて……」
「それじゃあレベルを見てみろ」
「レベル? ……はい、コレ何?」

 アキラはNightに言われてモチツキンを凝視。
 HPバーの上、名前の隣にレベルが書いてある。
 しかしイマイチ良く読めない。むしろ、文字化けをしているせいで、何が書いてあるのかさっぱり読めないのだ。

「も、文字化けしてるってことは、システムエラー? それだけ桁違いってこと!?」
「そう言うことだ。私たちのレベルは最大でも65。レベル差は関係ないが、無理だぞ」

 はっきりと言い付けた。
 アキラも意識を切り替えてできるビジョンを見ようとした。
 しかしドンドンスピードが上がって行くモチツキンの攻撃に、動体視力が追い付けない。
 
 諦めてしまいそうになる。
 だけど一人、フェルノだけは拳をかち合わせて勇気と根性を見せる。

「レベルがバグってるんだねー。しかもこのスピードは健在で、ドンドン加速していくと……まともにやっても無理かもだねー」
「フェルノ?」
「アキラ、ちょっと試してみるから、後お願いね」
「えっ、待って。まさか、本当に……」
「【吸炎竜化】!」

 フェルノはファイアドレイクの力を武装した。
 腕も脚も翼もほとんど竜の鱗に書き換えると、拳を振り上げ、地面を蹴りつける。

「せーのっ!」
「フェルノ!? 【キメラハント】:【月跳】」

 アキラもフェルノを追いかけて、空高く跳び上がる。
 モチツキンはそんな二人を目障りに思ったのか、杵を振り上げた。
 ブンブン振り回し、アキラとフェルノを打ち落とそうとする。
 だけどフェルノの邪魔はさせまいと、アキラも頑張った。

「【キメラハント】:【半液状化】」

 体をスライム上に変化する。
 杵に飛びつくと、フェルノに当たらないよう絡みついて、体重移動も合わせて使い、軌道を書き換えた。
 そのおかげか、フェルノの真横を空振りする。

「ありがとう、アキラ!」
「行ってフェルノ。全力でやっつけて!」

 こうなったら応援すること。
 それが精々だとアキラは思い、フェルノを導くと、杵を全力で抑え込んだ。
 しかしそう長くも時間は稼げず、重力に負けて振るい落とされた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 アキラは落っこちた。
 しかし腕に何か引っかかり、上手く引き寄せられた。

「えっ? うわぁぁぁぁぁ、ひ、引っ張られるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 アキラは引き寄せられ、そこにはNightが居た。
 ワイヤー付きの鉤爪でアキラを上手く引っかけて釣り上げたらしい。
 変な所に落ちるよりも、Nightの傍で着地できて良かった。

「大丈夫か、アキラ?」
「う、うん。ありがとうNight」

 Nightは地面にクッションを敷いて待っていてくれた。
 代わりに相当HPを消費している。
 ポーションを飲んでもNightのHPが余り回復しないので、【ライフ・オブ・メイク】を多用したんだと思った。

「無事に上手く行けたのか?」
「た、多分……」
「多分か。まあ、フェルノなら何とかするだろう」

 Nightはフェルノの身体能力の高さを信頼していた。
 とりあえずアキラはフェルノを無事に運んだ。
 後はフェルノ自身。しかしアキラもNightもフェルノのことを信頼しているので、不安を避けることにした。
 意識を切り替えて信じる。するとモチツキンの頭上に、何やら出ているので気になった。
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