365 / 555
◇362 この時期に焼き芋を焼いてみよう
しおりを挟む
冬休みのある日。
もうじき学校が始まる中、明輝と烈火は二人揃って神社に居た。
何故か神社の境内で竹箒で落ち葉を集め、燃えやすいように固めておく。
「こんな感じかな?」
「良いんじゃない? んじゃ、後はコレを入れてーっと」
烈火はサツマイモをアルミホイルでくるんでいた。
数は二つ。それなりに良いサイズで、集めた落ち葉の中に放り込む。
それから落ち葉の中に少し空洞を入れると、明輝はマッチを点けて落ち葉を燃やした。
小さな赤い火花が上がり、素早くパチパチと火種が燃え始めた。
「「おお」」
二人はちょっと感激した。
まさかこの時期、この時間にこんな真似をすることになるとは思いもよらなかった。
それもそのはず、こうなることを予期していなかった。
正直、サツマイモを食べる想定の口を今日は持って来ていない。
「でも何でこんなことになったんだろ」
「仕方ないよー。まさか近所の人たちがここまで餅つき大会に興味があるとは思わなかったからー」
「そうだよね。いっつもやってなかったのに、突然だったもんね。でも、突然のことにもこんな風に楽しく集まれるなんて、いい感じの街だよね」
明輝たちは近所で開催された餅つき大会に参加していた。
お餅をついてみんなに配って食べるお祭りだ。
明輝も烈火に誘われて参加したのだが、てっきり餅を食べられるものだと思っていた。
しかし餅つきをしたのは良い経験だったけど、残念なことが起こった。
まさかの集まった人が多すぎて、丁度明輝と烈火の分が回ってこなかった。
「それで急遽捻り出した苦肉の策が秋に収穫して余っていたサツマイモ」
「でも美味しいから良いでしょー」
「うん。焼き芋は嫌いじゃないからね」
神社の神主のお爺さんがサツマイモを出してくれた。
しかもマッチとアルミホイルを手渡して、「境内に落ち葉が落ちているから集めて焼き芋にすると美味しいんじゃよ」と言ってくれた。
これはするしかない的な空気が立ち込めていたので、餅つき大会が終わった後、アキラたちだけがこうして残り、許可を貰った後に焼き芋をしていた。
何だかこの空気感、この冬の寒空の下と言うこともあり、とても風情があった。
「風情あるよね」
「風情? あるあるー。だってこんな寒い日の下、しかも神社の境内。何かそれっぽいって言うか、やり切った後って感じがするんだよねー」
それにしても高校生になって焼き芋。しかもこうした昔ながらのやり方をすることになるとは思わなかった。
もっと簡単に、鍋に水を引いて蒸かしたり、機械に入れて終わりじゃない。
落ち葉を集める労力のおかげで境内は綺麗になった。
しかも秋空じゃなく冬空の焼き芋。
これ以上変わったことはないと、明輝と烈火は思う。
「にしても良かったよねー。明輝がマッチ点けられて」
「簡単だよ。小学校の理科の授業でもやったでしょ?」
「やったかもだけど、咄嗟に、しかも一発でさー。やっぱりお母さんから教わった的な?」
「ま、まあね」
まさかこんな風に役に立つとは思わなかった。
だけどそのおかげで焼き芋ができている。
せめてライターだったらもっと楽だったのにと、烈火は自分のできることが少なすぎてちょっと退屈な目をしていた。
「もうそろそろ焼き上がるんじゃないかな?」
「如何して分かるのー?」
烈火は木の棒を手にして落ち葉の中を突いてみる明輝に尋ねた。
すると中に入っているサツマイモが少し見えるように落ち葉を避けた。
幾つか穴が空いていた。如何やら硬さを確かめているらしい。
「こうやって突いてみたら分かりやすいんだよ。硬かったら刺さらないからね」
「なるほどー。私、料理なんて全然しないから」
「これくらいは簡単だよ」
とは言え、ボコボコ穴を増やしたりはしない。
適度に突いてみる程度で、アルミホイルが剥がれないように気を付けた。
「うん。もう焼けたね」
「それじゃあ食べよっかー」
火で温まりながら、アルミホイルに巻かれたサツマイモを取り出す。
完全にホクホクの焼き芋が完成していて、明輝と烈火は半分に割ってみた。
「うわぁ、トロットロだ!」
「ホクホクでトロトロ。こんなの絶対美味しいよー」
明輝と烈火はホクホクでトロトロになった黄色い果肉を見た。
口の中に運ぶと、一気に味が解ける。
旨味成分が爆発して、冬の寒さも相まって、美味しさに酔いしれた。
「美味しいねー」
「うん」
「でもさー。やっぱり餅が食べたかったよねー」
「まだそれで言うんだ。もう良いでしょ? おかげで焼き芋が食べられたんだから」
「まあ、そう何だけどねー。口は餅を食べる口になっていたからさー、うーん」
烈火はムッとした表情を浮かべるも、「まあいっか」と言って焼き芋を頬張る。
その姿を見た明輝はふと思った。
「そう言えば烈火もマッチ使えたよね?」
「うん、そうだよ」
「さっきは何で使えないみたいなこと言ったの?」
「その方が面白そうだから?」
「いや、面白くはないでしょ?」
煽てられても明輝はそんなに嬉しくはなかった。
冬の寒空の中、冬休みは終わりへと向かっていた。
もうじき学校が始まる中、明輝と烈火は二人揃って神社に居た。
何故か神社の境内で竹箒で落ち葉を集め、燃えやすいように固めておく。
「こんな感じかな?」
「良いんじゃない? んじゃ、後はコレを入れてーっと」
烈火はサツマイモをアルミホイルでくるんでいた。
数は二つ。それなりに良いサイズで、集めた落ち葉の中に放り込む。
それから落ち葉の中に少し空洞を入れると、明輝はマッチを点けて落ち葉を燃やした。
小さな赤い火花が上がり、素早くパチパチと火種が燃え始めた。
「「おお」」
二人はちょっと感激した。
まさかこの時期、この時間にこんな真似をすることになるとは思いもよらなかった。
それもそのはず、こうなることを予期していなかった。
正直、サツマイモを食べる想定の口を今日は持って来ていない。
「でも何でこんなことになったんだろ」
「仕方ないよー。まさか近所の人たちがここまで餅つき大会に興味があるとは思わなかったからー」
「そうだよね。いっつもやってなかったのに、突然だったもんね。でも、突然のことにもこんな風に楽しく集まれるなんて、いい感じの街だよね」
明輝たちは近所で開催された餅つき大会に参加していた。
お餅をついてみんなに配って食べるお祭りだ。
明輝も烈火に誘われて参加したのだが、てっきり餅を食べられるものだと思っていた。
しかし餅つきをしたのは良い経験だったけど、残念なことが起こった。
まさかの集まった人が多すぎて、丁度明輝と烈火の分が回ってこなかった。
「それで急遽捻り出した苦肉の策が秋に収穫して余っていたサツマイモ」
「でも美味しいから良いでしょー」
「うん。焼き芋は嫌いじゃないからね」
神社の神主のお爺さんがサツマイモを出してくれた。
しかもマッチとアルミホイルを手渡して、「境内に落ち葉が落ちているから集めて焼き芋にすると美味しいんじゃよ」と言ってくれた。
これはするしかない的な空気が立ち込めていたので、餅つき大会が終わった後、アキラたちだけがこうして残り、許可を貰った後に焼き芋をしていた。
何だかこの空気感、この冬の寒空の下と言うこともあり、とても風情があった。
「風情あるよね」
「風情? あるあるー。だってこんな寒い日の下、しかも神社の境内。何かそれっぽいって言うか、やり切った後って感じがするんだよねー」
それにしても高校生になって焼き芋。しかもこうした昔ながらのやり方をすることになるとは思わなかった。
もっと簡単に、鍋に水を引いて蒸かしたり、機械に入れて終わりじゃない。
落ち葉を集める労力のおかげで境内は綺麗になった。
しかも秋空じゃなく冬空の焼き芋。
これ以上変わったことはないと、明輝と烈火は思う。
「にしても良かったよねー。明輝がマッチ点けられて」
「簡単だよ。小学校の理科の授業でもやったでしょ?」
「やったかもだけど、咄嗟に、しかも一発でさー。やっぱりお母さんから教わった的な?」
「ま、まあね」
まさかこんな風に役に立つとは思わなかった。
だけどそのおかげで焼き芋ができている。
せめてライターだったらもっと楽だったのにと、烈火は自分のできることが少なすぎてちょっと退屈な目をしていた。
「もうそろそろ焼き上がるんじゃないかな?」
「如何して分かるのー?」
烈火は木の棒を手にして落ち葉の中を突いてみる明輝に尋ねた。
すると中に入っているサツマイモが少し見えるように落ち葉を避けた。
幾つか穴が空いていた。如何やら硬さを確かめているらしい。
「こうやって突いてみたら分かりやすいんだよ。硬かったら刺さらないからね」
「なるほどー。私、料理なんて全然しないから」
「これくらいは簡単だよ」
とは言え、ボコボコ穴を増やしたりはしない。
適度に突いてみる程度で、アルミホイルが剥がれないように気を付けた。
「うん。もう焼けたね」
「それじゃあ食べよっかー」
火で温まりながら、アルミホイルに巻かれたサツマイモを取り出す。
完全にホクホクの焼き芋が完成していて、明輝と烈火は半分に割ってみた。
「うわぁ、トロットロだ!」
「ホクホクでトロトロ。こんなの絶対美味しいよー」
明輝と烈火はホクホクでトロトロになった黄色い果肉を見た。
口の中に運ぶと、一気に味が解ける。
旨味成分が爆発して、冬の寒さも相まって、美味しさに酔いしれた。
「美味しいねー」
「うん」
「でもさー。やっぱり餅が食べたかったよねー」
「まだそれで言うんだ。もう良いでしょ? おかげで焼き芋が食べられたんだから」
「まあ、そう何だけどねー。口は餅を食べる口になっていたからさー、うーん」
烈火はムッとした表情を浮かべるも、「まあいっか」と言って焼き芋を頬張る。
その姿を見た明輝はふと思った。
「そう言えば烈火もマッチ使えたよね?」
「うん、そうだよ」
「さっきは何で使えないみたいなこと言ったの?」
「その方が面白そうだから?」
「いや、面白くはないでしょ?」
煽てられても明輝はそんなに嬉しくはなかった。
冬の寒空の中、冬休みは終わりへと向かっていた。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
ーOnly Life Onlineーで生産職中心に遊んでたらトッププレイヤーの仲間入り
星月 ライド
ファンタジー
親友の勧めで遊び、マイペースに進めていたら何故かトッププレイヤーになっていた!?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
注意事項
※主人公リアルチート
暴力・流血表現
VRMMO
一応ファンタジー
もふもふにご注意ください。
VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
Beyond the soul 最強に挑む者たち
Keitetsu003
SF
西暦2016年。
アノア研究所が発見した新元素『ソウル』が全世界に発表された。
ソウルとは魂を形成する元素であり、謎に包まれていた第六感にも関わる物質であると公表されている。
アノア研究所は魂と第六感の関連性のデータをとる為、あるゲームを開発した。
『アルカナ・ボンヤード』。
ソウルで構成された魂の仮想世界に、人の魂をソウルメイト(アバター)にリンクさせ、ソウルメイトを通して視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚、そして第六感を再現を試みたシミュレーションゲームである。
アルカナ・ボンヤードは現存のVR技術をはるかに超えた代物で、次世代のMMORPG、SRMMORPG(Soul Reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)として期待されているだけでなく、軍事、医療等の様々な分野でも注目されていた。
しかし、魂の仮想世界にソウルイン(ログイン)するには膨大なデータを処理できる装置と通信施設が必要となるため、一部の大企業と国家だけがアルカナ・ボンヤードを体験出来た。
アノア研究所は多くのサンプルデータを集めるため、PVP形式のゲーム大会『ソウル杯』を企画した。
その目的はアノア研究所が用意した施設に参加者を集め、アルカナ・ボンヤードを体験してもらい、より多くのデータを収集する事にある。
ゲームのルールは、ゲーム内でプレイヤー同士を戦わせて、最後に生き残った者が勝者となる。優勝賞金は300万ドルという高額から、全世界のゲーマーだけでなく、格闘家、軍隊からも注目される大会となった。
各界のプロが競い合うことから、ネットではある噂が囁かれていた。それは……。
『この大会で優勝した人物はネトゲ―最強のプレイヤーの称号を得ることができる』
あるものは富と名声を、あるものは魂の世界の邂逅を夢見て……参加者は様々な思いを胸に、戦いへと身を投じていくのであった。
*お話の都合上、会話が長文になることがあります。
その場合、読みやすさを重視するため、改行や一行開けた文体にしていますので、ご容赦ください。
投稿日は不定期です
生産職から始まる初めてのVRMMO
結城楓
ファンタジー
最近流行りのVRMMO、興味がないわけではないが自分から手を出そうと思ってはいなかったふう。
そんな時、新しく発売された《アイディアル・オンライン》。
そしてその発売日、なぜかゲームに必要なハードとソフトを2つ抱えた高校の友達、彩華が家にいた。
そんなふうが彩華と半ば強制的にやることになったふうにとっては初めてのVRMMO。
最初のプレイヤー設定では『モンスターと戦うのが怖い』という理由から生産職などの能力を選択したところから物語は始まる。
最初はやらざるを得ない状況だったフウが、いつしか面白いと思うようになり自ら率先してゲームをするようになる。
そんなフウが贈るのんびりほのぼのと周りを巻き込み成長していく生産職から始まる初めてのVRMMOの物語。
Bless for Travel ~病弱ゲーマーはVRMMOで無双する~
NotWay
SF
20xx年、世に数多くのゲームが排出され数多くの名作が見つかる。しかしどれほどの名作が出ても未だに名作VRMMOは発表されていなかった。
「父さんな、ゲーム作ってみたんだ」
完全没入型VRMMOの発表に世界中は訝、それよりも大きく期待を寄せた。専用ハードの少数販売、そして抽選式のβテストの両方が叶った幸運なプレイヤーはゲームに入り……いずれもが夜明けまでプレイをやめることはなかった。
「第二の現実だ」とまで言わしめた世界。
Bless for Travel
そんな世界に降り立った開発者の息子は……病弱だった。
運極ちゃんの珍道中!〜APの意味がわからなかったのでとりあえず運に極振りしました〜
斑鳩 鳰
ファンタジー
今話題のVRMMOゲーム"Another World Online"通称AWO。リアルをとことん追求した設計に、壮大なグラフィック。多種多様なスキルで戦闘方法は無限大。
ひょんなことからAWOの第二陣としてプレイすることになった女子高生天草大空は、チュートリアルの段階で、AP振り分けの意味が分からず困ってしまう。
「この中じゃあ、運が一番大切だよね。」
とりあえず運に極振りした大空は、既に有名人になってしまった双子の弟や幼馴染の誘いを断り、ソロプレーヤーとしてほのぼのAWOの世界を回ることにした。
それからレベルが上がってもAPを運に振り続ける大空のもとに個性の強い仲間ができて...
どこか抜けている少女が道端で出会った仲間たちと旅をするほのぼの逆ハーコメディー
一次小説処女作です。ツッコミどころ満載のあまあま設定です。
作者はぐつぐつに煮たお豆腐よりもやわやわなメンタルなのでお手柔らかにお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる