VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇368 台地の死闘

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 アキラたちはとある森へとやって来ていた。
 鬱蒼としている森だ。アキラとフェルノは藪から飛び出た細い木の枝を薙ぎ払い、Nightを後方に置いて、案内役を頼む。

「Night、この道しかないの?」
「そんなはずはない。だが、道が通れなかっただろ」

 本当はこんな獣道を通る予定ではなかった。
 実際は、この先に少し小高いいわゆる台地と呼ばれる場所がある。
 そこに抜けるために、鋪装はされていないが、平らに整備された砂地の道が広がっている。
 
しかし今日の所は大木が倒れていて通れなかった。
もしかしたらモチツキンを死闘を繰り広げた証かも。
 などと、早く大木が取り除かれることを期待しつつ、アキラたちは獣道を掻き分けた。

「ふぅ。この先に居るんだよね?」
「ネットの情報だとそうらしいな。実際、直近の記録を見るに間違いなさそうだ」

 はっきりとNightは答える。
 Nightが選び取った情報はほぼ間違いが無いので、アキラたちは安心することができた。
 しかしながらこの獣道はかなり長い。
 何処にモチツキンが居るのか一向に見えてこない中、突然変な音が聴こえた。

 ドスンドスン!

 何かを叩くような音だ。
 激しく地面を揺らし、振動でその存在感を露わにする。

「な、何この音!」

 アキラは気になってしまった。
 するとNightは「例のモチツキンじゃないのか?」とあやふやに唱える。

「こんな音を出す? もしかして、杵を使っているのかな?」
「如何だろうな。とは言え、質量に対してだ。この音を出せるだけ巨体なら想像もつくが……」
「行ってみるしかないよー」

 Nightは少し嫌な予感がして考え始めた。
 しかしフェルノは直情的。
 草木を掻き分け、獣道を開拓すると、森がようやく晴れた。
 目の前には盛り上がった地面があり、これが台地だとすぐさま伝わる。

「結構大きな台地だね」
「うん。何処から……って、なだらかな道ができてるね。行ってみよっか」
「そうだねー」
「いや、待て!」

 アキラとフェルノが早速行ってみようとする。
 しかしNightはアキラの服の袖を掴み、行かせないようにしていた。

「如何したの、Night?」
「この音、聴こえないか?」
「音?」

 耳を澄まして聴いてみた。
 台地の上、ここからでは見えない所からドスンドスンと音が聴こえる。
 一体何が居るのか。もしかしてそこにモチツキンが? そう思った最中、グシャ! と鈍くて嫌な音が聴こえた。

「な、なに今の音!?」

 アキラは声を上げた。
 幸い距離が離れているのでモチツキンには聴こえていないらしい。
 安堵したのも束の間、妙にリアルな音が聴こえてしまったので、アキラとフェルノはNightに尋ねた。

「Night、今の音って?」
「台地の奥から聞こえて来たよー。しかも急に音が変化してさー」
「考えたくはないが、誰かやられたか?」
「「えっ?」」

 アキラとフェルノは固まった。
 完全に意識がフリーズしてしまい、瞳孔が一点を見つめている。

 誰かやられたとは? その意味を深く検討する。
 しかしNightが「あまり深く考えるな」と念押ししてくれる。
 アキラとフェルノは一旦意識の外側へと外れると、Nightに改めて尋ねる。

「この上に居るんだよね?」
「だろうな。そしてさっきのはモチツキンの攻撃だ」
「アレが攻撃……怖いな」

 アキラが口走った瞬間、何かが飛んでくる。
 視線で追うことはもはや不可能。
 気が付けば「ぐはっ!」と嗚咽を漏らす声が、近くにある今しがた崩れた藪の中から聴こえてくる。

「な、なに今の?」
「アキラ見てよ! HPバーがあるよ。かなりヤバい、レッドラインだ!」

 藪の中に誰か居た。
 アキラたちは近づいてみると、そこにはプレイヤーが倒れている。
 何の種族かは分からないけど、細長い顔をした男は「嘘だろ、一発で……」と咳き込んでいた。

「大丈夫ですか!」
「うっ、挑戦しに来たのか? 止めておけ、アイツは……うっ!」
「あっ、ポーション! はっ……」

 鞄の中からポーションを取り出そうとした。
 しかしプレイヤーの男は手を伸ばし、ポーションを取り出そうとする手を引っ込めさせた。

「私にはいい。とにかく、アイツとは戦うな」
「戦うなって……それって、如何言う!」

 アキラが訊こうとした。しかし時すでに遅し、男の体は粒子になる。
 手を伸ばそうとした。だけどすり抜けてしまい、消滅してしまう。

「あっ……」
「強制ログアウトさせられたな」
「それって、やられたってこと?」
「そう言うことだ。それにしても、ここまで吹き飛ばされるんだな」

 Nightは呑気だった。しかしアキラは少し冷や汗を掻く。
 まさかこんなにあっさりやられてしまうなんて。
 一体この先にどんなモンスターが待っているのか。
 アキラはNightに尋ねる。

「モチツキンってこんなことをするの?」
「さあな。行ってみるしかない」
「そうだよね。それしかないもんね」

 アキラたちは目の前に台地の山に向かう。
 一体どんな姿なのか、とっても気になった。
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