370 / 555
◇367 モチツキンとは何者?
しおりを挟む
アキラはギルドホームへと戻って来た。
ギルド会館から扉を潜り、目の前に浮かぶのは、冬とは真逆の暖かい海。
とは言えここには季節があり、砂浜には雪が積もっている。
そこから高台のギルドホームに向かうと、早速誰か居ないかキョロキョロする。
「誰か居ない?」
アキラの視線の先には、黒い椅子に座って本を読むNightの姿があった。
今日は違う小説のようで、無言で読んでいた。
しかしアキラの声が聴こえると、「なんだ?」と億劫に声を出す。
「Night。今日も居てくれるんだね」
「私は暇だからな。それで、なんだ?」
ギロッと視線がアキラに移る。
アキラは「うん、実はね……」と、Night一人しかいないので、少し残念に思いつつ、悩みを打ち明ける。
自分も桜色の椅子に腰かけると、廊下で歩く音が聞こえた。
「みんな、ちはー。って、今日もいつメンだね」
やって来たのはフェルノだった。
今日も元気いっぱいで、疲れなど知らない顔をしている。
「フェルノ、丁度良かった」
「如何したの? アキラは嬉しそうだけど、Nightは恨めしそうな顔をして。何かあった?」
「何も無い。それで、悩みを打ち明ける雰囲気は如何した」
「えっ、アキラに悩み!?」
「あはは、悩みって程じゃないんだけどね。それが、ちょっと気になることがあって、訊きたかったんだ」
アキラはけみーとマンティがやられたというモンスターに付いて尋ねる。
Nightは本を読んだまま黙って聞き、フェルノも「へぇー」とか「けみーとマンティが!?」とリアクションよく頷いてくれる。
正直、モンスターの姿形がはっきりとはしていない。
果たしてそんなモンスターが居るのか、未だ半信半疑。
おまけに二人を超えるスピード。
そんなもの相手に通用するのかの不安。
様々な思考回路が働く中で、とりあえず話し終えたアキラは、二人の見解を聞きたい。
「如何思う?」
あまりにも漠然とした返し。
フェルノは腕を組んだまま天井を見つめた。
「如何って言われてもねー。結構強いんだろうなーってこととか、どんな形なのかとか、色々分かんないことだらけだよ」
「だよね。私もそうだもん」
「でもさー」
「嘘は付いてないと思うよ。二人が私に嘘を付いているような雰囲気なかったし、そもそもそんなことしないって判っているから」
だからこそ、余計にどんな姿形なのか、ヒントは散らされているのに見えなくなる。
臼の形をしたモンスター。
本当に臼の姿なのか、Nightの答えを待つ。
「なるほど。それは正月限定のモンスター、モチツキンだな」
「「モチツキン?」」
本をパタンと閉じて、Nightはモンスターの名前を唱えた。
特撮ものに出てきそうな名前のモンスターだけど、一体どんな形なのか。
まさかとは思うが、お餅をついているのかなと、アキラは笑ってしまった。
「モチツキンは確かに臼の形をしたモンスターだ。木製の臼に関節が存在しない曲線状の腕と脚が生えているのが特徴らしい」
「えっ、臼から生えているの!?」
「ああ。おまけに左手には杵を持っている。しかも右手は常に濡れている。冷たく仕上がっているそうだ」
この説明。まるで餅つきをする人みたいだ。
アキラとフェルノは互いに顔を見合わせた。
Nightが言うからにはもう確実。ネットに転がっている情報を分析して整理した結果生まれた、ほぼ確実な証拠だった。
「えっと、強いのかな?」
「如何だろうな。私は戦ったこともない」
「そうだよね。でも、スピードって如何言うことだろ?」
「分からない」
「それじゃあ如何やって倒せばいいのかな?」
「臼だったら直接破壊しちゃえばいいのにねー」
結構なことを言っていた。
しかしそれができないからこそ、モチツキンは強敵なのではと、アキラは薄々勘付いていた。
とは言え、どんな方法で倒せばいいのか、いまいちピンと来ない。
するとNightが気になることを呟く。
「ネットで調べた限りだと、モチツキンは臼を壊しても倒せないらしい」
「そうなの?」
「ああ。おまけに言えば、モチツキンを倒そうにも、普通の方法じゃ無理らしい」
「普通の方法じゃ無理ってなに?」
「そこは知らない。だが、けみーたちは何か言っていなかったのか?」
「そこまでは聴いてないよ」
実際相談をするために話を切り上げてきた。
あのムードのままは流石に困るからだ。
そうこうしていると、フェルノが口を開いた。
満面の笑みを浮かべる。
「それじゃあ今から行ってみようよー!」
「えっ、今から行くの!?」
「もっちろん。思い立ったが吉日って言うでしょ?」
「お前の口からそれが出て来るのか。まあ、フェルノらしくはあるな」
Nightも何故か納得してしまう。
意識を切り替え、アキラも行くのには賛成なのだが、問題は何処に居るのか。
そして出遭っても倒せる保証は何処にもなかった。
「それで何処に居るの?」
「はぁ。それも知らないのか」
「当たり前だよ。だってさっき知ったんだよ?」
「……分かった。行くぞ」
Nightは面倒臭そうにしていた。
しかし一緒に付いて来てくれるのでありがたい友達だった。
ギルド会館から扉を潜り、目の前に浮かぶのは、冬とは真逆の暖かい海。
とは言えここには季節があり、砂浜には雪が積もっている。
そこから高台のギルドホームに向かうと、早速誰か居ないかキョロキョロする。
「誰か居ない?」
アキラの視線の先には、黒い椅子に座って本を読むNightの姿があった。
今日は違う小説のようで、無言で読んでいた。
しかしアキラの声が聴こえると、「なんだ?」と億劫に声を出す。
「Night。今日も居てくれるんだね」
「私は暇だからな。それで、なんだ?」
ギロッと視線がアキラに移る。
アキラは「うん、実はね……」と、Night一人しかいないので、少し残念に思いつつ、悩みを打ち明ける。
自分も桜色の椅子に腰かけると、廊下で歩く音が聞こえた。
「みんな、ちはー。って、今日もいつメンだね」
やって来たのはフェルノだった。
今日も元気いっぱいで、疲れなど知らない顔をしている。
「フェルノ、丁度良かった」
「如何したの? アキラは嬉しそうだけど、Nightは恨めしそうな顔をして。何かあった?」
「何も無い。それで、悩みを打ち明ける雰囲気は如何した」
「えっ、アキラに悩み!?」
「あはは、悩みって程じゃないんだけどね。それが、ちょっと気になることがあって、訊きたかったんだ」
アキラはけみーとマンティがやられたというモンスターに付いて尋ねる。
Nightは本を読んだまま黙って聞き、フェルノも「へぇー」とか「けみーとマンティが!?」とリアクションよく頷いてくれる。
正直、モンスターの姿形がはっきりとはしていない。
果たしてそんなモンスターが居るのか、未だ半信半疑。
おまけに二人を超えるスピード。
そんなもの相手に通用するのかの不安。
様々な思考回路が働く中で、とりあえず話し終えたアキラは、二人の見解を聞きたい。
「如何思う?」
あまりにも漠然とした返し。
フェルノは腕を組んだまま天井を見つめた。
「如何って言われてもねー。結構強いんだろうなーってこととか、どんな形なのかとか、色々分かんないことだらけだよ」
「だよね。私もそうだもん」
「でもさー」
「嘘は付いてないと思うよ。二人が私に嘘を付いているような雰囲気なかったし、そもそもそんなことしないって判っているから」
だからこそ、余計にどんな姿形なのか、ヒントは散らされているのに見えなくなる。
臼の形をしたモンスター。
本当に臼の姿なのか、Nightの答えを待つ。
「なるほど。それは正月限定のモンスター、モチツキンだな」
「「モチツキン?」」
本をパタンと閉じて、Nightはモンスターの名前を唱えた。
特撮ものに出てきそうな名前のモンスターだけど、一体どんな形なのか。
まさかとは思うが、お餅をついているのかなと、アキラは笑ってしまった。
「モチツキンは確かに臼の形をしたモンスターだ。木製の臼に関節が存在しない曲線状の腕と脚が生えているのが特徴らしい」
「えっ、臼から生えているの!?」
「ああ。おまけに左手には杵を持っている。しかも右手は常に濡れている。冷たく仕上がっているそうだ」
この説明。まるで餅つきをする人みたいだ。
アキラとフェルノは互いに顔を見合わせた。
Nightが言うからにはもう確実。ネットに転がっている情報を分析して整理した結果生まれた、ほぼ確実な証拠だった。
「えっと、強いのかな?」
「如何だろうな。私は戦ったこともない」
「そうだよね。でも、スピードって如何言うことだろ?」
「分からない」
「それじゃあ如何やって倒せばいいのかな?」
「臼だったら直接破壊しちゃえばいいのにねー」
結構なことを言っていた。
しかしそれができないからこそ、モチツキンは強敵なのではと、アキラは薄々勘付いていた。
とは言え、どんな方法で倒せばいいのか、いまいちピンと来ない。
するとNightが気になることを呟く。
「ネットで調べた限りだと、モチツキンは臼を壊しても倒せないらしい」
「そうなの?」
「ああ。おまけに言えば、モチツキンを倒そうにも、普通の方法じゃ無理らしい」
「普通の方法じゃ無理ってなに?」
「そこは知らない。だが、けみーたちは何か言っていなかったのか?」
「そこまでは聴いてないよ」
実際相談をするために話を切り上げてきた。
あのムードのままは流石に困るからだ。
そうこうしていると、フェルノが口を開いた。
満面の笑みを浮かべる。
「それじゃあ今から行ってみようよー!」
「えっ、今から行くの!?」
「もっちろん。思い立ったが吉日って言うでしょ?」
「お前の口からそれが出て来るのか。まあ、フェルノらしくはあるな」
Nightも何故か納得してしまう。
意識を切り替え、アキラも行くのには賛成なのだが、問題は何処に居るのか。
そして出遭っても倒せる保証は何処にもなかった。
「それで何処に居るの?」
「はぁ。それも知らないのか」
「当たり前だよ。だってさっき知ったんだよ?」
「……分かった。行くぞ」
Nightは面倒臭そうにしていた。
しかし一緒に付いて来てくれるのでありがたい友達だった。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜
斑鳩 鳰
ファンタジー
今話題のVRMMOゲーム"Another World Online"通称AWO。リアルをとことん追求した設計に、壮大なグラフィック。多種多様なスキルで戦闘方法は無限大。
ひょんなことからAWOの第二陣としてプレイすることになった女子高生天草大空は、チュートリアルの段階で、AP振り分けの意味が分からず困ってしまう。
「この中じゃあ、運が一番大切だよね。」
とりあえず運に極振りした大空は、既に有名人になってしまった双子の弟や幼馴染の誘いを断り、ソロプレーヤーとしてほのぼのAWOの世界を回ることにした。
それからレベルが上がってもAPを運に振り続ける大空のもとに個性の強い仲間ができて...
どこか抜けている少女が道端で出会った仲間たちと旅をするほのぼの逆ハーコメディー
一次小説処女作です。ツッコミどころ満載のあまあま設定です。
作者はぐつぐつに煮たお豆腐よりもやわやわなメンタルなのでお手柔らかにお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる